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エピローグ「出発、そして贈り物?」

 

 ―――――はっ!?僕は一体何を!?

 作者の名前(名前って言っても「作者」が名前です)を叫んで、彼を呼び出したのは間違いだとヴォラクは思った。作者を呼び出してしまったせいで知りたくもない真実を知る羽目になってしまった。何と言う事だろうか……酷すぎる。一応、主人公と言う身でありながら、次の章は僕は主人公でもなく、脇役キャラとかモブキャラと言うポジションどころか、もはや一切登場すらしないと言われてしまったのだ。

 何でだよ、確かにクズキャラで王道主人公らしからぬ行動や言動が目立ったり、人を殺す事で性的な興奮を得ていると言う事は認めるけどよ、一応僕は作者によって「主人公」と言う立ち位置に立つ事を許された存在なのだよ。いくら敵キャラに立ちそうなキャラでも主人公なもんは主人公なんだよ!作者の事は好きじゃないんで、今は作者に抗議させてもらいたいよ!


 その主人公と言う身でありながらヴォラクは、次の章では一切登場はせず逆に次の章では、今まではクラスメイトの一人であり、影薄いキャラの代表格で、偶然王国の闇に気が付いて脱走を行い二人の人間を殺めた結果、金髪ロングヘアで豊満な胸を持っている(恐らくだがF余裕で超えてた気がする)今まで会ってきた女性の中でトップクラスの美人と仲良くしている暗殺者の青年である「裂罅悠介」が主人公を務めると言うのだ。お前が主人公を務めるのは番外編だけでいいんだよ!何で普通に主人公になってるんだよ!僕の主人公ポジション取るなよ!主役交代なんてロボットのヤツだけで十分なんだよ!

 酷いでさぁ!………

 ―――――全く復讐どころか、これじゃまるで僕が厄介払いされたみたいじゃないか……

 だが、作者の取り決めと言う事以上、その選択を捻じ曲げる事は出来ない。作者の選択は絶対であり、所詮は作者によってその存在を生み出されたヴォラク達は作者の選択に歯向かう事は不可能だった。まず歯向かおうもんなら、あっさりとスルーかシカトされるか、運が悪ければ設定変更を喰らってそのまま死ぬとか行方不明にさせれて、物語から容赦なく退場させられる可能性だってある。作者の取り決めと言う事もあってヴォラクは素直に従うしかなかった。しかし何故自分ではなく悠介なのか?と言う疑問は消えずに残っていたが、どうせ作者の気まぐれか何かだと感じたヴォラクは疑問を渋々消す事にした。一時的に主人公の席を悠介に譲るのは疑問と怒りに包まれそうになるが、仕方ないと割り切った方が手っ取り早く、気も楽になると思ったヴォラクは素直に主人公の席を譲る事にした。だが、出番がない間はどうしようか?適当にぶらりとサテラ達と世界を放浪する事にしようかな?復讐をしたくとも、作者がヴォラクの復讐シナリオを考えない限りは復讐を出来ないので、作者がシナリオを考えるまでは待つ事しか出来なかったのだ。

 取り敢えずの予定としては、適当に皆六人で各地を放浪しながら、適当に五人でクエストとかこなして金稼ぐ事にするか。決してヴォラク達は弱い訳でもないので普通に高難易度クエストクリア出来そうだし、大丈夫だろ?

 レイアやアナさんと他愛のない話をしたりして、夜は姉さんと酒場で飲むのも悪くないかもしれない。そんでもってベットの上でサテラとシズハの三人で楽しむ事にする。そんな感じの復讐なんて関係のない、いつも通りでハーレムライフを送る日常も悪くはないかもしれない。悠介が主人公ポジションに立って活躍している間は、そんな感じの日々を送るのも悪くはない。――――暫く主人公の席を譲るか……

 ヴォラクはさっきまでは口を尖らせて、悠介に主人公の席を譲る事を拒む様な発言をしていたが、良くよく考えてみれば悠介が主人公を務めている間は、ヴォラクは少しは楽して、美人な女の子達と楽しい日常を過ごす事が出来るとヴォラクは考えた。簡単に言えば、主人公っぽく立ち振る舞う必要性がなくなると言う訳だ。ヴォラクが主人公っぽい立ち振る舞いが出来ているのかどうかは謎だが、一応ヴォラクは主人公なので出来ていると言う事にしておく。もし出来てなくとも出来ている事にしておくからね。

