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33話「3人の朝」

 

 はっきり言って今とても……凄く疲れていた。

 サテラとシズハに押し倒された後に何度共に寝ていたかヴォラクは一切覚えていなかった。今言える事は少ししかない。


 楽しかったけど…普通に疲れた……これだけだ。


































 もう今は朝だった。窓からは光が照りつけている。今日の天気はきっと晴れだろう。

 昨日の夜は…かなり自分の身体を動かした。


 自分の身体は思う様に動いてはくれない。特に下の方の疲れが凄かった。まるで骨折してしまった様に…

 しかし一切動かない訳でも無い。ただ疲れて動いてくれないだけなので、無理矢理に動かそうと思えば多分動いてくれるだろう。


 右と左にはサテラとシズハが目を瞑ったまま寝転がっていた。ヴォラク自身もさっきまで寝ていたが……


 今サテラとシズハが起きる気配はない。まだ深い眠りに付いているだろう。ヴォラクは特に干渉する事なく、2人が起きるのを待つ事にした。その間かなり暇だったが、別に特別退屈で人生を持て余しているとは別に思っていなかった。


 2人が眠っている間ヴォラクは色々と考えていた。この先どうなるのか…この後僕はどうなるのか。一体何が起こるのか、そんな事をヴォラクは考え続けていた。まずは復讐の事だ。僕は心に決めていた。絶対に復讐すると…自分を小馬鹿にし、追放し不知火凱亜を殺したあのクラスメイト達を一部を除いて全てこの手で殺す事だった。絶対にこの手で殺す。そうしなければ、自分の心の中に残るモヤモヤと今何の為に生きているのか、そしてずっと絶える事がなく心の中で小さくとも永遠に燃え続けるこの大きな怒りを晴らす為に……


 そしてもう一つはこの世界の神を始末する事だ。自分達の都合も知らないで勝手にこの世界に召喚し、挙句には勝手に戦う事を強制させる。戦えと言ってきたのだ。これでは僕達は神の操り人形にしか過ぎない。

 そんな事をするウザイ神なんか消えてほしい限りだ。そんな心もやる事も歪んでしまっている奴は自らの手で断ち切らないとまた自分達の様な人が増えてしまうかもしれない。そんな馬鹿げている様な連鎖は断ち切る必要がある。その為にもヴォラクは心に決めていた。クラスの人間に復讐し、身勝手な理由でこの世界に自分を召喚させた神を殺す事を決めていたのだった。






 そんな事を1人で考え込んでいるとサテラとシズハがヴォラクの横で目を覚ました。彼女達が目を開け、2人がヴォラクに見せた瞳は美しかった。



 目を擦りながらも目を開けて、サテラは声を出しながらあくびをした。シズハもサテラと同じ様にあくびをしていた。その姿も可愛い。

 サテラは今更服を着ていない事に気付き、服を着始めた。シズハも同様に……










「ふぁ~おはよう。ヴォラクさん?もう朝?」


「ああ…朝だよ。さっさといつも着てる服を着て準備しろ。今日でこことはお別れだからな。ここにある持てるだけのアイテムは拝借してくから、後で一緒に探すぞ」


「りょ――か――い…じゃあササッと着替え終わらせるからちょっと待っててくれる?」


「三分間待ってやる!」


「40秒で支度してね?」


(サテラ何故そのネタ知ってんの!!!!????)


「分かった!三分で支度するね!」


 そう言ってシズハは急いで着替えを始めるのであった…



















「時間だ!」


「早い!まだ服しか着てないのに!顔も洗ってないし、髪も整えてないよ!」


 確かに服を着るだけでかなり時間を使っていたと思う。結構着るの難しそうにも見える。シズハの巫女の様な服は。


「じゃあ少し延長してやるよ。さっさと顔を洗って……ここに洗える所なんてあったっけ?」


「近くに綺麗な池あるみたいだから。そこで顔と髪を整えるから、2人も来て」


 ヴォラクは自分が着ている黒色の服を僅かに靡かせて歩き出した。

 サテラも冒険者用の服を着て、ヴォラクの後を着いて行った。

 仮面を手に持つとヴォラクは「はいはい…今行きますよ」と言って、シズハに着いて行くのであった……


(近くに綺麗な池があるって……めっちゃ都合が良いね…)





























