一話./見学/自己紹介/レポート1/
「…………分かった見学させて貰う」
亜夢は突然の言葉に正直戸惑ったが、異世界転移部と言う言葉に興味がわいた
どんな活動をしているのか気になってしまったのだ
「おお!そうか!なら早速私について来てくれたまえ!」
亜夢は異世界転移部の部長に連れられ、ある部屋の前に案内された
「ここだ!ぜひ遠慮しないで入ってくれ!」
異世界転移部の部長はそう言って先に扉を開け入って行った
それに続き亜夢も部屋の中へと入った
「部長遅ですよ……げッ!?」
亜夢が部屋に入ると最初に目が合った人物がそう発した、顔は嫌な物でも
見たような顔だ、亜夢の見た目を見てそう思ったのだろう
「どうだ!縣君!、この不良アクションバトル漫画に出てくる
主人公っぽい風貌を持つ、えーと君の名前は?」
「九阿多 亜夢、それが俺の名前です」
「九阿多 亜夢、そうか亜夢君だな、さあて皆も自己紹介しよう!」
「ま、待ってくれよ!知茶子部長!こいつはやばい奴なんだって!
噂とか知ってるだろ?」
「はて?噂とは?」
「知らないのか!?こいつはな!学校で一番可愛いとされている
十勝 麺麭粉の告白を聞かずに痰ぺっぺした糞野郎だぞ!」
「あっそれ、あたいも知ってる!その後に本性を露にして髪を金髪に戻して
気に入らない十勝 麺麭粉ファンをボコボコにしたって奴だろ?
最高でクレイジーでカッコいいな!」
そう話したのは部屋内に居た女子生徒だ、そしてもう一人女子生徒が居た
その人物は椅子に座り沈黙していた、興味など無いと言っている様に見えた
「馬鹿!俺達まで暴力を振られる可能性があるんだぞ!?」
「まあまあ落ち着きたまえ縣君!、それに私の目に狂いは無い
亜夢君はこの部活に足りなかった要素の一つを持っている
これから事態は急変するぞ!遂にプロジェクトはさらに進展する!」
「ああ!この人馬鹿過ぎだろ!」
縣と呼ばれた男子生徒は頭を抱え絶叫する
そして自分の事が話題になっている男が口を開く
「これ、入る流れになってるんですか?」
「そうだ!この異世界転移部の部室に入った時点で亜夢君は部活メンバーだ!
そうそう亜夢君!敬語は禁止だぞ、異世界転移部では上も下も無い!我らは
同じ志を持つ同士だ!、さあ自己紹介の続きをしよう!」
唐突にそう言われた亜夢は正直困惑した、思考するのもきつくなっていた
十勝の件が有った直後に有無を言わさず異世界転移部に入部させられた
そしてそんな亜夢を置いて自己紹介が始まった
「では!まず言い出しっぺである私から行こう!
私は村四季 知茶子!
この部活動の部長をしている、異世界転移したい理由は今いる
部活メンバー諸君と友情を築き、熱き戦いを繰り広げ魔王を倒し
英雄になる事だ!」
「……はあー……全く俺の話聞き入れろよ……俺の名前は
豪夢 縣、異世界転移したい理由はハーレム作りたい
超モテモテになりたい」
「あたいでも分かる縣は女の敵だ、それであたいの名前は
氷坂 天下!、特技は格闘術だ!
だから異世界で魔物に囲まれたらあたいに任せな!そして異世界転移したい
理由はお姫様になって王子様と結ばれたいだ!」
「……紫陽花 蜜葉……闇を統べるスペシャリスト……
この世界は!!何れ我が頂く!!今から蜜葉様と敬えるのを幸せと
思うが良い!イヒヒヒィィ!!…………異世界転移したい理由は
今言った野望を達成させる力を手に入れる事」
「相変わらずイロモノしか居ないなこの部活は、亜夢とか言ったか?
なぁ今なら逃げられる、無かったことに出来る、
唯一真面な感性を持った俺の助言聞いといた方が良いぞ?」
「…………俺は……九阿多 亜夢だ」
亜夢はかなり悩んだ後、そう切り出した、そしてこう続けた
「異世界転移したい理由は……メス豚ハーレム」
亜夢は今とても疲労し情報を処理しきれないでいる状態だ
だから自分でも何を言っているか理解していない
「メス豚ハーレム!それは中々の夢だね!でも安心して欲しい
人の夢を馬鹿にする人間はこの部活内には居ない!」
「なんだよ!お前も俺と一緒でモテたいんだな?