 話を戻すが、主人公と言うポジションを譲れば、暫くは規模が大きい戦いに巻き込まれる必要もなく、毎日適当にクエストやって金稼いで飯食って、美しい女の子を愛して寝ると言う日々を送れるとヴォラクは思ったので、彼は主人公のポジションを譲る事に異論を唱えなくなったのだ。

 ――――――作者に作られた身で尚且つ主人公と言う立場に立たされている身で言うのもあれだが、僕は主人公と言うポジションに立つのは好きじゃないし、そもそもそんな目立つ様なキャラにはなりたくないんだよ。どうせならモブキャラでいいんだよ、モブで。主人公望んでるか?と聞かれたら、あんま望んでいないと僕は答えるよ?だって目立つのは好きじゃないから。


 と言う訳だ、主人公を悠介に譲る事にするよ。ほんじゃ後は悠介よろしくね。僕は適当にエピローグ終わらせて休憩に入る事にするよ。


「ほんじゃ悠介、後頼んだわ。金髪美女の魔法使いと仲良くね」


「言い方はかなりのレベルを超えて酷いが、一応任されたぞ、凱亜。こっちのシナリオは既に作者から伝えられている。この会話が終われば、俺達の記憶は吹き飛ばされるが、一応言っておく事がある」


 虚無と言う何も無く、何も存在しない世界と言う空間の中で凱亜と悠介はその姿を完全に消す事はなく、物語の時とは違う姿を空間に残存させる形でいつもの物語の「キャラクター」と言うポジションを忘れて、裏の真実を知る人間の様な口調で話し始めた。


「一応?そんな事言う前に少しは話そうぜ?今僕達は「悪の銃使い」と言う世界からは隔離されている。つまりここは作者によって設けられた別の空間、誰にもこの会話は傍受される事はないよ。少しは裏話をしたって怒られないと思うよ?」


「ったく、一旦抜け出した事をいい事に……だけど俺の仲間とお前の女に聞かれてないとは言っても、読者の皆様はこの会話を見ているんだろ?大丈夫なのか?」


「作者でもない限り物語への介入又は改変は不可能に等しい。心配しなくとも大丈夫だ」


 凱亜と悠介は今、自らが立つポジションと言うモノを完全に忘れて話している。登場人物としてでもなく、作者によって急遽(きゅうきょ)生み出された存在でもなく、一時的に隔離された空間の中で、今だけ保有され、この空間から抜け出せばいつもの登場キャラクターに戻ると言うのに、二人は今だけの記憶を持って面と向かって悠介と話していたのだった。


 すると悠介は凱亜にとっては興味深い話を始めた。ヴォラクは椅子に足を組みながら座り、いつも通り無感情な表情で悠介の話を聞き始める。口元にあの時のお客と同様にニヤリと笑いを浮かべた。悠介からすればいつも通りの凱亜だと思った。学校に居た時の凱亜の笑いなんてあんな感じだ。何度か見た事がある。


 不良を半場殴り殺す形でボコボコにしていた時や多目的トイレの便器の水に女の顔を無理矢理突っ込ませていたりしていた時や新聞部のカメラを粉々に踏み潰した時はあんな感じの狂気の目にあのニヤリとした笑いを浮かべていた事を悠介は知っていた。何故なら悠介は凱亜の親友に近い立ち位置に立っていた人間だ。影が薄い事を理由に、自らが遠くから眺めている傍観者となる事が多い悠介だったが時にはあの狂気じみた凱亜に加わる事もしていた。勿論互いに影が薄いので気付かれる事もあんまりないし、万が一気付かれても互いに被害者面をしていたので悪い事はなかった。


「まぁ、次の章は俺が主人公を務める訳だが、言わせてもらうと…………俺はハーレムしないから」


「知ってた。だってハーレムとか絶対に作れなさそうだもんww、て言うか出来ても純愛が限界だろ?一人の女の子しか愛せなさそうじゃん?シスコンさんよ」


 ――――お前に言われたくねぇよww

 悠介はそう言ってやりたかった。確かに悠介にも姉が一人だけいるし、唯一の家族だった。確かにシスコンと言われる事も多々あったが、凱亜にだけはシスコンと言われたくはなかった。

