68話「開戦の刃」
敵の御大将に向かって思いっきり叫んだのは良いものの、まだ問題が残っていた。
残る問題としては、作戦及び戦略が定まっていない事だ。この大きな数の差を埋める為の作戦や、どの様な陣形で攻めるかなども決まっていないのだ。正直作成などが定まっていない場合は、大多数の数における戦闘では死活問題になる。
恐らく向こうだって何かしらの戦略は考えているだろう。あの相手なら何も考えずに突撃してくるとは非常に考えにくい。
だがしかし、こっちは今の所は殆ど何も考えられていない。これでは向こうの戦略にはまればそのまま袋叩きに遭う羽目になるだろう。
そんな事にはなりなくないので、何かしらの戦略を考え出す必要性があるのだがこの5分で戦略を考えられるか?と言われたら無理だと思います。
そもそも時間が少なすぎる。1人で考えろなんて言われたら戦略なんて考えられる訳がない。
1度だけ戦略は考えた事があるが、今回に至っては時間があまりにも少なすぎる為考えるのは困難を極める事になる。
さて、どうするべきなのだろうか。
この際何も考えずに突撃すると言うのも1つの手だが、この突撃行為にはメリットよりもデメリットの方が多すぎる点があるとヴォラクは考えていた。
メリットとしては、相手の意表を突く事が出来る事だ。確かに何の前触れもなしに突撃を行えば相手の意表を突いて、迎撃の準備を遅らせる事が可能かもしれない。それなら向こうが攻撃する前に突撃を行い攻撃される前に攻撃し、相手を一方的に鎮圧すると言う戦略も可能ではあるが、この戦略は失敗した時のリスクが大きく更に一気に仲間の兵を失ってしまう可能性があるのだ。
デメリットとしては、相手が冷静な対応をされればものの数分で全員全滅させられるからだ。
確かに突撃を行えば、上手い事いけば相手を一方的に鎮圧する事が可能かもしれないが失敗すれば最後味方は全員あの世送りだ。
「突撃」は考えている戦略の中ではかなり簡単に考えられる選択だが、悪いがこの案は却下だ。
やはり、1人だけで考えるのは無理だと判断した。
ヴォラクはレイア達4人に聞いてみる事にした。現在ヴォラク達は厚く閉まった城の城門前に立っている。
そして厚い城門を開ければその先には、奴らが全員武器を構えたままで待ち構えているだろう。恐らくこの城門を開けたら向こうがこちらに襲いかかって来るだろう。
いや、襲いかかって来る可能性はあるが、他の選択肢を向こうが取る可能性だってある。
もしかしたらこの城門を開けたら弓矢が豪雨の様に降ってくるかもしれない。一斉に魔法攻撃が飛んでくるかもしれない。
他にも敵の作戦は考えられる。もしかしたら、もう敵は全て城門の前に気配を消してスタンバっているかもしれない。開けた瞬間に一斉に斬りかかってくるかもしれない。
さぁ、どう出るか……
って言うか!こんな事考える場合じゃねぇ!考えるべきなのは、敵が行う戦略を考えるるんじゃなくて僕達が行う戦略を考える事だ。
敵の事を考えるより、自分達の事を考える必要があったのだ。
取り敢えず、仲間の皆さんに聞いてみよう。もしかしたら僕なんかよりもずっと良い戦略を見せてくれるかもしれない。
よし、聞いてみよう。
「皆様方、何か良い戦略はないか?因みに僕は思考回路が停止している。と言う訳でアイデアplease」
頼む……何かしら良い戦略を考えてもらわないと……これで何も良い戦略又は作戦が無いと本当に相手と対等に戦えなくなってしまう。
頼むよ……頼むよ~
僕が思い付かない様な戦略、作戦を考え出してくれぇ~
「私は主様に付き従うのみです。主様の考えに賛同します」←サテラ※注:何も考えてないだけ
「すいません……私は戦略を考えられる様な人材ではないので…」←シズハ
「戦略とか、めんどくせぇ。誰かの指示に従うか、適当にアタシは突撃させてもらうぜ!」←血雷
(おい!こんなんじゃ、本当に無理だよ!もう勝ち目ないよ。やっぱり適当に猛者っぽく叫んだの絶対に間違いだった!あんな事せずに、素直に停戦協定結んどけばよかったぁ!!もうダメだぁ……おしまいだァ…)
もう、頭の中が絡まる糸の様にこんがらがってきてしまっていた。
思考が再び動き出すが、混乱の連続のせいで変な思考が飛び交っていた。
変な思考
↓
よし、こうなったら僕がまた作戦を考えてやる!!
