……苦
「……あなたは、つまらない人間ですね」
「は……?」
俺、朝倉涼は、今日出会い系サイトで知り合ったばかりのJKに、そう告げられた。
「我孫子さん……でしたっけ。あなたは、私の期待に答えられなかった。ただ、それだけの話です。さようなら」
「ま、待ってくれ……」
「もう二度と、あなたに会うことはないでしょう」
立ち尽くす俺を置いて、ブラウスに袖を通したJKはこのホテルの部屋を去っていった。
俺は、ずっと前から女どもをたぶらかして金を貢がせていく、いわばプロの結婚詐欺師として生活していた。
金を持っていそうな女ばかりと接していた俺は、たまには気分転換もいいだろうと思い、我孫子長という偽名を使って出会い系サイトに登録し、金の少ない若い女と遊ぶことにした。
そして出会ったのが、このJKだった。
知識もなにもない奴と遊ぶなんて、これ以上に簡単なことは無いと思っていた。
だが、それは違った。
アイツは、俺のことを「つまらない人間」だと言いやがった!
俺は、ただの遊び相手に、ただのオモチャに、侮辱された!
OL、看護師、銀行員、警察官、国会議員、果ては宇宙飛行士。これまで、偽名を使って幾多の女どもを落としてきた。
その俺が、こんな奴にっ…………!
俺は、詐欺師としてのプライドをズタズタにされた。
「ぜってー許さねぇ……」
俺はこのイライラを鎮めるために、タバコの箱とライターを手にしてベランダへと出た。
タバコに火をつけ、まずは一口。
「アイツ、どうしてやろうか……」
思案し、俺はベランダの柵に寄りかかった。
……その柵が老朽化していたことも知らずに。
次に認識した時、俺の体は宙を舞っていた。