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鬼斬屋  作者: 千明
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1章2話 鬼斬屋の始まり

俺がこの世界に落ちて最初に見た色は白だった。

光が反射して光っていた白に何よりも目を引かれた。

それが蛇とのはじめての対話でもある。


蛇「お、お目覚めかい?命ォ」

『?だれ、だ。何で俺の名を』

蛇「おいおい、まさかわからねぇってことはないだろ?俺の主様はよぉ」


そう言ってにっと笑った男は俺の頭を軽くポンポンと叩いた。

地べたに寝転がっている俺はさぞ撫でやすかったのだろう。

俺はゆっくり体をおこした。

寝起きのせいかまだボーッとする頭を無理矢理覚醒させるように軽く首を降り、もう一度男を見る。

目を閉じたまま俺の起きる姿を追うその男はまるで見えているもうだった。

真っ白な、いや白銀の髪に背の高いこの男をやっぱり自分は知らなかった。

ゆっくりと体にも目を通す・・・


『すまないが、どこかであったことがあっただろうか。』

蛇「えぇ!?まじぃ??相棒の俺忘れるとかないでしょーよー命ちゃん」

『命ちゃんはやめてくれ』


見た目が中性的、らしく昔からなにかしらからかわれたため少し過剰反応してしまったな


蛇「えぇ〰️なんでわかんないのかねぇ、自信なくなr・・・あ!そうかそうか、俺のこの姿じゃわかんねぇよな!俺のせいじゃんごめんねぇ?」


一人納得した様子の男はそういうと俺の目の前に座りそして突然ーー

ボン!


刀になった


『・・・・・・は???』


意味がわからない。なんで、男が刀になるのだ。


『ん?これは、斬蛇剣?』


俺は昔から剣が好きだった。いや、刀、が正しいか。西洋の剣も美しいし素晴らしい性能なのはわかるのだが昔から刀の方が好きだった。そのきっかけとも言えるのがこの刀、斬蛇剣だ。

この刀は神剣のひとつと呼ばれさまざまな逸話のある刀だ。そして現代には存在しない刀とされている。

・・・表向きは。


さて、ここまで語ればわかるだろう。

斬蛇剣は現存している。かの蛇を切ったと言われる神正院の主僧侶宣政が俗世から隠し通してきたのだ。

かの刀が俗世に出ればこの刀を求め権力者たちは集い、争いを起こしただろう。それを好まなかった宣政は刀を院で奉納すると同時にその院を俗世から切り離しずっと保管し続けた、らしい。

まぁ所詮過去の逸話。もしかしたらただただ神剣とされるこの刀を誰にも渡したくなかっただけかもしれない。真相なんてわかりゃしない。

今回大事なのはその刀のありかだ。その刀を保管していたとされる寺院に今は刀はない。ではどこにあるのか。

・・・俺の実家にあったのだ。


宣政とて人間。寿命には勝てず寺院に残した刀を心残りに病気によりなくなったらしい。その後この刀を所持したのは陰陽師たちだった。

いや、その時代はまだ陰陽師と呼ばれていたわけではないが、人があやかしや物の怪と呼ぶ存在を調伏していた存在だから間違いではないだろう。

その陰陽師の名は氷雨ヒサメ

あの時代にしては不思議な名だった。だが、歴史書にも乗っていない通り、目立たず闇に紛れた存在だ。しかし調伏の腕はかの安倍晴明すら感服したほど、らしい。まぁ所詮その家の子孫の話。祖先をよく見せようと話を盛ってあるのだろう。話し半分に聞くべきだ。

ともかく、それほどの力を出せたのは斬蛇剣のおかげだった、ということだ。

さて、ずいぶん長くなったがつまりは、俺はその氷雨の子孫の氷雨命で、斬蛇剣を振るう立場にあった、とだけわかってもらえれば十分だろう。

小さいときから身近に感じてきたからこそ、俺は刀が好きだし、訓練することもなんの疑問を持たなかった。昔から“眼”がよく人が物の怪などと呼ぶ存在、鬼を見てきた。一族のなかでも高い適正は俺を幾度も危険にさらしたが、それでも刀を手に取った。

歴代の長たちより明らかに刀の使い方がうまくなった俺は初代から一人もうまく使えないという、耳飾りも渡された。

ヨビナとキキナはついの耳飾りだ。ヨビナ(黒の円形の飾り)は鬼の発生、探知に特化し、キキナ(白の円形の飾り)は人の死の発生、探知に特化する。

ヨビナがあるならキキナはいらないようにも思えるが、あの時代は鬼のみが危機だったわけではない。

今ほど警備は整っていないため殺人や呪いなどまで闊歩するあの世界では、キキナも重宝しただろう。それにキキナは自分の死の探知も行える。つまり、自分に殺意を向けられた場合や事故によって死にそうになった場合すらわかる、ということだ。ヨビナが反応している、鬼のいるときにキキナはまず反応しない。鬼が一人を食って、そこの近くにもうひとりいたりするとなるときはあるが。ヨビナとキキナが両方合わせて鳴ることはほとんどない。

ヨビナもキキナもつけている人間には音がなった意味や場所が伝わる。どうして伝わるのかはわかっていないがとても便利な代物たちだ。


さて。ずいぶん長くなってしまった。

その間ずっと刀のまま、目の前にある斬蛇剣はどうするべきか。


俺はとりあえずそっと手を伸ばす。


柄を握ると昔からもちなれているそれに安堵した。


『斬蛇剣、だな。』

蛇「やっとわかってくれたかい?うれしいねぇ」

ボン!


また煙と共に姿を出した男は笑顔でそういう。心なしか頬が上気していてほんとに嬉しそうだった。


『さて。斬蛇剣よ、これはいったいどう言うことか、教えてくれるかい?』

蛇「ありり?あんまり驚かないのねぇ?」

『昔から人ならざるものを見続けてきたからな。刀が人になるくらいわけないさ。』

蛇「なるほどぉ?それなら、語ろうかねぇ俺が知ってることくらいは、さ」




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