49話「銀色の光」
新しい仲間がヴォラクの目の前に現れた。また、女の子だけど…
ヴォラクはふと思った。僕は何もしなくとも女の子が自然に集まってくる体質なのか?と……
異世界に来てからもそうだが、前の世界にいた時も同じ様な気がしてきた。
誰かに、悲しいか?と聞かれると決して悲しい訳では無いが少し集まり過ぎではないか?と思っている。
だって、もうすでに4人だよ?周りから見たら嬉しいかもしれないけど、ご本人は結構キツいものだ。
気を使ったり、話を合わせるのにも偶に困ってしまう時もある。
それに異性と言うだけでヴォラクはまだ抵抗があるので(恐らく、ヴォラク本人がコミュニケーション障害なので、この様に抵抗を感じてしまう)ヒヤッとしてしまう時がまだあるのだった。
実際、ほぼ初対面の女性に現在、握手を求められた時も内心かなり緊張しているし、足も僅かながらに震えていた。サテラ、シズハ、血雷の時は何故かあまり緊張しなかったが、何故にレイアの時だけ何故緊張してしまうのかが分からなかった。何故そうなるかの理由も考えてはみたものの、思い付く事はなかった。
思考力が欠けているのか?
きっとこれは、コミュニケーション障害だった自分に残された障害と仲良く接している人以外を全て嫌っていたからかもしれない……
「取り敢えず、レイアじゃなくてレイでいいのか?」
「うん、レイでいいよ。これからもずっとレイって呼んでくれて構わないから」
「急に口調が変わったな。さっきと違ってだいぶフレンドリーな感じだな」
「仲間になってくれた人に変な感じで話すのもアレじゃないかと思ってるの。仲間には気軽な感じで話していこうと思ってるの」
そしてヴォラクは改めて、レイアの姿をヴォラクは目を凝らして見てみた。
さっきは戦いに夢中になっていて、レイアの姿をよく見ていなかったのだ。ヴォラクは1つの事に夢中になると、周りが良く見えなくなるタイプなので、今改めてじっくりと見る事にしたのだ。
服装、容姿、肉体、全てどれも美しい事この上なかった。3人と良い勝負をしているぐらいだ。
レイアの美しい銀色の髪にも、つい目が奪われしまう。髪型は純粋なロングヘアーだ。瞳は青色をしていて、ヴォラクの様な黒がかった色ではない。
上半身の服装はヴォラクと同じパーソナルカラー(自分が勝手に思い込んでいるだけ)である黒色のロングブレザー。今はまだ温かいが彼女は暑い事を気にしないかの様にロングブレザーを着こなしている。体を一回転させれば、ロングブレザーが揺れて、更に美しくなるだろう。
下半身は普通の長ズボンで、ヴォラク的に見ると、ジーンズの様にも見えた。しかしズボンに穴は空いていない。普通の長ズボンだ。
容姿に関してはもう「完璧」以外の何者でもなかった。すらりと腰ぐらいまで伸びた輝く様な銀色の髪も、サテラ、シズハ、血雷の美貌もとても美しいものだったが、レイアは3人と互角、若しくはそれ以上の美貌の持ち主だった。その姿には速攻で目を奪われる。
今さっき、会ったばかりだと言うのに、目が奪われてしまうのは何故だろうか……
そして、彼女の肉体に関しても美しい以外、何も言えなくなった。胸の大きさは血雷程ではないがそれでも尚、結構大きい胸をしている。
腹回りもほっそりとしていて、少しだけ痩せているのではないか?と疑うぐらいだった。
「色々と聞かせてくれないか?レイはどの国に所属してるんだ?まさか平和帝国とか言わないよね?」
ヴォラクの冗談混じりなセリフにレイアはクスッと笑う様な素振りを見せる。
「ちょっと、あんな馬鹿しか行かない国に私みたいな人が行くと思う?」
「少しだけ思った」
「酷い!………………話を戻そう。私、基私達はどこかの国所属の戦士でも雇われた傭兵でもない。私達はこの国にはよくある中立国の『ホープ』の所属よ。どこの国からも指図を受けず、私達だけで自立して成り立つ国なの。そんな国に私は所属してるの」
