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75話「Counter Attack.1」

 

 レイアがカインによって純潔を汚されそうになった時、突然として鉄の扉を強く破壊し、全てを殺す様な殺気を放ち、見た者全てを恐怖のどん底に落とす様な狂気に満ちた目をしながらレイアが囚われていた地下室に突入して来た奴がいた。

 黒いロングコートを靡かせて背中に大型の遠距離射撃武器を背負い、右手には銃を左手にはビームサーベルのグリップを握り締めていた1人の青年がいた。顔には邪悪な気が満ちる仮面を付けず、自らの素顔を晒して敵の破壊に参上した。


「き、貴様は……」


「やぁ……地獄の底から死神様がやって来たぜ!」


「何だと?おま……」


 カインがまだヴォラクに何か言おうとした。しかしヴォラクは奴が何か言い終わるまで待ってくれる程優しい人間ではなかったので、ヴォラクはビームサーベルを握りビームの刃を形成して、自分が持てる最速のスピードでカインに接近してビームサーベルの矛先をカインに向ける。

 勿論だが狙うのは首だった。首を狩り取ってしまえば相手は生首になってしまう。ヴォラクは手っ取り早く殺せると思い、首狩りを狙っていた。

 しかしボスと言っても過言ではない程の強さ?を持つカインだ。このビームサーベルの一撃で倒れてしまう程安い敵ではなかった。

 既にレイアとの営みを行う為に服を半場脱いでいた彼だったがヴォラクが奇襲を仕掛けてきたと言うのに冷静さを失う事もなく咄嗟に自分の手で強く掴んでいたレイアを自分の後ろに放り投げて、自分の能力を使って異空間の入口を作り出し異空間の中に存在する長剣を一本取り出し、ヴォラクのビームサーベルに対抗する。

 すぐにヴォラクの持つビームサーベルとカインが取り出した剣がぶつかり合い、鍔迫り合いが発生する。もしもカインの持つ剣が魔力が込められていない普通の剣だったとしたら、鍔迫り合いは発生せず簡単にカインの剣は真っ二つに斬り裂かれてしまう事になるのだが、カインの今使用している剣はヴォラクのビームサーベルによって斬り裂かれる事はなくヴォラクのビームサーベルと斬り合う事が出来ていたのだ。

 つまりカインが使用している剣は魔力が込められた「魔力剣」を使用している。どうやらカインが作り出している異空間から取り出される剣は魔力が込められた剣が殆どらしい。ビームサーベルで破壊出来る様な剣は無いと確信した方が良いだろう。どうやら不良品の剣だけ取り出せる変な穴と言う訳ではないだろう。これは剣の手数が多すぎて防御出来ずに多数の剣に押し切られてしまう可能性もある。他にもカインの剣の貯蔵が無くなる前にビームサーベルのエネルギーが切れてしまう可能性だってある。

 慎重に立ち回る必要性がある。一つの行動にブレが生じれば簡単に魔力剣によって刺される可能性がある。今回の戦いは銃とビームサーベルによる無双などは行えない。勝利する為にギリギリの戦いを強いられる事になる。最悪自分の腕が飛んだり、足ごと斬り捨てられたり、最悪こっちが首を狩られる可能性だってある。

 だが、ヴォラクは恐怖する事はなかった。たとえ死ぬ可能性がある戦いだとしても、レイアを前にしてここまで着いて来てくれた血雷の為にもそして助けると決めた自分の為にもここで死ぬ事を恐れて逃げ帰る訳にはいかなかった。そしてヴォラクはビームサーベルでカインを斬ろうとしたが、カインは咄嗟に作り出した異空間から取り出した魔力剣によりヴォラクの剣戟は防がれてしまう。ヴォラクは一度だけ斬り合った後一旦後ろに下がりカインの様子を伺う。