作戦その1
パンイチになって全身にハチミツを塗りたくる。そして敵の前に立ってTポーズ!
作戦その2
敵に向かってアンパンをぶん投げる。スパーキィィィ―――――ング!
作戦その3
お茶碗に盛られたご飯の上にマヨネーズを山の様にぶっかける。そしてそれを平らげて突撃ぃ!!
(ウワアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!)
ヴォラクは心の中でアホみたいに叫んでしまった。
落ち着け。1回落ち着け。たかが5分だ。
まだ……多分時間はある。ゆっくり、落ち着いていこう。
クールでダークなキャラを壊さない様に落ち着いていこうじゃないかぃ。
取り敢えず、3人には聞いた。次はレイアの番だ。
「で、どうする?レイ、何か案はあるか?」
「ねぇ、ヴォラク。さっきから思ってたんだけど……何も1人で考える必要なんてないんだよ?」
「…………え?」
ヴォラクは今まで1人で考えていた。今回の戦略だって殆ど誰も話し合わず、1人でただ黙々と脳内で考え続けていたのだ。
しかし、レイアの発した言葉に一瞬、ヴォラクの体は固まってしまった。
確かにヴォラクはこの戦略を考える上で誰とも話し合おうとはしなかった。レイアとは少しだけ話し合ったが、それ以外は全く話し合っていない。1人だけで考え続けていたが、レイアの言葉によって気付いた事があった。
ヴォラクは誰にも頼っていなかったのだ。頼らず1人だけで独走していたのだった。
素直に頼るべき選択を取るべきなのだが、ヴォラクは1人で走ってしまっていたのだ。
思考を巡らせると、すぐにヴォラクはレイアに頼る選択を選ぶ事にしようとした。
(あれ?僕は何で誰にも頼らなかったんだ?何故最初から、1人だけで考えていたんだ?こんな事なら、最初から頼っていればよかったのに………まるで馬鹿だな僕も…)
すると、レイアはヴォラクと目を合わせ内心焦っているヴォラク安心させる様な表情を見せた。
「ヴォラク、頼ってくれていいんだよ?」
その時、ヴォラクはハッとした。何で今まで気付かなかったのか。分からない、思い付かないと言うのなら、さっさと誰かに頼れば良かったのに。
1人だけで悩み続ける事はなかった。ヴォラクは素直にレイアに頼る事に事にした。
今は1人だけで全てにおける戦略を考えるのは無理だと判断したので、レイアに頼ることにしたのだ。
「レイ、すまない。頼らせてもらう…」
「最初から、そう言えば良かったのに。それじゃ、私が前から想定して考えてある既存のフォーメーションの戦略だけど、それでもいいかな?」
「僕は一向に構わんから、説明してくれ。レイの指示で動く」
「うん、分かった。それじゃ説明するね。まず兵士達の纏め役については兵士隊長の「バリエル」が務めるから、そこはバリエルに任せてくれていいからね」
バリエル?ああ、いたなそんな奴。模擬戦所望しておいてあっさりと負けて、僕に何かしら言ってきた奴だな。確か貧困育ちだとか弱そうだとか言ってきた奴だったな。
そして、何故か僕が強かったせいか突然謝ってきて新人君呼ばわりしてくる人だったな。
兵士の中ではNo.1だと聞いていたが、まさか兵士隊長だったとは。これなら兵士達全員を纏められる事は容易だろう。
実際ヴォラクはこの多くの兵士を全て纏めあげる事が1番の難題だった。多くの人数を指揮するのは大きな壁となると感じていたのだ。
しかし、それを指揮してくれる人が代わりにいると言うのならあまり問題はないだろうとヴォラクは感じた。
「心配するな、新人君。君が全て背負う必要はない。兵士達の事は俺に任せてくれ。兵士達は俺を先頭に物理武器での【攻撃部隊】城外で魔法を行う【遠距離攻撃部隊】城壁上からの弓矢での攻撃を行う【支援攻撃部隊】負傷した者を城内で回復させる【支援部隊】の4つに分ける予定だ」
「因みに私とヴォラク、血雷さんは【攻撃部隊】に分ける予定だから。サテラとシズハは魔法による攻撃を行う【遠距離攻撃部隊】に分ける予定だからね。そして………」
「そして?」
「後は私達攻撃部隊は全員敵に向かって突撃するだけ!」
「結局、突撃するんかぁ―――――い!」
これじゃ、僕が考えてた事と同じやないかぁ――い!
