82話「What you see in your eyes that makes you want to kill ‐殺気を帯びる目に映る物」
今話から一時的に主役交代です。
ヴォラクから悠介にチェンジします。サイドストーリーみたいな感じなので楽しんで読んでください!
深夜の森の中、満月の様な月が空に浮かび月明かりの様な光だけが周囲を照らし、仲間の姿を輝かせ、状況を唯一確認出来る光となった。それと同時に月明かりの様な光によって百を余裕で超える魔物の姿も光によって照らされる。視界は良好と言っても過言ではないが、木々が立ち並び深夜の深い森と言う事もあり月明かりの様な光が照らされているとは言っても木々の死角やその木々が生い茂る所には光が通っていない事もあった。しかもその影にも敵は隠れている為、敵の数は百を超えたと言ったが見えていない敵も数多く隠れているだろう。
なので敵の数は百以上なんてただ仮に考えただけだ。本当なら二百、いや三百すらも上回る数かもしれない。もし数が百ではなく三百すらも余裕で超えていてしまったら、こちらの数と比べれば劣勢と言うレベルを超えて不利すぎる状況に陥っている事になる。
確かに手練が揃う精鋭隊?とは言っても数に差がありすぎては、数の暴力で押し切られる可能性だってある。
何故なら相手の数に対して、こちらはたった五人しかいない。もし三百対五と言う状況に陥ってみろ。普通に考えたら勝つ事なんて不可能に近かった。勝算なんて存在しないに等しいと言っても過言ではない様にも思えてくる。
この際逃げると言う選択もありだが敵は全方向から五人を包囲している様な状況なので、逃げようにも包囲されている為、逃げられる道は一切なく”逃げる”と言う選択肢は完全に閉ざされてしまっていた。出来る事と言えば、五人は互いに背中を預けて背後を取られない様にする事ぐらいがせめてもの行いだった。
この状況を打破するにはこの場に残存している全ての敵勢力を排除して道を作る必要がある。無理難題かもしれないがそこに立っている一人の暗殺者にはまだ余裕があった。
そして右手に鋭く恐ろしい程までの切れ味を誇るナイフを握り、全身に黒衣を纏う暗殺者はまだ余裕気な表情を見せていた。まるで戦う事を喜ぶ戦士の様だった。互いに背中を預け合う五人は自分達を囲う敵の姿を目視で再び確認すると黒衣を纏った暗殺者はナイフの握り手を右手で強く握り締めながら逆手で持ち、魔法を発動する為に詠唱を始め、左手を敵の方向へと差し出す。
詠唱を小声で唱えると同時に五人の内の一人が軽口を叩く様にして言葉を呟いた。
「悠介、もういけるかな?」
暗い森の中でも月明かりの様な光によってくっきりと照らされる金色の腰まで届く長い髪を生やした女性が呟いた。その言葉に黒衣を纏った暗殺者もとい”裂罅悠介”はニヤリと笑い金髪の魔法使いであるリア、本名”リアン・ジュール”の方に顔を向けた。戦闘中によそ見だなんて関心しないが敵はまだ仕掛けてはこなかった。全方向から敵に囲まれているとは言っても彼らにはまだ余裕が残っていた。
そして魔法攻撃を行う為の詠唱が終わると悠介の左手には影の魔力が定着し、いつでもこの影の魔法による攻撃が可能になっている。今撃ち出そうと思えば、その魔力が溜まる左手から特性魔法である影の魔法を撃ち出す事が出来る。しかし悠介はまだ動こうとはせず左手に魔力を込めて更にその魔力の力を高めていた。
するとリアンと同様にその場にいた内の二人がリアンと同様に話し始めた。二人はリアン同様に悠介に指示を求める形で彼に話しかけていた。
「悠介、そろそろ突っ込んでもいいんちゃいます?」
「なぁ悠介、こっちから仕掛ける方が得策だと思うよ?あっちから飛びかかられてきたら、自分達だけで捌けるかどうか分からないよ?」
リアンに便乗する形で両手に刃が血に濡れた刀を握る雪色の髪をして珍しく開眼する糸目の青年と若干濃いめの水色の髪をした侍風ポニーテールの大人びた美人の女性が足を付けている地面の土に向けて右手に持っていた両手槍の矛先を突き立てて、悠介にそう言った。
