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97話「闇に消えたヴォラク」


この話から第二部に突入です!


ぶっちゃけ行方不明回はあんま長くないかもしれません。

 

 瞼が上に動くと同時に、彼は偶然的に奇跡的にではあるが目を覚まし、何とか薄らとしており、ハッキリとはしていない中ではあるが、自らの意識を取り戻す事が出来た。目を開くなり視界には薄暗い世界が飛び込んできた。辺りからは声はせず、ひっそりとしながらも静寂を漂わせ、何も存在しない、虚無の様で、音がなくただ静かな世界がそこに存在していたのだった。


「……………んぁ?」


 しかしながら、取り戻した意識がハッキリとせず、薄らとボヤけるかの様にして朦朧としており、目を開けた事までは良かったのだが、体を起こす事は残念な事にままならなかった。そして目を覚ましたのは良かったのだが、体はまだ思う様には動かなかった。まるで体全身に大きな鉄球を何個も課せられたかの様な感じで体全体が重くなってしまっており、全くと言ってよい程体は思う様には動いてはくれなかった。

 更に左腕が必要以上に痛かった。まるで腕ごと引きちぎられてしまった様な気分になってしまっていた。決して泣き叫んでしまう程の痛みではないのだが、内部から攻撃されているかの様にズキズキと、そして絶え間なく彼の左腕には痛みが発生し続けていたのだった。彼は何とかその痛みを克服しようとしながら、その場から立ち上がろうと試みる。

 しかし体が痛み、重しをつけられたかの様にして体が重い中で体を起こそうなんて普通に考えて簡単な話ではなかったのだ。現に彼は体を起こしてみよう、と奮闘してみるのだが、その奮闘虚しく体が起き上がる事はなく、彼はまるで地面に横たわる石像の様にしてその場から動けず、声を出す事もままならないままその場に横たわり、ただ呆然とした表情を見せながらも時間を無駄に浪費していくしかなかったのだった。


(ダメだ、動かない…左腕に変に痛みやがるし、体が重い……それに、ここは一体何処なんだ?そして僕は何をしていたんだ?)


 体が動かなくなり、遂に彼は自問を始めてしまったのだ。ここは何処なのか、そして自分は何をしていたのか全てが彼には分からず、分からないにも関わらず、彼は自分に質問を投げかけてしまっていたのだった。しかし分からないにも関わらず、更には質問しているが自分であった事もあり、質問が返ってくる事は絶対になかった。質問なんて返ってこず、結局彼はさっきと全く変わらず、ただ呆然としたままその場に横たわっていたのだった。


 ◇◇


 時計が存在せず、外の景色を確認する窓等も一切存在しないせいで、彼は今は何時なのか、そして今は朝なのか昼なのか、はたまた夜なのか確認する方法が存在していないせいで感覚が狂ってしまいそうになる。時間の概念なんて今の自分にとってはどうでも良く思える事なのだが、一応状況把握はしておきたかったので、今状況把握を出来ない事を彼は恨んでしまっていた。しかし恨んだ所で何かが解決する訳でもなかったので、結局彼はまたしても何をして良いか分からぬままその場に横たわり続けるしかなかったのだが、流石にいつまでも、体のコントロールを奪われたままこの場に留まり続ける訳にはいかなかった。

 無理は承知の上で彼は行動を起こす事を心に決める。動かないとは言っても、彼自身の体は石ではないので、動かないとは言っても、無理は承知!と体に言い聞かせて行動を起こせば案外どうにかなるかもしれないと、彼は思い体を動かし始める事にしたのだ。


(う、動いてくれよぉぉ!)


 彼は体に強い力を込めた。特に体を起こせる様にする為に足や腕、腹筋に力を入れて立ち上がろうと試みる。体を動かそうとする度に体から鈍い音が発され左腕を初めとした全身から痛みが走る。更には頭まで変に痛んできてしまった。どれも普通なら耐え難く、変に我慢してしまえば体が引き裂かれてしまうかの様な程の痛みに近かった気がする。しかしこれ程度の痛みで彼は止まる事は出来ず、意地でも自分の無理を押し通すかの様にして彼は体を起こそうと試みる。

 運が良かった事が幸いしたのかどうかは、分からないが倒れてしまっていた彼の傍には机の様な物が設置されており、しかも地面に固定されていた為、手すりの代わりとして使用するには最適だったのだ。彼は使わない手はないと感じたので、その椅子の支えに右手を伸ばし、掴むと同時に立ち上がろうと試みる。左手を使いたかったのだが、彼は今ここでとある事実に気が付いてしまった。しかもその事実は、重大すぎる事であり、彼も最初こそは動揺するのであった。


「あれ?僕の腕が……消えてやがる」


 彼は自らの目を疑う。最初こそは冗談だと思ってしまい、半笑いするかの様な表情を浮かべると同時に、思考が追い付かなくなり右手で目を擦る程であったのだ。しかし現実を受け入れない訳にはいかなかった。現実とは目を背けられない真実であり、嘘で塗り固める事は出来ない。