 何故なら凱亜には姉二人に妹二人と言う家族構成なので、そんな奴にシスコンだなんて言われたくはなかった。特に凱亜は周囲が認める程の強すぎるシスコンであり、特に凱亜は姉に対する愛(悠介からは執着心が強い様にも見えていた)は普通の恋人のレベルを超越するレベルの強さだった事を悠介は知っている。何度か家を訪れた時も凱亜は基本的に姉と一緒にいた。凱亜とゲームしてる時も姉が近くに座っているしでよく凱亜ほシスコンっぷりを見る事が出来た。

 第三者と言う立場なので、深い所までは詳しくは知らないが、凱亜は恐らく重度のシスコンだ。絶対にそうだと分かる。だって俺も同じ様な感じだもの。似てるものを感じたので悠介には凱亜が重度のシスコンだと言う事が理解出来た。


「てめぇには言われたかねぇよ。このシスコン野郎が」


「お互い様って事か………で?ハーレムをしないならお前は一体作者にどんなシナリオを見せられたんだ?」


 その言葉に悠介は長すぎて目を余裕で隠し、その表情をブロックしている前髪を右手を使ってかき上げるとその目付きを現した。凱亜に似ているかと聞かれれば似ていないが、どこか似ていると感じるのは何故だろうか。


「ちょっと楽しい一幕を見たさ、まぁお前は遠くから見てな。少しは楽しめる景色が見えるぞ」


 そう言って悠介は髪をかき上げたままヴォラクの近くに椅子を動かした。二人が座る椅子は下に車の車輪の様な物が付いている為、悠介は椅子に座ったまま車椅子を動かす感覚で凱亜に近付く。顔は密着する程まで近くには来なかったが、凱亜はまるでBL漫画のワンシーンを見ている様な気分になってしまった。読んだ事あるけど、本当にBL漫画のワンシーンみたいだな。まぁ今は気にしないけど。


「ふ……ならその景色、しかと僕に目に届けてくれよ」


 その言葉を最後にヴォラクは椅子から立ち上がる。しかし立ち上がるなり腰に装備していた自作のホルスターからツェアシュテールングを取り出すとその銃口の先を悠介に向けた。銃口を向けるだけではなく、その右手の人差し指はツェアシュテールング引き金にかかっている。発砲をするとまではいなかったが、撃とうと思えば、撃つ事は簡単に出来た。


「ここで殺す事が出来るとでも?」


「所詮は借り物みたいなもんだ。ここで殺しても意味はない。だが、僕の気まぐれだと思ってくれ」


 ヴォラクは仮面を付ける事なく椅子から立ち上がり、殺気を帯びた目で上からの目線で悠介を見つめる。悠介はまだ椅子に座っている。そして怯えたり体を恐怖で震わせる様な事もしなかった。逆に悠介は一度ニヤリと口元に笑いを浮かべると、立ち上がり愛用している武器であるタクティカルナイフを取り出した。そのナイフの刃の先はヴォラクに向けられる。しかしヴォラクも悠介同様にナイフの尖端を向けられようが、怯んだり恐怖する様子は見せなかった。互いに銃口とナイフの尖端を向けると言う狂人の様な景色が空間の中に作られる。

 しかしヴォラクは銃を悠介に向けて発砲する事も悠介は右手に握られたナイフでヴォラクの内蔵を抉る事もなかった。そのままの姿勢で互いに静止状態を取り、まじまじと二人は見つめ合った。


「おいおい、主人公を殺す気か?」


「まさか、作者がこんなシナリオを作り出す訳がない。ちょっとした脅し?みたいなもんだよ」


 そう言って二人は僅かにだけ笑いを浮かべる。笑いとは言っても、薄ら笑いと変わらない様な気味の悪い笑いだった。その間二人は狂気と殺気が交じり合った目で見つめ合っていた。

 そして十程の時間が流れると、ヴォラクは右手に握っていたツェアシュテールングを腰のホルスターの中に戻し、悠介は持っていたタクティカルナイフをヴォラクと同じく腰に装備している保護兼納刀様のナイフシースにナイフをしまうと、ヴォラクと悠介は互いに背を向けて歩き出した。もう話す事はないと感じたのか、椅子その物を消し去り、歩き出していく。二人が歩いていくと互いの姿は空間の中に存在する暗闇に飲まれる様にして徐々に見えなくなっていく。

 ヴォラクは黒色のロングコートとズボンを着ているし、悠介に至っては靴を除く足首から口元まで体全てを覆い隠す暗闇と同じ色をしている黒衣を纏っていたので闇に同化すれば、その姿が見える事は一切なかった。現にヴォラクは後ろを振り向いて悠介の姿を確認する事はなかったが、もし後ろを振り向いたとしてもヴォラクは悠介の姿を捉える事は出来なかっただろう。

