27話「続く道へ」
明るい光に照らされながら、ヴォラク達は宿から出た。空からの光は眩しくも暖かい光となっていた。
「で?ヴォラクさん。今から何処に行く?大国にでも行きますか?」
「えぇっと………その……どこ行けばいいのか分からない…」
「え?主様…旅をするって言ってましたよね?」
「悪ぃな…僕は召喚者だから…この世界の事なんて全く分からんのだよ。だからどこ行けばいいのかさっぱり分からん…」
「旅するとか言って、何処行けばいいのか分からないなんて……」
シズハがヴォラクに対してそう言うと、ヴォラクは枯れてしまった植物の様に頭を下げてしまった。
ヴォラクは今かなり悲しい気持ちになっているだろう……
しかしいつまでも落ち込んでいる訳にもいかないのでヴォラクは何とかして立ち直り、ヴォラクは頭を上げる。
「なら…私が持ってる地図でも見る?結構前に買った地図なんだけど…色々な場所の事が書いてあるんだけど…使う?」
「貸してくれ。こいつは絶対に役に立つよ」
手短に言って、ヴォラクはシズハから地図を受け取った。
ヴォラクはシズハから受け取った大きな地図に目を通す。
シズハの地図の大きさはヴォラクが両手を広げて持ってもまだ大きいぐらいだった。それぐらいこの世界は広くて大きいと言う事なのだろうか?
するとヴォラクはとある事に気が付いてしまった。地図を見て、ヴォラクは仰天してしまった。
(な…何故だ?何故字が読める?僕の世界と同じ様に日本語で書かれている?僕はほ○○く○ン○ャクでも食べたのか?)
しかしヴォラクはそんな物を食べてません。
何故か異世界の字が読める事に驚きながらも、ヴォラクは冷静になりながら地図に目を通す。地図には国や町の名前が書かれていた。
元の世界でしていたゲームとあまり変わらない。地図で場所や自分の位置を確認するのはゲームをする中では重要な事でもある。
一部のゲームでね
(取り敢えず…『平和帝国』に行くのはやめておこう。もしも行ったら…大変な事になる………)
ヴォラクはシズハから手渡された地図に目を通し続ける。地図全体を見続けていると、様々な事がヴォラクの頭に入ってくる。
一斉に情報を脳に入れる事は難しい事でもあるが、ヴォラクはなんの問題もなく地図の情報を頭の中に入れていった。
(どうやら…この世界には全部で四つの大国があるみたいだな。一つは僕達が前まで居た王国『ユスティーツ』。二つ目は平和帝国こと『ウンシュルト』まぁあんな所には行きたくないけど。
三つ目は…自由国…『フライハイト』四つ目は…記載が少ないけど…国の名前は書かれてるな…『バンデ』か……他にも小国とか大きな町も多数あるみたいだな。思ってたよりも結構国多いんだな…この世界は)
「主様?何処か行く所は見つかりましたか?)
ヴォラクが真剣に地図を見ていると、サテラが横から話しかけてきた。ヴォラクは一度地図から目を離し、サテラの方へと視線を変えた。
「行く所か?僕が見た感じで行く所は…ここの…自由国『フライハイト』かな?」
「自由国…フライハイトね…私も詳しくは分からないけど…ちょっと前に読んだ本の情報では…確かこの世界の大国の中で一番弱小の国らしいのよ。兵士や国民の数も少ないし、私みたいな魔術を使える人もとても少ないみたい。それに国の王が男の人じゃなくて女の人だから…他の小国や町からの支持率も結構低いみたいなの。もしかしてそこに行くつもりなの?ヴォラクさん…」
「情報サンキューシズハ先生。そんだけの情報が本に書いてあるなら…僕も本を読んでおけばよかったな。けど…今更言っても遅いよね。まぁ…ここに行くのも一つの選択肢だと思うよ」
「でも…ここ以外に行く宛はありますか?」
ヴォラクは一度この後どうするべきか考える事にした。
そもそも絶対に大国に行く必要があるのか?と思った。大国ではなく小国や町にでも行けばいいと思った。ヴォラクは二つの選択を迫られる。
一つは多少苦労してでも大国へと向かうか。
二つ目は大国に行くのではなく小国や町に身を寄せるか。
少し考えた後にヴォラクは答えを出した。
ヴォラクは…大国に向かう事を決意したのだった。
「なら…自由国『フライハイト』に向かおう。今は大国に行くのが多分一番無難な選択だよ。町とか小国に行くよりはいいと思うんだ。でもここからはかなり離れてるが…皆…歩けるよね?」
「も、勿論ですよ!主様の行く所なら私は何処にでも着いていきます!」
「今まで結構歩いてきたからね。歩いて行く事ぐらい余裕だよ余裕」
3人の意見はまとまった様だった。ヴォラクは地図を再び開く。
するとヴォラクは地図から見て東の方向を自分の指さした。
「進むべき道は東だ!2人共!僕に着いてこい!」
「「はい!」」
ヴォラクは東の方向に進む。サテラとシズハも彼に着いてゆく。
風が吹いた。どこかから吹く風はヴォラクの黒色の服を靡かせていた。
ヴォラクの仮面は揺れる事無く彼の顔に取り付けられ、彼の少し長い髪も服と同じ様に風に靡いていた。
この先に何があるのか。誰が彼らを待ち受けているのか。
それはまだ…分からない…