何だよ悪い奴じゃないじゃん!
童貞でハーレムを追い求める同志だったんだな!」
縣は亜夢の肩に手を回し良い笑顔で笑った
「なっ!?お前も女の敵なのか!?」
天下はその場から動かないものの、かなりドン引きしている顔をしていた
「天下まあ落ち着け、彼らには彼らの趣向がある
それが目標とならば応援するのが同じ志を持つ同志と言う物だ」
「わ、分かってるけど、普通に気持ち悪くて」
「き、気持ち悪い」
亜夢は天下から気持ち悪いと言われ普通にショックを受ける
「女子の前でハーレムを作りたいなんて言えばこうなるもんだ……
けど俺はもう経験済みだ、そしてもう言い慣れた
初対面の相手にだって堂々と余裕に言えるほどにな
大丈夫だ亜夢も何れ慣れる」
「出来れば言い慣れたくないんだが……」
「……ごめん酷い事言って、あたいもだよな、こんな歳になってお姫様って」
「いや関係ないぜ!皆で叶えようぜ!異世界転移すれば全ての夢が叶う!
お姫様だってハーレムだってやりたい放題だ!」
「そ、そうだよな!縣良い事言うじゃん!」
「お、おう……」
縣と天下は亜夢を対面に挟み盛り上がった、亜夢はその流れに付いて行けず
微妙なテンションで同意した
「どうやらもう馴染んだようだね!、意気投合は仲良くなる近道だ
さあて部活を始めるとしよう!」
そうして部活動が始まった
各々四角い大きな机に丸椅子を置いて座った
亜夢も余っていた丸椅子にとりあえず座った
そして各々パソコンを立ち上げ作業をする
「……これは今何をやって居るんだ?」
亜夢は何もする事が無く、皆が何をやっているのかが気になった
「今している作業は、世界各地で起こって居る事件や謎を
ネットを使って調べているんだ」
亜夢の質問に部長の知茶子が答えてくれた
「事件?謎?、それがどうして異世界転移に結びつくんだ?」
「うーんなんと言えば良いかな……亜夢君と異世界談義をいっぱいしたいが
話を始めるとかなりの時間が掛ってしまう」
「知茶子部長、今まで活動して来たレポートを見せてやったら
良いんじゃないか?」
「おお!それは名案だ!亜夢君ぜひ異世界転移部の活動レポートを
見てくれないか!」
こうして亜夢は異世界転移部の活動レポートを見る事になった
「亜夢君!これだ、是非見て感想をくれると嬉しい!」
「これか?」
俺は知茶子部長から三枚のA4ファイルを手渡された
「この三つの謎は大変だったよ、じっくり理解して見るんだよ?」
「三つ?三つしかないのか?」
明らかに知茶子部長は俺よりも大人っぽいし、三年だろう、だから
三年間部活動している割には少ないと思った、そして俺の表情を読み取った
のか知茶子部長はこう口にした
「この部活の発足は最近でね、だからまだ三つだけなんだ、でもこれから
もっとレポートは増えて行くだろう」
「そうだったのか、俺はてっきり、この学校特有の特別な部活だと思っていた」
「なるほど、でもこの先この部活が続いて行けばそれも事実となるだろう!
さあその歴史の一員になった亜夢君!私達が頑張った証を見てくれたまえ!」
そう言われ俺はレポート1と書かれたファイルを開いた
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ある学校の教室内にて、真ん中中央の席が空席だった
この話はこの学校に通う生徒の従妹から聞いた話だ
そしてこの話を聞いた私、村四季 知茶子は思った
これは異世界転移したのでは?、と、突然何でそれに結びついたのかを
説明しよう、私の個人的見解からすると、異世界転移した人物は地球上から
存在と今まで関わって来た人々の記憶から消される
そうしなければ、行方不明扱いとなり、異世界転移した者を心配する者が
現れる、それを防ぐために異世界転移した者を居なかった
事にするのが一番手っ取り早い方法だ
だから教室内に不自然に空席が有っても気にしない、でも何も知らない人から
すれば不自然だ、だから私は思った、これは異世界転移された可能性がある
思い立ったが吉日、私は部活内の同志と共に調査を開始した
そして知りたい事は、空席の席に誰が座っていたのか?