そしてまた二人と同じ様に右腕に固定された形の大型の弓と左手に鉄製の矢を持った白髪の美しい女性が悠介に話しかける。しかも悠介に隣に立っていた事もあり、彼に寄り添う形で話しかけてきた。寄り添うにして話す事で彼女の美しい顔と夕日色とオレンジ色に近い瞳が間近で見えてしまう。
身長は同じぐらいだが白髪の彼女は悠介を上目遣いする様な形で見つめてきた。敵が自分達を包囲していようがお構いなしにしてきたのだ。悠介は女性と関わった経験は、自分の姉と、この異世界に来て知り合ったリアンとこの隊の女性達としか仲良くしていたぐらいだ。まだ慣れていないので悠介は再び頬を赤くしてしまう。それに対してリアンはちょっとだけ怒った様な表情を浮かべ、右頬を膨らませた。
「………判断よろしくね、悠介君。あなたがリーダーみたいなもんだから………ね♡」
―――――ったく、リーダーじゃないんだけど。てか、顔が近い
そう悠介は心の中で一言悩みを暴露する様にして呟いた。そして同様に白髪の女性に見つめられた事に対する緊張と照れてしまう気持ちが飛び出してしまった。しかし今はリーダーと呼ばれる事に対する違和感の方が強かった。
現に悠介はリーダーじゃないしそもそもこの隊なんかにリーダーや隊長的なポジションはない。あるとするポジションならば総督と参謀ぐらいしかなかった。
だが、この隊の皆からは悠介はリーダーの様に呼ばれている。確かにこの隊を作り出したのは自分だし、実力も隊の中では高い方なのでリーダーと呼ばれるのも自然な事なのかもしれないが基本的に影から暗躍し死角や不意打ちな形で相手を葬る自分にはリーダーや総督と言った役職は似合わない気がしていた。
――――リーダーをやらないか?と言われたとしてもやる気は毛頭なかったし、やるか?なんて言われる事もないと思っていた。この隊を発足した時はリーダーを任される様な事を言われたが断っていた。しかし断ったにも関わらず、偶にリーダーや総督と呼ばれてしまう事があった。
悠介的にはリーダー格に地位を置くのは好きではないが、今は隊の仲間達はリーダーの指示に任せると言わんばかりな発言をしている。自分自信が隊の皆に指示を出せと言う事か。そう考えれば、悠介は今はリーダーの様にして振る舞う必要があると感じ、戦いの場に立つ今だけはリーダー又は総督として指示を出す事にした。
「……ならば、我ら首領PACHI隊の名にかけて……殲滅を行うぞ!」
その言葉にその場に背中を預け合っていたリアンを初めとする四人の仲間達は静かに笑いを浮かべ、全員強く武器を握り締める。一人は魔力が込められた杖を一人は近未来風の弓を一人は刃が血に濡れた刀を一人は鋭き矛を持つ槍を両手に持った。悠介も四人と同じ様に右手に愛用しているナイフを握り締めた。
そして悠介が総督(今だけ)を務める特殊戦闘隊その名も「首領PACHI隊」は闇の中に残存する全ての敵戦力を破壊し蹂躙する為に五人だけで攻撃を仕掛けていったのだった…………
とある日の昼過ぎ、時間的には昼の三時か四時くらいの時間だった。悠介は好きじゃない太陽な日の光をその体で浴びながらリアンと共に宿に戻る為に舗装されていない土の道をリアンと並んで歩いていた。上を向くのは目が痛くなるので、とても嫌だったので悠介は時々横に自分の双眸を向けてリアンの顔を見たり前を見て障害物に当たらない様にして歩いていた。
両手にはナイフではなく、魔物から剥ぎ取った毛皮、爪や牙、その他素材が抱えられている。一部の素材はクエストの為に殺害した魔物からの採集、その他余分に取れた素材は適当な所に売りに出す予定だ。売りに出した時に貰える金とクエストクリアした時の金で悠介達はいつも通り酒場に行く予定だ。昼飯は既に済ませてあるので、問題はない。
「本日の利益も上々と言った所だな、リア」
「うん!悠介のお陰だよぉ!早くギルド会館に言って精算しよう!」
