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78話「Counter Attack.4」

 

 遂にヴォラクの周りに馬鹿みたいに舞い上がっていた土煙は全てが完全に消え去り、ヴォラクは目の前に立つ何者かの姿を確認する事が出来た。まるでオーラを纏う様な土煙は吹き飛ばされた様にして完全に消え去り、地底から現れたその姿をヴォラクは簡単に確認した。


「よぉ……レイが世話になったな…」


 そこに立つのは、前の戦いで戦う事は殆どせず自分達が体力を大きく消費するまでその戦いを傍観し、仲間であるレイアを連れ去り、自分に剣と睨む様な視線を向けたカインがヴォラクの前に長剣を一つ右手に握り締めたまま立ちはだかっていた。相変わらず自分に対して強い怒りを見せている、全くと言っていい程その怒りは隠せていない。

 たとえ怒っている時でも。冷静かつ無表情の様な顔をしているヴォラクとは全くと言っていい程違う様な顔をしているのでヴォラクは心の中で怒りすぎだろ、と呟いた。カインは剣の矛先をヴォラクに向ける。しかしヴォラクは剣を自分に向けられても怯んだり、怖がる様子は見せなかった。

 そしてヴォラクはカインに話しかけられる。勿論だが冷静に対応する。カインの口調は怒りっぽく下手に刺激してしまえば堪忍袋の緒が切れるかもしれない。


「お前、ちょっと俺の国の人…殺りすぎたんじゃないの?」


「国の人じゃねぇ……お前の可愛い女も纏めて全員殺してやったぜ?命乞いしてる所を殺ってやったよ?」


 その言葉を聞いた瞬間カインは強く血相を変えて、激しい怒りを露わにする。勿論自分の女を殺された事による起こった怒りだろう。だが、怒りに任せて戦うなんて馬鹿な奴だよ。

 いつ何時でも冷静に戦う、それが僕にとっては普通の事だよ。まずそんな事言われたらまずは嘘だと疑えよ?真実、証拠、この二つは残念ながらないんだよ。

 それなのに本当だと信じ込んで怒りに任せる。(嘘じゃありません、本当に殺してます)

 今回の相手が一筋縄ではいかない相手だと分かっていても、怒りに任せて戦う事しか出来ない相手なら奴の殺害の糸筋が見えない事はなかった。

 怒りに任せる奴程、隙が生まれやすい。怒りや恨みに任せて戦えば、力は強くなって一方的に攻撃する事が出来るかもしれない、だがその分攻撃は単調かつ大振りなものになり、細かな所に隙が生まれやすくなる。今のカインは正にその状態に近いと言える。奴の女を殺しておいたのは正解だった様だ。多分、昔の僕なら命乞いをして泣いている女達を躊躇して殺す事が出来なかったと思う。

 さっさと敵を殺す為の覚悟を決めておいたのは正解だった。たとえ誰でも殺す事が出来る様になっておいて良かった。この死ぬか生きるだけの世界じゃ殺す覚悟を決めないのは自ら死を懇願する様な事だ。

 非情になっておいて、殺す覚悟を決めておいた事に間違いはなかったみたいだったね。

 なら目の前の奴も殺さなければね。それに僕が今一番殺したい奴は目の前に立っている。久しぶりだよ、こんなにも殺気が呼び覚まされるのは。冷静でいるとは言ってもね、内心に浮かぶ怒りは想像以上だ。ここにいる奴らは全員地獄に落とす。そして城とその領地全て破壊する。


 だってそうでもしないと……気が済まないよ。今はやり過ぎだなんて言われたくはなかった。そんな事は忘れて許してやれだなんて言われても僕は今はやめる気はないよ。

 だってレイを連れ去っておいて、姉さんだって傷付けて、なら殺すしかないね。

 さっさと地獄に落とす必要があるね。今だけは…狂気に堕ちる必要があった。


「お、お前ぇ!よくも俺の女を!……まだ使えたのに、まだ使い物だった俺の女を!貴様ァ、殺してやる!」


「殺されるのはお前の方だよ、大将。まぁ大丈夫さ、お前も殺しといた女の所に……」


 次に何か言おうとしたヴォラクだったが、カインはヴォラクの口から吐かれる言葉を待つ事なく、自分が作り出した異空間から剣を一本取り出し、ヴォラクに向かって高速で走り出すと、すぐに距離を詰め剣を使って斬りかかってきた。カインの剣筋は横からの攻撃だ。自分が出来る対応は受け流すか受け止めるか避けるか斬られるかのどれかだ。だが素直に斬られる程ヴォラクは弱い人物ではない。