 あの黒衣の暗殺者は闇に紛れて消えていく。もしあの暗殺者と敵対していたら、暗闇の中で接近されて首元をかっ斬られてしまっていただろう。まだクラスメイト兼親友でいて良かったとヴォラクは思った。流石にヴォラクも素は人間なので、暗闇の中で夜目が効く程目は良くないのでこの暗闇の中での奇襲攻撃は慣れない限りは対応する事が難しい。本当に敵対していなかった事にヴォラクは安堵する。

 もしここで二人が殺し合いに発展すればヴォラク自身に勝ち目は薄く、悠介の方に利があったとヴォラクは思った。暗闇と言う悠介が殆ど見えない空間で尚且つヴォラクの武器は悠介と違ってマグナムタイプの銃二丁とビールサーベル、それに対して悠介は近接戦闘用のナイフと自身が保有する魔力と影属性の魔法を使った能力だ。

 普通に見ればヴォラクは遠距離からの高威力射撃武器を装備しているし、魔力を原動力にしているビールサーベルを装備していて、武器がナイフ一本の悠介に比べれば武器の強さで見ればヴォラクの方が高いかもしれない。だが、今回の戦場は暗闇が蔓延り周囲の確認が非常に困難な空間だ。この暗すぎる空間では銃の照準を合わせるのは困難だ。いくら銃が強く、一撃で重傷を負わせる事が出来ると言っても、当たらなければ意味がないのでこの暗闇の中ではヴォラクは悠介の姿を捉える事が出来ず、無闇矢鱈(むやみやたら)に銃を乱射する事になるだろう。そして結局闇の中に潜む悠介には銃弾は当たらず、悠介に簡単に背後に回られてナイフで首を斬られて死ぬのがオチだろう。ビールサーベルだってリーチはあるが、ナイフ持ちを相手にした時、もしも懐に潜られてしまえば、ビールサーベルよりもナイフの方が圧倒的に殺傷力が高く、確実に相手を殺せる。ビールサーベルと銃も使い用途を間違えれば、他の武器に劣る事があるのだ。

 なので、この暗闇の中ではヴォラクではなく悠介に利があると思ったのだ。もう一度言わせてもらうが、悠介と敵対していないて本当に良かったと何度も思った。いくら仮の空間の中での話とは言っても、まだ死を経験するのは嫌なのでヴォラクは振り返らず、何も気にしていない様な素振りを見せながら、この空間から去って行った。悠介もヴォラクの方を振り返る事はなく、暗闇に紛れながら互いに元の空間へと戻っていってしまった…………


























 ――――あれ?今の今まで何を?

 何を考えていたのだろうか。何も思い付かない。確か帰路に着く途中だったかな?普通に横には姉さんとレイが美しい表情を浮かべながら、自分を挟む様にして立ってるし、自分だって少しの間ぼんやりとぼぉ―――っとしていたが別に体に害があった訳ではなかった。


「おい、ヴォラク?どした、何か目が死んでるぞ?」


「死んでるのは元からだ」


「でも、何か考えて事してた?凄く考え事してそうな顔してたぞ?」


 確かに何か考え事をしていたかもしれないし、誰かと話していたかもしれない。だがヴォラクは何も覚えていなかった。少し前までの記憶と言う名の記憶は全てが削除された様にして消され、思い出そうにも思い出す事が出来なかったのだ。さっきまで歩いていた時の記憶は全くなく、帰路に着く為に歩き出した時からの記憶がなく、ヴォラクは必死になって何があったか思い出そうとしてみたのだがやっぱり思い出せなかった。

 レイアからは、考え事してたの?と聞かれたのでヴォラクはレイアの話に合わせる事にした。記憶が存在していない以上、考え事をしていたと言うしかなかった。


「あ、あぁ……少しだけね?」


「悩み事があるなら、私聞くよ?メンタルケアって結構重要なんだからね?」


「なんだぁ、悩み事か?そう言う事は、ちゃんと姉さんに相談しなきゃダメだぞぉ?弟の悩み聞く事だって姉としての役目なんだからなっ!」


「うぁ!?」


 次の瞬間、血雷とレイアはヴォラクの両腕を強く掴み、自分達の豊満な胸にヴォラクの両腕を押し付けた。血雷は右腕に、レイアは左腕にだった。勿論だが歩きながらだし、身構えていない状態且つ突然の事だった為、女性の裸体を見ても慣れ始めていたヴォラクでもあまり突然過ぎた事で頬を赤くしてしまった。胸に顔を埋める事ぐらい普通?だったのに腕を胸に押し付け?いや挟まれていると言った方が良いかもしれない。互いに肌の露出は結構多めの服を着ているので挟まれても怪しくはないと思っていたが、本当に挟まれてしまった。

