66話「奇襲」
大丈夫な気がしてきた。
一応あの後、普通に寝る事は出来たので、現在の気分は普通にスッキリとしている。
幸いにもあの後ハッスルした後は、普通に服着て寝れる事が出来た。
そのお陰で、今は元気な感じで今朝、鏡で自分を見ても、目の下に隈も出来ていなかった。実際の所、前は結構な割合で目の下に隈が出来ていた。
だが、今日は隈なんて一切出来ていなかった。
何故かは分からないが、正直少し安心した。
恐らくだが、ちゃんと寝られていると言う実感が得られたからだ。
やっぱり夜更かしのし過ぎはやっぱり良くないよね。
これからももう少しちゃんと寝る様にしよう。寝る時間が減れば、それだけ体力も回復しないし体の体調も悪くなってしまう。
そんなデメリットを受けてしまうぐらいなら、さっさと寝た方が良いので、これからはなるべく寝るのを早くします。
これは偽り?じゃないです。ちゃんと寝ます。
なので今は元気で気分も落ち着いているので、ベットからあの部屋から出ていつもの黒色の服に着替えて、レイアと共にまた多くの武器を作っていたあの薄暗い地下室に篭っている。
因みに今は新しい武器を作っている訳ではない。
前に製作した武器の改修を行っているのだ。改修している武器はヴォラクがこっちの世界に来て初めて製作した武器であり、リボルバー銃をベースに製作した銃「ツェアシュテールング」の改修を行っているのだ。
改修点としては、リボルバー銃を完全に分解し銃身やグリップ部分等も全て分解、分解し残されたパーツをベースに、新たに新規造形を行ったのだ。
リボルバー弾倉である、回転式弾倉(回転式シリンダー)をハンドガン等と同じ様にマガジン式タイプに変えた所だ。
1人では銃弾を装填するマガジンやマガジン式の銃を作るのは無理だったが、今回はレイアの力を借りた上で製作が可能になった。製作するのはデザートイーグルをモチーフに作るつもりだ。
他にも銃身を長銃身にしている。勿論だが薬莢も排出される。
まぁ、見た目はハンドガンみたいな感じ。勿論、色は黒色になっている。黒以外有り得ない気がする。
やっぱ僕のパーソナルカラーは黒色だ!←勝手に思い込んでるだけだからね。いや、本当だからね。本人が勝手に思っているだけで、誰かが決めた訳でもないからね?
そして、もう1つ。この銃のパーツは2つ製作してもらう事にした。
所謂二丁拳銃スタイルだ。簡単に言えば、ガン=カタスタイルで戦う事になるかもしれないね。
でも、デザートイーグルを片手で、しかも2つ同時に持ちながら、照準を合わせて撃ち、その目標に命中させるのって意外と難しいんだよ。
ちゃんと両手でしっかりと持って構えて、撃たなければならない。
ヴォラクは特異スキル「闇夜の天帝」発動時以外は何の能力も持たない。普通の人間と何ら変わらない平凡以下の人間なのだ。それに一応冒険者であるにも関わらず、剣も魔法も真面に、一切使えないそこら辺の雑魚当然なのだ。
そしてこの世界に同じ様に召喚された他のクラスメイト達は魔法が使えるだとか、勇者の様な圧倒的力を保有している奴が居るとか影が薄過ぎて誰にも気付いてもらえない暗殺者とか、そんな奴がいると言うのに。
しかしそんな能力を持った人達と比べて、この僕を見てみなよ。
全能力は非常に低い。しかも特殊な能力も何も持たない。挙句の果てには冒険者の基本でもある職業すら持っていない。
持っているのは、発動条件が厳しく、能力の安定性が全くないと言っていい特異スキル「闇夜の天帝」と物質を変換する魔法の習得を早める意図がよく分からない能力の2つしかない。
それに、職業などがない上に武器の1つ真面に使いこなせないので、そんな僕にはこうやって半分自作の銃を作って戦う事ぐらいしか出来ないのだ。
なので、今はこうやってレイアと協力して実弾を使う事が出来る銃を作っているのだ。
一応言っておくが、魔力を圧縮してビーム、又はレーザーの様にして発射するタイプではなく、金属製の物質を使って発射する実弾を使ったタイプのだ。