 ヴォラクが反応出来る速さかどうかは分からないが、ヴォラクは非常に優れた反射神経などは持ってはいないが、反射的に左手に握り締めていたビームサーベルを使い、横から流れてくる剣の刃をビームサーベルで受け止めた。カインの剣戟を受け流すのは剣術へっぴり腰のヴォラクには流石に無理だし、避ける事は可能だがその後の剣の追撃から逃れられるは分からないし、剣で斬られたら問答無用で死ぬので、ヴォラクはビームサーベルでカインの剣を受け止め、斬られない様にする為に必死で剣を使って防御に徹する。

 案の定、カインの剣だったのでヴォラクのビームサーベルとカインの剣は激しい鍔迫り合いを起こす。カインの使う剣は魔力を纏う又は込められているので魔力によって刃が形成されているビームサーベルと斬り合う事が出来たのだ。

 正直カインが使う剣が普通の鉄の剣でビームサーベルの刃で斬れば簡単に折れる様な剣なら戦いやすいのだが、普通に鍔迫り合いを起こして斬り合えるので完全な実力勝負になってしまう。残念だがヴォラクは剣術の経験は全くと言っていいぐらいない。強いて言え前の戦いやレイアとの戦闘などで多少の経験があるとは言っても、ヴォラクは元々鉄の剣すら真面に使えなかったので剣術へっぴり腰と言われても反論は出来ない。

 しかしそんな風に言われている(クラスメイトと作者に言われた)中でビームサーベルをある程度使えて敵兵相手に生き残っている理由、それはビームサーベル自体は軽量である為動かしやすいし腕に掛かる負担も少なくなかったからだ。

 まず結構重めの鉄の剣(初めて握った時はマジで使えないと思うぐらい重かった)とは違うので振り回しやすいし片手でも使いやすい、尚且つ刃は魔力によって形成されているのでビームサーベルは魔力を纏っていない、又は魔力を込められていない剣はその刃で簡単に岩を砕く様にして斬り裂いてしまうのだ。

 この様に軽量で使い勝手が良く、更に魔力を纏っていない、込められていない剣は砕く事が出来るので普通に鉄の剣や強力な力を宿した魔剣を使うよりは、自分で作ったビームサーベルを使う方がヴォラクには良い選択だと思った。

 現に今だってカインがヴォラクに向かって剣を向けるだけじゃなくて普通に斬り合っているし、鍔迫り合いを起こしている。だがヴォラクは剣術の経験は浅く、やはり実力的にみればカインの方が圧倒的に勝っていた。鍔迫り合いを起こしているとは言え、ヴォラクの方が力負けしており、殆ど首の皮一枚繋いでいるのと同じ様な状態だった。

 カイン相手に鍔迫り合いを起こせば力負けし、カインの持つ剣と自分が斬り合う為に使っているビームサーベルの二つで自分を斬り裂かれてしまいそうだった。悪いがヴォラクは自分で作った武器で殺されるのは絶対に嫌なので、今の自分が持つ最大の力で何とか押し返し、一度カインから距離を取った。て言うか取らないともう数分後に自分の体が裂かれている可能性があるのでもう正面から斬り合う様な戦いはやめる事にした。と言うかやめよ。

 こんな風に戦っていては拉致があかない。そう判断したヴォラクは一度距離を取り、さっきと同じ様にレイアの前に立ち、彼女の壁になる様な形で前に立ちはだかる。

 するとヴォラクはビームサーベルを納刀すると剣形態からツェアシュテールングとリベリオンを両腰に取り付けた二つのホルスターから取り出し、銃形態に切り替える。

 何故ならヴォラクはビームサーベルを使ってカインに勝てる事は出来ないと思った。勝てないと言うよりもこのままビームサーベルを使ってカインと戦闘を続けた所で勝てる保証が一切ない。更にこのままビームサーベルを振り続けていたら自分のスタミナが尽きる可能性もある。

