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本日二回目の更新です
「さて。ヴェルデ。今日の宿はどこなの?」
「取っていません」
オーロの問いにヴェルデは正直に答える。
「……見回りでもしていたの? 感心ね」
彼女はそのようなことを言ったため、彼は急いで訂正する必要を感じた。
「いや、単に金がなかっただけで」
「あら、面白い冗談だわ。あなた、ユーモアセンスもあるのね」
オーロは本気にせず、コロコロと笑う。
(本当のことを言ったのに……)
ヴェルデはどうすればいいのか迷ったが、あきらめる。
金がないから宿に泊まれなかったというのは恥ずかしいことだ。
彼だって羞恥心はあるため、声高に主張したくはなかったのである。
「まあいいわ。あなた照れ屋みたいだから、あまり問い詰めるのはよくないものね」
と王女は言う。
彼女が言いたいことはよく分からなかったものの、ヴェルデは追及を止めてもらえただけで安堵する。
「では今日はわたくしの寝室に来なさい。いいわね、ぺスカ」
「はっ」
ぺスカはあっさりと承知したが、周囲はそうはいかない。
「お、お待ち下さい」
慌てたのは警備の責任者である偉そうな兵士だ。
「殿下の寝室にそのような下賤な男を入れるなど……」
「お前が役に立つなら、必要はないのだけどね」
オーロは彼の陳情を冷徹に切って捨てる。
(本当のことだからってはっきり言っちゃうのか……)
とヴェルデはうなった。
兵士はすごく悔しそうな顔で彼の方をにらむ。
(俺に当たるなよ)
彼は理不尽に思う。
王女に怒りをぶつけるわけにはいかないから、ねじ曲がって彼に矛先が向くのだ。
「えっと、いいのでしょうか?」
「平気よ。あなた、どう見てもわたくしに興味ないでしょう?」
困惑するヴェルデにオーロは真顔で言う。
どうやら彼の関心が褒美だけにあり、彼女自身には全くないことを見抜いていたらしい。
「あ、いや、えっと、あの……」
肯定してしまうと機嫌を損ねるのではないかと、彼は今ごろになって焦る。
おろおろとする彼を見て、オーロはぷっと吹き出した。
「別にいいわよ。わたくしに興味はないけれど、褒美は欲しい。そんな子の方が護衛として信頼できるわ」
「は、はあ、ど、どうも……?」
彼が答えると彼女は美しい青い瞳をぺスカに移す。
「ぺスカ、あなたも来てちょうだい」
「かしこまりました。ヴェルデ殿、こっちだ」
彼がついていったのは豪邸の二階の一番奥の部屋だった。
彼の家くらいの広さはありそうな部屋には、寝具くらいしかない。
「……何にもありませんね」
「当然よ。襲われた部屋でオーロ様に休んでいただくわけにはいかないでしょう」
ぺスカの口調がていねいなものから、砕けたものに変わる。
「よろしくね、ヴェルデ殿。たぶんあなたくらいしか信用できないわ」
彼女の言葉をオーロは否定しなかった。
「……オーロ様の味方だと言えるのは二人だけ、ですか?」
彼が思っていた以上に王女の立場はよくないらしい。