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エピローグ「テントの中」

 

 夕暮れ時になりながらも、サテラやシズハと共に舗装されていない道を歩いていると……





「ん?何だ?」





 突然頭に冷たい感触が走った。冷たい感触が走ると、全身に冷たい感触が走る様な感覚に襲われてしまう。(水か?)とヴォラクは思った。一度立ち止まり、上を見ても水が落ちてきそうな物はない。

 そうなると何処から水が落ちてきたのか分かってしまった。きっと雨が降ってきたのだろう……ヴォラクはそう考えた。

 ヴォラクの考えは見事的中していた。空から水が降ってきたのだった。

 


 朝は青色だった空は邪悪な雰囲気の灰色の空となっている。まるで魔物でも空から降ってきそうだ。ポツリポツリと空から雨が降ってきたのだった。

 前々から空が灰色だった事には気が付いていたが、雨が降るとは思っていなかった。小雨ではなかった。

 いきなり大降りになってしまったのだった。何の前触れもなく、突然強く激しい雨がヴォラク達に降ってきた。


 ヴォラクはその場で頭を手で隠していたが、こんな事をしていてもただ濡れるだけだった。

 ずぶ濡れになる程までに濡れてしまう事を恐れたヴォラクは急いで辺りを見渡した。

 さっき手に入れた大きなテントを張れる場所を見つける為に。







 少しの間辺りを見渡していると、サテラが濡れながらもヴォラクに話しかけてきた。強く降る雨の音でサテラの声が掻き消されそうになってしまう。しかしサテラは雨の音に負けないぐらいの声を上げた。


「主様!!こっちに、テントが使えそうな場所があります!そこにテントを広げましょう!」


 ヴォラクから少し離れている所でサテラがそう叫んでいた。


 ヴォラクは顔を覆いながらサテラが立っている所に向かう。仮面で顔が隠されているとはいえ、強く降る雨のせいで仮面を付けていてもなお周りが見えなくなってしまう事があった。

 シズハの濡れた手を握りながら、サテラの方へと向かう。


「シズハ!大丈夫?」


「はい!何とかね。それよりも早くサテラの所に!」


「分かってる!」


「主様!テントを早く!」


「分かった!」


 ヴォラクは足を早く動かした。シズハの手を潰してしまいそうなぐらい強く握る。シズハも顔を覆いながらヴォラクの手を握り、サテラの元へと向かって行った……















 ヴォラクは急いでテントを張る準備を始めた。早くしないと自分達が動けなくなってしまうと思ったからだ。

 身体がずっと濡れてしまい冷えていたままではいずれ低体温症になってしまうだろう。

 そんな事態は絶対に避けたい為全力でテントを張る準備を進めた。


「このテントは普通に拡げればテントになるみたいだから!別に杭とか打つ必要ないみたいだし、急いで拡げるんだ!」


「はい!主様!」


「分かったよ!ヴォラクさん!」


 サテラとシズハの言葉にヴォラクは首を縦に振った。






























「よし張れた!サテラ、シズハ!早く中に!」


「今行きます!」


「待ってよ!今行くから!」


 3人はまるで何かから逃げる様にテントの中に急いで駆け込んで行った………















 テントの中は真っ暗だった。暗くて何があるのかも分からなかった。


「大丈夫。私の魔法で」


「すまない…頼む」


「はい…………『灯火』…」


 シズハが魔法を唱えるとテントの中が明るくなった。

 ヴォラクは驚いた。なんと拡げたテントの中は一切濡れていなかったのだ。確かに防水とは言っていたが、ヴォラクは実際はあまり信用はしていなかった。しかしその考えをヴォラクは捨ててしまった。一切濡れていない。ヴォラクはホッと一息つく。

 顔に付けていた仮面を外して、テントの真ん中辺りに行き、そのまま座り込むと思ったらそのまま寝転がったしまったのだった。


 テントの入り口の近くに立っていたシズハもヴォラクと一緒に手に持っていた杖を手放して、倒れる様に寝転がった。

 きっとシズハも身体が冷えてしまい、体力が少なくなっているのだろう。


 ヴォラクは身体が冷えて、倒れてしまっているにも関わらず、身体を無理矢理起こした。そしてシズハの近くに行くと…


「シズハ……恥ずかしいかもしれんが……すまん!」


「えっ!?ヴォラクさん?」


 なんとヴォラクはシズハの着ている濡れた巫女服を脱がせたのだった。何故脱がせたのか…別にヴォラクがシズハの身体を見たかった訳ではない。

 水に濡れてしまった服を着ていたら、いつまでも身体が温まらずに冷え続けてしまう。このまま濡れた服を着ていては、シズハの身体が冷え続けてしまうとヴォラクは思い、シズハの服を脱がせたのだった。

 するとヴォラクはサテラの方に顔を向けた。


「サテラ!お前も服を脱げ!全部だ!さっきの雨で全身びしょ濡れになっただろ?」


「わ、分かりました」


「ヴォラクさん……無理矢理はちょっと…」


「少し我慢してくれ…」


 テントの中は真っ暗ではなかった。シズハの魔法のお陰で幾分か明るくなっているからだ。

 その為かテントの中で上以外を見るとサテラとシズハの裸体が目に映ってしまうのだ。

 しかししょうがないと思い、受け入れる事にした。

 

 そしてヴォラクは後ろからシズハの事を抱き締めた。ヴォラクの身体は温かかった。さっきまで自分を虐める様にして冷たく降っていた雨とは違って、ヴォラクの身体は温かかった。

 これで少しは温まってくれるだろうと思ったからだ。


「火がないから……温めてやる」


 ヴォラクは仮面を外し、頬を赤くしながら言った。シズハはヴォラクの行動を受け入れる。後ろを向いていたが前を向き、ヴォラクにより強く密着した。


 するとサテラも見ているだけでは満足出来ずにヴォラクの事を後ろから抱き締めた。


「主様は…私が温めます」


「サテラ……頼む」


「ヴォラクさん寒いからもっと温めて…」





 ヴォラクは腕に込める力をより一層強めた。シズハが潰れてしまいそうなぐらいに。ヴォラクがシズハを強く抱き締めるとシズハもヴォラクと同じ様に腕の力を強くして、ヴォラクを抱き締めた。














 3人の身体は徐々に温まっていた。さっきまで冷えきってしまっていた身体はどんどん温かくなっていた。

 逆に身体が熱いぐらいに…








 シズハはヴォラクに欲求をしてきた。もっと温めて欲しいと…ヴォラクは言葉が詰まってしまう。


「ヴォラクさん!寒いから!もっと…温めて…もっと私を熱くして!」


 サテラもシズハと同じ様にヴォラクに欲求を求めた。ヴォラクは何て言えばいいのかよく分からなかった。


「主様…お願いします!」





「お、お前ら……」


「「早く…あっためて」」


 2人は互いに両手を握り、ヴォラクを見ていた。


 ヴォラクは一度頭を掻き回した。

 そして2人に答えを出した。


「覚悟しろよ!まとめて相手してやる!」


 こうしてヴォラクはサテラとシズハの2人と雨が降る中テントの中で一日中温めていた。


 ヴォラクはサテラとシズハの肉体を温め続けていた。


 






















(やはり最高だ)



















 そのまま3人の夜はテントの中で過ぎ去っていったのだった…………

三章完結です

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