 スタミナが尽きて、息が上がってほぼ動けなくなってしまったらその瞬間ヴォラクは終わりになる。レイアを守る事も出来なくなるし自分の命も速攻で失われる事になってしまうのでこのままビームサーベルを握りカインと正面から剣で斬り合うのは愚策だと思い、距離を取ってビームサーベルを納刀し、ツェアシュテールングとリベリオンをホルスターから抜いて、自分が一番好きな戦闘スタイルである銃二丁スタイルに切り替え、カイン相手に銃撃戦を行う事にした。相手が剣を自由に飛ばせるとは言え、こっちが使う武器は強力な現代兵器かつ余裕で即死させる威力があり、更には発射される弾の速度は恐ろしい程までに速いスピードで避けるのは簡単な事ではない。

 さっきはカインの肩に鉛玉を撃ち込む事に成功している。回復されているかもしれないがカインでも銃にわる銃撃を避けるのは困難ではないかとヴォラクは考えた。

 カインが剣で弾を斬ってしまう可能性もあるかもしれないが弾を全弾、しかもツェアシュテールングとリベリオンはデザートイーグル、マグナムタイプの強力な威力かつ恐ろしいスピードの銃なので全て避けたり弾を斬るのは不可能に近いだろうとヴォラクは予想する。

 やはりここは自分の本当の戦い方である二丁拳銃スタイルでカインと戦う事にしよう。


「レイ、僕は今からこいつを使って奴を殺す………レイはどうする?僕と戦うか?それともここで見てるか?」


 レイアの本心、それはヴォラクと一緒に戦いたかった。自分の目の前で殺される可能性があるにも関わらず、1人カインと戦い続けるヴォラクにレイアは加勢しヴォラクと共にカインを撃破したかった。自分にだって戦う事は出来る。自分の魔力を使って生み出した剣を使って戦いたかった。

 だが説明した通り、レイアは現在「魔力封じの腕輪」を取り付けられているので自身の魔力を解放又は具現化して武器などにする事は今は不可能だった。この腕輪を外す、破壊するには付けた本人が解除する様に念ずるか付けた本人を殺す必要がある。これを付けたのはカインだ。外すのならカインを殺す必要があるのだが、今の魔力を封じられた状態のレイアではカインを殺すのは普通に考えて無理だと言う事が確定している。そうなるとヴォラクにカインを殺す事を頼むしかないが、ヴォラクも近接戦闘ではカインに力負けし、押されているのが見て取れる。

 ヴォラクが近接戦闘はどちらかと言うと得意ではないと言う事は知っている。しかし出来ない訳ではない。レイアから見てヴォラクは戦闘に関しては決して力が無いと言う訳ではなく、普通に軍のエースレベルの力は持っているとレイアは思った。だがレイアはカインの強さを知っている。

 その力はエースレベルの話ではない、異空間を生み出し、召喚する事が可能で、自らが生み出した異空間の中には無数の武器(知っている限りでは剣だけだった)が保管されている。その数も不明でもしかしたらその数は無数かもしれない。

 異空間から呼び出された無数の剣で串刺しにされる可能性だって普通にある。カインの力を知るレイアだからこそ分かる。レイアは心の中で、ヴォラクに勝てる可能性は薄いと思った。

 だからこそ、戦闘に加勢する必要があるのだがレイアは取り付けられた魔道具により自分の武器を解放する事は出来なかった。


「戦いたいけど………私は今武器を……」


「分かってる、その腕輪だろ?……なら、これ使え」


 そう言うとヴォラクはさっきまで自分が使っていて、今は納刀されているビール刃がまだ展開されていないビームサーベルを取り出すとレイアに手渡した。自分の魔力を解放、具現化出来ないレイアの為にヴォラクは今の彼女でも使用出来るビームサーベルを手渡して彼女を戦える様にしたのだ。

 正直、銃はレイアが使いこなせるか分からないし、今のヴォラクは二丁拳銃スタイルで戦いたかったのでツェアシュテールングとリベリオンを渡す事はせず、さっきまで近接戦闘用に使用していた武器、ビームサーベルをヴォラクはレイアに渡したのだ。

 優れた剣術を使えるのはレイアだし、ちゃんと使いこなせるのはレイアだろう。自分が持っていても宝の持ち腐れだと感じたヴォラクはビームサーベルを彼女に託したのだった。


「今は魔力解放と具現化出来ないんだろ?これなら、使えるだろ?」


「これって、ヴォラクのビームサーベルじゃ……でも良いの?」


 ヴォラクでも流石にその発言は予想出来なかった。ここでビームサーベルを使わなければいつ使うのか。今は戦闘が続いている。

 ここでレイアに加勢してもらわなくては、ヴォラクもいつまで1人で持ち堪えられるか分からない。


「使うな、なんて言うなら渡す事なんてしないよ!こいつは剣術へっぴり腰の僕が使わず持ってるよりは、レイが使ってくれた方が断然良いよ。今は一対一じゃ勝てる相手じゃない……使ってくれ!」


