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30話「夕暮れの目覚め」

 

 ヴォラクは閉じていた瞼を上げる。





 最初に見えたのは薄汚れていた天井だった。綺麗でもなく、ただの汚れていた天井だったのか…ヴォラクの気持ちは起きて早々どんよりと沈んでしまった。


 最初の視界に入った天井に対してヴォラクの瞳は青ざめた瞳になってしまった。


 ヴォラクはこの沈んでしまった気持ちを和らげる為に窓から外を見た。外は橙色になっていた。恐らくもう夕暮れに差し掛かっているだろう。外の色は眩しくも何処か懐かしさを感じさせる色をしていた。




(そう言えば……▂▂と話してた時も……あれ?あの人の名前なんだったっけ?…………まぁいいか…)













 ヴォラクは窓から視線を外した。


 横を見るとシズハは服を半脱ぎにして、口で呼吸しながら眠っていた。口には自分の親指を咥えている。理由は不明…



 そんな彼女の姿を見ていると、自然に彼女の頭を撫でたくなってきた。


(寝てるし……大丈夫かな?)


 心の中でそう思うとヴォラクは、シズハの頭を撫でた。彼女の髪の触り心地は「良い」以外に何も言えなかった。

 手を刺激する感触は忘れられないぐらいに素晴らしい感触だった。


 頭を撫でられたシズハは撫でられた事がまるで分かっていた様に目を開けた。

 ヴォラクが彼女の頭に触れて、撫でようとした瞬間に彼女の目を開いたのだった。




「ヴォラクさん?寝てると思った?」


 少し悪い笑みを浮かべて、ヴォラクを見るシズハ。しかしヴォラクは冷静に回答する。


「完全に……負けたな。寝てると思ったよ…」


「勝手に撫でられるのはちょっと嫌だけど………まぁ撫でたかったなら別に…撫でてもいいよ……ほら撫でないの?」


「撫でる!」


 シズハはそう言ってヴォラクの方に頭を向けてくる。自分の撫でやすくする為に少し姿勢を低くしていた。

 ヴォラクは手を伸ばして、シズハの頭を撫でた。


 前にも撫でた事はあったが、相変わらずシズハの髪の感触は素晴らしい。ずっと…いつまでも撫でたくなる。


「やっぱ良いなぁ…この感触は」


「そんなに!?そんなに私の髪の触り心地が良いの?」


 シズハが自分の頭を撫でられながら尋ねてくる。ヴォラクはシズハの質問に即答した。


「うん!」


 今ヴォラクはシズハを見て見惚れていた。金色に黄色を少し混ぜた髪色は見るだけで心が癒される。そして彼女の美しい顔も好みになってしまう。


「うん!」と即答されて、顔を赤くしてしまうシズハ。それを見てヴォラクは少しだけ笑ってしまった。


 しかしいつまでも赤くした顔を見られる訳にもいかないシズハは急いで話題を変えようとした。


「というか!いつまでベットでへたばってるつもり?サテラもきっと待ってると思うよ!」


「はいはい…行きますよ」


 ヴォラクはいち早くベットから立ち上がり、シズハに手を伸ばした。

 シズハはヴォラクの手を取った。

 

 するとヴォラクはシズハの手を取ると、彼女の耳元に口を近づける。そして耳元で小さな声で囁いた。


「大丈夫……お前を他の奴には…渡さないから」


 髪で顔が隠れている。しかし口元は微笑んでいる様に見えた。

 シズハは僅かにだけ笑ってしまった。シズハはヴォラクの手を強く握った。


「……ありがとう」


 そのままヴォラクとシズハは休憩を終えて、部屋から出て行った………


















 上から階段を降りると、そこにはサテラが外を見ながら立っていた。

 笑顔でもなく、泣いている訳でもなかった。ただ真顔で全てを見る様に外の景色を眺めていた。


 階段を降りてくる音に気付いたのだろうか。サテラはヴォラクの居る方向に目を向けた。サテラをヴォラクを見るとさっきまで見せていた無表情な顔をなくし、偽りのない顔をヴォラクに見せた。


「主様。お昼寝は終わりました?」


「ああ…よく寝れたよ。シズハもよく寝れたらしいし。ところで……待った?」


「まぁ……二時間ぐらいは待ちましたね……でも私は大丈夫でしたよ。暇ではありませんでしたし」


 笑顔で言って、ヴォラクの方を見るサテラ。その姿を見て、ヴォラクは僅かに罪悪感を持ってしまった。

 何か…………悪いと思った。













 ヴォラクは罪悪感を消す様に頑張る事にした。いつまでもマイナスな事を背負っているのは身体にも心にも悪い。

 何とか心の中の罪悪感を消す様に頑張った。


 ヴォラクは顔を下げて、暗い顔になってしまった。しかし心が優しいサテラは暗い顔になっていたヴォラクに近づき彼の頭を撫でた。ヴォラクがシズハの頭を撫でた時と同じ様に、彼の頭を撫でた。


「そんなに落ち込まないでください。私は怒ってもいませんし、悲しんでる訳でもないので」


「本当に?」


「本当です」


「ホントの本当に?」


「本当です!私は主様に嘘なんて付きませんから!」


 そう言われるとヴォラクはさっきまでの暗い顔とは違い、明るい顔を見せた。

 サテラは彼の明るい顔を見ると、安心したかの様に美しい顔をヴォラクとシズハに見せてくれた。ヴォラクも彼女の美しいサテラの顔を見れて、心が癒された。



 するとヴォラクは見せていた顔を隠してしまった。黒の仮面を顔に被る。さっきまであったヴォラクの顔は何処にもなかった。

 するとヴォラクは2人とは逆の方向を向いた。


 サテラがヴォラクに尋ねる。


「主様?今から何かするんですか?」







 ヴォラクの頭の中にはとある考えが浮かんでいた。























 夕暮れに目覚めた彼の考えとはなんなのか…それはヴォラクが知っている事。



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