これじゃ戦略も陣形も跡形もないよ!向こうだって何かしらの戦略や陣形を考えているのに、レイも同じ突撃を考えてるんじゃ意味が……………
あれ?でもよくよく考えてみれば……
例えば、剣を1本持ったとしよう。本当に剣が1本しか持っていない状況だったとしよう。
そしてこの状態で敵を前にしたとしよう。もしこの状態で魔法も遠距離攻撃の武器も持っていない状態だったとしよう。この状態で出来る事はなんだろう?
敵を前に持っている武器は剣1本。
これじゃ本当に突撃しか出来ないじゃない。これじゃ戦略とかないかも……
よくよく考えてみれば剣を1本持った所で陣形も戦略もないかもしれない。
武器を持った者は、突撃する事しか出来ないとでも言うのか?
剣しか持たない者=突撃
レイだって剣を使って戦っている。姉さんだって刀を使い戦っている。
この2人は確かに戦いにおいては無駄な動きや後方に待機させるのではなく突撃させるのが無難なのかもしれない。だって剣持ってて後ろで待機ってのもおかしくないかな?後ろに待機させるのって普通魔法とか支援攻撃する人とか回復役の人ぐらいじゃないかな?
いや、ちょっと待って。僕が突撃する意味ある?
そもそも僕って剣を使う事ってあんまりないよ?一応ビームサーベル持ってるけど、僕って剣より銃を使って戦う人なんだけど?実は剣を使うのって僕は苦手なのよ。そんな剣士みたいな事が出来る人じゃないのよ!
それなら後方からバスターブラスターとかツェアシュテールング撃ってた方が良いんじゃないの?根本的にそこ間違ってない?僕のポジション完全に間違ってない?
て言うか、この作品のタイトルに銃って言葉入ってんのに、主人公が銃じゃなくて剣で戦ってたらタイトル詐欺になるじゃなぇか!銃じゃなくて剣を使うなら、そうタイトル改変しとけよ!
↑これを誰が訴えているのかは不明。
え、何?僕に恨みでもあるの?さっさと突撃して死ねってか?根本的に全て崩壊させろってか?
いや、ちょっと待って。思い当たる節がある。何で僕も近接戦闘する事になってしまったかを。
理由
レイと本気で戦った時に…………ビームサーベルなんか使ったからだァァァ!!!
やめとけば、よかった!本当にやめておけばよかった。ビームサーベルなんか使わずにバスターブラスターでも……←コイツレイアとの戦いの時にバスターブラスターを置いてきています。なので使えません。
あ、そうだったわ。
それなら、素手でってか?流石に無理……と言うか、あの時はビームサーベルしか持ってなかったの!取りに行く暇なかったの!あの場で斬りかかってたんだから、そのままノリで戦いに突入して隠された的な能力発動させちゃったの!レイ強かったからあの能力も発動出来たの!結構カッコイイと思ってたの!
と言うか……終わった事言っても意味ねぇじゃん!てめぇさっきから言い訳ばってしてんじゃねぇか!少しは前の事を見ろ!前の!
ってこんな事している暇はない、そんな事よりも今は目の前の事に集中した方がいいんじゃない?
今後ろ振り返ってる暇があるなら、前を見た方がいいよ?どうせ過去は変わらないんだ。変えるなら、過去じゃなくて未来を変えろ。いちいち後ろを振り返ってばかりいる主人公なんて作者はあんまり見た事ないよ?
ったく、ビームサーベルで斬りまくれってか?
レイと姉さんと僕の3人で百人斬り競争ってか?何だよその三銃士みたいなの?三銃士じゃなくて三剣士になっちゃってるよ。
僕が求めてるのって、そんな王道の異世界じゃないの!剣と魔法のファンタジーなんて在り来りな事は僕、求めてないんだよ!異世界召喚は嬉しいけど、こんな事は勘弁だよ!