ニコニコとした微笑ましい表情でリアンは悠介にそう言った。リアンは基本的に嬉しげな表情を見せているがこうやってクエストをクリアした時や美味しい物を食べている時などはいつも以上に嬉しそうにニコニコと微笑む表情を見せていた。
――――悠介のお陰、そんな事を言われてしまい悠介は少し照れた感じの表情になってしまう。前髪が長くて自分の両目があまり見えてなくともだ。(見えないって言うけど、実際は整えれば普通に見える)
まず自分のお陰だなんて基本言われた事はない。それに頼られた事も前の世界にいた時は自分の姉ぐらいにしか頼られた事がなかった。逆にそれ以外の事例は殆どない。基本的に影に身を落としている様な人間だったので誰にも気付かれない事が多い自分は周りの人間からは頼られたり助けを求められたり、まずもって話す様な事も一切なかったのだ。
しかし今は全く持って違った。今は美しく影と変わらない様な自分とは全く異なる、まるで光の様で見た者全てを虜にしてしまいそうな女性である”リアン・ジュール”と影の化身の様な暗殺者であり無常且つ暗い雰囲気を醸し出し続けている青年”裂罅悠介”は共に”DUO”を組んでいたのだ。言っておくが無理矢理でもないし、誰かの指示で組んでいる訳ではない。悠介から頼んだ訳でもなく何と言う事なのかリアンから悠介にDUOになりたいと頼んできたのだ。
向こうから頼んできた事なんて初めてだった。悠介にとって二人一組とは死と同意義だった。まず組む相手を見つける事すら出来なかった。組もうにも誰も自分に気付いてくれないので二人一組なんて組む事以前に相手に声をかける事すら出来なかったのだ。最終的には組めていないと辛うじて気付いた先生と組まされるか、数が合わない時は無理矢理誰かと組まされる。そして最終的には皆から嫌な顔をさせる。この様に二人一組には苦い経験しかないので悠介にとって二人一組なんて事苦痛と迷惑しか生まない様な事だったので悠介にとっては死と同意義な事であり、さっさと消えて無くならねぇかなぁ?と思う事が何度もあったが今回悠介は二人一組と言う制度が消えて無くなくなっていない事に感謝してしまった。
何故なら今悠介は多分前の世界だったら知り合う事すら出来ないだろう美し過ぎる女性とDUOを組む事が出来ているからだ。
まず彼女”リアン・ジュール”と言う女性の美しさについて少しだけ話させてもらおう。
特徴その一
金髪です。黒髪じゃなくて金髪です。触り心地はサラサラとしていそう。因みにだが触った事はない。そしてちょっと癖毛があったりするのも特徴です。長さは腰まで届いてます。一言言わせてもらいます、綺麗です。
特徴その二
とにかく綺麗で美人さんです。目鼻立ちも非常に整っているし全体的に見ても綺麗過ぎます。まず肌も非常に艶やかで撫でたくなる程までに綺麗です。肌の露出度は結構多いですが、日焼けなどは全くしてません。産毛とかも一切生えてません。そしてなりよりも体の肉付きも非常に美しいです。胸の大きさも非常に大きく自分から見てもGもしくはHぐらいだと思います。彼女の着ている服は露出が多いので、谷間も余裕で見えてしまっています。大きいので少し走ったりする度に強く揺れます。しかも肩も少し凝る様です。でも決して挟まれたいとは思っていません。
お尻も非常に美しく胸と同様に小ぶりではないです。なのにお腹は非常に細くまるでモデル体型です。お腹は普通に露出しているのでその細いお腹も普通に目に入ってしまいます。因みにだが、食べる量は結構多めです。恐らくですが食べた時の栄養が胸とお尻にばっかりいっていると思っています。
とにかく体も顔も綺麗です。
特徴その三
職業は案外この世界では普通の「魔術士」です。服装も魔女の様に帽子を被り、露出度の多い服を着ています。胸なんか大きすぎて谷間も見えているし若干太めの太ももや脇やお腹、腕も足も余裕で見えています。素足も晒してしまっています。靴はちゃんと履いているからね?
