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17話「哀銃士」

 





 ヴォラク達は不気味で薄暗い洞窟から出た。

 光が自分の目を刺す。手を覆いたくなる様な太陽の光が自分達の目を刺していた。



 ヴォラク達は今までにあった出来事を全てクエスト受注所の人間に報告する事にした。

 洞窟の中で死んだ冒険者達の回収や今頃めっちゃ熱い鍋の中でくたばっている奴の救出などをお願いする為に。




 早速ヴォラクは受付まで行き、今までにあった事を全て話した。



「…………と言う訳だ。早く救出に行かないと、本当に鍋の具になっちまうからな。後報酬の45000Gは3人で山分けするから、さっさと渡せ」


「わ、分かりました…ご連絡ありがとうございます」



 受付は少し焦りながらも報酬金の入った袋を渡してくれた。持ってみたら結構重い。でもこれでしばらくの生活費は保証出来るとヴォラクは思った。




 洞窟であった事を報告してから少し時間が流れた。厳重な装備をした騎士達が自分達の入った洞窟に入って行く所を見た。残った残党に騎士達が殺られない事を願いたい。











 やる事が全て終わったヴォラクは取り敢えず街を歩く事にした。

 ヴォラクの横にはサテラとシズハが自分を挟む様に軽い足取りで歩いている。



(流石にこれは…辛い)


 何故か自分がとても哀れに思えた。哀れだ。自分は哀れな銃士だ…と(個人の心の中での気持ち)



「主様?どうかしましたか?」


「ヴォラクさん?なんか歩き方がおかしいよ」



 若干足元がふらついている事が分かる。風邪引いた時に歩く感覚と似ていた。


 無理も無かった。

 最近睡眠時間が少ないからだ。


 銃のアイデアを考える時間が長い事とサテラが自分の寝ている隣にいる事もあり、最近眠りにつく事があまり出来ていない。



 それに加えて周りの目も辛い。


 前までは顔に付けてる仮面のせいで怖がられていたが、今は他の男から嫉妬の目を向けられている。





 周りから見ればこれは軽いハーレムに見える。確かに僕とサテラは半分恋人関係になっているが、シズハは違う。

 さっき会ったばかりの人だ。話した事がある訳でも無い。知っている人物でも無い。しかし周りから見れば2人はまるでヴォラクの事が好きな様にも見える。

 サテラとシズハの姿は個人的にはかなりの美少女だ。

 シズハは動物の耳や尻尾が生えているから更に可愛く思えてしまう。

 サテラも髪色が紫色。興味を持つ男も少なからずいる。

 それに2人とも性格も悪くないので、他の男から好意や興味を寄せられるのは当然の事かもしれない。


 それに仲良くしているのが見た目の怪しい奴だからだ。


 奇妙な仮面を顔に付けていて、全身黒色の服を着ている。おまけに使っている武器も奇抜。


 完全に不審者だ。


 もしもヴォラクがカッコよくて優しくて強い人なら周りの人間も多少は納得出来ると思うが、ヴォラクはそんなに優れた人間では無い。





 ヴォラクにある取り柄は…顔は中々美形。非常な程に銃に詳しい。アニメやガ○○ムがとても好き。プラモデルも作れる。ゲームの腕前は非常に高い。


 しかし周りはヴォラクの事をこう思っているだろう。


「何故あんな怪しい奴にあんな可愛い女の子が集まってるんだ?」


 とか…


「あんな哀れな奴より俺の所に来いよ!」


 と、自分の耳に入ってきそうだ。





 もうそんな事は無視しようとしようと思っているが、休む間も無いように自分を侮辱する言葉耳に入ってくる事がある。


(馬鹿みたいに哀れな銃士だな…僕は『哀銃士』…なんて…ガ○○ムっぽいな…)





 とあるロボットアニメの曲っぽく心の中で呟いてみたが、全く効果無し。










 頭の中で考えていると、シズハが耳を癒す様な声でヴォラクに話しかけて来た。


 ヴォラクはシズハの話を聞く為に一度足を止め、近くにあった椅子に座る。



「ヴォラクさん。助けくれたお礼がまだでしたね…ヴォラクさん、助けてくれて本当にありがとうございます。あのまま助けてくれなかったら…私は初めてを奪われていたかもしれません」



(…………助けてよかった………)