 彼は今、真実を知った。それは自らの左腕は失われてしまったと言う事だ。左腕、その第一関節から少し上から下は完全に失われ、ちぎれてしまっていたのだった。動かそうには腕そのものが消失してしまっていたので感覚も何も無く、指を動かしたくてもまずもって腕が無いせいで指を好きに動かす事も出来なくなってしまったのだ。

 だが、腕がちぎれているにも関わらず、不思議な事に痛みは耐えられない程ではなく、泣き叫び、悶絶してしまう程ではなかった。先程の様に、中からズキズキと痛む程度で今になれば、自然と痛みは引き始めていたのだった。赤黒い血もその断面からは滝の様にしては流れてはおらず、完全に血は止まっており、止血が完了している状態だった。しかし止血する為の包帯や何かしらの応急処置を施す為の物資は彼の体には施されておらず、見るからに自然治癒した様にしか見えなかったのだ。しかし彼は腕がちぎれてしまった出来事が身に起こった覚えは一切なかったのだった。強いて言え、自分の身に何があったのかなんて、一切覚えていない。言ってしまえば、今見た景色以外の事は全くと言ってよいぐらい、何も覚えていなかったのだった。

 しかし全てが全て記憶から消え去ってしまった訳ではなかった。僅かにではあるが、頓挫しながらではあったものの薄らと、そしてぼんやりとだが消失しなかった記憶も存在していた。

 まるで手取り足取り分かる様だった。銃やありとあらゆる武器の知識に関してはまるで全てを操るかの様にして、武器の種類や設計に関しての知識は蓄えられるかの様にして彼の脳内にインプットされるかの様にして記憶されていたのだ。何でこうも詳しいのかには、覚えが僅かにではあるのだが、存在していた。きっと自分はそう言う感じの、知識に精通している人であったのだろう。彼はそう確信した。

 あまり記憶は脳内に残存しておらず、自らの名前だってマトモに覚えていない状況でこそあったが、彼はちぎれてしまった左腕の断面を右手で押さえながら行動を開始する事にした。

 左腕が無くとも、彼は何とかしてその場から身を起こして、立ち上がった。多少融通の効かない所も存在はしていたが、やはりいつまでも寝転がっている訳にもいかなかったので、痛いとは分かっていても、彼は身を起こしたのだった。


 ◇◇


(さて、まずはこの場所の探索だな、僕に危害を加えてくる人間、又はその他の生命体が潜んでいる可能性もあるし、落ち着いて行こう。時間は有限だが、長い時間だ……取り敢えず、気になる部屋から探索していくか……)


 彼は周囲に目を配り、警戒しながら、ゆっくりとした足取りで足を進めていく。生憎ではあるが、彼は今何も武器を所持しておらず、丸腰状態である為、危害を加えてくる生命体と出会ってしまった場合、反撃する為の手立てが存在しないのだ。(言及していないかもしれないが、彼は転移させられた時にツェアシュテールングやビームサーベル等と言った武器、そして顔に付けていた仮面等と言った持ち物を全て置いてきてしまっています。言及してないけど、一応これ本当なので…)

 丸腰の状態で敵と出会ってしまえば、彼は全力で逃げる事しか出来なくなってしまう。今極力敵との遭遇は避けたい身であった為、彼は足音一つ立てない程に静かに進み、ゆっくりとした足取りで謎の施設内の探索を開始する。

 視線を周囲を向けると、施設内はまるで近未来の施設の様であった。電気が通っているのかは知らないが、施設内は明かりがまだ生きており、時折電気が消えて、明かりが消えてしまう事があったが、普通に電気は通っている様に見えたのだ。この人が居ない様な雰囲気を演出している場所にも関わらず、この場所のエネルギー源は生きていると考えると、エネルギー炉は半永久的に稼働し続けているかもしれないと彼は考えた。この様な近未来的な作りが施されているので、そう考えるのも無難かもしれないが、益々謎が深まり、彼は更に考え込む様になった。

 そして扉の他に、縦に細長い一本道の様な通路が続き、左右には貫けない様な厚い壁が設置されており、意図に反して道を破って進むのは困難の様に見える。道なりに進む事しか出来ないだろう。更には所々には部屋が設置されており、やけにハイテクノロジーな感じを醸し出す扉が非常に多かった。しかしその部屋の多くは扉が何かしらの衝撃か攻撃かは分からないが、妙に歪に変形しているせいで、扉が開かず、部屋の中に入る事が出来なくなっていたり、扉が失われ、内部が丸見えになっている部屋も存在していたのだった。また電力の供給がストップしたのかどうかは知らないが、電気が完全に消えてしまっており、部屋そのものを完全に暗黒と言う名の闇に落としてしまっている部屋もあれば、何も存在せずもぬけの殻になってしまっている部屋も存在していたのだ。