普通に魔法を使いこなしています。オーソドックスに色々は属性を使えるだけではなく、回復も行えると言う器用っぷりを発揮しています。特にその中でも炎に関する魔法は個人的には一級品だと思っている。何故なら彼女は本来は主流の魔法ではある”火属性”の魔法を使うのではなく独自?に使っている”炎属性”と言う上位互換や改良型の様な魔法を使っています。彼女の炎魔法の威力は凄まじいです。間近で一度見た事がありますが、その威力は中々のモノでした。軽く魔物の群れその数四十を超えていましたが、塵一つ残す事なく周辺の土と草と共に全てを跡形もなく吹き飛ばしました。正直暗殺を基本とする自分に真似出来る気はしません。彼女だけの専売特許の様なモノです。
以上です。
自分の頭の中で悠介はかなりの量の考え事をしていた。リアンとの関係の事やこの先の事やまだ国からの脱走を行った自分に対して追っ手や刺客はまた差し向けられるのか?など悩みや考えが入り交じり続けていたのだ。そう色々な事を考えていると悠介の表情はどこか暗い感じになってしまう。基本的に悠介はいつも暗い感じの表情で無感情に等しい感じの表情をしていた。基本的にそんな表情だったがリアンは悠介のその暗い感じの表情を見ると、リアンは悠介の前に立ち悠介の歩く行動を妨害した。
「悠介?どうしたの?」
「リ………リア……」
リアンは上目遣いで悠介を見つめてくる。リアンは悠介よりも身長が少しだけ低いのでリアンは顔を動かさず、目だけを上に向けて悠介を見てきた。身長が悠介よりも少し低いリアンにとって上目遣いで悠介を見つめる事は簡単に行う事が出来た。
悠介は上目遣いでリアンに見つめられてしまい、道で足を止め彼女の顔と見つめ合った事により上から見えてしまう彼女の綺麗な胸元が目がいってしまう。しかしリアンは自分の豊満な胸元を見られているにも関わらず、そんな事は気にしない!と言わんばかりに悠介の顔を見つめてくる。悠介は目を逸らそうとするがリアンは悠介の両頬を自分の綺麗な両手で掴み、目を逸らせない様にしてきたのだ。つねってくる程ではなく手を添える様な形で彼の両頬を掴んできたのだ。
「目を逸らさない!何でそんな暗い顔してるの?」
リアンの怒っている表情もまた美しく見えてしまう。本当に怒ったムスッとした表情とはまた違う、怒った表情と右頬を膨らませた時の表情もより美しく見えてくる。悠介は目を逸らしたくなったが、リアンは悠介の両頬を手を添える様にして掴んでいるのでリアンから目を背ける事は出来なかった。悠介は少しだけ冷や汗をかきながらもリアンの綺麗で輝く様な双眸と目を合わせる。
暗い顔をしている理由?暗い顔は元からな気がするのだが今は、今後の事を考えている事のせいで更に暗い顔になってしまっていた。しかし今後の事を今、無闇に彼女に話すのは気が引けたので、取り敢えず今は食事代の事について悩んでいたと言う事にしておく。
「お前の飯代について考えてたの……だってリア、お前飯食う量多いからな…」
その言葉にリアンは頬を赤くしてしまう。まるで恥ずかしい話を他人に暴露されてしまった時の少女の様な表情だった。リアンは悠介から飯の食う量が多いと指摘されると頬を赤くするなり、すぐにリアンは悠介の両肩を掴むとブンブンと振ってきた。悠介は両肩を掴まれた挙句ブンブンと動かされてしまったので脳が揺れてしまう。悠介の方が身長も高く力もある、だがリアンは悠介の体をブンブンと動かしている。まるでリアンの方が筋力がある様だ。しかし筋力ではリアンの方が劣る。なのに何故リアンが悠介の体を簡単に動かす事が出来るのかだって?何故なら悠介は基本的に肩や体の力を抜いているので基本的、戦闘時以外は気の抜けていてやる気のない様な人間なので、今も先程説明した様に気が抜けていて、力も入れていない様な感じになっているのだ。そのせいでリアンにも簡単に体を動かされてしまっていたのだ。