「…………分かった、私もこれを使って戦うよ!それ貸して!」


 そのレイアの叫びに、ヴォラクは少しだけ口元を笑いを浮かべると、一度だけ首を縦に振ってまだビーム刃を展開していないビームサーベルをレイアの手の上に置いた。

 レイアがヴォラクのビームサーベルを受け取ると、レイアは崩れかけていた姿勢を直し、すぐにヴォラクと同じ様に立ち上がる。立ち上がると同時に彼女の銀色の髪が強く揺れる。マントが風に揺れる様にして彼女の髪は強く揺れる。

 ふとヴォラクがレイアの方を振り返る。その時のレイアの表情はさっきまでのレイアとは違っていた。さっきまでの震えて、強き存在に怯える様な弱気な少女の様な表情ではなく、あの時自分と戦った時、出会ったの様な強気で威厳があり、非常に美しい姿をヴォラクに見せていた。

 やはり彼女は綺麗で美しい。あの今僅かに吹く風と立ち上がった事により揺れる銀色の髪も非常に整っていて非の打ち所がない様な目鼻立ち、非常に豊かで撫でたくなる様な身体(主に胸やお尻、ウエストも結構細め、痩せてんじゃないの?と言う感じなくらい)美しさにおいてサテラやシズハや血雷と同じぐらいの美貌の持ち主であり、しかも自分の国のトップと言う立場、そしてあの剣の腕の高さ、血雷にも劣らない強さを持つので、美しい点はその美貌だけではなく、その剣を使える上での強さ、その堂々たる威厳がレイアを更に美しく見せていたのだった。


 ヴォラクから見て、今ビームサーベルを握りヴォラクの前に立っているレイアはそれに値する様な程の姿をしていたのだった。さっきまで怯える様な表情を見せていたレイアはもういない。

 ヴォラクと共に戦う意志を示し、今は魔力を具現化出来ないとは言っても、ヴォラクのビームサーベルを借りて戦闘を行う事が出来る様になった。

 これからは2人で戦う事にする。多分だが、ヴォラクは中距離での射撃、レイアはビームサーベルを使っての近接戦闘だろう。と言うかビームサーベル持ってんのに近接戦闘しなかったら役職奪われるのと同じみたいなものだろ?

 レイアは近接戦を行うだろうと予想する。ヴォラクだってツェアシュテールングとリベリオン、そしてバスターブラスターによる中距離又は遠距離からの射撃、カインにもし寄られたら体術(足がメイン)を使った戦いをする事になるだろう。

 しかしヴォラクが自分の戦い方を脳内で考えている間にこちらに向かって剣を片手に走ってきているカインの姿が見えた。どうやら自分が思考を巡らせる前にカインは既に2人に向かって斬りかかってきたのだ。勿論だが狙いはレイアではなく近接戦闘用装備を捨ててツェアシュテールングとリベリオンの二丁拳銃スタイルに切り替えたヴォラクの方に向かって剣を向けてきたのだ。

 向けられた殺気もレイアに向けてではなく、自分に向けられてきたものだと言う事も分かった。今ここで立ち止まるのは愚策に等しい。立ち止まっていては簡単に斬られるのがオチだと容易に想像出来る。

 ヴォラクはすぐに剣を片手に突撃してくるカインに向けて二つの銃の銃口を向ける。いくら剣の腕が高い相手とは言え、銃持ちを相手に剣などの近接戦闘用装備を使って突撃してくるなんて死亡率を高めるただの特攻の様な愚かな行動だ。カインは相変わらず剣を片手に睨む様な目付きと鋭い殺気を放ちながらヴォラク突撃してきた。

 しかしそんなカインとは対照的にヴォラクは口元でニヤリと笑いを浮かべるとツェアシュテールングとリベリオンを同時に構え、ツェアシュテールングの照準はカインの足元を、リベリオンの照準はカインの脳天を狙う。ヴォラクは銃の照準にブレがない事を確認すると容赦と躊躇いなく引き金を引いた。