この魔力を圧縮して発射するタイプの銃ではなくこの本来の実弾を使って撃つタイプの銃の技術はまだ自分とその近くの人物(サテラ、シズハ、血雷、レイア←さっき教えた)以外は恐らく知らないだろう。情報が漏洩している事は絶対にないと考えていた。
もしも、この銃の情報が漏洩してしまったらかなり大変な事態に陥る可能性があると感じていた。
理由は先述したかもしれないが、説明しておく。
まず、銃を実弾で使った上での攻撃力は恐ろしい程の威力を持つ。
言っておくが、この世界に防弾チョッキや銃弾を完全に防ぎ切る事が出来る様な服など存在しないだろう。
ここを現代の時間的に見れば中世辺りが妥当だろう。そこに魔法が加わわったとしても、銃口から超高速で発射される銃弾を躱したり、その力で受け止める事は難しいと予想される。つまり避けなければ死ぬと言う事だ。当たれば死ぬと同じと言う事だ。頭や心臓なんかを銃弾が突き抜ければ即死は回避する事が出来ないだろう。これは大体の人がこうなるだろう。
それはヴォラクだって一緒だ。
言っておくが、この黒服は別に特別な服本体に力を宿していたり、特別な素材で作られている訳でもない。
単なる簡単な、どこでも手に入る様な素材で作られた黒い服だけだと言うのだ。
そんなちっぽけな服に超速の銃弾なんか命中でもしてみろよ。
ものの一瞬であの世送りは確定だ。
つまり死ぬと言う事なのだよ。つまり敵にこの実弾タイプの銃の情報が漏れてしまったら、敵側が実弾タイプの銃を大量に増産して他国を攻撃するのではないか?と考えているのだ。
まぁ簡単に言うと、敵側が銃を大量に作って銃片手に無双しちゃう!
みたいな感じだ。
なのでこの向こうの世界でしか使用されていない銃の構造及び、製作方法などは全て敵側の奴又は自分が安心出来る人物以外の人間には一切この情報及び話題に上げる事は絶対にしないと心に決めていた。
何がなんでも絶対に教えないと決めた。たとえ誰かに自慢したくても、紹介したくなっても本当に心から信頼出来る人物以外にはこの銃の情報は教える気は一切なかった。
よし、何やかんやあったが、取り敢えずリボルバー銃から大幅な改修を施したツェアシュテールング、そしてツェアシュテールングをベースにほとんど同じ様にして作った同タイプの銃「リベリオン」意味は反逆を指す。
この実弾タイプの銃であるツェアシュテールングとレベリオンの2種を用いて更に戦闘を有利に進める。
バスターブラスターやビームサーベルと言う魔力を用いて使用する武器もあるが、実弾を使う武器の存在はまだこっち側の人間で知っている人は全く居ないに等しい。効果なら実弾銃の方が大きいだろう。
二丁拳銃の所謂ガン=カタスタイルか、バスターブラスターを使った未来的戦闘スタイルか、それともビームサーベルを使った近接戦か←恐らく闇夜の天帝発動時以外はほぼ無理。
戦闘スタイルの幅は広がるばかりだ。
だが、面白くはなりそうだ。
あ、後1個言い忘れていた事があった。
前に武器作ったよね?その中に斧をベースに作った「ヴォルテックス」って言う武器があったのよ。
でもね……この武器使える訳ねぇだろぉぉぉぉぉ!!!
そもそもな、こんなバカデカい斧なんて前まで普通の高校生だった僕にこんなん振り回せるかってんだよ!←作ってたのは自分だが作ってる途中に気付く事はなかった。
普通に考えて無理なんだよ!ただでさえ重いんだ。それに斬れる部分だって多くはない。多いのではなく、その持ち手の部分が1番長いんだよ!こよ長い持ち手のせいで一々振るのにも時間がかかるんだよ。それに何度も言うけど重いし。
完全に振るのミスったらその隙に懐に潜り込まれて短剣でぶっ刺されるのがオチなのよ。
こんなの使う用途ないだろぉがぁぁぁぁぁぁ!!!!
魔力生成石だけ奪って、残りの所はダストシュート!持ち手の所なんてへし折ってやる!
これで解決!←絶対に解決してない気もするけど。
と言う訳なので、このバカデカい斧はグシャグシャにしてゴミ箱の中にLET'S GO!!魔力生成石は貰っていくけどね。
いつでもやっぱり、銃が1番さ。いつまでも古い武器に捕らわれて戦うのもやめた方がいいかもよ?
