14.奪取
「砂糖はいるかい?」
ファノンは遠慮がちに首を横に振った。
その人物は、当たり前のようにウォレスの家の備品を使ってコーヒーを入れる。
初めはウォレス・ランドが帰ってきたのかと思った。振り返ってみれば、予想を遥かに超えた人物
――――ネイザー・ランデルマンがそこに立っていたのだからファノンは驚きを隠せない。今でもファノンは怪訝な表情を浮かべて、キッチンでコーヒーを入れるネイザーの広い背中を眺めていた。
「ウォレスの狂気に気付いたのは、僕もつい最近のことだった」
コーヒーをファノンに渡し、自分も一口啜った所でネイザーは口火を切る。
「僕が思っている以上に、ここの騎士団は問題を抱えているね。全く忙しくて、こうしてゆっくりコーヒーを飲む時間すら録に取れない」
「……」
その言葉に同意出来る自分が悲しくて、ファノンは伏し目がちに俯く。
「ま、僕が何とかするけど」
その力強い言葉に、ファノンはハッとなって顔を上げた。その時、ドアの戸を叩く音が転がってくる。
「居るかしら」
ウォレスの家に次から次へと大男が入ってくる。しかしどういうわけだか、口調が女性っぽい。
「いくら忙しいからって、あなたの同僚の家を待ち合わせ場所にする必要があるの? ん、しかも凄い部
屋ね……執念深い男って嫌い」
「ホフマン。調査の結果は?」
「技術局は黒ね。この町にやたら怪人たちが現れるようになったのは、技術局のやつらが実験のために呼び込んだから――――その結果、管理できなくなって野放しになってるんだから世話ないわね」
「資金源の特定は?」
「それもあなたの予想通り。アンドル伯爵の隠し資産からね。怪人を元に新型兵器でも開発して、お国に献上。ゆくゆくは国家の重役にでもなろうとでもしていたのかもね」
「さぁどうだか。分かるのは、彼の計画はとん挫したという事だけだよ」
「な、なんです。何の話をしているんです」
ファノンは二人の間で展開される会話についていけず、声を荒立てる。
「騎士団に掬う膿の話さ。それもこれですべて終わる……協力者のお陰でね」
「何言ってるのよ、ネイザーちゃん。私とあなたの関係でしょう」
「……この方は?」
「ジャック・ホフマン。僕の同期で、今は宿屋さんを営んでいる。でも彼も立派な騎士だよ。装備開発専門のね」
「技術開発って……。今、技術局は黒って」
「君たちの装備を開発しているのが“表”の技術局なら、彼は僕直属の“裏”の技術局ってところかな。だからまぁ、大丈夫。法律的にグレーって感じだけどね」
「やだ、下着の話?」
「してないよ」
ふざけているが、ホフマンから感じるそこはかとない迫力から、ただものではないとファノンは察していた。しかし現騎士団長と軽口を交わすほどの実力者とはとんでもない男なのではないだろうか。
「……さて、アンドルの件はのちのちゆっくりやるとして。ウォレスの件はどうしようかね」
「……隊長は、アズマ・オーベルライトに対して特別な何かがあるみたいです」
「ま、この家を見れば一目瞭然だよね。なんて言えばいいんだろう。歪んだ愛情」
「それは分かりません……ただ。アズマ・オーベルライトが、あの鎧を着ているのを見た時、隊長は、見たことないような顔をしていました」
「鎧。竜娘のことだね」
「知っているんですか?」
「ああ。彼の事もこのジャックが調べてくれた。というか、ジャックの宿屋で今彼は働いているしね」
「アズマ君はとっても良い子よ。初めこそは竜の力を手に入れた危険な子かと思ったけれど、それをいたずらに使わない強い自制心を持っている」
「そう。アズマ・オーベルライトはそれでいい。だが、ウォレス・ランドがもしも竜娘の力を手に入れたら恐ろしいことになるかもしれない」
