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婚約破棄はラップで ~Yo~

作者: 酒園 時歌

※注意※

 この作品は、小説の形式を大幅に崩しております。

 また、品性も下の下、の下。気品の欠片もございません。

 よって、清らかなままでいたい紳士淑女にはオススメできません。

 それでも大丈夫、という方のみお読みください。

 尚、もしも感想などがございましたら至極恐縮狂喜乱舞感謝感激蛙鳴蝉噪でつまるところ大変嬉しいのですが、この作品に限り、返信はできません。理由はお察しください……。すみません……。

挿絵(By みてみん)






 その令嬢が婚約破棄を言い渡されたのは、パーティーの最中だった。

 突然の騒動に、会場は徐々に静まり返っていく。

 言った本人である王子の傍には、最近王子とよくいるヒロイン然とした少女がいる。その周囲にいるのは、これまた最近よくヒロインといる面々。いわゆる取り巻き達だろうか。

「……そう」

 それでも落ち着き払い、令嬢はパチンと指を鳴らした。

「例のモノを」

「かしこまりました」

 慣れた様子で、一人のメイドが令嬢の傍を離れる。ヒロインが疑問符を浮かべるが、それはすぐにわかることだった。


「はいターンテーブル入りま~す。ターンテーブルで~す」


 高らかに、気の抜けたメイドの声が会場に響いた。

 ざわっ、と、わずかに人の波が揺れる。それは困惑というよりも、待ってましたとばかりに嬉々として時期を迎える者の反応だった。

 メイドが台車で運んできたのは、程良い高さの台と、その上には円盤が備えられた四角い装置。魔法道具の一つ、『ターンテーブル』だった。

「!?」

 メイドの発言に、ヒロインは驚いた。聞き覚えはあるものの、王侯貴族の場には明らかに不釣り合いなそれを実際に見ると、思わず周囲と見比べてしまった。

 戸惑うヒロインに、近くにいた老紳士が声を掛ける。

「おやおや、お嬢さん。もしや、お二人の喧嘩の作法、ラップバトルをご存じ無い」

「存じ上げませんけど!?」

 否、ラップバトル自体は知っている。知らなかったのはあの二人が、あろうことか王侯貴族が、あまつさえ国のトップになるであろう立場の者達が、幼少期の頃よりラップをしていたという事実である。しかも周囲の様子からして、それなりには認められているときた。

 ヒロインが現状を理解するよりも先に。王子は前に踏み出し、同じく前に踏み出した令嬢とガンをつけ合った。

 互いに魔法の杖を取り出し『マイク』と唱えれば、拡声の効果が杖の先に宿る。持ち直すように杖を軽く振れば、音割れで甲高い、まるで豚の鳴き声のような音が響いた。


 ピギィィィィィィィィィ――――――――ッ!


「先攻は」とはメイドの声である。

(わたくし)でよろしいですわね?」

「いいだろう」

 落ち着いた声色と共に、見下し合うような視線が交差した。

 先攻である令嬢が杖の先を口に向け、構える。

「かしこまりました」

 そう言って、メイドは音楽団の指揮者に目配らせした。

 一連の流れを見ていた指揮者は得たりと言うような表情で頷き、音楽団のメンバーと向かい合った。

 タクトが静かに振り上げられ――――急に勢いを付け、振り下ろされる。

 瞬間。先程まで優雅な曲を奏でていたメンバーは一転、力強く重い、激しく騒がしい曲を弾き、掻き鳴らし始めた。

 続いて、メイドがターンテーブルを回す。すると、曲のすべてがそのターンテーブルに集束、歪な調子へと変換され、新たな曲となって拡散されていく――――――。


(ドゥーンドゥンドゥン キュワキャキャ キュッキュッ)

(ドゥンキュキュ ドゥッドゥッ キュワキャキャ ッキュ)


(ドゥーンキュッキュ キュ キュキュッキュ)

「繰り出せ優雅なカーテシー

 無理だと言うがな待―てしー

 持って無ェのかリテラシー

 甘く見んじゃねェ貴族政治(アリストクラシー)!」

(Fooooooooo!)


 観客が沸き熱気が舞う。

 それに応えて口が回る。


「ノーブレスオブリージュ

 ノンブレスでここにいる

 観客 観賞 失脚 失笑

 内心心底大嘲笑!

 買収信徒と大合唱?

 ()ってみろよ 怠慢show!」

(ドゥーンキュッキュ キュ キュキュッキュ)


 令嬢のマイクが下ろされる。

 代わりに王子が口に向ける。

 相手を指差し睨む眼差し。

 思いの丈を叫ぶ兆し。


「汚ねェ言葉で吠えてんじゃねェ

 おま言う? Are you? 肥えてる邪念

 まずはこの子に謝ってみせろ

 無理ならせいぜい尻尾巻いて逃げろ

 まさかこの期に及んで無ェよな?

 真正面からかかってこいよnow!」

(ドゥーンキュッキュ キュ キュキュッキュ)


 王子のマイクが下ろされる。

 代わりに令嬢が口に向ける。

 何度も交わして慣れた動作。

 今後も交互にかます無造作。


「上等な根性 状況は惨状

 アタシが敗戦? とんだハイセンス!