 言っておくがとても温かいし、柔らかい。心地の良い事に間違いはないのだが何だろうか、この恥ずかしいと恥ずかしくないの狭間に立っている様な気分は……


「両腕をこのデカい胸で挟まれるとは想定外だよ」


「デカいって、お前らしい感想だな。ま、お前ってアタシらの胸よりも尻の方が好きだし当然か……じゃ、取り敢えずレイの尻で一言頼むわ」


「胸の事よりも、私のお尻の方が気になるとは……お尻好きだとは知ってたけどここまでとは……」


 血雷のストレート且つ正直過ぎる言葉にヴォラクは言葉を徐々に失いつつあった。だって女の子の口からそんな風に言葉がどんどんと飛び出してくるのたを、少しは動揺して言葉を失いそうになるのも無理ないだろ?確かに胸よりもお尻の方が好きな事は認めよう。現に言ってしまえば、レイアのお尻はヴォラクから見れば、美しいと言う言葉に限る程の美しさだったし、血雷だってレイアと変わらないレベルの美しさを持っていた。認めよう、美しいと。


 だが一言頼むと言われてもどう言えば良いのかヴォラクには分からなかった。一言って言っても何て言えば良いのか分からないし、もしストレート且つオブラートに包む事なくありのままの気持ちをそのまま言えば、あまりにも直球過ぎて血雷やレイアとは言っても引かれてしまうかもしれない。逆にオブラートに包んで控えめな感じで言えば、表現力が足りんとかもう少し詳しく……とか言われそうなのでオブラートに包んで尚且つ詳しく説明する必要があった。

 どうやって言うべきだろうか。保険かけるのも嫌なのでもうありのままで尚且つオブラートに包む感じで言わせてもらう事にしよう。


「言わせてもらう。僕はレイアの様な形も大きさも良い尻も好きだし、姉さんの様な大きさが少し大きく形が引き締まってる様なお尻も好きだ。勿論だが、サテラの様なちょっと小ぶりなお尻もシズハの様なまだ発展途上のお尻も好きだ。結論を言おう、皆の普通に好きです」


 引かれるかもね……って言うか仮にも主人公の奴がこんな自分の性癖暴露しちゃって大丈夫なのかな?一応主人公だぞ?主人公だよ?こんな風に性癖言いまくって主人公として大丈夫なのだろうか。ここは性癖暴露大会会場じゃねぇんだよ。


 しかし引かれると思っていたヴォラクだったが、以外にもレイアと血雷は引く様な様子を見せる事はなく、逆にレイアは頬を赤くしてしまい、男勝りな血雷も珍しく女の子っぽく照れて嬉しそうな表情をヴォラクに見せた。風呂上がりの血雷が見せていたいつもの束ねた髪ではなく、ヴォラクの前で初めて見せたロングヘアを褒めた時みたいな表情になっていた。


 血雷もレイアもカァァァァァと頬を赤らめていて、レイアなんてより一層、握る力を強くするし、血雷なんて男前美人な表情ではなく恥ずかしがっている乙女の様な表情を浮かべていた。何でお尻が好きですって言っただけでこんなにも頬を赤くしているのかは不明だったが、嬉しいのか恥ずかしいのだろう。そうでもなければこんな表情を浮かべる事はないだろう。特に血雷なんていつも美しく男前美人な表情を見せている美女だがヴォラクにあんな事を言われただけで告白された後の乙女の様な頬を赤くした表情を見せている。何でこんな表情浮かべちゃってるのかな?


「あ、あのぉ…僕何か変な事を言いましたか?」


 あまりにも予想外のレイア達の反応にヴォラクは敬語口調になってしまう。引かれたか?引かれたのか?


