60話「チェス盤の様に」
鏡は硬い。ガラスの様で軽く叩いても割れる事はない。
それは水の様に揺らめく事はない。鏡の中から自分が出てくるだなんて普通は有り得ない。
本来なら、鏡に映るヴォラクは同じ動きをするはずだ。
手を上に上げれば、鏡の中の自分も手を上げるし表情を変えれば、鏡の中の自分も表情を変える。
鏡とはそんな物だ。
しかし、今ヴォラクが映る鏡は違う。
その鏡に映る彼は鏡の中からひょいと出てきたのだ。
水面から飛び出した魚の様に鏡の表面は歪み、もう1人の凱亜である劾が現れたのだ。
「見てみろよ。こっちの世界じゃ、この通りだ。誰からかは知らんがお前と違う自分の肉体も貰っちまったし、お前と違って魔法を使う為の魔力やあらゆる特異能力も貰っちまったからな」
凱亜とはまた違う肉体だった。彼の姿は別の肉体そのもの。
凱亜の心の中に潜んでいたもう1つの人格ではなく、1人の男。
劾は1人の人間となっていたのだ。
一体どうして?
劾は凱亜のもう1つの人格。凱亜と別人と言う訳ではない。凱亜のもう1つの人格であり肉体など保有しない。
心の中で生きているだけの彼が何故肉体を保有し今、凱亜の目の前に現れているのか。凱亜には全く分からない。
考えても、こんな経験は一切ないので考えが一切浮かんでこない。
しかし、凱亜はそんな事よりも、劾に対して怒っている事があった。
何でお前だけそんな力持ってんの!?
「はぁ!?何でお前だけそんなチート能力貰ってんだよ!?お前だけ俺TUEEEE的な事でもしようってか?僕なんて魔法も使えねぇし職業すらないなんだぞ!不公平にも程があるぞ!て言うかお前、職業なんなんだ?」
「知らねぇよンなもん。職業確認するアイテムなんて持ってねぇからな。どんな職業なのかは俺にも良く分かんねぇ」
それは、何故劾だけそんなに特異な能力を所持しているのかだ!
僕なんて何にもなかったぞ。
お陰で役立たず呼ばわりやニートだの言われて最悪だった。なのに何故劾は魔法だの特異能力だの手に入れてんだよ。
しかもその力をくれた人不明だし。
僕は何て不運な男なのだろうか。
「じゃあ質問を変えよう。その肉体、その魔力や特異な能力を誰から手に入れたんだ?」
「それも分かんねぇってさっき言っただろ?お前がこの世界に来た時、知らねぇ間にこの力が生まれたんだよ。お前は自分の事に精一杯だったせいで俺の事になんて気付いていなかったけど、お前が知らねぇ間にこの力を得てるんだよ」
「ズルい……」
そのやる気のない言葉に劾は怒りの表情を露わにして、凱亜の服の胸倉に掴みかかる。
服の胸倉を掴まれ、壁に押し付けられる。
劾の力は非常に強かった。
壁と劾の手に挟まれて、胸が痛くなる。
壁に押し付けられたら声が漏れる。
少し痛い。
しかも掴むなりブンブンと左右に振ってくるので脳が揺れて頭がクラクラとする。
「あぁ!?こっちだって欲しくて貰った訳じゃねぇんだよ!さっきは我慢して言わなかったけどよ!俺はなぁ自由気ままに生きたいんだよ!お前みたいな異世界に憧れる馬鹿と違って俺はマトモな奴なんだよ!普通に飯食って生きてけるなら、それでいいんだよ!」
いや、人の心の中で生まれた奴が何言ってんの?
「何だよ、乗れないな。僕だって欲しいならその力欲しいよ。僕なんて何の力も得られなかったぞ。お陰で銃とビームライフル作る事になったんだぞ?」
「………それならそれで良いんじゃないか?お前は異世界にはない武器を持ってる。充分だろ?お前はその未知の力を持つ武器の他に何を求める?力か?魔法、魔力か?それとも他に欲しいものがあるのか?」
欲しいもの?