 二つの銃口からは高速で銃弾が発射され、激しい銃声が上がり、ヴォラクの両手には銃を撃った事による反動が生じた。自分が射撃が得意でAIMが安定しているとは言え、使用している銃はマグナムやデザートイーグル程の威力がある銃なので手と腕にかかる反動は恐ろしいものだった。現に両手には強い衝撃と痺れる様な痛みが走る。慣れた事だが、まだ何処かに慣れていない様な自分がいた。


 しかし、銃から発射された銃弾は両方命中はしなかったし、弾は避けられていた。ヴォラクは思考が僅かな時間だけ追い付かなくなった。


 何でだ?何で銃弾避けられるんだよ?無理だろ、距離はそんなに離れてなかったし、撃つまでのタイムラグだってそんなには長くなかった。かなり高速だったはずだぞ?何で………何故避けられた?


 しかも思考が巡る中でカインはヴォラクの前に立っていたレイアを音速に匹敵する様なスピードで抜き去り、簡単にヴォラクへの接近を許してしまった。ヴォラクも突然の事に対応が遅れそうになるが、何とかツェアシュテールングとリベリオンを使って対応する。

 カインは剣を上から大きく振り下ろし、ヴォラクの胴体を斬り裂こうとする。しかしヴォラクはゲームで鍛えた動体視力とそれなりに優れた反射神経で振り下ろされた剣をツェアシュテールングとリベリオンを使ってブロックした。あの剣とリーチを比べればその大きさは圧倒的に剣に劣る銃だったがヴォラクはその銃を使って剣による攻撃を防いだのだった。

 勿論だがツェアシュテールングとリベリオンは強固な素材によって出来ている。しかもレイアの魔力だって込められている素材の為、カインの持つ魔力を纏う剣だって防ぐ事が出来るのだ。もしこれが普通の素材だったら銃と自分の体ごと簡単に斬られてしまっていただろう。改修しておいて正解だったな、とヴォラクは思った。


 すると、カインはヴォラクに言葉を投げかける。口調は怒り口調だったが、その言葉は質問に近い言葉だった。


「き、貴様!何故、条約で使用が禁じられた武器を使っている!?」


「はっ!?お前、何を言って……」


「惚けるな!そいつは過去の大戦で……」


 その先にもカインは何か言いたげな表情をしていたが2人の間にレイアがビームサーベルを使って割って入った。ビームサーベルを振り下ろされた事によりカインもヴォラクも一度後ろに下がった。

 しかしカインは突然として目の前に悪魔が現れたと言わんばかりに何かに恐れる様な表情を見せた。しかもヴォラクがカインと目を合わせるとさっきの鋭く睨む様な目付きをするのではなく突然としてヴォラクを見るなりより一層ヴォラクの事を警戒する様子を強め、さっきの様に自ら突撃する様な事もなくなり剣を構えてその場で警戒する様な素振りしか見せなくなった。


「ヴォラクに……よくも!」


「おい、まだ言いたい事があるなら言ったらどうだ?話ぐらいなら聞くぞ?」


「……………」


 するとカインはさっきまでの威勢の強さを全て消し去ってしまった。

 尻尾を巻いて逃げる小さな鼠の様にしてヴォラクとレイアに背を向けると全速力で走り出し、ヴォラクとレイアの前から消えようとした。勿論だが突然の出来事に2人はポカーンと空いた口が塞がらなかった。

 しかし普通だった。さっきまで自分の事を睨む様な目付きで見たり、自ら剣の矛先を向けてきた相手が突然怯えた様子で尻尾を巻いて逃げ出してしまったのだ。驚いてしまうのも仕方なかったのだ。

 あまりに突然な出来事でヴォラクとレイアは逃げ出した彼を追いかける事が出来なかった。勿論だがヴォラクは一度敵対した相手なら、逃げ出そうと見逃さずに殺すのが普通だったのが、今回は突然の事すぎてすぐに追えなかった。追おうと思ったのは少しカインと距離が開いてからの事だった。

 すぐさまハッとするとヴォラクは逃がす事はせず、すぐに全速力で走り出し、再びツェアシュテールングの照準をカインの心臓に向けて合わせる。

 そんなヴォラクを見て、レイアもすぐに我に返りカインの追跡を開始する。

 未遂とは言え、自分を精神的に追い詰めた相手だ、逃がす訳にもいなかった。

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