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58話「謎の存在」

 

 あ!

 バレた!

 シズハとディープキスしている所を思いっきり見られてしまった。思いっきり舌を絡み合わせていた所をね。

 これは終わった……

 怒られる!

 いや怒られるじゃすまんかも…もしかしたらぶち殺される可能性だって、否定出来ない。

 後ろには姉さん達がいる。いや、姉さんだけでもなく、サテラやレイもいるだろう。

 もしも振り返ったら、斬り殺されるかもしれ……いや、それはないか。いや待て、サテラが怒ってバスターランチャーを乱射するかもしれない。

 レイアが恥ずかしさのあまり暴走するかもしれない。

 この状況、ヴォラクはもうどう足掻いても無理だと思い、後ろを振り返る事にした。

 それはシズハも同じだ。

 もう打開策もこの場を乗り切る事も出来そうにはなかった。

 2人は互いに覚悟を決めて、姉さん達が立っていると思われる後ろの方向を恐る恐る振り返る事にした……












「ど、どうも~」


「……ヴォラク、シズハ……ずりぃ~ぞ!勝手に抜け駆けしやがって!」


「シズハ!主様のく、唇は私の物なんですよ!やっぱり主様の面倒は私が見るべきでしたぁ!」


「私は何も見ていない。私は何も見ていない…私は何も見ていなぁ―――い!」


 どうやら3人共怒って?はいないようだ。

 殺されるかと不安になったが、殺されはしない様だ。

 シズハには凄い嫉妬(ヘイト)が集まっているがそこは気にしない。


「ったく、勝手に接吻なんかしやがって。アタシは………別にいいけどよ」


「ん?姉さん、何か言った?」


「いや、何も…」


 この一言で会話が途切れた。

 皆が黙り込んでしまい少し、5人揃って気まずい雰囲気になってしまっている。ヴォラクは正直この空気が好きではなかった。

 理由は単純。

 僕とシズハはディープキスしていた事がバレてしまって少し恥ずかしい雰囲気になっている。

 サテラと血雷はシズハに対して嫉妬心を抱いている様に見える。だが、本当に怒りの心を出し毛嫌う様な嫉妬心は見せていない。見せているのは、恋のライバルに見せる悔しさの様な表情と負けないぞぉ!と言う様な表情を見せていた。

 多分、シズハに対して大きな嫉妬を抱いている訳では無い様だ。

 まぁ、一応僕達5人は仲間だ。身内で喧嘩なんてやりたくないので、良かった。

 そして、レイアに関してだが……

 完全にヴォラクとシズハの営みを見ていなかった事にするのに必死だ。

 見てるこっちが恥ずかしい。

 と言う感じだ。

 ヴォラクとシズハだって恥ずかしさがあるはずなのに、その光景を見ていたレイアの方が恥ずかしがっている理由はよく分からないが、レイアは取り敢えず見なかった事にして欲しいらしい。


「主様!今日の夜は……お願いします!」


「おい、ヴォラク、今日の夜ツラ貸せよ」


「せ、せめて隠れてやってよね。私、そんな経験一切ないんだから……」


 怒ってはいない様だ。代償に今日の夜も激しい事になりそうだけど。

 サテラとは……

 姉さんにはツラ貸せって言われてるのでボコられるか斬り捨てられるかそれとも襲われるのか分からないが、取り敢えずツラを貸す事にする。



 そして話題を変えるが、何故突然部屋に突撃してきたのだろうか。まだ姉さんやサテラは訓練の最中だったはずだ。

 多分、僕の様子を見に来たのだろう。しかし、部屋に入って来た時にレイアが見せた少し焦る様な表情が気がかりだった。

 何かあったのか?