「い、いや…お前は何も変な事なんて言ってねぇよ」


「気持ちって正直に伝えるものだからな………」


 恥ずかしそうな表情を見せたと思ったら、一変して二人は顔を下に向け、自分達の表情がヴォラクに見えない様にした。

 もしかしたら今はヴォラクに見せられない様な表情を浮かべてしまっているのかもしれない。ヴォラクは間違いかもしれないが、そう自分で考えるとヴォラクは血雷やレイアとは逆の方向を向き、向こうから何か仕掛けてくるまでは振り向かない事にした。絶対に振り返る気にはならなかった。

 現にヴォラクには見えていないが、レイアと血雷は顔を寄せ合い、二人で何かを話し合っていた。勿論だが二人しか聞こえていないし、他の誰も知らない会話内容だ。作者ですらレイアと血雷の会話内容を把握出来てない。本当に二人しか知らない会話だったのだ。

 そしてヴォラクは血雷とレイアには背を向けて立ち、絶対に振り返らないと決めていたが、二十秒程の時間が流れるとレイアはヴォラクの左肩に血雷は右肩に手を置いた。手を置かれた事に気が付くと、ヴォラクはすぐさま、ではなくゆっくりと首を後ろに回し、それと同時に体も後ろに回す様にして動かした。

 後ろを振り返るとレイアと血雷が立っていたのだが、さっきまでの恥ずかしさを浮かべる表情は完全に消えており、レイアはいつも通りの明るく美しい表情が戻っていた。その双眸も綺麗に輝いており、見た者を虜にしてしまいそうな程までに美しかった。そしていつも通りの表情が戻ると同時に彼女の白銀の髪も風によって僅かに揺れた。

 血雷もレイアと同様にいつも通りの強気な感じで男前美人な表情をヴォラクに見せていた。血の様に赤く後ろに束ねられた髪はレイアと同様にひゅるりと翻す様にして揺れ、その美しさはより一層強くなる。すぐにヴォラクと血雷は目が合うが、血雷は目が合うなり少しだけ口元に笑いを見せた。それに対してヴォラクは何故かさっきの二人の様に恥ずかしそうで照れてしまった様な表情を見せてしまっていた。

 しかし二人はそんなヴォラクを見るなり、今度は互いにその豊満な胸に腕を埋めさせるのではなく、普通に近付くと二人はヴォラクの両手を奪い手を繋いだのだ。

 しかも恋人繋ぎだし。


「帰るか、アイツらも待ってる」


「ね、姉さん…」


「行きたい所あるんでしょ?」


「レ、レイ……」


 ヴォラクは突然美女二人から同時に手を繋がれると言う状況に陥ってしまったのだ。さっきと比べればまだこっちの方がまだ違和感はない。何故なら姉や妹と何度手を繋いだか分からない。そう考えれば、ヴォラクは多少の動揺以外は何も感じなかった。

 結局その後はレイアと血雷に両手を繋がれたまま帰路に着く事になった。手汗が流れる事はなかったが、ヴォラクの冷たい手には彼女達の温もりを感じる熱を持った手がヴォラクの手を握り続けていた。心も体も冷たいヴォラクとは違っていた。






















 そしてその後三人はこの1kmと言う距離を暫く歩き続けていた。ヴォラク達三人は歩幅が結構大股で歩くのに時間はそんなにかからなかったし、以外もヴォラクは案外1kmって結構短いものだと感じていた。血雷やレイアもあまり愚痴や弱音を零す様な事は言わなかったが、レイアは馬があれば移動しやすかった、と不満そうな表情を浮かべて歩きながら俯いていた。ヴォラクは慰めのつもりで彼女の肩に自分の手を静かに置く。そしてサテラ達の頭を撫でる時の様にして手を動かし、肩を撫でた。

 ヴォラクが彼女の肩を撫でればレイアは可愛らしい女性の様に嬉しそうな表情を浮かべニッコリと微笑んでくれた。ヴォラクは到底見せない様な美しく微笑む表情だった。


「馬なんて、また手に入れればいいだろ?」


「うん、そうだね」


 そしてヴォラクは肩に置いていた手をいつも通り、履いていた黒色のズボンのポケットに戻そうとしたのだがさっきまで手を繋いでいたと言う事もありレイアと再び手を繋ぐ事になってしまった。

 血雷に助けを求めようとしたのだが、彼女の横顔を見た時ヴォラクは助けを乞う事をやめた。血雷は今煙管を吸っている。

 一服中に邪魔するのはやめておこう。

 そう考えたヴォラクは煙管を吸い、口から煙を吐けば心地の良い表情を浮かべている血雷を邪魔する様な事はしなかった。

















「あっ……」


 思わずヴォラクの口から小さく言葉が飛び出した。しかしヴォラクは言葉が口から飛び出すと同時に嬉しさと少しの感動感が込み上げてきた。彼の視線の先にはテントを設置していた場所があった。そしてその先には三人の女性が立っていた。