正直脳が揺れる事以外は問題ない。
「そ、それが………暗い顔してた理由…………?」
「そうですよ………前々から思ってたんだけど、飯食う量多くて出費嵩むんだよ。そんなに胸と尻がデカいのも食った時の栄養が殆どそっちに………」
更に悠介は何か言おうとしたのだが、悠介の言葉を揉み消す形でリアンは声を張り上げ悠介に話しかけてきた。そしてリアンは拳を握ると悠介の硬く少し鍛えられた胸をポカポカと両手でモグラ叩きをする様にして叩き始めた。勿論だが痛くはない。リアンだって本気でポカポカ叩いている訳ではない。恐らく多少は悠介の事を想って、手加減をしているだろう。
「だってぇぇぇぇ!戦ったり魔法使ったらお腹空くんだもぉん!仕方ないでしょ!?」
リアンはそう叫んで上目遣いのまま困った様な表情、うるうるとした表情で悠介を見つめてきたのだ。どうや戦ったり魔法を使えばお腹が空くと言うのだ。そのせいで食べる量が増えてしまうとリアンは悠介に言った。腹が減っては戦ができぬとも言うが、リアンは結構食べる方だと悠介は思っている。既に付き合いの時間は数週間程過ぎているが、今までリアンを見てきた中で悠介はリアンの事をそれなりに知っている。
晩御飯食べる量は中々だと思っている。この前もクエスト帰りに酒場に寄った時もリアンは骨付き肉三つや具沢山のスープや野菜のサラダなどを余裕で平らげていたし、平気な顔で葡萄酒を飲み干していた。それに変わって悠介は水と普通にパンを二つとリアンがくれた骨付き肉一つを食べただけだった。味の方は素晴らしく舌を強く踊らせる様な味だったのでよかったが、悠介はリアンと違って少食なので正直この量でもそこそこキツかった気がする。
体を動かして腹が減るのは仕方ない事だ。まぁ悩んでいる理由は別にもあるのだが今回は飯代で困っていると言う事にしておく。そしてリアンの叫びに近い言葉に悠介は冷静な口調でリアンに話しかけた。表情もいつもと比べれば穏やかな方だった。
「分かった、分かったよ……今日の晩飯の金は素材を換金した分とクエストクリアの報酬分で何とか賄うからさ、遠慮なく食えよ………腹減ってたら動けねぇだろ?」
悠介は最初こそ冷静な口調で話していたが途中からむず痒いと言うかこんな優しい様な?言葉をリアンにかけて恥ずかしい様な気持ちになってきてしまった。元々女の子に優しい言葉なんてかけたが事ないので、恋愛未経験者の様に悠介はどの様な言葉をかければ良いかもイマイチ良く分からなくなり、若干奥手気味になってしまっていた。しかし晩飯の金は賄うと悠介がリアンに言った瞬間、リアンは嬉しそうな表情を浮べその場で嬉しさの表情と共に飛び上がった。しかしジャンプしたリアンから悠介は目を逸らしてしまう。彼女の胸の大きさは大きいと言うよりはデカいと言った方が合っていると思う。跳ねれば大きく揺れるので悠介は自然と目がそっちにいきそうになったので見たいと言う気持ちを抑えて目を逸らしてしまっていた。
しかしリアンはそんな悠介を気にする事なく嬉しそうな表情を浮かべ続け、兎の様にピョンピョンと飛び跳ねていた。無邪気で美しい。まだ世の邪悪に気付いていない初々しく穢れのない娘の様だった。
「じゃ、早くギルド会館行って換金してご飯食べにいこ!…………あっそうだ」
リアンは突然何かに気付いた様な表情を浮かべた。悠介は不思議がる様な素振りは見せずに、普通にどうした?と聞いた。
「宿代節約の為に今日は一部屋だけ借りる事にするよぉ!」
その言葉を最後にリアンは悠介をその場に置いて、ギルド会館が建てられている場所に向かって走り去って行ってしまった。しかし悠介はリアンの一言に身震いと強い動揺が発生してしまった。
―――――えっ!?今一部屋だけって言った!?
