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105話「陰謀」

 

「ほんじゃ旦那、また何処かで会いましょうね。また会ったら俺の商品買ってくれよ?安くするからさ!」


「ああ、また何処かで会おう、カルマ」


 カルマが手網を握りながら少しだけ笑みを浮かべた表情で、手を振りながらヴォラクに言うと、再び一時的に止めていた二頭の馬を走らせると、足早にヴォラク達をその場に置き去りにして、王国内部へと突入して行ってしまった。

 ヴォラクも軽く手を振りながら彼の事を見送ると、視線をカルマの方向ではなくサテラ達の方へと向けた。本当はサテラの方向へと視線を移して、彼女と話したかったのだが、久しぶりの再会を大いに喜んでいるのはサテラだけではなかった。視線を移すなり、ヴォラクの顔全体に柔らかくて温もりのある感触が突然として襲いかかったのだ。

 それが何なのか、凡その検討は余裕で着いていた。何せ今までに何度かこう言った事は何度もされているので、慣れている?様な感じだったのであまり問題や不便さは感じなかった。逆に嫌だと思ったり抵抗する気はならなかった。寧ろ温かさと安心と安らぎを覚えられるので彼にとっては必要な行為だったと思えた。


「心配させやがってぇ!弟のくせして正体晦ますなよォ!」


「ね、姉さん…ちょっと、くる……」


「うるさい、うるさぁい!今はアタシに甘えてろぉ!」


 早速過ぎた展開に周囲の皆様方は、あ~またやってるよ、みたいな感じのノリで二人の事を見つめていたので一切止めには入ろうとしなかった。


(ま、前よりなんかおっきくなってない?姉さんの!)


 ヴォラクは現在血雷の優れた腕力によって思いっきり拘束され、完璧としか言い様のないHカップと言うデカすぎる二つの巨乳に思いっきり押し付けられてしまっていたのだ。

 苦しいものではあるが、気持ち良いか?と誰かに聞かれれば、間違いなくYES一択だった。気持ち良い感触に、女性特有の甘くてふんわりとしている心地の良い匂い、強過ぎるながらも守りたい、ずっと一緒に居たいと言う気持ちが言わずとも直接伝わってくる様な腕の使い方、その為ヴォラクは彼女の行為に多少は抵抗を見せるも、その逆の気持ちとして姉であるが為にずっと甘えていたい様な気分にもなってきてしまったのだった。姿は違うとは言っても、彼にとっては偽物であったとしても縋りたい様な気持ちにずっと苛まれ続けていたので、彼は結局抵抗せずに彼女の行為を受けて入れていた。だったのだが、甘えたいと言う気持ちよりも先に彼の心臓が止まりかけていた。


「ぐ、ぐる…じ…い……姉さん、苦しい」


「あ!ヤリすぎちまったか?」


「ゴホ、ゴホッ!あぁ~三途の川が見えた所だったぜ」


 少しだけジョークを飛ばしたヴォラクは、苦しげな表情を見せながらも自身の喉を少しだけ、諌める様にして摩ると、いつも通りのヴォラクへと戻った。多少ばかり思いっきり抱き締められた事による苦しさは残っているが、所詮暫くすれば収まる様な事だったので、今は気にしない事にしておいた。

 そして、彼は話の方向性を変えて、サテラに話しかける。前の時と比べると彼女の表情は凛々しくなり、初めて出会った時の健気な乙女で、怯えが消えていなかった少女と言うよりは肝が据わっていて、迷いが全くと言って良い程見受けられず、戦いに赴く事に躊躇いがない一人の銃士の様であった。


「サテラ、改めて言わせてもらうよ……今回の復讐、手伝ってくれるか?」


「……勿論ですよ!」


 サテラは笑みを浮かべた表情で意気揚々と答える。そう答えが返ってくるのは凡そ予想が着いていた事だが、そう回答したのはサテラだけではなかった。サテラの回答に便乗する形でシズハ達もサテラと同じ様な言葉を並べた。