別にない。
聞かれても今はない。と答えるだろう。
凱亜は「何もない」と答える。
それに対して劾は驚く言葉を口にする。
「何だよ、ねぇのかよ、しょうもねぇな…………あっ、もう時間らしい…」
時間らしい。
その言葉に驚いた。
何だ、この世界に居られる時間制限でもあるのか?鏡の外に出られる時間には制限があるのだろうか?
すると劾は凱亜に背を向けて再び鏡の中に戻ろうとする。
劾が目の前に置かれた鏡に手を置くと、鏡の中に劾の体は吸い込まれていってしまう。このまま何も呼びかけなければ、劾はまた鏡の中に消えてしまうだろう。
またいつ会えるかなんて分からない。今会えた時に聞ける事は聞いておきたいものだ。
劾に聞きたい事はまだ山程ある。
「おい!劾、待てよ!」
「もう無理だ。これ以上は時間がoverする……だが、最後にこれだけ言っておく…」
聞きたい事を聞くのは無理そうだった。
しかし、劾は鏡の中に戻る前に凱亜に1つだけある事を言ってくれた。
「俺は魔を司り、お前は技を司る、そしてこの2つが融合する時…………悪い、これ以上は無理だ!すまんが帰らせてもらうぜ!」
そして、劾は鏡の中に入り、そのまま消え去ってしまった。何か言おうとしたが、その前に劾は凱亜の前から消えてしまった。
周りを探しても、劾の姿はなかった。
凱亜は脳内で劾に呼びかけるが、その声が聞こえてくる事はなかった。脳内には劾の姿が見当たらなかった。
彼は凱亜の心の中で生まれた存在だが、今彼は凱亜の心の中にはいなかった。
呼びかけても探しても見つかる事はなかった。
しかし、また声が聞こえてきた。
だが、その声は男ではなく女の子の声だった。
それに聞いた覚えがある声だ。
レイアの声だ。
きっとヴォラクを呼びにきたのだろう。
「ヴォラク?何処行ってたの?」
鏡の中の自分と話してた。
何て言える訳ない。なのでヴォラクは適当に。
「す、すまん。トイレ行ってた」
「あぁ、そう。なら、早く来て。作戦会議しましょう」
「あぁ、分かった」
レイアが自分の部屋の方に歩いていく。
ヴォラクは彼女に着いていく。
そしてしばらくの間、歩いていた…………
城の中を結構歩いていると、レイアの部屋の前に辿り着いた。
部屋と言っても、ドアの前なので部屋の中がどうなっているのかは分からない。
しかし、レイアはすぐにドアを開けてくれた。
女の子の部屋ってあんまり入った事がない。
少しだけ緊張してしまいそうだ。
レイアがドアを開けると「ささっ、入って」と手招きするので、ヴォラクは少しだけ緊張しながらもレイアの部屋に入った。
部屋に入ってみて思った事なのだが……
女の子っぽさがない!
え、何この部屋。
普通に見た事ないんだけど!?
部屋に入るなり驚かされた。
まるで司令室じゃねぇかよ!
正面にはどう見ても1番偉い人が座る様な大きな椅子。そして横にとても広いテーブル。
かなりの広さがある部屋には、他にも色々な物が置かれていた。
棚には写真や本がぎっしり入っている。そして棚には過去に馬鹿みたいになってやり込んだチェス盤が置かれていた。勿論駒の入った小さな箱もある。
気付いたらチェス盤を手に取っていた。自分の意志とは関係なく、無意識に手に取っていたのだ。
しかもこの部屋の中にも部屋があると言う事に驚きだ。簡単に言えば、ドアがまだ部屋の中にあると言う事だ。
多分トイレとかお風呂があるんじゃないか?とヴォラクは予想。
更には壁には何かかけてある。しかもガラスの様な透けた板に包まれて、壁に置かれている。
中にはどこかで見覚えのある物があった。間違いなく見た事がある様な物だった。
しかし、今はそれよりも戦略を立てる方が大事だ。
既にレイアは用意をしてくれていた。
あの横に長いテーブルではなく、普通に一対一で話せる様な少し大きめの正方形のテーブル。そして木で出来た2つの椅子を用意してくれていた。
早速、ヴォラクとレイアは木で出来た椅子に座る。
さぁ、戦略を立てる時間だ。
始めよう……
「で?レイア。戦略の案はあるのか?」
ヴォラクは仮面を脱いでいる。
仮面の下には彼の表情がある。その顔は真剣な顔だ。
「…まだ全部は考えてないの。戦うって言われたの、今日だし…」
「そう言うと思った。じゃあ、いきなり考えるのもあれだからさ……これ、やろうぜ?」
と言ってヴォラクが取り出したのはさっき棚から無意識に手に取ったチェス盤だ。
チェスだって1つのボードゲームであり、戦略ゲームでもある。
どう攻めて、どう守り、どう敵を討ちKingを撃破するのか?