悠介は思った。これってリアンと同じ部屋に泊まれるんじゃね?と悠介は思った。よくよく考えてみるといつも宿に泊まる時は自分の部屋とリアンの部屋を別々で取っているし勿論だが同じ部屋などではないし、いつも二部屋借りている。
だがリアンはさっきニコッとした表情で一部屋だけ借りると言った。この言葉が指す意味、それはリアンと悠介は今日の夜同じ部屋で寝れるのではないか?と言う事だ。
え、これ本当なら重大と言うレベルを超えて千載一遇レベルのイベントではないだろうか?だってリアンの言葉をそのまま解釈すれば、女の子と同じ部屋に泊まると言うのだ。しかも金髪で胸がデカくて美人な女の子とだ。彼女の言葉の意味を履き違えない限りは今の解釈で間違ってはいない。
もしかしたら悠介は馬小屋でとか外に放り出すと言う意味があって言ったかもしれないが、悠介は例として上げた二つの例の事を全く考えてはいなかった。悠介の心臓の鼓動が増す様にして速くなっていく。
(は?女の子と……添い寝だと!?いやいや無理無理!添い寝なんて姉ちゃんとしかした事ねぇのに!これは一体どうすればいいん………って置いてかれてんじゃん!)
一度じっくりと彼女の言葉の意味について考えてみたかったがリアンに置いてかれそうになったので、一度悠介は思考を捨てて小走りで彼女の背中を追いかけた。彼女が走っていく先は言わずもがなギルド会館だ。ここでクエストの時に手に入った素材の換金やクエストクリアの報酬などを受け取る事が出来る。息を荒くしながらもギルド会館の前まで走るとリアンがギルド会館の前で待機していてくれた。
ギルド会館の前に着くなり、もぅ遅いよぉ~とリアンに美しながらも少しだけ不満そうな表情で言われたが悠介は、ごめん、ごめんと謝り彼女の頭に右手を置いてポンポンと軽く叩いた。
悠介の行動にリアンは少しだけ頬を赤らめるとニコッと笑ってくれた。
そしてリアンは悠介に、入ろうと悠介に背を向けるなり、首を横に捻って言った。悠介はリアンはギルド会館の綺麗に整えられたギルド会館の木の扉を前に押して中に入った。
二人はギルド会館の中に入るなりすぐにカウンターの方に向かった。そこの受付の人にクエストクリアの事を報告したり、素材の査定をしてもらう人を連れてきてもらったりする。今までも何度もやってきたのでもう慣れてしまった。
勇者とか呼ばれてた時はそんな事しなくとも勝手に金が入ってきていたのでそれも悪くはないのだが、裏事情を知った途端に身の危険を感じ、逃げ出した。それが真実だ。
二人はカウンターに近付き、受付で立っている禿頭の男性に話しかけた。
「おぉ、戻ったか!悠介君、リアンちゃん」
この受付の男性とはもう顔馴染みの様な感じの関係だ。DUOを組んでからは幾度となく高難度のクエスト(毎回と言う訳ではない)に挑戦しては涼し気な顔をして戻ってくる。そんな事を二週間も殆ど毎日の様に繰り返していたのですっかりギルド会館の受付の男性とは仲良くなってしまっていたのだ。リアンについては前から仲が良かったらしい。と言うよりもリアンはこの街ではトップクラスに人気のある女性で元から街の人達から尊敬され愛されている様な存在なのでゼロからの関係と言う訳ではなかったらしい。
「いえ、帰路何もなく幸いでありました」
目上の人には敬語を使うよう母親に教えられた。使い方が間違っていたとしても荒い言葉使いをしない様に悠介は心がけていた。
「はい、おじさん。お願いします!」
リアンは手馴れた手つきでクエストクリアの為の素材や査定してもらう為の素材をカウンターの上に全て置いた。悠介も便乗する様にカウンターの上に素材等を全て置いた。リアンと悠介を見て、禿頭の男性はニコニコしながら微笑んだ。
「よし、いつも通りクエストクリアの報酬と査定の方だね。少し待っててくれよ」
そう言って禿頭の男性は一時的にその場を離れて奥の方へと言ってしまった。その後二人は暫くその場で待つ事にした。軽く雑談を挟みながらだ。
そして一分も経たない内に二人は男性から布の袋に詰められたGを手渡された。リアンはGの入った袋を受け取るなり喜ぶ子供の様に喜ぶ素振りを見せた。