「隊長が? あり得ません」
「あり得るかもしれない。何故なら……うちには一人、竜娘が居るからね。もしもそうなったら、君は戦えるかい?」
「……分かりません。でも、私は隊長のストッパーになると、隊長と約束しました。ただそれを、順守するだけです」
ファノンの力強い眼差しをみて、ネイザーは微笑んで頷いた。
***
騎士ギルドの受付で、アズマは言葉少なに情報公開の要求をした。
町の財政や、職員の業務内容を開示する義務が役場にはある。それは騎士ギルドも同じで、町民からの要求があれば開示可能な範囲ではあれども、それに答える制度があるのだ。
受付も最初はアズマの要求に、にこやかに応答する。
しかし、その内容が『ソニアという、町で暮らしていたはずの少女』の事だと分かると少しばかり顔色が変わった。
「担当の者をお呼びします。おかけになってお待ちください」
「……分かりました」
アズマとソニアは言われるがまま、受付ロビーにある簡単な椅子に座って待つ事にする。アズマは顔を掌で覆い、それが間違いであることを祈る。そんな様子のアズマを、ソニアは心配そうな表情で見ていた。
「アズマ、だいじょぶです?」
「ああ、大丈夫だよ。……ソニア、お前はまだ本当の事を俺には話せないか?」
「本当の事?」
「再会した時の事だよ。お前がどこから来て、今まで何をしていたのか」
「……話すことは、簡単です。でも、怖いのです」
「怖い?」
「アズマに話すのが、一番怖いのです」
「それを話すと、俺がお前を嫌いになるような事なのか?」
「分かりません。でも……アズマには、知ってほしくありません」
「……そうか。ならお前の口から話さなくてもいい。でもごめん。俺は知らなくちゃいけない。この町が
もしもお前を酷い目にあわせたっていうのなら、俺は……この町に」
言葉の先を言うのが怖かった。だがアズマの心はその言葉で溢れていた。
復讐。もしくは、報い。
例えどんな理由があったとしても、ソニア一人に地獄のような思いを強いるような事があったのなら許しちゃいけない。
許すという事は、誰かの気持ちが犠牲になるということだ。その犠牲がソニアであっていいわけがけない。もしもそうだというのなら、その現実を作り出した全てを抹殺する。
「アズマ」
「ん?」
「アズマは、私が人じゃなくなっても私の事をソニアと呼んでくれますか?」
「……当たり前だろ。ソニアはソニアだ」
その時、受付の女性がアズマたちの前までやってきた。
「お待たせしました。向こうの扉がお入りください。ただ、一名様のみです」
「向こうって、騎士たちの待機室がある場所じゃなかったか?」
アズマは、何度か騎士の試験を受けるために騎士ギルドの中を回った事がある。だから少しだけなら内部の様子を把握していた。
「はい、よくご存じですね。そこに、お客様が開示請求をした情報を扱う担当の者が居ます。ただ少し内密な話しなので、奥で話をしたいとの事です」
「そうですか。少し待っててもらってもいいか?」
ソニアは椅子に腰かけたまま、こくりと頷く。その頭を少し撫でてから、アズマは受付の指さす扉へ歩
いていく。
ソニアはその後ろ姿を心配そうに眺めていた。
「ここですか」
「はい」
一人で行けと暗に示す受付の態度を感じ取り、アズマは言われるがままドアノブを捻って中へ入る。
中にはソファーと低めのテーブル。暖炉もあるが、未だ蒸し暑い今はすっかり乾いている。そして剣と盾のモニュメントが壁に掛けられており、それ以外にも壁には騎士の映る白黒の写真が飾られていた。