もっとこんな感じで……
「剣ではなく、僕は銃で全て壊すだけだ…」
的な?間違ってない?これも良いと思うんだけど?………
う~ん……
迷うなぁ~
「と言うか…………回想挟み過ぎじゃね?これじゃいつになったら戦い始まるのよ?もう読者の皆様方待っているかもしれないよ?さっさとしろ」
「すいません…」
軸を戻そう。いつまでもヴォラクだけの回想や脳内での話なんてしていたら、テンポだだ下がりだからね。
「いや、ヴォラク。基本的に【攻撃部隊】って突撃するのが普通だよ?」
「でもよ、そしたら後ろから魔法攻撃とか弓矢とか飛んでくるんじゃないのか?」
「その為に【支援攻撃部隊】と【遠距離攻撃部隊】があるのよ?この2つが向こうの部隊と交戦している間に私達【攻撃部隊】が突撃する。これ戦略の中では結構使われるよ?」
そう言う事だったのか。大人数で突撃すれば、あっさり蜂の巣と言う事ではないらしい。後方の部隊は敵の後方部隊を抑えると言う事らしい。
確かに、それなら大人数の突撃でも被害が大きく出る事はない。
それにヴォラクは現実の戦争とこの世界の戦争を重ねすぎてきた。
よくよく考えてみればこの世界って銃とか大砲とか戦闘機とか戦車がないじゃん?
ヴォラクは銃持ち相手に突撃したら撃たれると思っていたのだが、この世界に銃はない。それを踏まえて考えてみれば突撃って案外この世界ではベタな戦法なのかもしれないと感じた。
それなら突撃しても悪くはない?かもしれないとヴォラクは思った。
「成程、分かった。じゃあ僕はレイと姉さんと一緒に敵部隊への突撃、その後は敵の中枢から全て破壊していく、それでいいのか?」
「間違ってないよ。突撃後はもう殆ど自分なりの戦い方で大丈夫だから。貴方の専用の武器も惜しみなく使ってくれて構わないから」
「了解した」
と答えた瞬間、城外から耳に響く音がした。どうやら、もう5分経ったのだろうか。向こうが5分待つと言ったのだが本当にそこは待ってくれたのだった。
ったく日にちは間違えて来るくせに、時間はちゃんと守るなんて………どっちなんだよ?守るのか守らないのか。
取り敢えず、最後の打ち合わせだ。ヴォラクはレイア達4人を自分の元に呼び寄せる。
もう戦いが始まると言うが、最後の打ち合わせと言う事だ。
「サテラ、取り敢えずお前のバスターランチャーと僕のバスターブラスターは交換だ」
「え?どうしてですか?」
「まず第一に、僕は今回突撃する部隊に割り当てられている。つまり、大多数の相手と正面から殺り合う事になるんだ。そんな中であの大型で結構重量もあるバスターブラスター片手に戦えると思うか?」
「普通に考えたら無理ですね。人間の腕力であの大きな銃を片手に剣で戦闘を行うのは愚策だと思います」
結構ズバッと言うんだな。まぁ、どうでもいいけど。
「正解だ。だから、まだバスターランチャーはバスターブラスターに比べれば軽い。それに、バスターブラスターは威力もバスターランチャーよりも高い支援攻撃をするサテラならランチャーじゃなくてブラスターを使う方が良いと思うんだ。それに僕の腕力なら一応ビームランチャーを片手か背中に抱えながらでも剣や他の銃を使いながら戦闘は可能だ。その為、今回サテラにはバスターランチャーではなく、バスターブラスターを使ってもらう事にする。後方からの支援攻撃と言う立ち回りの中ではサテラがバスターブラスターを使うのは最善だと僕は考えている。使うよな?」
「勿論です。後方での支援攻撃の為には私のバスターランチャーではなく、主様のバスターブラスターを使うのが最善です」
「よし、なら喜んでこのバスターブラスターを貸そう。サテラのバスターランチャーは僕が使う、いいな?」
「承知致しました!」
そして、サテラは既に持ってきていた、自分のバスターランチャーをヴォラクに手渡した。そしてヴォラクもサテラと同じ様に地下室から持ち出していていたバスターブラスターをサテラに手渡した。
「っく………これ、結構重いですね……」
「まぁ、バスターランチャーと比べれば結構差があるからな。一応今回は固定砲台って訳じゃないから、移動も必要とされる。動けるか?」
「は、はい!一応動く事は出来ます」
「なら、問題なし………って訳でもないか」
「ん?」
その問題とは、ヴォラク達が配属された【攻撃部隊】についての問題だ。
今回この【攻撃部隊】に配属されているのはヴォラクと血雷とレイアの3人であり、この3人が【攻撃部隊】の主戦力となっている。ただしヴォラクは怪しい所。
しかしながら、怪しい所は他にもある。それは主戦力の3人で一体何人殺せるかだ。
相手の数はこちらは把握しているが、その数は圧倒的な差がある。
3人で一体何人斬り伏せられるか……
一応仲間の兵士がいるとは言っても、実質的な主戦力はヴォラク、血雷、レイアの3人だ。
この3人の内1人でも制圧されれば戦力は大きく下に落ちてしまう。殺られない様に立ち回る必要があるがヴォラクはこの様な戦いなど経験した事がない。
それに、レイアは平和主義なので国同士の戦いなど経験した事がないかもしれない。血雷だって同様だ。だが、聞くだけ聞いてみる事にする。聞いてみなければ分からない。
「なぁレイ、姉さん、実戦の経験はあるのか?因みに言うが、僕は全くない……」
「私だってこんな事初めてだよ。やった事があるのは模擬戦だけ。こんな国同士の戦争なんて……した事ないよ」
「流石に戦争に参加した事ねぇなぁ~でも、アタシの腕なら人ぐらいは斬れると思うから安心しな!アタシは取り敢えず前に出て斬って斬って斬りまくるからさ!」
「意気込みよぉし!」
まぁ、多分?