「ヴォラクさん、私も手伝いますよ?降り掛かった火の粉は振り払わないといけませんからね!」


「任せろよ、大好きな弟に酷い目遭わせた奴だろ?ぶっ殺してやる!」


「国壊しはあんまり乗り気ではないんだが……仲間の頼みなら聞かない訳にもいかないからな……私も手伝わせてもらうぞ!」


「えぇっと、よく分からんないですけど、ガイアさんからは色々と聞いているんで、お手伝いはします!」


「オレモ、オレモ、テツダウ!」


 満場一致で、全員彼の復讐に協力的な姿勢だった。だったのだが、流石にサテラ含めた四人は流石に、違和感に気が付いた様だった。

 え、違和感?見りゃ分かるだろ?サテラを含めた四人は紗夜やページとは初対面なんだよ?先程までは何となく会話の輪に入っていたが、少しの間だけ無言の空間が出来るとサテラ達はすぐさま彼女とページの事に気が付き、いきなり強い問い詰め始めたのだ。


「ちょ!?貴方誰ですか!?……てか、胸おっき!血雷さんよりも………大きい!?私……メインヒロインなのに…」


「うぅ~獣耳ヒロインと言う利点があると言うのに…あんなに大きいなんて、反則ですよ~」


「な、この新参者…このアタシよりも乳がデカいだと?世の中って広いんだなぁ~」


「ば、馬鹿な!私でもFはあると言うのに……くっ、新ヒロインには勝てないと言うのか…」


「お前らさっきから、紗夜の胸の事についてしか言ってなくない?他に言う事あるやろ?」


 サテラもシズハも血雷もレイアも全員仲良く紗夜のデカすぎる胸の事しか呟いていなかった。分からない事はなかった。確かに紗夜の胸の大きさはサテラ達四人と比べるとその差は歴然だった。

 その中でも特に大きい血雷よりも僅かに上回る程であった為に大きいが故あまり口出しをしない血雷ですら、紗夜の大きな二つの乳房を見た瞬間に若干悔しさが混じる様な言葉で話していたのだった。因みにだが他の人も大体同様の模様だった。

 取り敢えず、この場に仲裁を入れる事が出来るのはこの場にいるヒロイン全員と仲が良いヴォラクだけであった。すぐさま、彼は仲裁に入る。


「お前ら、一旦落ち着け。紗夜の事は追々話すから、取り敢えず、中に入る………あれ、どうやって入るの?」


 ヴォラクはここで罠にかかってしまったかの様な気になってしまった。まずそもそもの話になってしまうのだが、王国のみの話ではないのだが大体の場合、他国等にその足を踏み入れる場合、何かしら身分を証明出来る物を掲示しなければならないのだ。これは大体何処に行っても適応されている規則の様なもので、冒険者なら冒険者カードを掲示する必要があるし、商人は何を売りに来たかの説明や商品の掲示、外交官や貿易人等なら、その身分を証明出来る物を掲示しなければならない。

 自慢げに言える事でもないのだが、ヴォラクは過去にこの国を追放されている。しかも不知火凱亜と言う名前で追放された時と、ヴォラクと言う名前で追放された時の二回、二度連続で追放されているのだ。

 もし名前なんてバレてしまえば、即身元を割られるのは目に見えている事だ。人の噂も七十五日と言うが、誰かしら覚えている人はいるだろう。特にクラスメイトの人間とか……

 その場合、身に危険が及ぶのは自分だけではなく、サテラ達もその被害者になってしまう。自分に火の粉が降り掛かるのなら、自力で振り払えば良い話なのだが、彼女達にまで危険を及ばせる訳にはいかない。完璧に大きな賭けになってしまうかもしれないが、バレない事を切実に祈るしかなかった。仮面を付けて素顔を隠すのも手だったが、仮面を付けていた時の方が逆に目立ってしまっていた様な気がする。それに今自分の手元には過去に自分が顔に取り付けていた仮面は無かったので、やはり素顔を晒しながら行く事しか出来なかったのだった。


「しかし、どうやって入るんだ?身分証明なんてしたら僕の名前バレるぞ?」


 ヴォラクの心配と不安の声が混じる中、サテラは心配気な表情を浮かべるヴォラクとは裏腹に何故か変に嬉しそうな表情を見せた。

 すると所持していたバックから何かを取り出したのだ。それは高貴な紐で巻かれた何かの紙であったのだ。ヴォラクはこの紐で巻かれたただの紙が何なのかは分からなかったが、サテラは淡々とそれが何なのかを説明し始めたのだ。


