疑問
本日2回目の更新です
「でもおかしくないです? どうしてこの公爵家はオーロ様を守る気がないんでしょう? オーロ様を守れなかったというのは、不名誉にならないんですか?」
とヴェルデは新しい疑問を口にした。
敵対者がオーロを狙うというのは彼にも理解できる。
だが、彼女のおかげで家の勢力を拡大できるはずの者たちが、彼女の身の安全に無頓着なのは意味不明だ。
「そこが分からないのよね」
ペスカは理解に苦しむと表情をしかめる。
「最低でも降爵は確実、場合によってはもっと厳しい罰がある罪なのに……ただ単にいい人材がいないだけかしら?」
オーロと彼女は二人して首をひねった。
「罰がないと信じているか、それとも受ける罰以上に何か利点があるとか?」
ヴェルデは何気なく口にした言葉に王女はハッとなる。
「そうね……わたくしは父上に好かれていないから、案外大した罰は受けないかもね」
という彼女の顔色は悪かったし、ぺスカは痛ましい表情で気遣うような目を向けていた。
(そっか。味方はいないって、父親も味方じゃないってことなんだな)
ヴェルデはこの時、ようやく気づく。
「情報がほとんどないのにまっさきに気づくとは……やはりヴェルデ殿はすばらしい」
ぺスカはたたえてくれたが、彼はうれしくない。
「適当に思いついたことがたまたま当たっていただけですよ」
きちんと本当のことを言っておけば誤解はとくことができる。
「わずかな情報で真実を言い当てることができるのね。すごいわ」
そんな風に思うヴェルデの望みは、オーロのこの言葉であっさり砕けてしまった。
「賢者にとっては断片的な手掛かりで十分ということなのですね」
ぺスカは何やら彼のことを尊敬しているようなまなざしを向けてくる。
(何でだよ!)
ヴェルデは叫びたくなったのをぎりぎりのところで耐えた。
どうすればこのような状況を打破できるのだろうと思う。
彼女たちが言うように彼が本物の賢者ならば、悩む必要はないだろうと考えれば皮肉なものだ。
「ヴェルデはどう思う? 今日はまだ襲撃があると思う?」
オーロに聞かれた彼は「俺に聞くな!」と言い返したい気分である。
しかしながら、周囲が敵だらけだという可憐な王女に頼られて突き放すほど、彼は非情になれなかった。
「今日はないんじゃないですか?」
「どうして?」
理由を聞かれたところで彼は言葉に詰まる。
分かるはずがないとは言えず、仕方なく思いつくまま理由を適当に並べてみた。
「二回やって二回失敗したのに、さらに仕掛けますかね? 別の機会を待つのでは?」
二回連続で同じ失敗をしたら、原因を調べたくなるのが心理ではないかと彼は思うのだ。
と言うより彼自身がそうだというだけである。
「……言われてみればそうね。何もここでわたくしを害することにこだわる必要はないかも」
「ここでオーロ様に危害を加える利点と言えば、せいぜいここの名誉を傷つけることくらいですが……別に今日ここでやる必要はないはずですし」
少女たちはヴェルデの意見に説得力を感じたらしく、うなずきあっていた。
(あーあ。知らないぞ。間違っていても)
ヴェルデはなるようになれとばかりに天をあおぐ。