アズマはその全てが殉職者の写真だと知っている。なんだか少し感慨深くもなるが、通された部屋に誰もいないことに対する不信感の方が強かった。
「あの、誰か居ませんか」
すると自分の背後でかちゃりと音がする。誰かが入ってくる? いや、鍵が閉められた音だ。
錠が閉じられる音を合図に、待機室から他の部屋へ通じている扉が一斉に開く。すると強固な鎧で武装された騎士たちがゾロゾロと入り込んできた。
明らかな危機にアズマは身を翻すが、入ってきた扉の鍵は案の定閉まっており開きそうにない。
声を上げようとするアズマだが、その瞬間、首筋に殺意の籠った切っ先を当てられて何も喋れなくなる。
「カテゴリー0の案件か。どうしてこうも厄介事が続く」
「な、にがですか」
「両手を扉につけろ。騒げば殺す。……連れていけ」
思わず竦んで言われる通りにしたアズマを、アズマに切っ先を向ける騎士の部下が連行しようとアズマの両腕を掴んだ。二人の騎士の強い力の前にはなすすべもなく、アズマはずるずると待機室の奥にある扉へ引きずられていく。
「待てよ。なんだよあんた等。何か知ってるのかよ。ソニアに何をしたんだよ!」
「騒ぐなと言った。……殺したくないが、殺さざる得なくなる」
「殺せよ。ただし何をしたのか全部言ってからだ。じゃないとお前らは」
アズマを抑える二人の騎士は、アズマから異様な気配を察知する。掴んだ腕を離さなくては危険だと、本能がそう呼びかけていた。
アズマは掴まれた両腕を支点に、ぐるりと回転する。騎士がアズマの腕を掴む力は紛れもなく強力であった。
だがそれ以上の破壊的な威力で、騎士が抑える両腕の固定を外したのである。回転に吹き飛ばされた騎士たちはその場で姿勢を崩す。
その腹に、アズマは両足で両脇に居る騎士に蹴りの追い打ちを決めた。
「お前らは俺に殺される事になるぞ」
その人間離れした動きに、騎士たちは騒然とする。対するアズマは決して無理な動きをしたつもりはなかった。ただ自分の邪魔をするのならどいてもらおうと、そう思っただけなのである。
「こいつッ!?」
部下を従えている騎士は、アズマの顔に見覚えのある模様が浮かんでいる事に気付いた。それはまさにカテゴリー0などという案件を作る切っ掛けとなった少女の顔に刻まれていた鱗の形。
まさか、この男も? そう思ったが、アズマの顔に浮かぶ模様はあくまで鱗ではなく、模様である事にも気づく。
「成りかけているのか? 竜に。早く答えろ。誰でもいい! 一体お前たちは!」
瞬間、痛烈な打撃音が室内に響く。
「それには答えられない」
アズマの脳天を襲った一撃は背後からだ。衝撃に気を失い、崩れ落ちるアズマの背後には、剣の鞘を構えるダイレスが立っている。
「隊長」
「馬鹿野郎。隠密にやれといった」
ダイレスは鞘を元の場所に戻すと、一人でアズマの身体を抱え上げた。
「こいつは俺が連れていく。……カテゴリー0の対応をマニュアル通りにやったか」
「……はい」
それまでアズマの首筋に切っ先を向けていた騎士がそう答える。
「ならマニュアルの書き換えが必要だな。武力の扱いが下手過ぎる。……いや、そもそもカテゴリー0などという腐った忘れ形見は、もう失くした方がいいのかもしれんな……」
そう言ってダイレスはアズマを抱えて、騎士ギルドの奥へ運んでいく。
「お前であってほしくなかった。……アズマ・オーベルライト。全くお前たちの世代には、申し訳が立たないな……」
ダイレスは騎士になるための合否を決める試験官を務めている。だから、アズマの事も知っていた。見どころのある若者だと思い、騎士への道を推薦したが……それは前騎士ギルドの長によって否定される。
理由は血筋だった。