チェスの駒1つ1つの動きを把握しチェス盤の上で動かす。これは1つの戦略と呼ぶだろう。
そしてヴォラクはチェスが大好きだった。
幼い時に父が突然チェスをやろうと言い出してきたのだ。
勿論だが、父のチェスの腕は恐ろしいものだった。
母も姉も妹もそして僕も勝った事は1度もない。
前なんて父VS母、姉(2人)、妹(2人)、凱亜の5対1と言う感じで父に挑んだが、見事に負けた。
しかし、ヴォラクだって決して弱い訳ではない。
父から学んだチェスの戦い方。
父のチェスの戦い方の言葉が脳内で蘇る。どんな事を言っていたのか、今でもよく覚えている。
「ポーンを前に進ませ、ルークとビショップを使って高速で接近し、ナイトで味方を飛び越え敵を討つ。そしてクイーンは惜しみなく使え。強いし取られれば大きな戦力ダウンとなるがそれ以上にクイーンの力は強大、どんどん使うんだ。いざとなれば、キングだって進ませればいい。相手が攻め込む前に、こっちからどんどん攻めていけ。攻められる前に攻める。それが父さんの戦い方」だと言っていた。
チェスの戦い方は人それぞれあると思うのだが、ヴォラクの父はこの様な戦い方をしていた。
「え?チェス?ヴォラク、チェス出来るの?」
レイアは目を輝かせる。
まるでチェスの相手を欲するかの様な輝いた目だ。キラキラとしそうな目でヴォラクを見つめる。
うん、チェスは出来る。
「あぁ、出来るぞ。昔父さんに教えてもらってたからな。全然出来るぞ」
「それなら、早くやろう!チェス、誰も出来る相手いなかったんだ!早く駒並べてやろう!」
「分かった、分かった。そう焦るなって」
そして2人はチェス盤の上に箱の中から取り出したチェスの駒を並べていく。勿論だがチェスの駒の色は白と黒だ。
白が先手で黒が後手だったはずだ。ヴォラクは黒の駒を選択する事にする。
そしてチェス盤の上にチェスの駒を並べた。
ルークを端にナイト、ビショップ、そしてクイーンとキングそしてその前にポーンの並びだ。
レイアは白、ヴォラクは黒の駒だ。
先手はレイアだ。
「……まずはポーンね」
手始めにレイアはポーンを動かす。最初に動かす駒は大体ポーンだ。
それはヴォラクも同じだった。
「同じく…」
ヴォラクも同じくポーンを動かす。
まずは様子見だ。
その後、レイアはポーン以外にもビショップ、ルークやナイトを動かしていく。
しかしクイーン、キングに手を伸ばす事はなかった。
それに対してヴォラクは…
父に教えてもらってた通り「攻められる前に攻める」のプレイを行っていた。
どの駒でも構わない。クイーンだろうがキングだろうが、容赦なくチェス盤の上で動かしていく。
レイアは慎重な行動が多く、クイーンとキングは一切動かさなかった。
しかしそれに対してヴォラクはクイーンとキングを簡単に動かし、チェス盤の上を舞う。
一部の駒しか動かさないレイアに対して、ヴォラクは全ての駒を操るかの様に動かしていく。
全てヴォラクは頭の中で考え、敵の大将をどうやって討ち取るかの戦略を立てていたのだ。
ヴォラクは攻められる前に攻めるがモットーだったので、敵の穴を掻い潜って敵陣に突撃するプレイスタイルでチェスを行っていた。
気付けば、レイアの駒は少しづつ減っていく。ポーンを取られた時は焦りを見せていなかったが、ルーク、ビショップと取られていくと段々と焦りの表情を見せてきた。
どうしよう、どうしよう!?と焦る様だ。
完全にバレバレだったので、少し聞いてみる事にした。
「レイ、少し焦り過ぎだ。戦場じゃ焦ったり殺しを迷った奴から死んでいくんだ。何事も焦らずやってみて」