「やったぁぁ!これで美味しいご飯が食べられる!」
リアンが一人で嬉しそうに盛り上がっている中、悠介は受付の男性にいつも行っていた報告を行った。
その報告は魔物の数などについてだ。多すぎた時などに報告している。今日はいつもよりも魔物の数が多めだった気がするので、悠介は一応報告しておく事にした。報告する理由は、まだ見習い程度の冒険者への注意喚起の為だ。もし魔物が大量発生している中に初心者の冒険者を行かせるのは自殺行為に等しいのでそう言った事が起こらない様にする為にもの報告だった。悠介やリアンの様な実力を持った冒険者は奥地の方へと進んでいける。なので悠介はここのギルド会館の受付の男性に個人的にこの仕事を頼まれているのでこの報告の仕事をやっていた。
「魔物の数の方は少しだけ多かったです。気を付けてください」
「そうか、分かった。また皆に伝えておく……まぁこの街に入ってしまえば魔物も手は出せんよ」
「ふっ……もうその言葉、聞いて呆れますね……」
悠介は一度軽く口元で笑いを浮かべると悠介もその場を立ち去ろうとした。どうせこの後はリアンと食事をする事になっているだろうし、その後は宿に行く事になる。もしかしたら相部屋?と言う可能性もあるので悠介は僅かながらも気分が高ぶった。正直相部屋になるの言う事が確定したと言う訳ではないのだが、悠介は経験した事がないイベントが発生しそうになっているので悠介は気分が高まると同時にまだ女性関係に未熟な男して普通な事なのかもしれないが、下の方も高まってきてしまっていた。
「悠介!早くご飯食べに行こ!」
「あぁ、今行くからちょっとま………」
次の瞬間だった。悠介が先に行こうとするリアンに追い付こうとした時だった。
刹那、突然耳を強く刺激する爆発音が悠介達の耳を強く刺激した。しかも爆発音だけではなく、地面の軽く揺らす程度で最初は地震でも起こったのか?と錯覚する程だった。悠介は突然の事に驚いてしまい、耳を塞いでその場に肩膝立ちで座り込んでしまった。
リアンも悠介突然の事に驚きの表情を見せ、地面に太ももを晒しながら座り込んでしまう。突然の事に周囲で話していたりしていた人達も悠介やリアンと同じ様に驚く様な表情を見せ地面に座り込んでしまう。その場にいた殆どの人がそうだった。しかし少しだけ時間が流れると揺れと爆発音の様な音は収まった。のだがまるで持続する様にして爆発音が収まって五秒もすると再び爆発音が悠介達の耳を刺激し周囲に恐怖と怖気を伝播させてゆく。そのせいで悠介はまだ耳を塞いだまま立ち上がれずにいた。
しかしそんな中でも悠介は無理矢理体に鞭打って、その場に立ち上がりリアンの傍に近付いていく。リアンは突然過ぎた出来事に半場腰を抜かしかけていたが悠介が近くに来てくれたお陰で、リアンは悠介に手を伸ばした。
「ゆ、悠介ぇ?にゃにが起こったのぉ?」
半分気の抜けた様な声になりながら、目に僅かながらも恐怖したせいなのか涙を浮かべているリアンが悠介に助けを求めた。悠介は苦い表情を浮かべるも身震い一つする事もなく、リアンの近くに近寄るとすぐに悠介は彼女の細く色白い綺麗な手を握る。そしてそのまま彼女が立てる様に彼女の姿勢を支え立つ様に促した。
「俺にも分からん!とにかく脱出するぞ!」
立つように彼女に言う間も絶える事なく爆発音が悠介達の耳を刺激する。悠介の周りの人達は頭を両手で抑えたり、置いてあったテーブルの下などに隠れていた。
本来なら悠介達もここで机の下に隠れるなどの行動を取ってこの爆発音と若干強の揺れが収まるまで待機していた方が良いのかもしれないのだが、もし建物が崩れてしまい、この建物の下敷きになってしまえば怪我では済まないと思った悠介は多少無理をしながらも彼女に肩を貸して外へと向かおうとした。リアンも悠介の肩を素直に借り、扉の外に行こうとする。
(ったく、何だこの爆発音と揺れは?………まさかダイナマイトかC4爆弾でも使われたのか!?くっ、とにかく状況を確認しないと何も言えない!)