アズマ・オーベルライト。その名前は……竜の国からの移民を示す。例えそれが、戦争の始まる遥か昔のことだったとしても当時の騎士ギルドの長はそれを嫌ったのである。
「叶うことなら、……いや願うまい。今はまだ、愚かな騎士としてお前を牢に閉じ込めよう。そしていずれ、ネイザーがここを変えてくれたなら、騎士としてお前を助けだそう」
友として、出世を捨ててまでここに来てくれた男。ネイザー・ランデルマンはダイレスの戦友であった。
彼ならば前ギルド長によって腐ってしまったここを変えてくれる。ダイレスはそれだけを頼りに、アズマを牢に閉じ込めるという痛みに耐えたのだった。
ロビーで足をぶらぶらさせながら待つソニアだったが、アズマの匂いがどんどん薄くなるのを感じて鋭く立ちあがる。
アズマの言葉を信じて待つ事を選んだ彼女だが、それでも彼が危機に瀕しているのなら向かわなくてはならない。そして彼を危機に陥れる者がいるのなら、殲滅する。
彼女は彼女自身のその行動原理に従い、実行に移そうとする。
脳内に、その懐かしい声色が響くまでは。
『久しぶりだな……ジャバウォック』
「誰ですか」
ソニアは周囲を見渡してみるが、その声の発信源を突き止めることは出来ない。
誰もかれもが怪しく見えて、誰もかれもを殺して調べようとも思うが、アズマの顔が脳裏を過り、それを実行に移すのは止めた。
『甘くなったな。今、視界に映るもの全部殺そうとして止めたろ。竜娘らしくねぇ選択だな、そりゃ』
「誰と聞いている」
『ハイドラ。覚えてるか?』
「ハイドラ。覚えていませんが、竜娘だってことは分かります」
脳内に直接声を送れる芸当が出来る事が何よりもその証拠である。
『悲しいじゃねぇか。まぁいいけどよ。お前、アズマとかいう男の事を探しているだろ』
「アズマに何かしたなら粉微塵にして殺す」
『落ちつけよ。居場所を知っているだけさ』
「どこですか」
『外に出ろよ。そして私の匂いを辿れ。そこで待っている』
そこで脳内の声は途切れる。ソニアは少し迷うが、ハイドラという竜娘の存在がアズマを脅かすと思い、彼女の言葉通りに外へ出ることにした。
見つけ次第、殺す。アズマの居場所を知っているのなら吐かせた上で殺す。知らないのなら手早く殺して、アズマを探す。
その単純明快な行動原理をハイドラが利用しているとは考えなかった。いや、考える事が出来ないという方が正しいだろう。
例え考えられたとしても、ソニアの行動は変わらない。それが竜娘とされ、人としての思考原理を奪われた者の果てである。
雨が降っていた。
もともと曇天ではあったが、強く打ち付けるような雨が降るとは町の人々も思っていなかったようで急いで洗濯物を取り込む姿が見られる。
ソニアは身体中がびしょぬれになることにも構わず、匂いを辿りハイドラの元へ向かった。雨に濡れる彼女を心配した町の人が声を掛けても、一瞥すらせずただ歩く。
ちょうどアズマに会いに行く時の事を彼女は思い出した。その時もただ、前を歩くことだけを考えていた。目的を果たすために。一縷の願いを遂げるために。
匂いの出所はアズマと共に住むことを決めた高台。ドゥルーマウンテンの麓にあるその場所は、町の景色を一望できる。
だがそこにハイドラの姿はなかった。代わりに居るのは、ソニアが最初に纏っていたローブを手に持つ者。その男もまたローブを纏っており、目でその者を識別する事は出来ない。
しかしソニアは匂いでそれが誰なのかを認識する事が出来た。
「ウォレス・ランド」
「……驚いたよ。こんな物の匂いを本当に辿ってここまで来たことにも、その姿の君が再びここに現れたことにも」
ソニアは全身に力を巡らせる。迸らせるのは殺気。ソニアは自分の問うた事に答えないのなら殺すつもりで尋ねた。