 変に内なる探究心を駆り立てる様な場所で、彼は無性に僅かに見せる恐怖とは別に好奇心が彼の心をくすぐっていたのだった。彼は更に足を進める。これは面白い匂いがすると感じ、きっとまだまだ面白いものがこの場所にはあるだろうと、感じ、足取りを先程とは違い、少し速めたのだった……


 ◇◇


「さて、入れそうな部屋発見。取り敢えず、情報収集の為には入らん訳にもいかんな、とにかく行ってみるか……鬼が出るか蛇が出るか…見物だな…」


 そうして、彼が軽快な足取りで歩き続けていると偶然にも一つの部屋が彼の目に止まった。彼の目に止まったのは、歪に変形してしまっている扉が多いこの場所であるにも関わらず、自分の目で確認した所では、唯一外的損傷が一切見受けられず、更には普通の場合は扉は一つのみであるのだが、彼が目を止めた扉は扉が左右に一枚づつ設けられており、まるで特別な部屋を演出しているかの様な作りになっていたのだった。

 彼も歩いていた時に、この部屋を見つけた時はやけに外装に凝っているな、と皮肉を言う様な心境になった程だった。

 しかし、入らない意味は無いだろうと感じたので、彼は多少の怯えを感じながらも扉に手をかけると同時にその扉を押して、開き、部屋の中へと侵入した。


「電力はまだ生きてるな……」


 彼は心の籠らない声で明かりが灯る部屋の中でそう、一言呟いた。この部屋はまだ電力が供給されており部屋の中は明るい状態だったのだ。またしても暗闇に包まれた部屋だったら、正直な話、嫌ではあったのだがこれは非常に幸運だった。これなら暗闇に阻害されずに探索を行う事が出来る。


「取り敢えず、何があるかどうか調べなければ…できれば一掃出来る武器が欲しんだが……」


 彼は独り言をブツブツと呟きながら、部屋の内部の探索を続ける。部屋の内部はかなり広めで、部屋の中にも複数扉が設置されており、この部屋の中はかなり広めの構造になっている事に気が付いた。一部屋一部屋ずつ丁寧に調べていくとしよう。彼はそう思うとまず自分の正面に見えるいかにも何かを隠していそうな部屋を調べる事にした。


「行くか……」


 ◇◇


 彼は驚きと同時に強い物欲に駆られた。その正面の部屋に入った時、彼はかつて、自らが保有していた記憶が蘇りそうになった。完全ではなく、不完全と言う形ではあったものの彼の武器に関する知識とその作り方や構造、そしてその種類等に関する知識の一部が少しの間ではあったが蘇り、彼の脳内を駆け巡り、その体を刺激した。


「まるで、過去が僕を呼んでいるみたいだな……」


 目の前に広がる謎の装置、自分よりも大きく、四角形の形をしており、中は空洞の様になっている。まるで何かを生み出し、その手で一から創造するかの様な装置が目の前に現れたのだ。彼は目を奪われ、思わずその装置に手を伸ばしたくなった。と言うよりも、手を伸ばしたく欲求に駆られる前に、彼は装置に手を触れてしまっていたのだった。


「まずは、説明書を………あ、操作マニュアルがある」


 彼は早速、装置の目の前に設置された、工具や近未来的な道具が置かれた長めの作業台の様な机の上に無造作にも転がっていた操作マニュアルを彼は手に取った。そして手に取ると同時に操作マニュアルを開き、この装置の使い方を入念に確認する。


 ◇◇


 操作マニュアルを熟読した事で使い方を彼は完全に理解した。どうやら、この装置は備え付けられている専用のPCを使用した上で使用が出来る装置らしく、どうやらPC内で描き、デザイン、構造を作り出した物を三次元的に、そして立体的に作り出してくれると言う、所謂3Dプリンターの様な代物なのだ。しかもその素材に関してはこの施設に残された素材を使用する事が出来ると言うのだ、更には、最初こそ素材が残されてはいないかと、彼は思っていたのだが、案外まだ潤沢に素材は残されており、強固な素材で武器や道具を作る事は容易であったのだ。更に更に、おまけかどうかは知らないが武器を使用する上で必要なエネルギー源やエネルギー炉まで完備されており、武器の使用に困る事は一切なかった。しかも存在するエネルギー源は電力や荷電粒子等だけではなく「魔力生成石」まで存在していたのだ。これによりエネルギー源を複合させる事も容易だった。

 そして彼の脳内に電流が走る。これさえあれば、ありとあらゆる兵器、兵装を作る事が可能だ。更に素材まで潤沢に用意がされており、PCで物を立体的にデザインするのは苦手な事ではなかったので彼は早速作業を始める事にしたのだった。


 ※彼が作った武器は別枠で解説します。






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