 確かにシズハが言っていた池は綺麗だった。泥や苔、ゴミも見つからなかった。綺麗に透き通っていたのだった、綺麗すぎて池の底が見えている。

 顔を洗うのには丁度いいだろう。身体を洗うとまではいかないが顔を綺麗に洗うには丁度いいだろう。


 シズハは池の前に立つと、すぐに座り込んだ。そして自分の手で池の水を掬い、水を自分の顔にかけた。



 水がシズハの顔にかかると、シズハの顔が輝いた。光が顔に当たり、更に輝いていた。

 シズハの顔がより一層美しくなった。シズハが顔に水をかける前も十分可愛かったが、水を顔にかけると更に彼女の顔が美しくなったのだった。

 彼女の顔が美しくて、ヴォラクはシズハの顔に見惚れてしまっていた。


 そしてシズハは髪を水で整え始めた。その際に腕や足も水で洗っていた。

 無理もないだろう。昨日は風呂どころか、水浴びや身体すらも拭いていないので、女性であるシズハはその辺りの事を気にしているのだろう。


 サテラもシズハを見ると、彼女の真似をする様に身体を水で洗い始めた。

 サテラも1人の女性としてその辺りの事は気にしておかなければならないのだろう。




 ヴォラクは身体を洗う2人の姿をただ黙ったまま見詰めていた………自分は洗う事もなく、腕を組んで仮面を顔に付けて、ただ静かに2人の事を見守っていた。




































「サテラ、シズハ。終わった?」


「うん!終わったよ。ヴォラクさん」


「はい!ここにあった使えそうな物も持ちました!」


 昨日寝泊まりした建物から見つけた使えそうな物は全部で二つだけだった。


 一つは大型のテント?みたいな物だ。結構…かなり大きく5人か6人は入れそうな大きさだった。しかも内側も外側も防水らしいので、雨が降っていても問題なく建てて使う事が出来そうだった。

 二つ目は保存食だ。降りたら地下室がありそうな古い階段を見つけたので、降りてみた。

 本当に地下室があった。中には備蓄されていた保存食があった。どれも長時間保存に向いているので味や身体への影響は問題ないと思った。

 水もおまけで置いてあったので遠慮なく、保存食と水を頂いていく事にしたのだった。














 ヴォラクは一度サテラとシズハを見るとくるりと後ろを向いて、2人の事を見ずに口を開いた。








「行くぞ」


「「はい!」」


 ヴォラクが顔に付けていた黒の仮面が光に当たった。




















 再びヴォラク達は足を動かし始めた。自由国『フライハイト』へと向かう為に……


「ねぇねぇヴォラクさん」


「どったの?シズハ?」


 3人であまり舗装されていない道を歩いていると、歩きながらシズハがヴォラクに話しかけてきた。

 ヴォラクは仮面を付けながらでも、出来るだけフレンドリーに接する事にした。


「昨日作った武器の…性能試験しないの?」


「評価試験?いらねぇよ!」


「え!?私は評価試験じゃなくて性能試験って言ったんだけど…」


「あぁ……すまない。少し…悪い自分が出てきた様だ…すまない」


 歩きながらヴォラクはシズハに謝罪した。シズハは「大丈夫だよ」と言ってくれたがヴォラクの心には僅かに罪悪感が残ってしまった。


























 ヴォラクは少し考えていた。シズハの言う通り新しく制作したミサイルの性能を確かめる必要があるかもしれない。事前から性能を確かめておかないと…実戦で使えなくなったりしたら大変…いや…終わりだ。その瞬間敵に襲われて死ぬだけだ。

 それなら性能試験をした方が良いのだが、現在作ったナノミサイルは全てミサイルコンテナに収まっている。

 つまり全弾撃ち切ったら、弾切れを起こしてしまうのだ。性能試験で弾を全て撃ち尽くしたら…武器として使えなくなってしまう。

 ヴォラクはト○ワみたいに「弾切れを気にする必要は無い」と言っている様な人間ではないのでどうすればいいのか悩んでしまっていた。


「なら…敵が出てきた時に使えばいいんじゃないですか?」

 

 サテラがヴォラクに一つの考えを出してくれた。その考えは正しいかもしれない。性能試験を行う事が出来ないなら実際に敵が出てきた時に使えばいい話だ。ヴォラクはサテラの頭を撫でた。


「ありがとう最高のアイデアだ…」


「えぇ!?そ……それは……最高なんて……そんな事言ってくれて…」


「ありがとうって言われて、ありがとうって返す奴が居るのか?素直に喜べよ」


 そう言ってヴォラクは顔をサテラとは逆の方向に向けてしまった。

 サテラは頬を赤くしながら、自分の頭を触っていた。

 







 少しだけ喜びに浸っているサテラだったが…喜んでいたのも束の間だった。


 何かの気配を感じた。


 ヴォラクは一瞬で気が付いた。近くに悪い何かが居る事に…近くに居る何かは強烈な殺気を放っている様にも思えてきた。


 何かの殺気を感じたヴォラクは咄嗟にツェアシュテールングを取り出し、銃口を気配を感じる方向へと向け、片手でツェアシュテールングの引き金を引いた。


 しかし引き金を引いても、個人的に手応えは一切無かった。







 その時!近くに生えていた草むらから……


 何かが飛び出した!















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