「ふん……やはり来たか、黒服野郎」


「黒服は認めるが僕はそんな名前じゃないんだよ。カイン・サブナック……単刀直入に言わせてもらうぞ。レイを返せ……」


「もしも嫌だと言ったら?」


「殺すよ?」


 その時のヴォラクの目は強い殺気に満ちている。もしもこの後、ヴォラクを変に刺激してしまえばヴォラクは全てを簡単に破壊して、虐殺の限りを尽くすだろう。仮面を付けていないから分かる。その目は殺しに対する躊躇を感じられない。レイアとカインの目に映るのはまるでサイコパス、狂人と全く違いのない人間の様だった。

 レイアもヴォラクのあの目には少し恐怖を覚え、身を震わせる。左手に握られたビーム刃が形成されたビームサーベルと右手に握られた弾の装填済みのツェアシュテールングがよりその狂人っぷりを演出させていた。


「へぇ……怖い目するじゃん。そんなにレイアを返してほしいか?他に3人も女がいるのにまだ欲しいのか?お前も強欲な奴だな」


「6人ぐらいいる奴に言われたくねぇよ。カイン・サブナック、一度だけ言うぞ……レイを返せ!」


「ヴォラク……」


「返さないよ……レイアは僕の女だ。お前みたいな奴には渡せな……」


 次の瞬間、耳を裂く勢いの強い銃声が鳴り響く。しかも扉が壊れているとは言っても狭い地下室ではその銃声の音はいつもよりも大きく聞こえてくる。耳がキーンとするがヴォラクは銃声ぐらいでは怯む様な奴ではない。ヴォラクはツェアシュテールングの最初の一発を撃つとヴォラクはツェアシュテールングを一度ホルスターに戻した。

 そしてヴォラクは再びカインに接近し、ビームサーベルを使って斬ると見せかけた。


 カインもまたヴォラクがビームサーベルを使って斬ってくると予想したのか、再びヴォラクのビームサーベルと魔力剣で斬り合おうとしたのだがヴォラクはカインに接近するとビームサーベルを使って斬り掛かるのではなく一度ホルスターに戻したツェアシュテールングを再び取り出し銃口をカインの心臓に向ける。ゼロ距離からの奇襲接射なら避けられないと考え、非常に近い距離でツェアシュテールングを使ったのだった。銃弾は高速だ。避けるのは簡単な事ではない。それにここの異世界の人間は銃を知らない。もしかしたら相手からすれば「こいつ何してんだ?」と思わせる事も可能だ。

 しかし、異世界の人間で銃を知らないとは言っても前日の戦いでヴォラクは手の内を晒し過ぎた。

 高速で銃弾を発射し簡単に致命傷を負わせる事が可能な銃、魔力をエネルギーとして魔力を纏う又は込められていない物は簡単に切断が可能なビームサーベル、そして高濃度圧縮された魔力を一斉に解放し全てを簡単に溶解させる様な強力なレーザービームを発射する事が可能なバスターランチャー及びバスターブラスターの二種。この武器の性能はきっとカインも承知しているだろう。なら、奴は銃弾に簡単に当たる事はないだろう。


「ぐぅっ!」


(掠っただけか…………だが、奴のバランスは崩せた!)


 確かにカインはヴォラクのツェアシュテールングの銃口から放たれた弾丸を避けようとした。しかしカインに突き付けられたツェアシュテールングの銃口はカインの体に密着する様に当たっていた。この状態から弾の避けるのは至難の技だったのだ。カインは横方向に体をずらしたが、銃口から体を完全にずらし終わる前にヴォラクによってツェアシュテールングの引き金が引かれてしまったのだ。つまり銃口から発射された銃弾はカインの体に命中したのだった。

 狙っていたのは一撃で息の根を止める事が出来る心臓だが、流石に心臓には命中せず、発射された銃弾はカインの肩部に命中したのだった。弾丸がカインの肩部に命中した瞬間、カインの肩からは血が吹き出し、カイン自身も痛みと撃たれた反動により後ろによろめき、そのまま片膝だけ着いたまま座り込み項垂れてしまった。どうやら少しだけ動けそうにはない。

 しかしこの隙をヴォラクは見逃さなかった。ヴォラクはカインが一時的に怯んでいる間にベットに倒れ込むレイアに全速力で接近する。勿論だが近くにいたカインは持ち味の蹴りで壁に向かって蹴っ飛ばした。ヴォラクに対して何か言ってたけど無視だそんなもの。