「アズマはどこですか」
「そう焦るなよ。せっかく久しぶりの再会だ」
瞬間、ソニアは地面を鋭く蹴る。たゆたう髪の毛は馬の尾のように後方に靡き、鋭くウォレスの喉元へ手刀を伸ばした。首をはねるつもりで仕掛けた攻撃であったが、その一撃は不発で終わる。
ソニアの手は、僅か数ミリのところでウォレスの喉に届かなかった。
ウォレスの剣で止められた訳ではない。躓いたわけでも、ウォレスに対する憐憫の心がそうさせた訳でもない。ソニア自身、何故自分が攻撃を止めてしまったのかが分からず目を見開かせていた。
「すぐに首を狙うか。全く、君は本当に昔の君ではないらしい」
「何、が」
ウォレスはフードを上げ、その表情を初めて見せた。彼の顔面に幾重にも刻まれている文字にソニアは絶望的な声色でその意味を告げる。
「禁竜呪文……!」
「ああ。これがあればお前たち竜娘は、抵抗が出来ないらしい。長時間の拘束は難しいらしいが、少しあれば十分だ」
ウォレスは改めてソニアの顔をまじまじと眺めると、少しだけ表情を綻ばせた。
「全く本当に変わらない。だからこそ憎らしいよ。覚えているか? 昔は俺とアズマと、お前の三人でよく遊んでいたんだ」
「覚えていません。覚える理由がありません」
「だろうな。それでいい。俺の記憶なんてそれでいいが、お前がここに帰ってきたのは不味いんだよ」
ソニアはその時、ウォレスが前に屋敷で会った時とはまるで様子が違うことに気付いた。暗く、重く、そして悲しい。それは絶望に身を委ねた者の瞳である。
「もう少しで、身体は動く。そうなれば、お前を殺す」
「いいのか? そんな事を言って。『ソニア』はそんなこと言わないぞ」
ウォレスの言葉は、ソニアの心を激しく揺さぶった。雨よりも身体から湧き出る冷や汗の方がよっぽど冷たく、心臓が苦しいぐらいに鼓動する。
アズマにもっとも知られたくない事を、目の前の男は知っている。絶対に、絶対に知られたくない事を。
ウォレスは言葉を続ける。それはソニアの絶望的な疑念を確信へと変えるものだった。
「お前はソニアであって、ソニアじゃない。本当のソニアはもう既に死んでいる。お前はソニアの身体に、ソニアの記憶を持って埋め込まれた竜だ。それが竜娘。竜の国が開発した、最悪の兵器」
「ち、違う」
「違くないさ。だからお前がソニアを名乗るのは間違えている。お前はジャバウォックなんだから」
その時、ギョロ目の科学者の顔がフラッシュバックする。自分が何をされ、何になってしまったのかを濁流のように思い知らされる。
「お前に帰る場所なんて、どこにもないんだよ」
「違う!」
ウォレスは前にかかるソニアの髪の毛を優しくずらし、ソニアの頬に触れる。ソニアはそうするウォレスを心底憎らしげに睨んだ。それを気にする事もなく、ウォレスはまるで何も起きていないかのような声色で、別れの言葉を告げた。
「さよならソニア。お前はただの力でいればそれでいい――――装着『ジャバウォック』」
ウォレスは頬に触れた手をずらし、ソニアの喉を強く掴む。瞬間、ソニアは蒼い炎に包まれた。地面から湧きだす鎖は繭のようにソニアとウォレスの二人を包む。
「離せ。離して!」
「聞けない相談だ」
繭から湧き出る蒼炎は竜の形を描き、繭へと還る。大雨を滴らせる鎖の繭はやがて蒼炎を交えた粒子となって散り、その跡には一人の鎧が姿を現した。
「これが竜娘の装着。成程、なんでも出来そうな力だ。……あとはハイドラを拾い、そして……手始めにこの町を終わらせる」
鎧姿のまま、ウォレスは高台を歩く。途中で見つけた水たまりに自分の姿を映るのを見かけると、低い声色で嗤った。