「ふふっ、このアストレアさんの紹介状があれば全員簡単に通れますよ」


「しょ、紹介状?そんなんで通れるのか?」


「大丈夫だよ、問題はないから」


 そう呟くと、サテラは自らの意思で足を動かし、ヴォラクの制止を聞く事なく大きな門の前で鎧を着込み、長い槍を握りながら腰に鞘に納められた長剣を携えながら周囲の警戒を行う警備兵の元へと近付いて行く。

 そして、それを見たシズハや血雷、レイアも彼女の後を追う様にして、サテラの背中を追った。ヴォラクは最初は何をしているのか、よく分からなかったが、いまいち状況を把握出来ていないヴォラクを見兼ねた血雷が、ヴォラクの肩に手を添えながら、そのまま一緒に歩き出してくれたのだった。


「ちょ!?姉さん?」


「まぁ、口閉じといて、黙って着いてきな」


 血雷がそうヴォラクに告げ口すると同時に、血雷は後ろを振り向いて、後ろで石像の様にして棒立ちしてしまっている紗夜とページにもアイサインを送った。サインを受け取った二人は多少戸惑いを見せながらも取り敢えずヴォラクの仲間と言う事で信頼しているのか、素直に紗夜とページはヴォラクの後を追った。


 ◇◇


 ヴォラクはただ後ろから見ている事しか出来なかった。サテラと血雷の二人が門の前で静かに待機している警備兵に対して何かを言っていた事は分かる。ただ細かく何を言っているかまでは分からなかった。出来るのなら、彼女達の近くに寄って何を話しているのか詳しく聞きたかったのだが、自らの身の事も考えた上、ヴォラクはサテラ達の話を聞かずに後ろから遠目でただ静かに見守っている事しか出来なかったのだった。

 そして結局最後の最後まで何を話しているのかは、彼には一切分からなかったが話が終わり、サテラと血雷がこちらに余裕気のある表情を見せながら戻ってくると、足早にヴォラクに声をかけた。


「お待たせしました。通っていいらしいですよ!」


「一体あの紹介状には何が書かれてたんだよ……」


「へへっ、細けぇ事は気にすんな。後で教えてやるからよ。さっさと飯食いに行こうぜ?」


 細かい事は後回し、ヴォラクだって可能なら後回しにしておきたいので今は気にしないでおく事にした。どうせ後で分かる事だと言うのなら、今は無理をして知る様な事でもないだろうと感じたヴォラクは、今は何も気にしない事にしておいたのだった。


 ◇◇


「うぃ~ヒック…また飲み過ぎちまった~………ゴクゴク、ぷっはぁ~もう一杯!」


「も~血雷さんお酒飲み過ぎ!アストレアさんから貰ってる資金だって多くはないんだからね!」


「お肉お肉!やっぱり私にはお肉が一番なのよ!ガブッ!」


「全く限度も知らずに飲み尽くして……んん!この葡萄を使ったやつ結構美味いな……」


「おーい、陰謀会議のはずがただの宴会場になっちまってるじゃねぇか!」


「別にそんなの後でも良いじゃないですか!夜は長いんですし、今は楽しみましょうよ!」


「グーグー(スリープモード)」


 現在ヴォラク達はかなり値が張る宿の大きな部屋一つを貸し切って、その部屋の中でも一番大きな部屋で大きな机を囲みながら、仲良く部屋の中に運ばれてきた食事を全員で楽しんでいたのだった。

 何故こうなってしまったのか。まず、門をくぐった後の経緯について説明しよう。


 ◇◇


 門をくぐった後、サテラはすぐに自分達の事情を素直に話してくれた。隠す気は一切ない様にして今回の自分達の目的について洗いざらい全て話す様にして話してくれたのだった。


「それで、今回は復讐ついでに何をしに来たんだ?」


「簡単に表すなら、今回私達は無実の証明をしに来たんですよ。主様、新聞とか読みましたか?分からないなら説明しますが?」


 サテラが言おうとしている事が何なのかは、言わなくとも分かりきっていた。今回の騒動、やはりヴォラクの考えは間違いではなかった様だった。ヴォラクの見立て通り、フライハイトは濡れ衣を着せられていた様であった。

 新聞に書かれていた記事では、フライハイトは主に魔族が主導で政治を進める四大国家の内の一つである「バンデ」を攻撃し、その国の兵士達や非戦闘員に等しい国民、更にはトップを務める国王含めた国民の約八割を無差別に虐殺したと報じられていたのだ。