ただし、レイアと血雷は例外にする。
と言う訳で、使い物にならなさそうな斧は魔力生成石だけ奪って、ゴミ箱に捨てて忘れてしまおう。
終わり。
斧を捨てた所で、ヴォラクは無事に自前の銃の改修と自前の銃とベースに作り出した新たな銃を完成させた。
以前の自分の力だけで作り出した銃(ほぼお手製なのでガタガタな所が多かった。その為各所の部品も正規の部品と違って、完全にジャンクパーツと変わらない仕上がりだった)とは違い、レイアの力を借りた上で作り出したので正規の銃と変わらない仕上がりとなっていて、その耐久性や精度なども初めて自分で作った時に比べれば飛躍的に上昇している事が確定している。
まだ試し撃ちなどはしていないが、明日にでもなれば敵はやってくるので、近い内にこのツェアシュテールングとリベリオンの力を試す事は出来るだろうと感じていた。
「レイ、今回も協力ありがとうな。いつも迷惑掛けちまって」
「大丈夫だよ。ヴォラクの武器の改修と製作なら私も全力で力貸すから。で?今回の武器、明日……使うんだよね?」
その時のレイアの表情が少し暗くなる。
何か恐れている様な表情をしている。まぁ何が嫌になっているのかは大体分かっている。
あのカインと言う男だろう。ヴォラクの考えだが、レイアに強い執着心を持っている様にも感じた。
もしかしたら、ヴォラクが来る前からあんな感じで言い寄られていたのかもしれない。それなら今みたいに怖がる様な表情を見せるのにも納得がいくが、確証がある訳ではない。
「怖いのか?戦いが。それともあの男が嫌なのか?」
ヴォラクはレイアに聞いてみる事にした。分からない事は早めに聞く事が重要だ。
ヴォラクは椅子をもう1つ用意した。そこにレイアは座る。
「うん、両方。私は本当は戦いなんてそんな好きな訳じゃない。人を殺す事だって好き好んでしている訳でもないの。でも、あの男は本当に嫌なの……」
「何故です?」
「奴は昔から私に求婚を何度も申し込んできたの。元々国が隣同士だった事もあって、小さい時から知り合って、そしたら向こうが私に一方的な愛を押し付けてきたの。私だって最初はまだ小さい時はただの小さな冗談だと思っていた。でもそれは違ったの。一方的な、自分勝手な愛だったの……毎度毎度しつこく言い寄ってくる。毎回そう考えると嫌になりそうなの」
「なぁ、その男ってとある組の局長でゴリラみたいなキャラじゃ……ないんだよね?」
「あの人とアイツは180度違うわよ。あの人も確かにストーカー紛い、いや完璧なストーカーだけど、あの人は面白いし時々見せるカッコイイ所があって、1人の女を追い続けている人だから!アイツとは全く違うよ!」
うーん。カインって奴がどんな奴なのかは大体分かった。
一般的な粘着野郎だ。
断っていると言うのに、何度も言い寄ったりしつこく付きまとう。そんな奴だと思った。
「でもあの男は、1人の女を追いかけている訳ではないの。アイツには既に5人も女の子を侍らせているの。それなのに、そこに更に私を加えようとしているんだよ。6人目になれってね。幸せになれるだとか、君と愛し合いたいだとか、適当な御託を並べて、私を手に入れようとしている。あの男は本当に私が好きな訳じゃない。欲しいのは自分の性のはけ口となる女だけ。実際は私の身体しか見ていないんだよ。あの男は」
「おい…………そいつ。殺していいか?」
ヴォラクに大きな殺気が走った。その男をヴォラクは殺したくなった。
勿論だが、1発で楽に死なせるだなんて思っちゃいない。徹底的に痛め付けて苦しませて殺したくなったのだ。
結婚したいだとか、愛し合いたいだとか、適当な事抜かしておいて、結局はただのはけ口としてしか、彼女の身体しか見ていないと言うのだ。
汚過ぎて虫唾が走る。
そんな奴にレイアを素直に渡す訳にはいかないと感じた。
まだレイアと知り合ってほんの数日しか経っていないが、その男がどれくらいのクズ野郎でレイアがどれ程苦しんでしまっているのかは、理解する事が出来た。
まだヴォラクはレイアの事なんて全く分かっていない。しかしそれでも彼女を守りたいと思ったのだ。
「っ!?殺す気なの?」
その時のヴォラクの瞳が恐ろしい程までな暗黒に染まり、邪悪な表情を見せた。
どう見てもその表情は悪に包まれた様な表情だった。黒く輝く瞳とニヤリと蔑んで、嘲笑うかの如くな表情はレイアの記憶に焼き付く様に記憶された。