 こんなにも美しい美少女の初めてをモンスターに渡すのは可哀想の壁を軽く破った。

 人の人生は一度きり。誰に初めてを渡すかは良く考えるべきだ。

 それを無理矢理奪われるのは…個人的にキツすぎる。




「お礼なんていいよ…」


「駄目です」


「なんで?」


「助けてもらった人には必ずお礼を言うと教えられたので。だからお礼はしっかりと言わせてもらいます!」


「……どういたしまして」



 ヴォラクは彼女にこれだけしか言えなかった。ヴォラクはシズハとは逆の方向を向いている。顔を合わせるのが嫌だった。この後なんて言われるのか不安だったからだ。



「主様。シズハさんの方を向いてください」


「どうして?」


「シズハさんは今主様の目の前にいるからです」



 サテラの言葉に(え!?)と心の中で叫ぶ。多少恐怖心を煽らせながらも恐る恐るシズハの方を振り返った。


 機械の様に首を動かしてシズハの方を見た時、体勢を後ろに傾けてしまった。

 シズハの顔がヴォラクの目と鼻の先にあったからだ。


「あの~シズハさん?なんですか?」


 ヴォラクがシズハに尋ねるとシズハは少し焦りながらヴォラクに言った。


「私にも…あの武器の使い方を教えてくれませんか?どうしても使ってみたいんです!」


 ヴォラクはシズハが言った事に応答する。


「…いいよ」


「え!本当にいいんですか?」


「でも…銃を使うのは難しいよ。それでもやるか?」


「無理ならこんなお願いしませんよ」



 シズハの言った事にヴォラクは思った。シズハの覚悟はもう決まっていると思った。シズハの強く輝く緋色の瞳と美しくも逞しさが浮かぶ姿がその覚悟を物語っていた。



「で?何を使いたい?」


「今ヴォラクさんが後ろに背負っている武器です!」


 シズハの意気揚々な声にヴォラクは水を飲んで吹き出した時の様に唾が口からこぼれる。



「さ…流石にこの武器は…初めての君には厳しいと思うけど…」


「厳しい……無理じゃないならやりますよ。だって不可能じゃ無いんでしょ?」


「……分かった。シズハがそこまで言うなら訓練に付き合うよ」


「主様!私も手伝います!」


「ありがとなサテラ」



 ヴォラクはシズハとサテラを連れて、銃の訓練をする事にした。

 訓練する場所は森にしよう…と言うかそこしか無い。



「ところでヴォラクさん。この武器の名前は何ですか?」






 ヴォラクの一番聞かれたくない事を言われてしまった。このライフルには名前なんて付けている訳が無い。


 逆にライフルと言う訳にもいかない。取り敢えず今適当に考える事にした。



「…えっと…この武器の名前は…『ステイメン』だ」




 個人的に気に入った名前がこれしか思い付かなかった。


 とある○ンダ○のコードネームでもある。そしてとある花言葉でもある。


 名前はガ○○ム試○○号○






「ステイメンですか。ステイメン…とてもいい名前だと思います。頑張ってステイメンの使い方を覚えます!」


「言っとくが…重いぞ」


 ヴォラクは背中に背負っていたステイメンをシズハに渡す。


 軽く10キロは超えているので、シズハは両手でステイメンを抱えるが、地面に座り込んでしまう。


「くっ!重い…」


「重いだろ?ほら、僕も手伝ってやるよ」


 そう言ってヴォラクはシズハの後ろに回る。ヴォラクも座り込み、ステイメンをシズハと一緒に持った。



「きゃ!」



 立ち上がった反動でシズハは後ろにつまづいてしまった。


 しかし倒れる事は無い。後ろにはヴォラクが立っているからだ。


 ヴォラクは後ろに倒れ込むシズハの身体を後ろから支える。



 シズハの身体は柔らかくて、何処か優しい匂いがした。



「おっと、大丈夫?」


「すみません~」


「…主様。今のを後で私にもしてくれませんか?」


「何故そうなるのか理解不能」





 3人は今少しだけふざけていた。







 ステイメンは仕方なくヴォラクに持ってもらう事にした。

 シズハの額からは少し汗が流れていた。

 その汗すらも美しく光っていた。


(まさか僕…獣耳娘ゲットか?)




 変な事を考えながらも、ヴォラクとシズハとサテラは自分達の訓練所でもある森に足を運ぶ事にした。








(教えるの面倒臭いな~)









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