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42話「剣と銃」

 

 ヴォラクは目を覚ました。自分の身体中からは雨の様に汗が吹き出ていた。額からも汗が吹き出て身体中からは熱を放ち、身体中から出た汗が背中を滴って荒い息を口から漏らしていた。

 しばらくすると汗は冷え切った水の様に冷たくなり、身体中が冷たくなった。ずっと着ていた黒色の服は汗で僅かに湿っていた。布団の中から身を出し、硬く、僅かに怯えていた表情をしたままで石の様に固まっているとサテラが熱くなってしまっているヴォラクの手を握った。サテラは僅かに怯えながらも、硬い表情をしたヴォラクの手を自分の暖かい手で握ってくれた。シズハも両手を使い、汗が染みるヴォラクの背中を静かに撫でてくれた。


「主様…大丈夫ですか?寝ている時、ずっと魘されていましたよ」


「ずっと…誰かの名前を呼んでたよ。もしかして……ヴォラクさんの元カノ?」


「元カノって…そりゃ違うよ……姉や妹、そして母さんの事だよ。ちょっと……悪い夢を見てたみたいだ…」


 ヴォラクの表情はどんどんと暗くなっていく。元からヴォラクの表情は暗かったが今のヴォラクの表情は異常な程までに暗い表情になってしまっていた。

 するとサテラはまるで母性に溢れた女の様に暗い表情をして、座り込んでしまっているヴォラクを自分の細い腕で抱き寄せて、自分のあまり大きくない胸にヴォラクの顔を埋めさせた。本当は胸の大きい女がする事だが、サテラの胸はあまり大きくない。だがそんな事は放っておいて、サテラは自分の胸にヴォラクの顔を埋めさせたのだった。


「怖い夢を見たんですか…大丈夫ですよ。辛い事があったらすぐに言ってくださいね」


「ヴォラクさんも辛い事を沢山抱えてる。1人で抱え込まないで、遠慮なく言ってね」


 その言葉にヴォラクは何も言わなかった。しかしこの時だけは2人にヴォラクは顔を埋め、2人に甘える事にしたのだった。

 ヴォラクの行動にサテラとシズハはヴォラクの行動を受け入れてくれた。

















 ヴォラクの表情は異常な程暗い表情ではなく、少しだけ明るい表情になっていた。きっとサテラとシズハの行いがヴォラクの暗くなっていた表情を少しだけ明るい表情に変えたのだろう。


 ヴォラクは少しだけ恥らしい顔サテラとシズハに見せながらもヴォラクはいつも着ている黒色の服に着替え始めた。少し前に買った葡萄酒色ワインレッドの服ではなく、ヴォラク愛用の黒色の服だった。そしていつも顔に取り付けている仮面を顔に取り付けた。

 サテラとシズハはヴォラクよりも先に起きていて自分の服を着ていた。サテラはこの前買ったヴォラクと同じ色である黒色の服、シズハはいつも通りの巫女服だった。いつも通りの変わらぬ服を見てもヴォラクは一切飽きなかった。だって獣耳に巫女服って最高に可愛いとヴォラクは思っていたからだ!






「で?ヴォラクさん。今日は何する?」


「…今の所予定なし。まぁ取り敢えず夜は3人でやるとして……しょうがない…暇だから血雷姉さんの所にでも行くか」


「ええぇ!また会うんですか?主様?」


「会うのは別に良いけど……誘われても断ってよね?」


「誰が誘うかよ」


 誰かの声が聞こえてきた。声は窓の方から聞こえてきた。3人は窓の方に顔を向ける。


「「「……何処から入って来た!?」」」


 窓には血雷が足を崩して座っていた。片足を開いて、楽そうな顔をして座っていた。腰の所には刀を携え、括られた赤い髪が風で靡いていた。そして日に照らされる美しい血雷の横顔が自分の目の前にあった。


「姉さん?ここ…二階だよ?」


「何が二階だぁ?そんなもん登れば良い話だろ?」


「で?主様に何用ですか?」


「へ、変な事だったら魔法で吹き飛ばすよ!」


 しかし血雷は何も言わずに部屋に駆け込んだ。草鞋を履いたままヴォラクの方に高速で走ったのだった。サテラとシズハは血雷の高速移動には目が追いつかなかった。ヴォラクはある程度は見えていたが、目では追えても体の反射が追いつかなかった。そのままヴォラクは何も抵抗出来ずに、血雷に抱き抱えられた。本来ならば抱き抱えるのは血雷ではなくヴォラクの方なのだが……そんな事はお構い無しに血雷はヴォラクの身体を抱き抱えたのだった。