大丈夫だろ?多分……
「あれぇ?姉さん何付けてるの?」
ヴォラクが血雷の頭の方に目を向けると、何故か血雷は何処からか取り出した髪飾りを取り出す。それは少し小さめなかんざしだったのだ。赤と白を基調にしたかんざしを血雷は頭の髪の所に付けていたのだ。
そして、血雷の美しかった姿に更に磨きがかかった。しかしどうして今のタイミングで?さっきまでは後ろに髪を侍風に束ねていただけなのに、何で今更髪飾りなんて?
「姉さん?何で髪飾りなんか……」
「お守りみたいなもんだよ。深い意味はねぇぜ」
「ふぅ~ん。ならいいんだけ……」
おっと……どうやら時間らしい。
敵が城壁に攻撃を仕掛けてきた。どうやら時間がやって来たらしい。だが、焦る事はない。
さぁ、始めよう。最初の戦争と言うものを。
数人の兵士達が城門に近付くと男の兵士数人がかりであの頑丈な城門を開いていく。押して開いていく様だ。今回は引くんじゃないんだね?
すると、レイアが再び4人に話しかけてくる。
「それじゃあ、作戦通りで行くよ。ヴォラクと血雷さんと私は門が開いた瞬間、敵部隊に突撃、シズ八とサテラは門から出た後は後方で敵部隊に遠距離からの攻撃、そして狙うのは敵の大将だよ?その後はもう暴れる様に戦ってくれても構わない。取り敢えず…………行くよ!」
「レイ、あんたに着いていかせてもらうぜ。あんたを守るのも僕の役目だ…」
「辻斬りといこうじゃねぇか!全員の首を斬ってやんよ」
「シズ八、支援攻撃で敵の無力化?だったよね?」
「無力化出来るか分かんないけど……頑張ろっか!」
そしてレイアは後ろを振り返ると、ヴォラク達の後ろに武器や鎧を着て戦闘態勢に入っていた仲間の兵士達に向かって叫ぶ。
「皆、きっとこの戦い。死ぬ様な場面も出てくる。だけど、お願い、王である私に……力を貸して!お願い、私と私の仲間に着いてきて!」
勿論、兵士達全員の答えは決まっていた。
着いていくと…誰もが思っていた………
兵士達は大声で叫び、互いに手に持っていた武器を天に掲げた。
ケツイが固まった様だった。すると門を開けていた兵士が叫ぶ
「レイア様!門を開けます!」
「……行くよ!」
ヴォラクもツェアシュテールングとリベリオンを握り締めると、いよいよか!と思いながら門が完全に開くのを待つ。
血雷も愛刀を握り、鈍く光る刃を見つめ精神を統一させる。
レイアも愛用のライダースーツの様な服を身にまとい、実態の存在しない剣を2本作り出すとヴォラクや血雷同様に剣を構えた。
「か、開門!」
目の前には立ち塞がる様に並ぶ敵の山。門が完全に開くなり、敵兵は一斉にこちらへと向かってくる。
関係ないさ。敵は殺すのみ。
ヴォラクは後ろが詰まらない様に速攻で血雷やレイア、サテラ、シズ八と共に走り出した。
戦場を駆ける5人の戦士は戦いを繰り広げていくのであった。