 何か重大な事件でも起こってしまったのか。気になってしまうよ。


「何故、急に突撃してきた!?何かあったの!?」


 取り敢えず聞いてみる。


「レイ、何かあったのか?何もこの部屋に全員でズカズカと入り込んでくるんだ。何かあっただろ?何か……」


 ヴォラクの嫌な予感が募る。

 レイアの表情やわざわざこの部屋にサテラ達全員が集まるぐらいだ。

 そんな重要な事でもないなら、サテラや姉さんは訓練に勤しんでいるだろう。しかし今回はそれを全て捨ててまでヴォラクの所にやって来たぐらいなので、重大な事があったと考えるが普通だと思う。

 ヴォラク的にはあまり重大な事があってはほしくないが、どうだろうか。

 不安になる。

 しかし、運が悪いのか、嫌な予感は的中してしまった。


「大変な事が起こったの。隣国の奴が…隣国の王子がこの国に来てしまったの!」


「隣国の王子?誰だ?それは」


 隣国の王子だって?それだけ聞いてもイマイチよく分からない。顔も姿形も見えない相手の事を聞いても、ピンとこないが、レイアの焦りと僅かに見せる恐怖の様な感情が見え隠れしているせいでかなり重大な事だと言う事は分かる。

 きっと、大変な事になっているのだろう。


 ヴォラクはまだ寝起きなせいなのか体も重く、眠気がまだ完全には覚めていない。いつもの様に上手く動く事は難しいだろう。

 しかし、ここでいつまでも眠っている訳にもいかないので、ヴォラクはベットから飛び起き、ベットの傍の机に置かれた愛着している黒色のコートを羽織るとすぐに立ち上がった。

 そして自分で作ったバスターブラスター『ブリッツ』を両手で握る。寝起きで力が思う様に入らないが、ここで負ける訳には!と自分に言い聞かせブリッツを両手で握り締め立ち上がる。

 サテラやシズハも同じだった。

 サテラはバスターランチャー『ディエルタ』

 シズハはビームスナイパーライフル『マリス』

 姉さんも自分の愛刀である『血殺刀』そしてヴォラクとレイアにより作られた魔力刀『裂月刀』を鞘に納刀した状態で着ている袴風の着物の腰周りに巻いている赤色の帯の両方の所に二つの刀を携える。

 レイは何も所持してな……な、何故か作った縦に細長い剣の様な『シールド』を持っているではないか!

 レイ、まさか勝手に見つけて………ま、いっか。

 誰に使わさせるのかは決めさせてはいなかったので、別にレイが使っても誰も文句は言わないだろう。(本当は使いたかった)

 

 よし、行くか。


「誰だか知らんが、取り敢えず行こう」


「えぇ、行きましょう。ヴォラク」


「相手が誰だって構わねぇ、骨のある奴がいるのら大歓迎だぜ!」


「お役にはたてると思います。支援は任せてください!」


「援護は任せて!私にも出来る事はあるんだから!」


 ベットから立ち上がったヴォラク、そしてサテラ達4人はヴォラクが眠っていた部屋から出て、急いで城門の前に向かう事にした。

 しかし、ヴォラクの嫌な予感は消える事がなかった。

 何か危険な何かが迫っている気がしていた。










































 ヴォラクが休んでいた部屋には1つの大きな鏡が置いてあった。大きな鏡でヴォラクでも全身が全て映るぐらいの大きさだった。

 ヴォラクが部屋から出ていく時、ヴォラクはその鏡に背を向けていた。


 その鏡に映る彼の姿には……


「…………フッ……面白くなりそうじゃねぇか…」


 彼と瓜二つの誰かが映っていた。

 そしてその瓜二つな存在はヴォラクだけではなかった。





















































「ヴィラス。例の観察記録の紙、届いたよ」


「ペアか、すまん助かった」


 今いるの暗い部屋の中だ。その部屋の中の古びた椅子に座り、傷が付いた机に手を置いている。

 机の上には顔に付けている仮面を置いている。今は仮面を付けていないので自分の素顔を晒してしまっているが、ペアスティーネ以外の誰かに見られている訳ではないので気にしない。

 その部屋には太陽の様な光は差し込まない。電気も通らず、あるのは小さな光の玉だけ。

 これをデスクの近くに置き、何とか紙に記された字を読もうとする。

 観察記録書には色々な事が書かれている。今回は記憶書に目を通しているのだ。


 しかし、誰がこんな物を書いてくれたのかって?わざわざヴィラス達がズカズカと見に行った訳ではない。

 簡単に言えば、密偵を忍ばせたのだ。

 対象を観察させる為に魔法を使って召喚した密偵またの名を鴉と言う。鴉は鳥であるが、ヴィラスが操る事が出来る密偵の鴉は知能が鳥とは思えない程高くなっていて、ペンを持って字を書く事は流石に出来ないが、脳内で思い描いた文字を紙に写す事は可能だ。