 最初その大々的に報道されていた記事を読んだ時こそ、俄には信じられない内容であり、信じるなんてバカバカしいとまで最初は思っていた。

 しかし新聞に記載される内容は真実である事が多い為、これも真実なのだろうか、と素直に受け入れようかと思っていた。

 だが、どうやらこれは真実ではなく、くだらない情報操作の様であった。またしても何者かがフライハイトそのものの価値を落とす為に何者かと共謀して行った非道な策略に等しいものだと言う事を今知ったのだ。


「知ってるよ……お前らが今所属してるフライハイト……その国を貶めようとしている連中がいるんだろ?」


「はい、本当なら今すぐにでも割り出して叩き潰したい所ですが、今は他国との信頼関係を修復しなくてはならないんです。ただでさえ一発即発な関係な所ですが、このままだと無実の罪を擦り付けられたまま私達の国ごと滅ぼされる可能性だってあります。なので今回は無実を証明する為にここに来たと言う事です」


「言いたい事は分かった……だが、良いのか?今のご時世で復讐なんて事したら、余計関係が……」


 もはや今更感が否めなかった。関係なんて破綻する事が目に見えている。今から修復は困難だろうし、ヴォラクの復讐の舞台が幕を開ければ関係なんて破綻する所か向こうから攻撃を仕掛けてくるかもしれない。

 しかし不穏な空気しか漂わない会話であったが、サテラは全く怯える様子を見せる事なく、逆に嬉しげに親指を立てながら、主であるヴォラクにのみ聞こえる様にして、小さな声で呟いた。


「大丈夫ですよ…もう関係破綻なんて目に見えてます。明日ある会談は、主様の復讐劇のお膳立ての様なものですよ?」


 サテラの言葉に、ヴォラクは黙ったまま無表情に近い形で首を縦に振った。そしてヴォラクは心の中で一言呟いた。


(今度アストレアさんに会ったらお礼言お……)


 そうして、復讐への手立ては整った様だった。後は陰謀を企て、それを実行するのみだ。ヴォラクは期待が込み上げてきた。僅かにではあるが、白い歯を剥き出しにしながら悪い笑みを浮かべたのだった。


「よぉ~し!話は終わったか?」


「ね、姉さん!終わったけど?」


 サテラとの会話が途切れるなり、血雷はタイミング良くヴォラクとサテラの肩に自らの両手を回してきたのだった。無論腕を回されたヴォラクもサテラも抜け出せる訳がなく、素直に彼女の行為を受け入れるしかなかったのだった。


「明日までは暇なんだよ、アストレアからは今回の為の資金もそこそこ出てんだ。取り敢えず、宿…探そうぜ?」


「絶対に飲むよね!?飲む事しか考えてないよね?目が語っちゃってるのよ!」


「いいんじゃないですか?私もそろそろお腹空いてきましたし」


「何事もまずは食事から済ませよう。腹が減っては戦は出来ないからな!」


「少しは、節約って言葉を覚えてほしいんですけど……しょうがないですね!」


「う~ん、何だろう。会話に入りずらい」


 そう言うと、ヴォラク一行は夜に入り始めようとしていた街へと向かっていくのであった……


 ◇◇


 そして今は部屋が大人数用の部屋を一晩借りて、部屋の中に持ち込まれた食事を六人で楽しんでいたのだった。各々好きな料理を頼み、飲み物を流し込み、一時の食事を楽しんでいたのだった。

 だが、酒癖が悪いのは相変わらずの様であった。血雷は毎度毎度凝りのせずに酒を山の様に飲み尽くしていたのだ。明日二日酔いして起きられないとか勘弁してほしいものであるが、恐らく大丈夫であろうとヴォラクは思った。


「くっはァァ~やっぱこう言う酒も言うのも悪くねぇなぁ!ヴォラク、お前も一杯やろうぜ!?」


「ぐほぉぉ!ね、姉さん!僕まだ酒飲める年齢じゃねぇ!」


 ヴォラクはまたしても、姉弟の絆なのかなんなのか分からないが血雷と強引にくっつきながら料理を食していたのだった。ヴォラクは料理を口に運びその横で血雷は時折料理を口に運びながら、豪快に酒を飲んでいたのだ。