 無論、ヴォラクは彼女達三人の事を知っている。

 ヴォラクは若干駆け足になりながら彼女達の元に駆け寄っていく。ヴォラクはまず目先に見える紫髪の女性と獣の様な耳と尻尾を生やした女性に近付くとヴォラクは彼女達の前に無言で立ちはだかった。表情は前髪が邪魔をして伺えず、笑っているのか泣いているかの判断は出来なかったが、ヴォラクは前髪を横にずらし自らの双眸を露にした。

 そして互いに静止状態且つ無言状態だったがヴォラクが先に口を動かし、言葉が飛び出した。


「戻ったぞ……サテラ、シズハ……………ただいま」


 それがヴォラクが二人に対して言った言葉だった。二人がその言葉を聞くなり、二人はすぐにヴォラクの体に抱き着き、強く密着する。二人がヴォラクを抱き締める力は女性なのに強く、振りほどく様な事はしないが、振りほどく事が難しいぐらいの強い力だったのだ。ヴォラクは素直に二人の行動を受け入れその細い自分の体で二人の事を彼女達と同様に抱き締めてあげたのだ。三人は強い密着状態になりヴォラクは抱き締めながら二人の頭を撫でる。自分の行いが二人を心配させた事はヴォラクは知っている。と言うよりも絶対に心配させてしまったとヴォラクは感じた。

 そうでも無ければこんな不安で悲しそうな表情を見せないだろう。

 きっと二人は強い不安と心配に苛まれていただろう。きっと主と恩人の帰りを待っていたのだろう。ヴォラクは誰にも言わず、一人で行こうとした事を後悔した。助けを素直に求めるべきだったと感じた。そうすれば彼女達にこんな悲壮感の漂う表情をさせなくて済んだはずだ。

 ―――今度からは困ったら素直に頼るか……

 ヴォラクはそう心の中で呟いた。


「おかえりなさい、主様……」


「サテラ……」


「生きてて良かったです、ヴォラクさん。本当に、本当に良かった……」


「すまない……こんな馬鹿な主と恩人を許してくれ……」


 その後、三人はひしと抱き合い一分程無言のままで抱き締め合っていた。血雷やレイアはその三人の事を見て見ぬふりをし、感動の再会を邪魔する事はなかった。血雷は再び煙管を口に咥え、その光景を木にもたれながら眺めていた。レイアは自分の国でメイドを勤めていたアナの元へと急行するとヴォラク達と同様にアナにレイアは抱き着いた。抱き着くと言ってもレイアはアナに走りながら突撃し、アナが倒れる勢いで抱き着いたのだ。アナは突撃されて抱き着かれたが自然と涼しい顔をしておりふらつく様な様子も見せず、ポーカーフェイスを崩さず抱き着いてきたレイアの頭を撫でてあげたのだった。


「一国の王がはしたないですよ?レイア様…」


「アナァァ!ごめんなぁ、心配かけちゃって!」


「生きて帰ってきていただいてもらえれば、私は嬉しい限りです。それに怪我もなくて良かったです」


(ったく、イチャイチャしやがって。アタシの出来るなら凱亜とイチャイチャしたいっての!)


 血雷はそう愚痴を零しながらも煙管をもう一度咥えて吸った。

 煙管はやはり上手い味をしている。癖になりそうな良い味をしていた。


「主様、本当に良かったです。一人で行ったってアナさんに聞いて心配でしたけど、怪我もなく生きて帰ってきて本当に良かったです……」


「ヴォラクさん、困ったなら私達に遠慮なく頼ってくれていいんだよ?今回は生き延びたから良かったけど、ヴォラクさんが死んじゃったら私、本当に悲しいから………だから、戦いにだって協力しますから、今回みたいに一人で全部背負い込む様な事はやめてほしいの。お願いします」


 シズハの言葉にヴォラクは心の中で深い後悔をしてしまう。確かに今回のレイア救出作戦は結果的に血雷が同行する形での遂行になったが、ヴォラクは最初犠牲を最小限に抑える為、単独で出撃しようとしていたのだ。

