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77話「Counter Attack.3」

 

 何者かが城の中庭の地面の土を突き破り、まるで怒りを露にして地の底から目覚めた地竜の如く、土煙を強く上げて地上に舞い戻って来た。突風の如く舞い上がる土煙はヴォラクとレイアの所にまで達してヴォラクとレイアの目には土煙が入りそうになる。視界が悪化していく中で、ヴォラクは自分の右腕を使って土煙が目に入らない様にする為に両目を覆った。レイアもヴォラクと同じ様にヴォラクの後ろに隠れながらも、咄嗟に両手で両目を覆った。しかしそんな中でもヴォラクは地の底から現れた何者かの姿を捉えようとする。

 しかし地の底から現れた何者かは、舞い上がる土煙に覆われて、それが誰なのかは分からない。


 しかし、ヴォラクには地底から現れた誰かが、凡人ではなく、只者ではないと言う事だけは分かった。

 だってそうだろ?第一下の方から地面突き破って出てこれる奴なんて普通の人間なら無理だと思うよ?(普通の人でもこの世界から魔法使えるので普通の人間でも魔法の力を借りて出来るかもしれないけど、この時ヴォラクはその事を忘れています)

 確かに僕は素は普通の人間だけど、今回はバスターブラスターを使ったお陰で地下室からも脱出出来たし、レイアも救出出来た。それだけではなく、ツェアシュテールングやリベリオン、ビームサーベルの三つの武器があったからこそ、ここに血雷と2人で突入し何人もの敵を葬ってきたし、今の今まで生き残ってきた。今までの戦いでの勝利や魔法や武器が真面に使えない身でありながら生き残れたのは自分達の力で作った武器があったからこその結果であり、ヴォラク本人にある力なんてそんな大層なモノではなかった。

 しかし今回目の前に立つ敵はそんな事はお構い無しの自分だけの実力で戦う敵だとヴォラクは思った。これは勝てる見込みが薄いと感じた。ヴォラクは素の力なんて言ってしまえば一般人より少し強いぐらいが妥当だった。そんな自分が今目の前に立つ敵に何も持たずに挑んでみろ、ものの数秒で簡単に死ぬのがオチだ。しかし今回だってヴォラクにはツェアシュテールングを初めにリベリオン、バスターブラスター、ビームサーベルを装備している。現に今だってヴォラクはツェアシュテールングを右手に握り、引き金に指をかけ、利き手ではない左手にはもう一丁の銃であるリベリオンを握り、ツェアシュテールングと同じ様に引き金に指をかけ、いつでも引き金を引いて銃弾を発射出来る様にする。


 たとえ、自分の素の能力が弱くとも使う武器は決して弱い訳ではない。ヴォラク自身の考えでは勝てる見込みはかなり薄いがここで逃げる訳にもいかなかったので、ヴォラクは内心に浮かぶ僅かな恐怖を全て捨ててレイアの前に立ちツェアシュテールングとリベリオンの銃口を土煙が起こる方向に向ける。ヴォラクの目に自分が倒すべき敵が見えたら、ヴォラクは即引き金を引く。相手が自分の心臓を潰すのが早いか、それともヴォラクの方が引き金を引くのが早いか、ヴォラクは死ぬ事に対する恐怖を消してレイアを守る為に警戒を続ける。


「ッん!?」


 強すぎる殺気を感じた。自分に対する激しい恨みと妬み、そして必ず殺してやると自分の心の中に語りかけられた気がした。

 これはもうお遊びの戦いでも、ただ自分が無双する戦いでもない。本当の強敵との戦い、ラスボス戦と言っても過言ではない戦いになる気がした。

 ヴォラクは自分達の方向に土煙を斬り裂いて、何かが土煙の中から飛んできた気がしたので、ヴォラクと咄嗟にレイアの事を抱き寄せると、そのまま押し倒し、地面に倒れ込む。レイアと共に自分に倒れ込むと自分の身体、特に自分の胸辺りにとても柔らかい感触を感じた。あ、言っとくけどこの柔らかい何か、僕には分かってるからね?敢えて言ってないだけだからね?もうツっこむのも嫌だし、て言うか今はそんなツっこんでる暇もなさそうなのよ。悪いけどラッキースケベとか変態だとか言わないでよ?


「お、おいレイ、大丈夫か?」


「う、うん。大丈夫、私は大丈夫だから…………急に押し倒すなんて…」


「ん?何か言っ……」


 また何か飛んでくる!