 それに鳥はあまり怪しまれる事がないから使いやすい。人は警戒心が緩い所がある。何も人間は空を自由に飛んでいる鳥の1匹1匹まで警戒して見る事はない。だから鳥は使い易いのだ。

 今回も他人、または兵士を密偵として忍ばせるのではなく、鳥と言う動物を密偵として忍ばせたのだ。

 鳥を密偵として使ったお陰でこちら側は何の被害も出す事なく、結果を得る事が出来た。



「中立国『ホープ』に危険度が高い奴が目を付けたらしいよ。簡単に言えば侵略よ。国ごと自分の領地にして国のトップは自分の妾にするらしい」


「中立国『ホープ』か。確かあの国は戦力があってもその力を無益な人殺しに使ったり、自分達から仕掛ける事はない国だ。あの国のトップの女は危険度が低いはずだ」


「正解よ、ヴィラス。あの国のトップである『レイア・イツカ』は危険度4の奴よ、こっちから仕掛けない限りは絶対安全。でもこの国の隣国の国である『キオスク』の王子であり、国のトップでもある『カイン・サブナック』は危険度7の結構危ない奴なのよ」


 危険度7、これはかなり高い数字だ。危険度は1~10までが存在していて、危険度が8以上になるとその存在は排除対象になってしまう。

 これ以上危険度が上がり魔界の存続を脅かす存在となる場合は、排除対象になり魔界の戦士達によって排除される。

 主にこの排除はヴィラスとペアスティーネが担当している。

 国に危険が及ぶならヴィラス達はそれを排除する。

 今までだって魔界の王によって指定された排除対象は全てこの2人が行ってきた。

 しかし、イレギュラーが発生した。

 1人排除の対象になっている奴がいた。しかし奴はまだ排除出来ていない。

 奴の存在はまだ排除出来ていない。

 謎の存在である男「ヴォラク」と言う存在だ。


 彼の存在には不明な部分が多く、現在調査中とな言え、危険と言う事に変わりはない。

 初めて彼と遭遇したのは『和ノ世界』に行った時だ。あくまで行った理由は偵察だ。

 ヴィラス達は勇者や冒険者の観察を定期的に行っている。今回も冒険者が来たと言う連絡が入ったので偵察に向かう事にした。

 この時はヴィラスとペアスティーネの2人で向かったのではなく、もう1人一緒に行ったのだ。

 もう1人も決して弱い奴と言う訳ではなかったのだが、ものの数分でもう1人の兵士は殺られてしまったのだ。

 これをきっかけにヴォラクは危険度8が付けられた。危険度8、これは排除対象になる数字だが、ヴィラス達はヴォラクを排除する事が出来なかった。


 実際の所、ヴィラスは彼を強く恐れていた。

 初めて会った時、彼には強い何かを感じた。

 外見は薄い男の様にも見えるがその後ろの心はどす黒く、心も完全に闇に堕ちている闇に呑まれた道化師の様だった。どうやってもあの闇に堕ちた心は闇の中から這い上がる事はないだろう。

 ヴィラスは表ではクールな感じで振る舞い、ヴォラクに話していたが、実際は速くなっていく心臓の鼓動を感じながら、冷や汗を僅かにかきながら話していたのだ。

 今、戦ったらこっちが殺られるかもしれないと感じ、一時的に撤退したのだ。

 それはヴィラスだけではなく、ペアスティーネも同じ事だった。

 排除が確定だって?あんなの嘘だよ。その場のノリで言っただけだ。

 排除対象にはなっているが、まだ排除は確定していない。

 まだ素性が全く分からない奴だ。ヴィラス達では排除する事が出来るかどうか分からない。


 しかし、今回は違う。

 ヴィラスが密偵を忍ばせた時、中立国『ホープ』のトップであるレイア・イツカと接触している事が分かった。

 つまり、現在ヴィラス達がマークしているヴォラクはレイア・イツカがトップである『ホープ』に所属している可能性が高いのだ。

 それに現在、ホープの隣国である『キオスク』と『ホープ』の関係はあまり良いものではない様だった。

 これも密偵を忍ばせた事で知った事だ。

 これはヴィラスの考えだが、近い内にレイアの国とカインの国は戦争を起こすのではないか?