 理由は簡単だった。サテラやシズハ、血雷を犠牲にはしたくはなかったのだ。せめて犠牲になるなら惨めで醜い自分だけで良いと考えていた為ヴォラクは単独での奇襲攻撃を考えていたのだった。しかしシズハの言葉でヴォラクの考えが変わる。

 彼女達を犠牲にしない為に戦いに参加させない。それは彼女達を信用出来ていないと言う事と同じではないか?一人で何もかも背負い込むのは間違いだ、とヴォラクは考えを改めた。

 彼女達は強い。サテラやシズハは銃とは無縁のこの異世界と言う別世界で銃を簡単に使いこなしてみせたし、血雷に至っては近接戦闘能力は彼女の方が高かった。よく見てみれば、信用出来ない要素はどこにもなかった。ヴォラクはただ”死なせたくない”と言う事を理由に一人で戦いに挑もうとしていたのだ。ヴォラクは自分が改めて馬鹿でクズな奴だと認識した。

 もっと彼女達を信用するべきだった。彼女達は弱くない、ただ自分が、彼女達が美しいから、死なせなくないと言う事を理由に戦わせる事を拒ませていたのだ。

 彼女達は強い、強いよ。なら何故信用しなかったんだ。素直に強い事を認めて、一緒に来て欲しいと頼めなかったんだ?ヴォラクは自問自答を繰り返し、自分の愚かさを身をもって実感していた。今回は自分が判断ミスをしてしまったと感じた。これは大きなミスだとヴォラクは感じた。

 しかしミスをしてしまった事実を変える事は出来ないが、次からミスをなくす事は出来る。今回の判断ミスを反省し次に活かすべきだとヴォラクは考えた。あまり後ろばかり気にするのも性にあわないので、ヴォラクはミスを受け止め次に活かす事にした。

 そしてサテラ達にも彼女達がお願いした願いを聞く事にした。


「あぁ、分かった……次からは頼らせてもらうよ。今回の件は本当に申し訳なかった」


 そしてヴォラクは二人から体を離すと一度だけ頭を下げた。その様子を見たサテラとシズハは、頭を上げてくださいとヴォラクに呟いた。


「主様が謝る事はありませんよ。だって、私達を思って、いいえ心配した上での行動だったんですもん。そうやって戦う主様も……」


「とってもカッコイイと思います」


(もう、可愛いってレベルじゃねぇぞ!これ……可愛すぎる………)


 サテラとシズハの美しさも血雷やレイアに並ぶ程の美しさだった。可愛すぎて強く愛でたくなる程でヴォラクは二人にベットの上にいる時の様にまた口付けをしたくなってしまう。そしてサテラとシズハは彼を求めるかの様にして頬を赤くしている。それを見ているとヴォラクも二人と同じ様にさっきの様な感じで頬を赤くしてしまう。


「あ、あの……主様、私達の事心配させたから……」


「よ、良かった今夜三人で………」


「あ、ああ………」


 勿論答えはYESと言いたかったのだが、いつも以上に照れてしまった様子を見せているヴォラクは言葉が思う様に出てこなかった。

 ここでYESかNoかサテラ達二人に言わなければいけなかったのだが、突然森に響き渡るレイアの叫び声がヴォラクの返答を邪魔してしまった。

 ――――ウァァァァァァと鼓膜に強い刺激を与える程の叫びが聞こえてきた。突然の事にサテラ、シズハ、ヴォラクだけではなく血雷も、うぉ!?と驚いた様子を見せてしまっていた。

 ヴォラクはまさかカインの残党がまだ残っていたのか?と思い、すぐにその場を離れ、レイアの声が聞こえた方向へと足を向ける。普通に走り出しレイアの元へと急いだ。

 それに着いていくかの様に、サテラとシズハは一度向かい合うと首を縦に振りヴォラクの後を追った。血雷も敵襲か?と感じたのか愛刀を抜刀し、ヴォラクの後に続いていった。



































 だが、実際レイアの元に着いてみてみれば、それは敵でも魔物でもカインの残党でもなかった。最初はてっきり敵襲かと思っていた血雷も目を丸くする程だった。

 って言うかこれ見つけて叫ぶ人初めて見た。


「おいおい、これは贈り物か?」


 いいや、贈り物でもあるがこれの使い道はその目で見るなりすぐに分かってしまった。


「確かに……馬よりは使いやすそう………」



ここで五章は終了です。次章は悠介が主人公を務めます。

何がヴォラクに送られてきたかは後で判明します。

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