二人の桜鬼とZiraiyaの総力戦
「あちらは派手にやってますね?」
「そうだな」
修次は刀を正眼に構えながらZiraiyaにそう答える。
月岡修次。
元ヤクザであり、異世界転生して世界の安定を導こうとした男。
ただ、彼は勇者として転生した訳ではなく、何の能力もない人間として生を受け、その願いも叶わなかったが、死した後の志しは後世にも伝えられている。
対して、Ziraiyaこと矢路来は闇の勇者として異世界転生し、修次達の裏をかいて、ひたすら暗躍し続けた。
そして、その素質故にずば抜けた能力を誇り、天使が送り込んだ戦士達を倒して魔界に銃火器などの知識を与えた男である。
「正直、嬉しいですよ。またこうして月岡さんに会える事に……」
「シュラ達は元気か?」
「ええ。今は二代目月岡修次を名乗って、魔王様に反旗を翻す程に」
「そうか」
修次はZiraiyaの言葉に微笑むとジリジリと間合いを詰める。
ネロ達の攻防に比べれば、些か地味ではあるが、そこにはベテランならではの駆け引きがあった。
「ああ、そうだ。もう一つ、この場に感謝しなきゃな。
二つの世界を股にかけた決着をつけられるんだから」
「そうだな。だが、此処には闇はない。お前の得意な暗殺術は行えんぞ?」
「良いハンデですよ。それにね、月岡さん」
Ziraiyaがそこで手を掲げると彼の影から五つの影が実体となって現れる。
「俺にはこの五行衆と魔法やスキルがあるんですよ」
「そうか。それは困ったな」
「何を悩んでいるんだよ、シュージ?」
ーーと、Ziraiyaと五行衆と呼ばれる五つの影に緊迫していた修次に刀を持った一人の青年が様々な戦士を引き連れて歩み寄って来る。
修次はそちらに顔を向けると青年は彼と同じ様に正眼に構える。
その姿を見て、修次は青年に問う。
「お前、シュラか?」
「そうだよ」
シュラと呼ばれた青年が構えるとアルマンと呼ばれるリザードマン、デビヒシと言う宇宙人などが各々の武器を手にしてZiraiya達と対峙する。
「本当はもっと色んな事を話したいけど、矢路さんとーーZiraiyaと戦うんだろ?」
「ああ。援護を頼めるか?」
「もちろん。当たり前だろ?」
シュラはそう言うと一度、自分の手にする刀の峰に額を当ててから叫ぶ。
「全員!桜の為に散れ!」
「「「応!」」」
その叫びを合図にシュラとそれを率いる集団が前へと出る。
「……強くなったな、シュラ」
修次はその光景を見ながら微笑むと自身も駆け出して行く。
「五行衆だけじゃヤバいかな?」
Ziraiyaは一人呟くとパチンと指を鳴らす。
そうするとシェリーと呼ばれる少女がZiraiyaの背後から現れ、銃火器を手にしたダークエルフ達と共に構える。
「銃が来るぞ!総員、魔法発射!」
シュラの号令と共に魔法と銃弾が降り注ぐそんな中、唯一能力を持たない修次はスキルを持ち、圧倒的優位なZiraiyaへと斬り掛かって行く。