48話「突然の戦闘」☆
色々あって、もう書かないと言ってましたが「悪の銃使い」の続きをまた書きました。2ヶ月ぶりの更新です。良かった読んでください!
何やかんや女性同士の喧嘩?があって。(ヴォラクはよく分からないけど……)でもその結果、謎の嫉妬に満ち溢れる様な悪い感じは消えていた。正直、ヴォラクは安心していた。
いつまでも悪い雰囲気では落ち着かないし、何より仲の良い女の子がギスギスとしているのは正直嫌だったので、今みたいな仲良くしている方が全然良いのだ。
そして今も3人は可愛らしい顔を見せている。ヴォラクは3人のそんな可愛らしい顔を見ているだけでヴォラクは少しだけ幸せになれた。
そして、現在は森を歩いている。行く場所は決まっている。
現在、存在している四つの内の大国の一つ自由国『フライハイト』に向かう予定だった。
現時点でヴォラク達を迎え入れてくれる国はこの国ぐらいしかないと考えていたからだ。
理由は簡単だ。残る三つの国はどこも行ったら危ない気で堪らない。
一つは自分が追い出されてしまった国なので、戻るに戻る事が出来ない。それに大嫌いで憎しみと恨みの権化であるクラスメイトの人間が存在しているので戻る気にもなれない。
いっその事、あの国事破壊するのも悪くない事だがそれぐらいの力をヴォラクは持っていないので流石にそれは無理だった。
二つ目の国も一つ目の国同様行く気になれない。理由は簡単。
サテラが奴隷だった頃、サテラはその国にいたからだ。それにあの国にいた頃のサテラの心の傷は深いだろう。そんな国にサテラを行かせたくはない。
それにある老人さんから聞いた話では、あの国では美しい女性を全て、国王の相手をする事になっているらしく、そんな国に美しい美貌を持つサテラ、シズハ、血雷の3人をあの国に連れて行けば一瞬で国の上層部の人間に捕らえられ、国王の相手をする事になるだろう。
そんな事、絶対に……いや死んでも嫌なので行く事は絶対にやめよう……
行く価値無し。行く意味も何も無い。ただ損をするだけだ。考えたくもない。
そして三つ目の国にも正直な話(個人的に)行きたくない。
少し前に血雷の住んでいた街で起こった戦いでその国の魔族と対立してしまったからだ。
恐らくだが、行ったとて何にもならない。対立が深まる可能性も否定できない。運が悪ければ、また戦いに発展してしまう可能性も否定出来ない。そして言ってしまうとこの国では相手も悪い。この国では相手の数も豊富だし、自分よりも近接戦闘能力が高い血雷ですら、あの国の魔族相手に苦戦……いや刀で斬り付けようとしたらあっさり防がれてしまったと言った方が正しいかもしれない。なので、また戦いにこちらが殺られる可能性は否定出来ないのだ。
ただ行けば良いと言う訳では無い。ただ行っただけでは完全に迂闊と言わざるをえない。
なので四つの国の中でも自由国と言う存在を掲げ「誰であっても受け入れる」と掲げている自由国『フライハイト』へと向かおうと思ったのだ。
どうせヴォラク達に行く宛てなんて何処にもない。
そんな身寄りのない自分達に行く所なんて、ここしかないのかもしれない。それに自由を掲げるなら、僕達みたいな身寄りのない奴も受け入れてくれるだろう。
だからヴォラクはその国に行こうと思ったのだ。
理由はそれだけだった。
そして、現在はその国に行く為に今は歩いて、森を抜けようとしているのだが……
「どう思う……姉さん?」
「あぁ…急に雰囲気が変わった」
「さっきまで、綺麗な森だったのに…」
「まるで、戦場みたいね」
突然として、緑で生い茂っていた森とは一変してヴォラク達の目に映るのは、汚れに汚れきって汚れた水が僅かに溜まる地面。まるで野球場の様に開けた平地。所々灰色で大きな岩が転がる不気味な場所。空には黒色の鴉が飛んでいる。
