おとぎ話の世界
昔、昔あるところにカニが住んでいた。
という事にして、
人間界からやってきた男がいた。
ある日、カニは道でおむすびを見つけ、
それを持って家に帰る途中、
さるに呼びとめられた。
さるは柿の種を持っており、
「カニさん、
この柿の種とおむすびを取りかえっこをしないか。」
さるはおむすびが食べたかったので、
カニから無理やりおむすびと
柿の種を交換した。
カニは家に帰ると、
柿の種を庭にまいて
毎日水をかけてやった。
「早く芽を出せ、柿の種。
出さぬとはさみでちょんぎるぞ」
そうカニが歌うと、
みるみる芽が出てきた。
さすがおとぎ話の世界だ。
なんでも出来る。
またカニは歌った。
「早く実よなれ、柿の木よ、
ならぬとはさみでちょん切るぞ。」
すると、あっというまに
たくさんの実がなった。
あの世界とは違い、
この世界はなんでも思いどおり。
またさるがやって来て、
「よしよし、
おいしそうな柿がたくさんできたね。
カニさんちょっと待ってて。
いま木に登って取ってきてあげるよ。」
そう言ってさるは木に登ると
柿を全部取って食べ始めたので、
「おい、おい、
自分ばかり食べないで、
早くここへもほうっておくれよ。」
とカニは言った。
そういわれたので、
さるはカニにしぶ柿を投げつけ、こう言い放った。
「世の中の勉強が出来ただろう?」
やっぱりなんでも思いどおり
という訳にはいかないな。




