13話「暗い日の夜」
空に浮かんだ夕日が空に沈む中、2人の影は静かに闇の中へと消えていく。
ヴォラクとサテラは宿を探す事にした。前と同じ所はもう嫌だ。ベットが一つしか無い宿なんてもう行きたくはない。ちゃんとベットが二つある宿を探す事にした。
「…主様今日泊まる宿は壁が厚い所に泊まりたいんですけど…」
サテラが発した衝撃の言葉に何て返せば良いのか分からなくなった。
この言葉は完全に自分を誘いにきているとしか言えない。
ここでヴォラクは二つの選択を迫られる事になった。
一つ目はサテラの言葉を受け入れて、サテラが希望する場所に泊まるか。
二つ目はサテラの願いを断り別の宿を探すか。
ヴォラクは悩む。こんなに可愛い女性と夜を共にする事が出来るのだ。自分なんかに彼女の相手何て出来ないと思っていたが、そんな事を今は思っていない。ここは受け入れるか、それとももう少し仲良くなってから受け入れるか。
ヴォラクは悩むがここで自分から行かないと…男が廃ると思い、決心する事にした。
「分かった…じゃあ壁が厚い宿に泊まろうか…」
「…え!本当ですか?ありがとうございます」
少し恥ずかしくなるヴォラク。しかし一度決めた事を変える事は男として絶対に駄目だと思い、ヴォラクは多少照れ臭くなりながらも、自ら右手を彼女に伸ばすと同時に、サテラの手を握った。
歩き出していると、サテラが突然足を止めた。何かを思い出したのか、少し考えている様な顔をしている。
「ちょっといいですか?私買う物があったので少し待っててもらえませんか?」
「別に構わんよ。買ってこい」
サテラは前に見える一つの店に入って行った。外からはピンク色の看板が見える。やけにそれは視界に入ってしまい、変に想像を膨らませてしまう。しかしどの様な文字がその看板に書いてあるのかは自分には分からなかった。
(もしもベットの上ででサテラに誘われたらどうしたらいいんだ?断るのにも気が引けるし…でもサテラはまだ17歳だぞ?誘うにも早い気がする。でもやっぱり…ダメだ考える程訳が分からなくなってきた…)
頭の中でどうしたらいいか考えるヴォラク。しかし考えてもどうしたらいいのか分からない。
ここは思い切って!な考えは無しにしたい。第一まだ出会ってそんな時間が経っていないので、ここで関係を持つのもどうかと思った。関係はお早めに、とは聞いた事がないので
考えても何も思いつかない中、サテラが駆け足で戻って来た。紫色の髪が風で揺れ、綺麗な生肌がヴォラクの視界に入り、双眸に投影される。彼はそれを見るだけで少し癒され、苦しい心が緩和される様な気がした。
「主様、待たせてしまってすみません。買いたい物は買えたので、早く宿に向かいましょう」
「…ああ」
少し元気の無い声でサテラに返事をして、サテラは意気揚々な足で…ヴォラクは少し重い足取りで宿へと向かっていった。
場所に関しては分かっていた。前にこの街の地図を見た時に宿の場所は把握している。早速サテラが泊まりたいと言っていた宿に2人は向かった。
「ここか?」
「はい!」
中央部の街から少し離れた所にサテラが希望した宿があった。夕日がヴォラク達を照らす。何の偶然かは分からないが、夕暮れ時であるにも関わらず、2人の周りには人は全く居らず、通行人は全くと言ってよい程見当たらなかったのだ。まるで世界に2人だけしか居ない世界を作っている様だ。人が誰も歩いていない事に気が付いたのか、サテラは主であるヴォラクに甘えるかの様にして自らの腕をヴォラクの腕に絡め、人目を気にする事がない様にして、ヴォラクに自らの肉体を寄せたのだった。
そして宿の外見は普通の宿と変わらない。中心の街の中に建っていても何ら特別な変わりは無かった。
「さぁ行きましょう!」
「分かったよ…うゎ!」
サテラに腕を絡ませられると同時に、サテラに引っ張られる形で宿の中に入った…
そして宿の中に入ると、受付が1人だけカウンターで1人立っていた。やけにその表情は無愛想で、受付をしている割には覚束無い表情を見せていた。
「いらっしゃい」
小声で受付が言った。こちらを生気があまり感じられない目で見ている。
ヴォラクは受付の前に行き、Gを受付に払う。
「2人だけだ。部屋は二人部屋で頼む」
「かしこまりました。こちらが部屋の鍵となります。では…今夜はお楽しみください」
(しれっとこの人ヤバい事発言しとる!)