後ろを振り返れば、さっきまで歩いてきた森がある。しかしその前はまるで汚れきった戦場の様に無骨で何も無い様な平地が現れたのだ。後ろを振り返った時に見える森以外に綺麗な緑は見えてこない。正面をずっと歩いていけば、その内違う道が見えるだろうが、今は奇妙な平地しか確認出来ない。
もしも前の世界でこんな場所を見つければ、ヴォラクは興奮するだろう。
元々オカルトには興味があるのでこんなUFOが現れたり、超常現象が起こりそうな場所、ヴォラクにとっては最高?の場所だった。
しかし、この世界にUFOなんて存在しているのか?はっきり言って怪しいものだ。この世界は非科学的な存在で溢れかえっている。もしかしたら存在ぐらいしているかもしれないとヴォラクはふと考えた。
しかし、そんな事を考える暇は今はなかった。
「ヴォラクさん。結構前に誰かいる……」
「分かっているよ、シズハ。それに…殺気を感じる。こいつは…」
前に誰かいる。何も、武器や魔法の杖などは一切持ってはいないが、確かに強者と言う事だけがヴォラクの身体に直接伝わってくる事だけは分かった。
相手は女だ……何でこうも女の子ばっかり近寄ってくるんだ?サテラ→シズハ→血雷と来てまた女の子とは……笑えないね……
容姿などはまだ分からないが、女だと言う事だけは、ヴォラクには分かっていた。
シズハは目が良かった。動物の血を引いているからかもしれないが、確かにシズハの優れた視力には目を見張るものがあった。
「まずいな…相手は1人だけじゃねぇ。後ろにも複数立ってやがる…数だとこっちが不利だぜ」
相手は決して遠い位置にはいない。自分の目で視認出来る間合いに敵は立っていたのだ。
何故この見通しが非常に良いこの場所で敵の存在に気付く事が出来なかったのかが分からない。迂闊だったのか?それともただ単に自分が周りを見れていなかっただけなのか。
「シズハ、ステイメンで牽制しろ。仕留める事は無理かもしれんが……出来るな?」
「分かってるよ。ヴォラクさん、それぐらい私にも出来る」
シズハは背中に背負っていたヴォラク特製のスナイパーライフル『ステイメン』を取り出し、狙撃の対象へとステイメンの銃口を向ける。
そして、目標に狙いを定めると躊躇なく引き金を引いた。
耳を裂く様な音が鳴り響くと、ステイメンの銃口からライフルの弾丸が発射される。
どうなる?当たるか……?
「まだ…少しだけ遅いね」
周りから見れば相手は完全に丸腰だった。戦場に丸腰で出るなど言語道断だが、この敵は違った。
突然として、彼女の手から電球に包まれるかの様な光が現れる。しかしこれはただの周りを照らす様な光ではなかった。
その僅かに白い光は剣の様な形になり始める。
刹那の間で彼女の手から現れた光は実体を持たない剣となり、彼女は実体のない長剣を横に大きく振った。
彼女目掛けて、発射された弾丸は実体のない剣によって斬り裂かれてしまった。
シズハもその様子を遠くながらも見ていた。
「なっ…実体のない武器で…弾を斬った?ビームサーベルかよ…」
「おい、マズイぞ。銃の中でも高速のステイメンの弾が見切られたなんて…これは遠距離戦は控えた方が良いぞ……姉さん、近接戦を頼めるか?遠距離戦は効果が薄い…」
「あんま、アタシを甘く見るんじゃねぇよ。出来るさ………任せろ」
血雷はすぐさま、自分が愛用している刀を抜刀する。血雷が刀を抜刀した瞬間、ヴォラク、サテラ、シズハの3人は血雷の後を着いていく様に敵との距離を詰めていく。
血雷は自分が得意とする間合いに詰めていく。ゆっくりとすり足になりながら間合いを詰めていく。