それを調べ上げるには聞き込みが必要だった、住んでいた場所を絞れれば
可能性は在ると思っていた、でも調べるのは大変だった
存在や記憶から消された人間を探すのは中々に無理があった
だが我々は数週間掛け収穫を得た
それはその学校に通う生徒から得た情報だ
情報提供者の彼の話では、小さい頃良く遊びに行っていた家があると
今思えば何で遊びに行っていたんだっけ?、と首を傾げていた
それを聞いた私は考察し推理した、子供の頃遊びに行っていた家には
同じ歳くらいの子供が居たのではないかと
だから良く一緒に遊んでいた、でもその子供の存在が消えた事によって
情報提供者の記憶に違和感が生じたのではないか?、と、私はそう思った
そして私はこうも思った、異世界転移した人の存在と記憶が消えても
転移者と関りのあった人の経験は消えない、だったら
転移者が居たと言う痕跡を探せるかもしれない
例えば、消えた人が使っていた私物とかが見つかれば、子供が居ないのに
子供が好きそうな玩具が見つかれば、それは明らかにおかしい
それを理由に異世界転移したと推測すれば
異世界転移した可能性はグーンっと上がる
そして後日我々は、情報提供者の案内の元、昔よく遊びに行っていたと言う
家に向かった、するとその家主は情報提供者の事を覚えていた、そして
家に上げてもらった、昔忘れた物が有って、と言う理由で家の中を探せる
事になった、本当の理由を話した所で信じて貰えるか分からないからだ
それから我々は家の中を調べ上げた、そして一つの空き部屋を見つけた
部屋の中には何も無かった、私はこの部屋は何なのか?、と、家主に尋ねた
すると情報提供者がこの部屋で昔遊んでいた事を思い出す
そして家主も「そう言えば、何でこの部屋で一人で遊んでいたのかしら?」
と不思議そうにしていた、私は家主に子供は居ますか?と言う質問を
投げかけた、すると居ないと返答して来た
子供が欲しいと言う気持ちはあまり無く、だから子供も作らなかったそうだ
本当にそうだろうかと私は考えた、もし事実だとしても明らかに不自然だった
何故情報提供者は同年代の子供が居ないのにも拘らず、空き部屋で遊んでいた?
子供が欲しいと思っていないのに、今現在、空き部屋は使われた形跡はない
使わない部屋なら物置的な部屋にしたらいい、何故そうしない?
その後私は思考を重ね、ある結論を出した、つい最近までこの部屋には
一人の子供が居た、そして何らかの方法で異世界転移して、地球上から
存在と記憶が消えた、存在が消えれば
異世界転移した人物が使っていた物や子供の為に買った物は消え去る
元々そんな事実は無かったことにされる
そして異世界転移して間もないから、この部屋の使い道がまだ決まって
いなかった、だからこの部屋は未だに何も置かれていない
そこまで至った私はある事を閃いた、写真はどうだろうかと?
写真は映して居る側の人物が行動して撮った物だ、異世界転移した
写真中の子供は消えていても
写真を撮った事実は残っているんじゃないか?、子供の為に撮った写真だが
もしかしたら、子供が写っていない写真が残っているんじゃないか?
そしてもしそれ見つかればその写真は少し不自然な角度の
風景画となっているんじゃないか?
例えば子供が食事をしているシーンで、食べている横顔を写した写真が
有ったとしよう、そしてその子供が消えれば、食事その物が消えて
何も無いテーブルの写真だけが残るのではないか?
私はそう結論付け、この家の写真アルバム的な物は無いかと聞くと、家主は
「有りますよ」と答えてくれた
そしてアルバムを我々に見せてくれた、中を見ると情報提供者が写った
写真が出て来た
そしてその写真は不自然な物だった、情報提供者が写っている写真はどれも
写真の中央から右に左に位置がずれていた、基本この手の写真は
一番撮りたい人物の被写体が中央に居る前提で撮られる写真だ
そして決定的な写真が有った、大勢で撮った写真の中に不自然な空白を発見した
しかもその位置は中央真ん中だ、その位置には何も無く、でも丁度一人は
入れそうな空白だ
そしてその後も、謎の風景画が出て来た、家の壁の写真、大木の写真
部屋の隅の写真、便座が開きっぱなしの写真、何も置いていない
テーブルの写真、庭に置かれた物干し台の写真
その他にも様々な写真が出て来た、家主と情報提供者は不思議そうな
顔をするばかりだった
だが私は確信を得た、この家に住んで居た子供は最近異世界転移をした
異世界転移した方法は分からないが、我々はその痕跡をついに見つける
事が出来た
それから我々は家主と情報提供者にお礼を言い
今回の調査に終止符を打った
今回分かった事は異世界転移は事実存在する