心の中でかなりの大声で叫ぶヴォラク。しかしそれを表には出さずにサテラと部屋に向かった。
「…またこのパターンかよ…」
「逆にこれはこれでいいんじゃないですか?」
あったのはベットが二つでは無く、少し大きめのシングルベットだったのだ。これではまた添い寝しなければいけない。
女の子と添い寝するのははっきり言って無理難題だ。対応に困るし緊張して眠れなくなる。強いて言っても、姉や妹達としか添い寝はした事がなかったので、これは彼にとっては大きな課題となってしまっていた。
しかし今回はどう足掻いても添い寝を回避するのは無理だ。ベットも一つしかないし、回避は不可能に近かった。
「広いだけまだマシかな?」
「私は狭くても構いませんけどね」
2人は体を伸ばす。最近はちゃんと体を休めていなかった。ずっと体を休めないのは体にとっては毒だ。
「今日は息抜きしよう」と決めて、ベットに横になる。
いつもなら銃の整備や新しい銃の制作の為にアイデアを考える事をしていた。勿論眠る時間を削って考えていた。
しかし今日はそんな事はやめようと思った。毎日体を動かし使い続けたら自分の体が持たない気がしてきた。
ベットで横になっていると自分の真横にサテラが転がってきた。
「サテラ…どうしたんだ?」
「………」
サテラの方を見るとサテラは口を少し開けたまま眠っていた。
無防備なままで冒険者用の皮と布を使って作られた服を着たまま寝る用の服に着替えずに口を開いたまま眠ってきた。
きっと今までの魔物との戦闘や銃の訓練でサテラも疲れていたのだろう。
ヴォラクはサテラの頭を静かに撫でた。
ヴォラクは少しだけ自分の銃を磨いた。銃は金属素材で作られているので、放ったらかしにすると錆びて使えなくなったりトリガーが作動しなくなる可能性があったので、時々磨いて綺麗な研磨がでるようにしていた。
研磨を出すのは○ンプラを作っていた時に学んだ技術だ。
「さて…もう遅いしそろそろ寝るか」
その前にヴォラクは外を見る為に部屋の窓を開けた。周りは暗く、中心の街から黄色の光が見える。更にその奥には前に自分が居た城が自分の目の中に入ってきた。
あの場所で美亜や銀河達が楽しくしているのだろうか…それとも冒険をしているのか。いつか必ず奴ら見返し復讐をする。自分を追放した王。自分に偽りの罪を背負わせ、凱亜と言う存在を殺したクラスメイトをこの手で…殺すと…
そんな物を見ているだけで気分が悪くなってきた。窓を高速で閉めて、カーテンで部屋の中が見えない様にした。
すぐにヴォラクは部屋の灯りを消して、サテラが眠っているベットに入る。顔に付けている仮面を外し近くの台に仮面を置いた。その後ヴォラクは置いてあった布団を体に被った。
しかし眠れない。こんなに可愛くて優しい女の子が自分の真横で眠っているからだ。
歳も17歳と自分とは1歳しか離れていない。その中で眠れなんて無理な事だ。
必死で眠る為に色々な事を試す。
(羊が一匹…羊が二匹…羊が三匹…)
羊を数えるやり方を試すが効果は全く無い。これでは焼け石に水だ。
違う事を試す事にした。
(うぉぉぉぉー!考えろ!考えろ自分!今まで自分が見てきた中で悲しい場面を思い浮かべるんだ。そうすれば眠れるはずだ。(個人的に)何がある?そうだ…あの〇クがガ〇〇〇に撃破されたあの悲しい場面を…ダメだ!全く効果無し!違う事を…ロ〇〇〇ンが死んだ時の…ダメだ!あれは名言だから泣ける要素が見当たらん!他には…)
必死で眠る為に色々な方法を探すがどれも効果は無い。どれだけ考えても眠る事が出来ない。
必死で考えると仰向けで寝転ぶヴォラクにサテラがヴォラクの身体の上に乗る。
(へ!?サテラ…)
「主様…起きてますか?」
ヴォラクはあえて何も言わずに暗い部屋の中で首を縦に振る。
「私はあなたみたいな主様に出会えてとても嬉しいです。あなたよりも優れた主様はこの世の何処を探してもきっと居ないと私は思います。だから…主様にお礼をしたいんです。お金を持ってはいませんが……良かった私を…」
遂にヴォラクはサテラに誘われてしまった。体が若干震えている。こんな事になったのは本当に初めてなので、どうすればいいのかさっぱり分からない。
「サテラ…ダメだよ。君はまだ17歳なんだよ…この歳で…」
やめさせようとストップをかけるがサテラの行動は止まらない。
「気遣ってくれるのはとても嬉しいです。でも薬はしっかり飲みました」
「え?じゃあ…あの時買ったのって…」
「はい…きっと分かってると思います」
サテラはもう完全に自分と関わりを持つ気だと思った。しかしこれが自分にとって良い事なのか分からなかった。
「…あの私初めてなので…優しくしてくださいね」
(何だって~!?)
その言葉にヴォラクは硬直してしまう。こんなに可愛く美しい女の子の初めてを奪う事が出来る。自分にとっては良い事?と思った。
「良いのか?僕みたいな奴が初めてで…」
「逆に主様以外に私を捧げる事は出来ません。主様…ヴォラク様だからいいんです…」
そう言ってサテラは着ていた服を脱ぎ始めた。彼女の服が脱げ、サテラの身体が露出した。
その一言とサテラの姿にヴォラクは完全にノックアウトしてしまった。もう今の自分ではサテラに勝つのは無理だと思った、ヴォラクは顔を手で隠し言った。
「始めるか?」
と言った。
「はい♡」
そのまま流される感じでヴォラクはサテラの身体に手を伸ばした。
その日の夜…僕は初めて女性と関係を持った。
その日の暗い日の夜は2人だけが知る夜となった。
次の日の朝…ヴォラクはサテラよりも早く起きていた。
「サテラ…やっぱり綺麗だな」
紫色の髪と美しいサテラの顔、そして健気な身体は何度見ても自分の顔に笑みが浮かぶ。サテラの頬をヴォラクはすっと撫でた。
するとサテラの手がヴォラクの手を掴む。
「少しの間だけ…こうしてもらえませんか?」
「ああ…いつでもしてあげるから…」
この時の目を瞑るサテラとサテラを見つめるヴォラクの表情には…汚れたものは何も無かった様に見えたと言う…