まだ、理解していない所も少しだけあるが、概ねの事情は理解したつもりだ。
簡単に言えば、レイが所属する国はどの国からも影響されない中立国であり、自分達だけでやっていってるそこまで大きくはない国だと言う事。
簡単に言ってしまえば、そんな所だと感じた。
「つまり、仲間になった=レイの国に僕達は所属する事になる。こんな感じの解釈でいいんだな?」
「大正解と言った所だね。私達の仲間になるなら、私の国に所属する事になる。でも、現にヴォラクは仲間になってくれるんでしょ?」
一瞬、耳を疑った。今レイアは国の事を「私の国」と言った。「あの国」や「私達の国」ならまだ分かるが「私の国」と言う言葉にヴォラクは耳を疑う。
まさかとは思うが…まさかとは思うが………ヴォラクはレイアに聞いてみる事にした。
「え、今私の国って言ったよな?まさかとは思うが…」
「え?何、簡単な事じゃない。私の国は私の国よ。だって私の国のトップは私だからね。リーダー、トップ、王様と言った所だね」
こいつは中々の凄い人に出会したかもしれない。国のトップが仲間とは笑えるのか笑えないのかどっちか分からなくなってきた。
だが、もう仲間になると言ってしまった以上、今から仲間になる事を断るのは少しばかり失礼だろうと感じた。
今更断る訳にもいかない。ここは素直に受け入れよう。彼女がレイアが仲間になる事に…
だったが、どうにもその結果が気に食わない奴もいるらしい。
レイアはこの場所に1人では来ていなかった。後ろには何人もの仲間がいたのだ。
その数は全部で10人程。数人は鋼鉄で白銀に輝く鎧を全身に組まなく身に付けた戦士達。所謂重装備系の戦士だろう。
ゲームや小説、アニメなどではこう言うのは、ガーディアンやタンクとも言われているが、ヴォラクは重装備をして戦うのは好きじゃない。重いし敵の攻撃を真正面から受けなくてはならない。ヴォラクは身のこなしが軽く、スピーディーに動く事が出来る戦い方が好みなので、全身鎧を付ける様な戦い方は個人的には好きではなかった。
残りの何人かは軽装な装備でレイアの後ろに立っている。勿論全員男性だ。
全員同じ様に、長い槍を1本、腰には鞘に収められた長剣を携えている。
頭には兜を被り、体には軽そうな鎧を身に付けている。
所謂、雑魚キャラの様なものだ。ゲームやアニメなどでもこの様なモブっぽいキャラはすぐに死ぬか殺されるオチなので、これ以上は深入りしない事にした。
いや、そもそもこんな雑魚みたいな奴らに深入りする理由どころか、深入りする部分もないだろうと思ったので深入りする事は時間を無駄にするだけなので、やめる事にしたのだ。
そして、最後に1人。最後の1人にはあまり関わりたくない様な人間だった。そして自分の事を嫌っている様にも見えてくる。
しかしこれはヴォラク本人の不確かな勘であり、本当かどうかは定かではない。間違いかもしれないし、もしかしたらこの勘が当たっているかもしれない。
最後の1人の男は鎧を着たり、武器を持っていたりはしなかった。
険しい表情をしていて、さっき、ヴォラクと目が合った時はこちらの方を強く睨んでいた。まるで自分の存在を疎むかの様な目だ。
ヴォラクはすぐに男から目を逸らしたが、ヴォラクは何故かずっと睨まれている様な気がしていた。
何故、睨まれているのかは謎だったが、考えるだけ無駄だったので今は考えない事にした。
しかし、運が悪いのか、ヴォラクの悪い勘はあっさりと的中してしまった。
「レイア様!何故こんな怪しい者を仲間にするのですか!?こんな奴を仲間にするぐらいなら、配下である私を貴方の仲間に!」
怪しい者だって?言葉を選べよ……
ヴォラクの怒りが込み上げてくる。ヴォラクは考える前にツェアシュテールングを握り、引き金に指をかけていた。