 婚約は仕事だ 嫌なら上に言え

 自滅が目的? 何かの生贄?

 

 先に発表するとか()っしょ

 思わず熱唱 その思考劣等

 ちっとも葛藤すら無いマッド

 どこに賛同すりゃいい外道!」


「よく言う 欲張り 裏で頑張り

 秘密のカンパにイキるカンパニー

 それで暴かれるテメエの魂胆

 これには草枯れる させるかコントロール!


 惚れたフリしてスパイで潜伏

 オレを陥れ 国家転覆

 協力者Aは仕事が早ェな

 壊すは平和 まるで映画


 そんな中現れる 心洗われる

 救世主のような超清純な子が

 教えてくれた さながら ラブレター

 テメエの本性見破れた」

(ドゥーンキュッキュ キュ キュキュッキュ)


 困惑の表情浮かべる令嬢、

 そんだけの衝動くらえど正常。

 身に覚えの無い濡れ衣を返上

 するために問いただす、解せぬ全貌。


「待てよそんなの知らないぞ」

「だけど聞いたぞ失態を」

「見たの? 実際」

「いやNo 一切

 必要無ェさ 証言があんだ」

「失望連鎖 早計だアンタ」

「さっさと認めろ 正念場ダンサー」

「発破をかけるぜ そう never hands up!」

(ドゥーンキュッキュ キュ キュキュッキュ)


 アガり続ける外野が騒ぐ。

 曲がりくねってる認識正す

 すれ違う二人の分かり合うクダリ、

 チョット一丁(イッチョ)即興(ソッキョ)で、魅せる一興。


「小慣れたハントで盗られたハート

 Shall we dance? 断罪のパート

 意見シャットアウトで強まるダウト

 Clap your hands. キかせろシャウト!」

(ドゥーンキュッキュ キュ キュキュッキュ)


 熱狂するこの説教に

 飛び交う口笛次々と増え、

 跳ねる阿呆にマネる阿呆、

 同じ阿呆共おどけりゃ混沌。


 より盛り上がるオーディエンス。

 選り取り見取りのコンディメンツ。

 バイブスは好調、主張は膨張、

 自重は皆無でフィーバータイム。


「テメエは敵と手を組む気概

 そして加えるはオレをフる危害

 失くすは生き甲斐残るは死骸

 オレの手で終われ そろそろフィナーレ!


 Yo! (Fo!) Yo! (Fo!)

 真っ赤な嘘で利害の一致

 Yo! (Fo!) Yo! (Fo!)

 だったら容赦しないぞ○ッチ!」

(Fooooooooo!)


(ドゥッ ドゥッ ドゥッ ドゥッ)

(ドゥッ ドゥッ ドゥッ ドゥッ)


「茶番のファイト 気分はナイト?

 話聞かないと切れる赤い糸

 くだんねェワンナイト早く終わんないと

 求むぞホワイトナイト I wanna it!


 Yo! (Fo!) Yo! (Fo!)

 そんな頭でこの先大丈夫(ダイジョブ)

 Yo! (Fo!) Yo! (Fo!)

 野郎(ヤロー)相手にヤッてろ愚弄job!」

(Fooooooooo!)


(ドゥッ ドゥッ ドゥッ ドゥッ)

(ドゥッ ドゥッ ドゥッ ドゥッ)


「は?」「は?」「は?」「は?」

「嘘だろ騙されねェから甘言」

「は?」「は?」「は?」「は?」

「クソ野郎(ヤロ)忘れたか確かな関係」

「は?」「は?」「は?」「は?」

「覚えてるからこそ裏切り許せねェ」

「は?」「は?」「は?」「は?」

「心得てるならホラ信じろやるせねェ」

(ドゥーンキュッキュ キュ キュキュッキュ)


 二人は同時に振り向いた。

 ヒロイン内心白目剥いた。

 「ヒッ」と引きつる小さな悲鳴、

 掻き消す轟音の波に消え、

 構わず拷問並の道へ、

 気の抜けたメイドの声が聞こえ。


「はい飛び入り参加入りま~す」

(ドゥーンキュッキュ キュ キュキュッキュ)


「どういうことだ」

「Do you call trouble?」

「説明をしろ」

「It’s maybe she know.」

「狙いは何だ?」

「吐きなアンサー」

「「コトによっちゃぁ潰すぞフューチャー!!」」


(ドゥーンキュッキュ キュ キュキュッキュ)


 二人が問い詰め視線を集め、

 皆さん注目ヒロイン沈黙。

 目論み試み

 失敗、残るは自分のみ。

 一杯苦汁を飲み込み

 開口一番言い淀み。


「つっ、つ………………ッ!」



『付き合いきれません!!』



 渾身の絶叫、本心の発狂。

 ここはまるで戦場、戦々恐々。

 至極当然、でも周囲は呆然。

 とりあえず勝敗は一目瞭然。



 ピギィィィィィィィィィ――――――――ッ!

 何やってんだろ……_(:3 」∠)_

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― 新着の感想 ―
[良い点] Σ(゜Д゜)...わぁ... ↓ ( ゜Д ゜)...! [気になる点] 文章全体で怒涛の勢いですね! 何かこう...書きたい気持ちも分かります...(笑) [一言] 新しい婚約破棄を…
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