 そう感じたヴォラクはレイアを抱き寄せて押し倒していたが、また何か飛んでくると感じた瞬間立ち上がり咄嗟にリベリオンを一度地面に落とし、ビームサーベルを取り出すとすぐにビームサーベルの刃を展開して斜め下から斜め上に向かってビームサーベルを薙いで、飛んできた何かを切り落とそうとする。またツェアシュテールングの引き金にかけていた指もいつでも銃弾を発射出来る様にする為に発射する準備を整える。

 すると土煙の中なら本当に何かが飛んできた。それは尖端が異常な程までに尖り、的確に相手を突き刺す為に作られた様な長剣がヴォラクの喉元に向かって飛んできたのである。これは刺さったら怪我で済むってレベルじゃないので避けるかビームサーベルで切り落とす、もしくはツェアシュテールングで撃ち落とすかのどれかだ。

 ヴォラクは自分に向かって飛んできた剣に怯む様子や逃げ出す様子を見せる事なくビームサーベルを斜め下から斜め上へと薙ぎ、飛んできた剣にビームサーベルの刃を命中させて、簡単に明後日の方向へと弾き飛ばしてしまった。

 ヴォラクもレイアも負傷する事はなかったが、これは次弾が撃たれる様にしてまた剣が飛んでくる可能性がある。またしても強い警戒が必要になる。そして最悪の場合レイアにも戦闘に協力してもらわなくてはならないかもしれない。今レイアはヴォラクの後ろに立っていて、ヴォラクの身体から顔を覗かせる事も一切せずにまだ怯えた様子を隠せずにヴォラクの後ろに隠れていた。ヴォラクはレイアに無理に戦えとは言いたくはなかった。恐怖で足がすくみ、目の前に敵に強く怯える女性を戦わせるなんて事は人を殺め、血で乾いた血を流していたヴォラクにもそこまで非情な命令を言う事は出来なかった。

 ここはレイアに頼らず、1人だけで戦わなければならない。まぁ1人で勝てる相手かは分からないが、レイアを見捨てて1人で逃げ出すよりはマシだった。ヴォラクは自分の後ろに隠れるレイアの方を振り返り、一言だけ呟いた。


「任せろ……」


 そのヴォラクの重みがあり、強い安心感をもたらす発言にレイアは小さく頷く。その時レイアの表情は少しながら明るくなる。それと同時にヴォラクは武器を両手に持って、土煙が舞い上がる方向へと向かっていく。

 その時レイアから見えるヴォラクの歩いていく背中は、レイアに強い勇気を与えた。本当ならここでレイアはツェアシュテールングとビームサーベルを握るヴォラクの背中を追い、彼と同じ様に自分の魔力を使って剣を二つ作り出して目の前に立つ敵と戦わなければならないだろう。しかし今のレイアにはヴォラクと共に戦う事は出来なかった。

 レイアにあった理由は主に二つ、そしてヴォラクにもレイアを戦いを参加させる事が出来ない理由があった。

 一つ目の理由はレイアにはカインによって無理矢理に取り付けられた魔道具「魔力封じの腕輪」を取り付けられた事によって、自身の魔力を封じられてしまっていたのだ。この魔道具は現在自分の左手首に取り付けられており、自身の魔力を封じられてるので魔力を解放して剣を作り出したり、自身の魔力を使っての攻撃等の事は全て行う事が禁じられてしまったのだ。これではヴォラクと共に戦闘に参加する事は出来ないし、万が一自分の方向に攻撃が飛んできても自分の身も守る事すら出来ないのだ。レイアは体内に内蔵されている魔力の量もかなりの量を保有しており、その質や力もかなり強いものだった。しかし今はカインによって左手首に取り付けられた魔道具によってその体内に保有している魔力を解放して放ったり、魔力を具現化して愛用の剣の形にする事も出来ないので今戦闘に参加するのは不可能に近いし、もしも今魔道具が取り付けられた状態で戦闘に参加した所で自分が役に立たない事ぐらい自分でも分かっていた。現に今レイアはヴォラクの背中を追いかける事は出来ず、その場で半場崩れかけた立ち方で人形の様に棒立ちしてしまっていたのだ。


 一応ヴォラクが使っているあの兵器、もしあの武器を自分が使いこなせば戦いに加わる事が出来るのだが、生憎あの武器は存在その物を見たのはヴォラクのが初めてだし、ヴォラクがあれを持っているのを知るまであの武器は歴史書の上でしか見た事のない自分にとっては幻の様な武器なのだったのだが、今ヴォラクが使っているのを見る事が出来た。

 自分だって、ヴォラクが握るあれを使いたい。あれなら魔力を解放したり具現化する事が出来なくとも、相手に大きな深手を負わせる事が出来る。あれを見た事がないとは言え、過去に自分の城には、あれが破壊されるまでは何丁かは保有していたのだ。見た事もほぼないし、使った事なんて一切ない自分だが使いこなしたかった。今のレイアには戦えないが、あれが使えるのなら戦える。

 だが、今のレイアには無理だった。あれは使えないし今は魔力だって封じられている。


 これじゃただの役立たずじゃない……

 レイアは結局何も行動に移す事が出来ず、ヴォラクの背中を見送り、遂に始まる戦いに身を投じるヴォラクを見ている事しか出来なかった。出来た事と言えば自分が役立たずだと心の中で呟く事しか出来なかった。

今回は3.4.5と三部構成です

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