 無論、距離は恋人と見間違える程に近く、血雷の大きく柔らかい胸はヴォラクの腕と身体に容赦無く密着していたのだった。少しばかりヴォラクの頬が赤くなってしまっていた。


「ね、姉さん……食べにくいよ。そんな強引に…」


 ヴォラクは頬を赤らめながらも、血雷に小さめな声で呟いた。ヴォラクはこの呼び掛けで素直に血雷は引いてくれると思った。しかし現実とは厳しいものであった。


「何だよ!珍しく顔赤くして!照れるじゃねぇか!」


「もう、お酒飲むのやめてください!この前も有栖さんと蒼一郎さん達と飲み明かしてるんですから!」


 そうサテラにかなりキツーく言われてしまった血雷は、少しの間だけ動きを止めると、今度は意外にも素直に酒を口の中に流すのを突然としてやめると同時に、ヴォラクの身体に自らの身体を密着させるのをやめ、太腿と股間に着ている褌を晒しながらもしぶしぶヴォラクの隣に素直に座ったのだった。

 流石にやり過ぎかと思ったのだろうか、血雷はヴォラクの耳元に自らの口を近付けた。突然の出来事でヴォラクの耳は僅かに熱を持って、熱くなってしまう。


「わ、悪かった……!」


「別に、大丈夫だよ、姉さん……」


 そう言うと、姉である血雷は少しばかりではあるが落ち着いてくれた。しかし周りは落ち着いておらず結構楽しい感じで食事を楽しんでいた。

 

「紗夜さんって、ヴォラクさんとは……どんな関係なんですか?……もしかして……」


「恋人なんですか?」


「え!?そ、そんな関係じゃありませんよ!」


「いや、もしかしたらあの大きなので誘ってたかもしれないぞ?」


「何で皆さんは私の胸の事ばっかり言うんですかぁ!」


「「「だって、大きいじゃん」」」


 これじゃもう陰謀会議じゃなくて、ただの女子会トークじゃないか。ヴォラクは改まって陰謀について話そうとするのだが、そう話は上手くは進まない。食事もそろそろ済みそうな感じにはなっているのだが、女子会トーク並のヒロイン一行の会話は決して途切れる様子を見せる事はなかった。可能ならヴォラクはその会話には混ざらずにさっさと陰謀を話したら明日に向けて眠りに付きたい所であった。

 ヴォラクは今日は夜が進む間目を覚ます為の昼寝を一切していなかったので、健全な体をしているヴォラクに少しずつではあるが睡魔の魔の手が彼の事を襲い始めていた。

 このまま自らが考えた長き陰謀を言えぬまま明日を迎える事となってしまう。取り敢えずヴォラクは今すぐにでも良いからトークが鳴り止まないこの場を一時的にではあるが鎮めて、自らが考案した陰謀を説明しなければならなかった。だが、周囲の会話は依然として鳴り止まぬ雰囲気のみを醸し出している。


「おーい、皆さん?そろそろ……僕の陰謀について、話したいんだが……」


 改まったヴォラクは、少しだけ強硬な手段に出る事にした。今一時的にではあるが、ヴォラクはその黒色の双眸に以上とも捉えられる程の強い殺気を込めたのだ。毎度毎度人を手にかけてきたヴォラクだった為、自らの双眸に殺気を宿すなど造作もない事であった。

 今回の件でヴォラクはかつてのクラスメイト(一部は除く)をじわじわと追い詰め、精神的に徐々に殺してゆき、いずれは自らの手でトドメを刺すやり方を考えていた。詳しくは今は言えないが、じわじわとゆっくりやっていく事だけは確定している。今これを読む読者の皆様にはもう少しだけ待っておいてもらう事にしよう。

 追放された怒りを胸にして、すぐに脳天を撃ち抜いて殺すなんてやり方は絶対的に面白くはない。

 そしてヴォラクの殺気が込められた双眸を彼女達に向けると、殺気を向けられた事でサテラ達四人(血雷は既に黙っていた)はすぐさま言葉を失い、一時的に話を中断させると全員ヴォラクの双眸を一度見つめた。


「それじゃ……作戦を説明するよ」


 その言葉にその場にいる全員基ページもスリープモードを解除して、彼の話に耳を傾けた。その日の夜に行われた陰謀会議はヴォラク一行のみが知る隠蔽された作戦なのだった。それを知る者は彼ら以外には何処にもいなかった……


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