「ふぅ~ふぅ~落ち着け。たかがビショップとナイトを全部取られただけ。まだ勝機ある。まだ動く駒はある………それなら、クイーンとキングを…」
「はい、チェックメイト」
「うそ~!」
落ち着く前に勝負が着いた。あまりにも呆気なく着いてしまった。
父と比べればこんなの屁でもない。
レイアもチェスの経験者らしいが、父に比べればその強さの差は非常に大きな差だった。
父が強すぎただけなのか?それともレイアの実力が低いだけなのか。
ヴォラクには今一良く分からなかった。
しかし、結局勝ったのはヴォラクだった。
レイアの輝いていた目は敗北してショボーンとしてしている様な目になってしまっている。
しかし、レイアはすぐに立ち直った。復帰が早い様だ。
1度凹むと3日は落ち込むヴォラクと違って。
「す、凄い。ヴォラクってチェス強いんですね!」
「ま、まぁな。一応やり込んでたからな。でもレイアも結構強かったぞ…」
「ほ、ホント?……ありがとう」
互いに頬が赤くなる。
褒められて嬉しいからだろうか。
それにヴォラクはこんな白銀色の髪をしていてとても美人な女性に褒められてしまったのだ。
嬉しくて頬が赤くなってしまっても仕方ないかもしれない。
やっぱりレイアは綺麗だ。
服装も。(黒色のロングブレザー、胸元を開いた黒色のベストシャツ、ベルトを締めた黒色の長ズボン)全体的に黒色だ。ヴォラクだって全身黒色の服の事が多い。主に黒色のジャケットや黒色のローブが多い。(偶に葡萄酒色になる時もある)
「って、僕ら何やってたんだけって?」
「あ、戦略立てないと…」
「すまん、すっかり忘れてたわ」
「ごめん、私もチェスに夢中で忘れてたわ。じゃあ今からでもいいから、戦略立てる?」
「賛成だね。じゃあ、この土地近くの地図を持ってきてくれ。地形がどうなってるか確認する」
「分かった。ここの土地の地図ね。取ってきますわ!」
そしてレイアは部屋の中に建てられたドアを開けて、もう1つの部屋に入ってしまった。
ヴォラクは取り敢えず、椅子に座って少しの間だけ待っている事にした……
2分後……
「おまたせ~取ってきたよ。この土地の地図」
そう言って、レイアは藁半紙の様な丸められた紙を開き、テーブルの上に開いた地図を広げる。
地図に示されている事は読めない訳ではない。
何が書かれているかは大体把握出来ている。
どうやら、森や谷、川などと言った自然な空間は無いようだ。
レイア達の国である『ホープ』そしてカインの国である『キオスク』の間には何もない。
簡単に言えばただの平野なのだ。
ホープからキオスクまでの距離は大体計算しても5km程しかない。つまり場所はかなり近い所にあるのだ。
簡単なイメージとしては城が2つ向かい合って建っている様な感じだ。
しかし、困ったものだ。
視認性の悪い森や罠として使える川や池がこの国の間にないのは、かなり痛い。
森があるなら夜に複数人で森に隠れて奇襲も可能だし、池や川があるならトラップを作って撹乱する事も出来る。
しかし今回の戦場はそう言った存在が一切ない平野だ。戦い方は限られてくるだろう。
ヴォラクはこの何もないただの平野でどの様に戦局を有利にするか考える。
恐らく敵も同じ様な事を今考えているだろう。向こうに負けない様な、想像出来ない様な戦略を立てる必要性があった。
勿論、敵さんも同じ考えだろう。どうやって敵を上回るか。そこが重要になってくる。
まずは戦力の確認だ。兵士の人数を確認しなければならない。
その人数によって、立てる事の出来る戦略も変わってくる。