悠介は突然の事態に焦ってしまい、苦虫を噛み潰した様な苦い表情を浮かべる。状況を確認出来ないまま慌てふためくのはパニックに陥りやすいし、なりより急な戦闘に対応出来ない事になってしまう。賊が集団で襲ってきた可能性や大型の魔物が襲撃を行ってきた可能性もあると踏んだ悠介は自分達が入っていた建物から急いで出る事にした。
扉すら悠長に手で開けている暇がないと思い、不用意ながらも、緊急時だ!と思い悠介は右足に力を込めると思っきり木で作られた扉を蹴破った。
そのまま悠介達は建物から外へと出る。受付の男性は悠介達に対して何か言っていたが、悠介の耳にその言葉が入る事はなく聞き流すと言うよりかは耳に男性の言葉は一切入ってなかった。
外では既に焦ってしまっている人達が道を錯乱した様な様子で走ってしまっていたり、爆発音が起きた方向へと走っていく自分達と同じ冒険者やこの街を警備する兵士達が逃げ惑う住民を押し退けて走っていった。
悠介はこの状況を見て、苦い表情を浮かべてしまう。苦し紛れに悠介は他に通れそうな道を探す為、周囲を確認する為に首を横に振った。
抜け道や細い路地の様な道は幾つか存在している。狙うならそこだと悠介は思った。
「リア、走れる?俺は爆発音がした方向に向かう」
悠介は爆発音がした方向へと向かうと苦い表情から険しい表情に変えてリアンに告げた。現在周囲の人間達は混乱に陥りかけている。対応に当たっている冒険者や警備兵も少なくはないだろうが、これ程の規模の爆発や揺れを起こせる相手なんてただの賊数人や数単位の魔物が引き起こしたとは考えにくい。
恐らくだが普通の敵ではないと言う事だけは悠介には分かった。
――――とにかく急ごう!
そう自分に言い聞かせると悠介は走り出そうとする。しかしリアンはどうするのだろうか。着いてくるのか何処かに隠れてもらうか。悠介的には隠れていると思った。
しかしリアンは悠介の着ていた黒衣の一部を掴み、目に溜めていた涙を自分の綺麗な左腕で全て拭き取るといつもの優しい表情ではなく強い表情を見せ、唇を噛み締めて、悠介に告げる。
「私も行く!悠介一人でなんて危ないよ!」
リアンは恐怖心を隠して悠介にそう告げる。着いてくると言うのなら悠介は止める事はなかった。悠介は他人の決めた選択を取り消す様な発言はしない様な人間だ。
そして悠介はリアンに肩を貸すのをやめる。しかし今度はリアンは彼の左手を自分の右手で握り絶対に離そうとしなかった。リアンは右手に自分の使っている先に魔力石が込められた杖を握っている。さっきまでは左手に持っていたが、彼女は彼と手を握る為に杖を持つ手を変えたのだった。
また、突然手を握られてしまい悠介はこの土壇場の様な状況でも頬を赤くするが、リアンは悠介に恥らしい表情を見せ、頬を赤らめながら言った。
「は、はぐれない様にする為だからね……?」
「り、了解……」
そして悠介とリアンは互いに手を繋ぎ合ったまま逃げ惑い、慌てふためく人達がごった返す道を走っていく。悠介は彼女と繋ぐ手を絶対に離さなかった。離さない様にする為に握る力を少しだけ強くする。強くしすぎて骨を折らない程度にだが、取り敢えず離れ離れにならない程度に彼女の手を握ってあげたのだった。
(スキル……「殺眼」発動………)
悠介の目に強い殺気が宿った。それと同時に彼の両目はまるで充血した目の様に真っ赤に染まる。実際は充血している訳ではないが、彼の目からは強すぎる殺気が放たれていた。
『殺眼』
・発動時、擬似的に目から殺気を放つ様になる。見た相手を恐怖に貶める事が出来る。精神攻撃又は撤退用もしくは相手へ恐怖を与える際に使う事が有効。魔力消費なし。
新章「LORD OF ASTRAY」はまだまだ続きます!




