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底のないバケツ。

作者: 七瀬





___僕の心は、底なしのバケツのようだ。

蛇口を捻り、ありったけの水を出してもバケツに水が溜まる事はない。


 だって! バケツの底に大きな穴が空いているから。

僕のような人間は? この先、一生! 心が満たされる事はないのだろう。


 ___誰も好きにはなれないし!

 ___心から喜ぶ事もない!


 愛される事を知らない子供は、大人になっても愛する事が出来ない!

 それが! まさに、僕そのものなんだ!!!



 でもある時、僕と同じような女性と知り合ってしまったんだ!

彼女は、まったく僕と同じでバケツに大きな穴があいた女性ひと


 世の中に、僕と同じような人間がいる事に、一番驚いたんだよ!


『ねえ、沖田君?』

『うん? どうしたの、中町さん?』

『沖田君は、何をしている時が “生きがいを感じるの?”』

『えぇ!?』

『だって! 沖田君って、私と同じ匂いがするから!』

『そうだね! 僕もそう思っていたよ!』

『不思議ね? 沖田君と一緒にいると、なんだか、落ち着くのよ!』

『僕もだよ!』

『なんにもない、私たちなら? 何か見つける事が出来るのかな?』

『そうだね! そうなればいいね!』

『・・・ずっとね、埋まらないなモノがあるのよ!』

『僕もだよ! それが何なのか分からないけどね!』

『そうね! でも二人なら、それを埋める事が出来そうな気がするわ!』

『僕も、同じ事を考えていたよ!』

『やっぱり、沖田君とは何か深い繋がりを感じるわ!』

『僕も、そう思うよ!』



 僕と中町さんは、共通の深い繋がりを感じていたんだ。

他の人に無い、僕と中町さんだけの繋がりを、、、。



 でもそんな中町さんが、大きな病気にかかっている事を後で僕は知る

事となったんだ。


『・・・どうして、黙ってたの、、、?』

『ごめんね、沖田君には言えなかったのよ!』

『えぇ!?』

『やっと、逢えた人だから、、、。』

『・・・ううん、そっか!』

『ごめんね、私、、、もうそんなに長く生きていられないかもしれない!』

『えぇ!?』

『それでも? これからも、私に会いに来てくれる?』

『うん。』



 彼女の死が近い事を、彼女から打ち明けられて。

正直、動揺と不安が僕を支配したんだ。


___やっと、見つけた!

唯一の彼女がいなくなってしまうなんて、、、。


 僕は、彼女に対して! 恋愛感情なのか? 情なのか?

この気持ちが、なんなのか分からないけど、、、?


 どうしても、彼女を失いたくないと強く想っている事だけは確かなようだ!

何処にもいない! “僕にとっての特別な人。”





 それでも、月日は無残にも僕から彼女を奪い去ってしまった...。

あっという間に、彼女は僕を置いて遠くに行ってしまった。


 僕の底の空いたバケツは、いつまで経っても水を溜める事は出来ない!

彼女がいなくなってからは、余計にそう感じるよ。



 ・・・もし?

彼女がまだ生きていたなら、、、。


 ___ひょっとしたら?

僕の底の空いたバケツも彼女の底のあいたバケツも治す事ができたのかも

しれないとそう思う時があるんだ!



 ___今になっては、僕にも分からないけどね。




最後までお読みいただきありがとうございます。

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