そして躊躇う事もなく、引き金を引いた。しかし銃口の狙いは僅かにだけズラしていた。
いきなり殺すのではなく、相手に自らの恐怖を相手に見せつけ、抗えない様にする。
そうすれば、さっきみたいなふざけた言葉も言わせずに済む。
それに自分の存在で相手が恐れ戦くなんて嬉しくて、快感になりそうなのでそうなるのもまた楽しいので、良いと思ったのだ。
「もう少し、言葉を選べ。次、変な事言ってみろ……お前の頭吹き飛ばすぞ…」
不気味ながらこちらを見る黒き仮面と頭に向けられた銃口を見た男は僅かにだけ額から汗を流し怯えている様な感じになっている。
ヴォラクは仮面の下でニヤリと笑った。
「ちょっとヴォラク、やめてあげてよ」
「……分かった。おい、おっさん、命拾いしたな……」
「くっ………(生意気なガキが……)」
ヴォラクは仕方なくと思って、ツェアシュテールングを収めた。しかし、ヴォラクは本当に命を奪う気でいた。
しかしヴォラクはもう、人を殺す事に躊躇いはほぼなかった。殺そうと思えば殺す事なんて、楽に出来る。しかし今はまだ殺さなかった。理由は明白になっている。
今、レイアの配下を殺せば、レイアとの関係に溝が発生する事になるかもしれない。そんな事は避けたいので、今は殺さない事にした。
元はただの人間だった自分がもう何の躊躇いもなく人を殺す事が出来る自分には前まで少しだけ抵抗があったが、現在はその抵抗が全くと言っていいぐらいなくなってしまっている。
そんな風にどんどんと心も体も血で汚れていく自分が少し怖くなってしまいそうだ。
いや、怖いと言うのは嘘かもしれない。むしろ血飛沫で染まる自分に嬉しさを覚えている自分がいた様な気がする………
「まぁ、そろそろ私の国に行かない?ここからも徒歩で行ってもあんまり遠くないから」
「あぁ、そうさせてもらう。生憎、こっちは宿をぶち壊されたから、寝る場所ないんだよ。もう野宿は勘弁だからね」
ヴォラクはそう皮肉げに言った。レイアはそんな彼の言葉を労る様に答えた。
「そ、それは大変だったね。大丈夫、私の国には貴方達4人ぐらい泊まれる部屋はあるから。じゃ着いてきて。ヴォラクは私の隣にでも…」
「お、お待ちください。レイア様の隣はそんな奴よりも、この私に!」
「別に、貴方じゃなくていいわ。さっ、ヴォラク、早く!」
「了解しましたよ。一国のお姫様」
その頃、少し後ろの方では……
(も、もしかして……また恋のライバル?)
(あの人も可愛いけど、私の耳には勝てない!……多分…)
(今度はアタシ含めて、4人目かよ。何股なんだよ、ヴォラクの奴は………まっ悪い気はしないからいいか?)
そして、レイアは自分の国に向かって、歩き出した。レイアの隣にはヴォラクが歩いている。並列で歩いていた。
そしてその僅か後ろに、サテラ、シズハ、血雷の3人が歩いている。
そして、更に後ろにレイアの配下が歩いている。
ヴォラクにとってはレイア、サテラ、シズハ、血雷の4人以外は眼中にないので、気にも止めていなかったが……
この先、ベットで寝れるのか不安だったが、寝れる事を信じよう。
いい加減、ベットで寝たくなってきた。いつまでも硬い地面の上で寝たり、敷布団で寝るのは好きじゃないので、柔らかいベットで温かい布団を被って眠りたい。
今のヴォラクの欲求はそれぐらいだったのだ。
(…クソガキめ、若いくせにレイア様に近付きおって…レイア様は……いや、レイアは儂の物にしてやる。儂の女に……)
「うぐっ……今のは」とヴォラクは小声で呟く。ヴォラクの背中に悪寒が走る。嫌な予感がする。近くにヤバい敵がいる。
それも成る可く早く排除した方がいい敵だ。敵は外側にいるのではなく、内側にいると聞くがその話は本当なのかもしれないとヴォラクは考えた。絶対に近くにいる。
敵が、スパイの様に近付く、悠介の様な、影の刺客の様に……
(今は、考えないでおく………か?)