相手は小さく微笑みながら、こちらをじっと見詰めている。
今か今かと向こうの攻撃を待っている様にも見える。
「ヴォラク…間合いに入った…」と血雷は小声で呟く。ヴォラクも「分かった…僕のタイミングで…」と血雷に対して小声で呟いた。それに対して血雷は首を縦に振った。
サテラとシズハも同じ様に自分の首を縦に振った。
タイミングを間違えてしまえば、殺られる。4人仲良く殺られる可能性が高い。
ヴォラクは緊張が高まっていた。一斉に攻撃を行うタイミングを見極めなければ、死ぬと考えていたからだ。
ヴォラクの額に汗が走る。仮面を付けているとは言っても、汗が額から滴る感じが伝わってきた。
ヴォラクは脳内で数字を数える。(3……2……1……0…)と数える。
数字が0になった瞬間、ヴォラクは叫び一斉に攻撃を行うつもりだ。
(………0、今だ!)と心の中でヴォラクが叫ぶとヴォラクは口で「今だ!」と叫んだ。
次の瞬間、ヴォラクは走り出し、少し上に飛び上がる。そして愛銃であるツェアシュテールングを取り出し、一瞬で銃口を敵の方に向けツェアシュテールングの引き金を引く。
だが、ステイメンの超高速の弾丸を見切られた相手にヴォラクが使用するツェアシュテールングの弾丸が見切られないかどうかは不安だ。
しかし、残念な事にヴォラクの悪い予想はあっさりと的中してしまった………
ヴォラクは相手の体制を崩す為に、相手の足の関節を狙う。関節(両足)を破壊すれば相手は立てなくなり、そのまま動けなくなる。その後は武器や魔法を使えない様にする為に両腕の関節を撃ち、破壊する。
こうすれば、簡単。
関節が完全に撃ち抜かれて、立つ事も腕を満足に動かす事も出来なくなってしまう。こうなれば僕達が負ける要素は完全に消失する。
だったが……
ヴォラクは連続で引き金を引き、計4発の弾丸を発射する。2発は両腕の関節に、残りの2発は両足の関節に発射する。
一瞬にして、銃口を対象の方に向けて、高速で動かす。これにより、弾丸が当たってくれるのかは分からない。
「やはり、躱されたか…!」
「弾速、狙いともに正確だね、君。でも私の眼なら!」
ヴォラクが引いた引き金によって、発射されたツェアシュテールングの弾丸は全て敵である彼女に躱された。
ヴォラク全ての弾丸をまた、実体の無い光らしき物で作られた長剣の剣技によって全ての弾丸を斬り裂かれたのだ。
そしてその実体の無い長剣を持ったまま、彼女はヴォラクに高速で接近してくる。
そしてヴォラクはこの状況に危機を感じた。現在、ヴォラクは空中に浮いている状態。空中では地上と違い、体が思う様に動いてくれない。空中で長剣でも振られたら、避ける事は簡単ではない。「勝手に剣振らないで!」と叫びたくなるが、叫んだ所で何も変わらない。こんな風に叫んでいれば、まるで負け犬の遠吠えだ。
だが、本当に剣を避けなければガチな方で殺られてしまう。向こうは実体の無い長剣の先端をこちらに向けている。
絶対に自分を突き刺す気だ。しかも運が悪いのか向こうが狙ってきたのかは知らないが、剣の進む先には自分の心臓の位置がある。
多分だが、避けなかったら即死確定だ。心臓と言う生きる中で絶対に必要な存在をあんな鋭い長剣で貫かれたか、死にます。
それだけです。
でも避けられるのか分からない。
「させぇるかぁ!」
「何!?」
「姉さん?」
「近接戦なら、アタシの十八番だ!ヴォラク、1度下がれ、ここはアタシがやる!」
ヴォラクはこの状況を打破するには近接戦の能力が高い、血雷にこの場の先頭を任せるべきだと考えた。どちらからと言うと遠距離戦闘の方が得意なヴォラクにとっては、近接戦は得意ではない。なのでヴォラクは「姉さん、頼む!」と叫んで、1度後ろに下がった。