ゲームをしていた時、ヴォラクは何万単位の兵士をコントローラーだけを握って動かしていたが、今回はコントローラーを握っているだけでは何も変わりそうにはない。
兵士の隊列や編成、どの様に敵陣に攻めるか、1から考えなければならなかった。
「レイア、この国の兵力はどれくらいだ?正確じゃなくてもいいし、大体何人ぐらいいるんだ?」
「えぇっとねぇ……確か一般の兵士が大体300人弱で団長や隊長を担っている兵士は大体50人ぐらいだったと思う。正直、大国に比べればこの国の戦力は雀の涙程しかないのよ。だけど、それは奴の国も同じ。向こうだって兵士の数は多く見ても500人前後。戦略次第では、圧勝出来る。でもその戦略が……」
レイアはまだ、戦略を考えられていない様だ。
しかしヴォラクはさっき行ったチェスや今まで経験してきた戦略ゲームの記憶を繋ぎ合わせて、ある戦略を組み立てていた。
「僕なら一応、簡単だが戦略を立ててあるよ聞くか?」
「本当?なら、聞かせてくれる?」
そしてヴォラクは1度咳き込むと、考えた戦略を話し始める。
「今回戦う場所は森や川、泥濘もないただ平地だ。正直、奇襲や特殊な陣を組んで攻撃するのは大きな打開策にはならない…………だけどね、だからこそ穴があるんだよ」
「穴?穴って何処にあるの?」
「平地は何もない。そのせいで敵には行動がバレやすい。だが逆を言うと相手からの奇襲は考えにくいと言う事。そして……」
「そして?」
「逃げられる場所もないと言う事だよ…」
その時のヴォラクの目にレイアは少し怯えた。
その時のヴォラクの目は相手を殺し、痛め付けてその死に様を見て笑い、その叫び声を聞いて快感を覚える様だ。
レイアはヴォラクの心が見えた気がした。
(ヴォラク……本当はサイコパスだ。人の死に様を見て笑う人だ……でも私だってヴォラクと………)
ヴォラクの不審にニヤリと微笑む顔と殺す事を楽しむ様な暗い目が現れていた。
レイアはその表情をただ黙って見つめる。
「に、逃げられる場所もない…………確かにあの平野じゃヴォラクのバスターブラスターの射線に入ったら避けるのは難しいね」
「あぁ…作戦としては、まずは一般兵士を前に出す。300人の内100人前後を前に出せ、だがこの兵士達は攻撃をさせるな。防御姿勢だけ取らせてろ。簡単に言えば、盾を構えたままゆっくり直進させる。その後は向こうから攻撃してくる隙を待つ。攻めてきたら……攻める。僕だけではなく、サテラと一緒に行う。僕のバスターブラスターとサテラのバスターランチャーで全ての敵を薙ぎ払う。恐らくだがこの攻撃でカインの兵士は恐れて、退却するだろう。奴らはまだ僕達の作った武器の事を知らない。簡単だが、こんな感じなら勝率は上げられると思うぜ?」
「成程ね。つまり、囮として一部兵士を防御姿勢で進ませて、向こうが消極的だと思って攻めてきた所にヴォラクのバスターブラスターとサテラのバスターランチャーを撃ち込むって作戦だね」
「正解だ」
「で?作戦名は?」
作戦名?まぁ、確かにあった方が良いと思うけど……
「作戦名は……『コンビネーションバスター』だ!」
「ナイスネーミング!」
情報は敵にはまだ漏れていない。それは敵達はヴォラクが作った武器などを知らないと言う事だ。
このまま戦場に出れば、レイアの方が確実に勝率が高い。
だが、戦場では何が起こるか分からない。突然として恐ろしい事や考えられない事が起こる可能性もあるのだ。
それは、たとえヴォラクがバスターブラスターなどを持っていたとしても。
確実に勝てる保証などなかったのだ。
ヴォラクは冷や汗を額にかき、少しだけ不安な気持ちになっていた。