 ヴォラクは血雷の手から抜け出そうとしたが血雷の腕力はかなり強かった。抜け出そうにも血雷がヴォラクを強引に捕まえてきた為抜け出せず抵抗出来なかった。そして血雷はヴォラクを抱き抱えたまま窓から飛び出した。


「主様~~!」


「この誘拐犯!ヴォラクさんを返せ―――!」


「うっせぇわ!お前らは2人で仲良くしてろ!」


「僕の同意は得ているのかぁ!?」


 そのまま血雷はヴォラクを抱き抱えたまま宿の窓からジャンプし、他の家の屋根を走って何処かに消えてしまったのだった。


「…どうする?シズハ?」


「仲良くしておこう……」


「うんうん…」


 その後、どうなったのかは不明



















 そしてヴォラクが連れてこられたのは……


「おい姉さん。ここは?」


 場所はヴォラク達が泊まっていた宿から結構離れた一つの家だった。しかしヴォラクはそんな事よりもこの家に着くまでの間ずっとスピードを落とさずに走り続けていた血雷にヴォラクは驚いてしまった。


「ここは……アタシの家だよ。親父がアタシに残してくれた家だ」


 見る感じ、血雷の家は和風な感じの家だった。前に居た洋風な国とは違い、彼女の家はとても和風だった。この世界でも見る事が出来てヴォラクは何故か少しだけ安心した。


「早く入れよ。いつまでも棒みたいに突っ立ってないで!」


「あぁ!はいはい!」


 そのままヴォラクは血雷に着いて行った。血雷の家の中に入るとヴォラクは少しだけ目を疑った。自分の祖父母の家に来た時の様だった。血雷の家の中は古風な置物や掛け軸などがあった。ヴォラクはそれを見ながらも、血雷の後を着いて行った。


 そして案内されたのは居間だった。案内されるなり血雷に「ほら座れ」と言われヴォラクは言われるがまま畳の上にに座り込んだ。座るなり血雷はヴォラクの方を見ていた。ヴォラクは最初、仮面を付けていたが仮面を外し血雷の方を見ていた。

 血雷の姿は美しかった。血雷は細い体をしていながらも胸や腰の下辺りは良い肉付きだった。特に腹の周りは女性の鏡と言えるぐらい細すぎもなく、太すぎもない丁度良い身体付きをしていた。その姿が見えそうになってヴォラクは目を逸らしていた。胸の大きさも十分以上な大きさだった。そして血雷はまるでヴォラクに甘えているかの様に太腿をわざと見せていた。

 そしてヴォラクは血雷の下着を見てしまった。目に入った瞬間目を逸らそうとしたが、血雷はヴォラクに見せつけてきたので、逸らそうとするだけ無駄だった。


(良く見たら…姉さんの下着…褌じゃないか!)


「お~いヴォラク?何見てんだよ?もしかして…アタシの褌見たいか?」


「そ、そんな!見たいなんて言ってない……」


「そうか…なら見たい時は言えよ。言ってくれるならいくらでも見せてやるよ!」


「あ、ありが……そ、そんな変な事は言いませんよ……」


 ヴォラクは焦った顔を見せたが、血雷は綺麗な笑顔を見せてくれていた。ヴォラクも何とかその場を誤魔化そうとはしていた……

 しかし2人の会話は弾まない。互いに黙り込んでしまい、その場は沈黙と化してしまった。ヴォラクは何とかして会話を弾ませる為にヴォラクは血雷の刀を見た。そして「その刀…綺麗ですね」と言った。すると血雷は刀を両手で持ち刀を鞘から抜いた。血雷が抜刀した刀の刃は銀色に輝き空から照らす光に照らされ刀は神々しい銀色に光り輝いていた。