 そしてレイアの前に辿り着くとヴォラクはまたツェアシュテールングをホルスターに戻して右手だけでレイアをベットから起き上がらせた。

 ヴォラクはすぐにレイアに駆け寄り、彼女に外傷がないか確認する。女の子の肌に傷なんて作りたくはない。

 もしもレイアに傷なんか付けてみろ。多分ヴォラクの逆鱗に触れる事になるだろう。

 ヴォラクが見た感じではレイアはその美しい身体に傷を負ってしまった形跡はない。

 だが、外傷がないとは言っても心の傷は深い事に間違いはないだろう。確定した事ではないが、レイアの怯える様な表情からして心に傷を負った事に間違いはないとヴォラクは思った。彼女のまだ雨に怯えている様な表情がレイアが心に傷を負ったと言う事に確信を持った。


 取り敢えずヴォラクはレイアが麻縄で拘束されている事に気付いて、すぐに彼女の両手両足を拘束している麻縄をビームサーベルを切り落とした。一応ヴォラクが使うビームサーベルは出力調整が可能なのでビームサーベルの刃の大きさをアイスピック程度の大きさに調整してすぐにレイアを拘束している麻縄を切り落としたのだった。大きさ調整したお陰でレイアの身体にビームサーベルの刃が当たってしまう様な事はなかった。

 そして彼女の両手両足を拘束する麻縄を切り落とすとレイアは無事に麻縄から解放され、何とか立ち上がる事が出来た。しかし彼女の表情は未だに恐怖から解き放たれていない様な表情をしてしまっている。しかしヴォラクと無事に再開し、純潔を汚されずに済み精神的に殺されずに済んだ安心感に浸れたのか少しばかり安堵の表情を見せていた。


「ヴォラク……私……」


「レイ、言いたい事はあるかもしれないが……今はちょっとだけ我慢してくれよ!」


「キャッ!」


 するとヴォラクは左腕で既に解放され自由に動く事が出来るレイアの事を抱き寄せ、自分の身体と強く密着させる。レイアは突然ヴォラクと身体を強く密着させた事で頬を赤くしてしまい照れてしまう様子を見せていた。しかしレイアはヴォラクを突き飛ばす事はなく、逆に彼に頼るかの様に自分から彼に抱き着く様な仕草を見せた。

 そしてヴォラクはまたビームサーベルをしまい、背中に背負った遠距離射撃武装であるバスターブラスターを片手だけで背中から取り出すと地下室の天井に向かってバスターブラスターの銃口を向けて天井ごと破壊する為に魔力エネルギーをチャージする。ただでさえ地上から結構深い所にあった地下室だからね。結構高出力でなければ破壊する事は出来ないだろう。(結構長い階段を降りる事になった)

 地下室の天井から地上までの穴を開けるには結構な距離があるだろう。この長い距離を破壊する為にはかなりのエネルギー量が必要となるだろう。

 ヴォラクはすぐにバスターブラスターのエネルギーチャージを開始し、天井を破壊する様に試みる。因みに片手でバスターブラスターを持って天井に銃口を向けているが、バスターブラスターはかなりの重量があり本当は片手だけで持ち上げるのは非常に困難な重さの武器なのだが、今のヴォラクなら何故かは分からないが片手だけでもバスターブラスターを持ち上げる事に成功したのだった。

 右手でバスターブラスターを天井に向かって持ち上げ、左腕でレイアの事を抱き寄せて自分の元から離れない様にする。


 そしてバスターブラスターのエネルギーチャージが完了する。銃口からは既に僅かながら充填された魔力エネルギーが漏れだしている。だが、これだけエネルギーが充填されれば地下室の天井ごと全て破壊する事が可能だ。破壊する事が出来るのなら後は全てを破壊するだけだ。


(僕の腕が死なないと良いんだけど!)