「当たり前だろ?そんな奴はただ殺すだけじゃ面白くない。捕まえて、監禁して徹底的に痛め付けて、苦しませてそして死を懇願するまで弄ぶ様に痛ぶる。それぐらいしないと僕は楽しくない」
「ヴォラク?もしかして…貴方…」
「ん?」
「いいえ、何でもないよ。ごめんね」
「あ、あぁそうか」
そして2人の会話はこの言葉を最後に途切れてしまった。
これ以降会話を続ける場合はヴォラクかレイアのどちらかが話を切り出さないと永遠に互いに沈黙が続く事になってしまう。
取り敢えず、ヴォラクは作業台の上に置いてあった改修したツェアシュテールングと新たに作り出した武器リベリオンと手に取り、武器を作った際に銃のマウント用として剣の納刀用の革素材を流用して作った銃のホルスターを2つズボンの腰のベルトにマウントし、ホルスターに2つの銃を格納する。
勿論だが、ホルスターの色は黒色だ。
さてと、じゃあ何も言わずに地下室から出る事にしますか。
取り敢えず、レイアに手でも振って「先に外出てるよ」とでも言っておけば、問題はないだろう。
外に行けば、サテラ達に会えるだろう。
サテラ達3人は各自で訓練していると聞いているので、すぐに会えるだろ……………
突然の出来事でヴォラクは心臓の鼓動が一瞬とても速くなった。
何も当然の事だろう。突然として、地上と地下室を繋ぐ扉が勢い良く開いたからだ。激しく、強く開けた際の大きな音にも驚いてしまったがそれよりもこの地下室の扉って結構古そうなので、壊れて生き埋めにならないかの方が心配だった。
取り敢えず、誰が入ってきたんだ?
「主様!大変です!」
扉を勢い良く開けてきたのはサテラだった。レイアも何事!?みたいな表情を見せてしまっている。
何があったんだ?ヴォラクは予想してみるが検討があまり思いつかない。
ピザの宅配か?将軍がやって来たのか?それとも時限爆弾か?はたまた巨大兵器でも現れたのか?
間違いなくこの四つの予想は外れています。
「サテラ?何があった!?」
「奴が、奴が攻めてきました。完全に奇襲攻撃です。奴ら、攻撃は明日行うって言っていたのに!」
どうやら、敵を信用し過ぎていたみたいだ。
そもそも話し合いなんて通用しない相手だとヴォラクだって薄々気付いてはいた。しかしそれなのに気付く事が出来なかった。
これはヴォラクにとっては大きな失態だ。
取り敢えず、本当なら明日に攻撃を仕掛けてるはずなのに、今日攻撃を仕掛けてきた。
ヴォラクはこの状況を変えるのは難しいと考えていた。
理由は明白だ。これは完全と言っていい程の奇襲攻撃。
まだ敵すら目視出来ていない。敵の姿は完全に分かっていない。
UNKNOWNと言う事なのだ。
それに、敵の人数やどんな陣形で攻めてきているのかすら分からない。それにレイアが明日攻撃を仕掛けてくると兵士に連絡している為、今から作戦会議などもなしでの急な戦闘では陣形や戦略などもままならないだろう。
更にレイアの国の兵士の人数が少ないと言う訳ではないので、この兵士全てをまとめあげるにはこう言った急な状況下でも高い指揮力と判断力が必要となる。
しかし急な戦闘で兵士全人数をまとめあげる指揮力などヴォラクは持ち合わせていない。
そんなに簡単な事ではないと言う事ぐらいは分かりきっていた。
それに練習などはなし。事前準備等は一切行う事が出来ない。
つまり一発本番と言う状況で相手に挑む必要があるのだ。
しかし相手だって人数が少ないと言う確証や保証はない。最悪連絡が伝わらず、誰も戦闘準備が整わなければ5人(ヴォラク、サテラ、シズハ、血雷、レイア)で戦う可能性だって捨てきれない。
ヴォラクは突然過ぎる状況に焦り始めていた。額からは焦りのせいで汗が冷や汗が僅かに滴り、呼吸も少しだけ焦る様なスピードになる。
でも、レイアはそんなヴォラクの肩に手を置いた。
ヴォラクがレイアの方を見ると、レイアはヴォラクと違い、落ち着いた表情を見せていた。ヴォラクの焦る様な表情とは全く違ったリーダーの風格を匂わせる表情をしていたのだ。
「取り敢えず、外に出てみよう。奴らの人数や陣形を確認しないと。その先の事はまず最初の段階を終えてからにしよう」
「分かった。取り敢えず行こう。サテラ、シズハや姉さんにはこの事伝わってるか?」
「はい!2人共知っています!」
「よし、取り敢えず行くぞ!」
ヴォラク達3人は地下室から脱出し、外に向かった。
一旦は敵の情報を探る必要性がある。