「この刀か……この刀、親父がアタシに譲ってくれたんだよ。昔親父はこの刀使って戦場で戦ってたんだ」


「成程ねぇ……で?お義父さんは今何処に?」


「死んだよ……」


「えっ!?すいません。悪い事聞いて…」


「いいんだよ、別に……もしかしてこの先の話聞きたいか?」


「良いんですか?」


 ヴォラクが疑問の顔を浮かべる中血雷はさっきまで見せていた笑顔を消した。そしてそのまま話を始めた。


「親父の事…聞かせてやるよ………アタシはこの家で1人の女として生まれた。勿論育ちもこの街だ。一人っ子だけど……親は親父だけだ。おふくろはアタシを産んで直ぐに消えちまったんだ。死んだのか生きてるのかも分からん。でもそんな事はどうでも良い事だ。アタシの親父は刀を教える顧問だったんだ。毎日の様に稽古の連続だった。アタシも親父と一緒に稽古してたお陰で剣の腕は上がった。ちなみにアタシが刀を握り始めたのは7歳の時からだ。その後は男に囲まれながら毎日稽古したよそのお陰でこんな男みたいな性格になってまったのかもしれねぇが。まぁこの街で剣を習ってた女はアタシだけだったからな、当然ながら色んな奴にモテちまったよ男だけじゃなくて…女にもモテた時があった。今まで何度も求婚されたよ…まぁ実際今でもまだ求婚してくる奴が居るんだけどな。まぁ無理ないよだってアタシ美人らしいし胸もデカいしお尻も大きいし無理ないかもな……でアタシが親父の刀を握ったのは……16歳の時だった……ある日親父は戦いに行ったんだ。親父はアタシに「少しだけ戦いに行ってくる。でも必ず帰ってくる」って言って、何処かに行っちまったんだアタシが今使ってる刀を持って……………そして親父は帰ってこなかった。親父と一緒に戦いに行って帰ってきた奴からは「親父は立派に戦った。そして…………死んだ」って言った。そして親父が持ってた刀をアタシに渡してくれたんだ「この刀を……俺の娘に…血雷に渡してくれ」この言葉が親父の最後の言葉だったらしい。親父の遺体は見つかんなかった。だからもう親父を見る事も話す事も出来ないって訳だ。で、その後はずっとこの家に1人で暮らしてきた。まぁ1人とは言っても、親父の仲間とか元々アタシを慕ってた奴とかがアタシの所に来てくれたりもしたからずっと孤独だったって訳でもないが……そして今に至るって訳だ」


 血雷が話してくれた事を聞いてヴォラクは少し…かなり悲しい気持ちになってしまった。ヴォラクはまた暗い表情を見せ、顔を下に向けてしまった。

 しかしそんなヴォラクとは裏腹に血雷は刀を畳に置いて立ち上がり、ヴォラクの傍に座った。


「なぁにお前が悲しい顔してんだよ!?別にしょうがない事さ。弱い奴は死ぬ。それだけだ…親父は負けたから死んだんだ。しょうがねぇ…でもアタシは死なない。親父が死んでアタシまで死ぬ訳にはいかんのでね。絶対にアタシは死なねぇ親父の為にもこの親父の形見でもあってアタシの愛刀でもある『血殺刀』に誓ってな…」


「なら、僕も死なない…僕は大切な人を守る。守る為に死ぬ訳にはいかないんだ!」


 ヴォラクは自分なりに力強い声で血雷に向かって言った。ヴォラクの言葉に血雷は笑顔を見せ、ヴォラクの首に自分の腕を回した。血雷の腕の強さによってヴォラクは首が痛くなってしまった。


「痛い!痛い!姉さん。離してくれ!」


「良い目標じゃないか!アタシとお前の仲なんだ。同じ様な目標なんだしアタシ達仲良くやろうぜ!」


 そう大きい声で叫んで血雷は余計腕の力を強めた。ヴォラクは「HA☆NA☆SE!」と叫んだが血雷は叫んで離してくれる人ではないので更に腕の力を強めてしまったのだった。

 ヴォラクは叫部だけでは離してくれないと思い自分の腕の力を精一杯に強めて血雷の身体を押した………はずだった。


「こんのぉ~HA☆NA☆SE!」


「ちょっ!おま」


「…あ…」


 ヴォラクは肩を押したつもりだったのだが、ヴォラクは間違えて血雷の大きな胸に思いっきり触れてしまっていたのだった。ヴォラクは無表情と化し血雷は頬を赤くして恥らしい表情を浮かべていた。


「ヴォラク~!勝手に触るとは大胆だなぁ!もしかして狙ってたのか?」


「誰が狙うかぁ!!!!!!!」


「まぁ触りたかったら言いな。触らせてやるよ」


 その言葉にヴォラクは何て言えば良いのか分からなくなった。ヴォラクは取り敢えず「はいはい!」と適当に言った。

 ヴォラクの回答に対して血雷は「分かるのが早い奴で助かったぜ」と言った。


「あの~そろそろ帰っても良いかな?そろそろ宿に帰らないとサテラとシズハが心配するんだが」


「ああ、じゃあ今日は帰りな。また明日会いに行ってやるよ。後宿まで送ってやるよどうせ道分からんだろ?」


「うん、分からん。ありがとな」


 ヴォラクと血雷は靴を履いて家の外に出る事にした。ヴォラクが血雷の家の玄関の扉を開けようとした時ヴォラクの背後に居た血雷はヴォラクに近付いた。


「……え?姉さん?」


「辛い事は…1人で抱えるな。お前はアタシの………に何処か似てるからな」


 血雷の両腕はヴォラクの身体を優しく抱き締めていた。



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