16/26
2−5:
一日、二日と勇介は時間を見ては事務所が入っているビルディングの周辺、とくに裏手を見て回った。
どこに行っても狂舞の鉦、鳴子、太鼓、団扇太鼓の音が聞こえていた。それに合わせ、「ほう! ほう! えぇじゃないか、えぇじゃないか」というかけ声も響いていた。
三日めの昼前、勇介は大野氏を見つけた。
大野氏と話をしている最中だった。1923年 (大正12年) 9月1日 午前11時58分、それが起きた。
大野氏はそれに乗じて駆け出した。勇介は溜息を吐くと地面に揺さぶられながら事務所へと向かった。