狂乱の闘争劇
「……凄い。本当に生身で倒しちゃった」
ソラが感心していると俺達の前にあの黒い渦が現れる。
「なんですか、これ?」
「次の舞台だよ」
警戒するソラに俺はそう言うと渦へと向かって歩き出す。
「俺は先に行くけど、修次達はどうする?」
「俺もついて行こうーーと言いたいが、この娘が心配だな?」
修次はそう言うと俺と共に怖がっているソラへと振り返る。
「ソラはどうする?無理について来なくても良いけど?」
「僕はーー」
「まあ、またあの影が現れるかも知れないし、この先に風魔がいるかも知れないから、俺はついてくる事を勧めるけど?」
「風魔さんが?」
「まだ仮説だけどね。まあ、これが必然なら何処かで会うんじゃないかな?」
「な、なら、僕も行きます!」
ソラは俺の言葉にそう叫ぶと瞼をギュッと瞑って渦の中へと飛び込んで行く。
そんなソラを見てから修次が俺を睨む。
「ん?なんだよ、修次?」
「謀ったな?」
「人聞きが悪いな。俺は真実を言ってるだけだよ」
「ソラに何かあったら許さんぞ?」
「解ってるよ。だから、その刀を納めてくれ」
俺がそう言った瞬間ーー
「きゃあああああああああぁぁぁーーっっ!!」
ソラの悲鳴が聞こえて、俺と修次は同時に渦に飛び込む。
渦を越えるとクレーターが幾つも出来た荒れ果てた大地へと出た。
「大丈夫か、ソラ!?」
修次がへたりこむソラに近付き、俺が周囲を警戒する。
そこで俺が見たのはとある二人の男の戦いだった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーっっっ!!!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァーーーッッッ!!!」
拳が衝突し、また新たなクレーターが出来る。
よりにもよって、こいつらかよ。
俺は頭を押さえて悩む。
一人はネロだ。
だが、獣の腰巻きに足に包帯を巻いた姿からして、こいつは狂戦士烈伝の古代ギリシャを舞台に描かれたネロだろう。
さしずめ、ネロ・オリジンだな。
そのネロの相手をしているのは狂戦士の伝説の男ーー◼◼◼◼◼だ。
まあ、◼◼◼◼◼に対しては名前が伏せられているから男や狂戦士と呼ぶのが正しいんだが……。
二人の共通点は本能で戦っているって所だ。
狂戦士烈伝のネロはまだある程度話が通じるが、男の方は言葉が通じないからな。
問題は最悪な事に両者ともにリミッター外して暴れてる事だ。
ネロは赤く輝く文字を全身に浮かべた狂乱の呪いのバージョン。
男の方は破壊神の因子を取り込んだデストロイモード。
こいつらがこのモードになってるって事は理性は当にぶっ飛んで、この世界をぶち壊すまで暴れるつもりだろう。
しかも両者、目に見えない速度でぶつかり合うもんだから、遠くで見ている筈の俺達の所まで衝撃が伝わってくる。
これには流石に修次も放心し、ソラに至ってはまた気を失っている。
「此処は危険だ。どっかにさっきの渦があるだろうから、探そう」
「……ん?ああ」
修次は理性を取り戻すと気を失ったソラを背負い、俺と共にその場を後にする。
早いとこ、別世界に逃げないとこの世界でゲームオーバーになるぞ。