そして、血雷は敵に攻撃で詰め寄り、居合切りを行う。
居合切りを行い、刀を抜刀した血雷はすぐに刀を振る。
しかし敵も実体の無い剣で血雷の刀に応戦する。相手の使う長剣?は血雷の刀とは違い、実体が無い。だが、実体の無い長剣は血雷の刀とぶつかり合い、鍔迫り合いを起こす。
互いの刀と長剣の刃が激しくぶつかり合う。ヴォラクは少しだけ離れた所でその光景を見ていたが、その光景に目を奪われる。
どちらかと言うと血雷の方が敵を押している。やはり経験の差と言うものなのだろうか…
しかし、経験の差は数で埋めるという言葉がある。血雷は刀を1本しか持たない。
しかし敵も1本しか実体の無い剣をもっていない。その1本の差を敵は埋めてきたのだ。
なんと、敵は左手からまた光を放出する。すると彼女の左手から、右手に持っていた実体の無い長剣をもう1本作り出したのだ。
右手に握られた1本の実体の無い長剣は血雷の持つ刀とぶつかり合っているが、左手に握られたもう1本の実体の無い長剣を彼女は上に振り上げ、上から振り下ろす。
その事に僅かな時間で気付く事に成功した血雷は1度後ろに下がった。
理由は簡単だ。2本も剣を持っている奴に1本だけしか剣を持ってない状態で戦うのは無謀にも程がある。なので後ろ後退りしたのだ。
「あんた、まさか剣を作れるとはな…」
「自慢、程の事でもないけどね。でも、貴方の剣技も君のよく分からない武器の力も凄いわ……欲しくなりそう……まぁ、貴方達4人は全員かなりの力を秘めてるね。特に貴方とその黒髪の男の人…………良かったら、私の仲間にならない?別に奴隷とかにする訳じゃなくて、ただ純粋に、私達の仲間にならない?と言うよりもなって欲しいね。普通に全員強いからね。戦力にもなりそうだし。それに仲良くやれそうな気もする。」
と言って、相手は楽そうな立ち方でこちらをじっと見てくる。特にヴォラクの方に視線を向けている。やはりツェアシュテールングでの力が彼女の魅力になったのだろうか。
そう言われると、血雷は刀を収め、納刀する。向こうには敵意と殺気がないと感じたからだろうか?
ヴォラクも相手には敵意と殺気がない事には気付いていた。
ヴォラクは思った。きっともう向こうはこちらから仕掛けない限り、何もしてこないと。ここで無闇に戦う必要性は一切ないという事に気が付いた。
ヴォラクはツェアシュテールングを収めると、ゆっくりと前にジリジリと歩き出す。しかし、まだ若干の恐怖心は残っている。でも、それでも前に歩いていた。
だが、敵意がない事には気が付いている。なのに何故、恐怖心が残っているのか分からなかった。
「要求は仲間になるだけでいいのか?投降する気はないけど」
「要求なんてないよ。ただ仲間になって欲しいだけ。私は強い人を求めていた。貴方達は私の要求に見合っていると思うの……多分」
「多分なのかよ」
すると、彼女は手を差し出してきた。綺麗な肌色をした手。うっすらとしていて、見蕩れてしまうぐらいの美しい手だった。
その容姿も素晴らしいものだが、綺麗な色白美肌な手を見ているだけでもうっとりとしてしまう。
ヴォラクは彼女が差し出した手を握る事にした。
「ありがとう。とにかくこれで、貴方達は私の仲間よ。所で貴方、名前は?」
「僕の名は『ヴォラク』それが僕の名だ」
「『ヴォラク』良い名前してるのね。じゃ私も名前、教えないとね。私は……『レイア・イツカ』気軽に『レイ』って呼んでね」
「レイアか……良い名前だ」
ヴォラクは手を握る力を僅かにだけ強くした。
また、新しい仲間が出来た……女の子だけど…
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