 ヴォラクはバスターブラスターの引き金を引き、銃口から充填された魔力エネルギーを一斉に解放する。右腕ごとバスターブラスターを撃った時の反動でグシャグシャにされないか不安だったが、ここで撃たなければまたあの長い長い階段を登る事になる。

 階段登る=絶対嫌(小学生の時から)


 なので、登るのが嫌なので天井ごと破壊して上から脱出する事にした。


 そしてバスターブラスターの銃口から魔力エネルギーが解放され、銃口からレーザービームの様にして魔力が集束された状態で照射され地下室の天井をどんどんと破壊していく。集束された高濃度圧縮魔力が照射発射された瞬間ヴォラクの右腕に強い痛みが走る。

 しかし当然の事だった。ただでさえ重い武器だと言うのに更にそこから高濃度圧縮魔力が高出力の状態で照射発射されたのでその強い反動と武器の重みにより右腕には激痛が走り、今にもバスターブラスターを手放したくなる。更には踏ん張っている両足も痛くなり、今にも膝を付いてしまいそうになる。レイアの事だって腕の中から手放してしまいそうになるがヴォラクは右手の激痛と両足の痛み、そしてレイアを手放さない様にする為に三つの事を同時に行い続けていたのだった。


 段々と右手の感覚すらも消し飛ばされそうになるが、ヴォラクはバスターブラスターを手放す事なく右手だけでバスターブラスターを保持し射線をずらす事なく天井に向かってバスターブラスターから発射されたレーザービームの様な高濃度圧縮魔力を照射し続けていたのだった。













 そしてヴォラクはバスターブラスターから充填された高濃度圧縮魔力を照射して、魔力エネルギーの全てを撃ち尽くした。撃ち尽くした後、地下室の天井には大穴が空き、天井からは僅かながら土や石が音を立てながら落ちてきた。落石の心配はない。そんな程の大きさの石は落ちてこなかったからね。

 脱出のタイミングは今しかない。このチャンスを逃せばもうレイアと共に脱出する事は難しくなってしまう。

 どうやらカインはまだのびてるみたいなのでヴォラクはバスターブラスターを再び背中に背負って、天井に空いた大穴に向かってレイアを左腕だけではなく両手で抱いたままジャンプして大穴から脱出を試みた。

 一応ヴォラクは持つ武器であるツェアシュテールングやリベリオンやビームサーベルやバスターブラスターこそ強力だが生憎身体能力等は素の人間と対して変わらないスペックなのだ。と言うよりも何故か能力が成長しないのだ。魔法などは全くと言っていいぐらい使えないし、と言うよりも使える素質が無いとか言われるし。

 それと違い異世界に同じタイミングで来た人間達は元は自分と同じ普通の人間だと言うのに自分が持つ能力はみるみると上昇していき、尚且つ身体能力も前の世界では得られない様な程までの力を手に入れている。

 しかしヴォラクはそこら辺全ての能力が上昇する気配が全くなく、身体能力も上がらないし魔法も使えないと言う事になってしまっていたのだ。

 しかし今は縦数mはあるだろう天井に向かってジャンプをしたのだ。勿論だが、普通に考えて普通の人間がジャンプをして数mもある天井に空いた穴に届く事など普通に考えて無理な事なのだが、何故か今は自分でも良く分からずジャンプしたのだが何と天井に空いた穴にレイアを両手で抱き抱えた状態のままでジャンプをして、そのまま天井に空いた穴に届いてしまったのだ。

 しかもそのまま穴の中に存在するへこみや穴の中から飛び出していた硬い岩を梯子代わりにして右手と両足を使って上へ上へと上がっていったのだった。

 因みに左腕はレイアを抱き寄せる為に使っています。


「上がるぞ、しっかり掴まれ!」


「う、うん、分かった!」


 レイアはヴォラクの身体に強く抱き着き、離れようとしない。この時レイアは絶対に離れないと言う意思を持ち、ヴォラクはそのレイアの意志を感じた。

 レイアは頬を赤くしながら強くヴォラクと身体を密着させるのでヴォラクの身体にレイアの美しい身体や血雷程ではないが非常に豊満な胸が自分の身体に密着してしまいヴォラクは少しばかり、いや結構……レイアと同じ様に頬を赤くしてしまった。



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