 と考えているのだ。

 ヴィラスはこの戦争が起こった間にこの戦いに介入しヴォラクを排除しようと考えたのだ。

 まぁ、まだ王からは排除するかのどうかの判断が下っていないので、絶対に排除するかは分からないが個人的には排除すると思う。

 これ程危険な存在を無視する訳にはいかない。

 仮にもヴィラス達は自分の国を守る為に戦っている。無益な殺しはしたくはない。

 あくまで殺すのは王が排除すると言った相手だけだ。

 それ以外の無抵抗な敵を追う事はしないと決めていたのだ。それはヴィラスやペアスティーネだけでもなく、魔界の戦士達全てが決めている事なのだ。

 王がヴォラクを排除する様に命令するかしない様に命令するのか、分からないがヴィラスはどっちの命令が下ろうと従うつもりだった。

 





















 観察記録書に目を通したヴィラスは座っていた椅子の後ろの方にもたれかかった。もたれかかるなり、目を閉じ、ヴィラスは右手を使って両目を覆い、目を休める事に徹した。

 紙に書かれた小さな文字をずっと見ると目が少し痛くなってしまう。しかもこの暗い部屋の中では余計に目が痛くなる。視力は悪くは無いが、こんな部屋の中で小さい文字を裸眼で読んでいたら近眼になってしまう。


「ヴィラス、お疲れ」


「全く……疲れたぜ………さて、王の定めはどうなるかな?」


「排除するかしないか……どっちの判断が下されても私達は王の命令に従うだけだけど……ね?」


 その一言で2人は小さく微笑んだ。この広くもなく狭くもない暗い部屋の中には二つの小さな微笑みがあった。久しぶりな気持ちだ。基本的に戦いや護衛仕事が多い二人にとって今の様な穏やかな時間は微笑みを簡単に浮かべる事が出来たのだ。


「ねぇ、ヴィラス…」


 突然として、ペアスティーネに後ろから話しかけられた。

 自分の右肩に綺麗な手を置かれて、後ろから彼女は顔を寄せてくる。顔を寄せると同時に彼女は時間の腕をヴィラスの顔から首にかけて回してきた。ヴィラスの顔にはペアスティーネの吐息がかかり温かい彼女の熱が伝わってきた。

 まるでヴィラスを誘うかの様だ。

 彼女の紅と言うよりも赤茶色に近い髪の毛がヴィラスの体に当たってしまう。暗い部屋の中で小さな明かりだけが2人を照らしている。

 暗がりな部屋の中でもペアスティーネの美しい姿はその目で捉える事が出来る。

 ヴィラスは彼女を独り占めしたくなる。本人に言う事はなかったが、本心は彼女を独占したいと言う欲が飛び出しかけている。

 そして彼女の温かい吐息がヴィラスの顔にかかり綺麗で少し細い手がヴィラスを抱き締める様にして後ろから身体を寄せる。ヴィラスの心拍数が上昇していく。

 ペアスティーネも同じだろう。

 ペアスティーネは普段から露出の多い服を着ている事が多い。現在彼女の身体がヴィラスの身体に当たっているのだがペアスティーネの身体は熱かった。


「これから……ベット行かない?また……一緒に」


「……構わんぞ。だが、デキない様にはするぞ」


「分かってる、まだ作るには早いよね?」


「早いよ。分かってるなら、行こうぜ」


「うん♡ヴィラス…」


 暗がりな部屋ではあったが、ヴィラスとペアスティーネは互いの身体を抱き寄せ合い、すぐに唇を奪う。

 ペアスティーネの手によってヴィラスが着ている服は緩められていき、徐々に素肌が見えてくる。それはペアスティーネも同じ様だった。

 そしてヴィラスは部屋に置かれたベットにペアスティーネを連れていき、そのまま押し倒した………


































 敵が迫る……



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