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ラストウィザード 最後の魔法使い  作者: 松井アキ
第1章 魔法が消えた世界
1/8

出会いのプロローグ

暗闇に灯りが一つ。



ザザ…ザザザ……と砂嵐が流れる。


砂嵐の合間を縫うように夕焼けのような綺麗でどこか儚い映像がチラチラと途切れたり繋がったりを繰り返す。


それが数分続いて髪が長い綺麗な女性が姿を現したかと思えば、また砂嵐に覆われる。



その繰り返しの中、、、



「……父さザ…、ザザザ…この子をザザ…お願いしま…ザザザ……ザーーーー」



そこで映像はプツンと途切れた。

まるで何かに遮断されるかのように。

そしてまた、暗闇がただその空間に取り残されるだけだった……。


この世界に魔法というモノが認識されるようになってから魔法歴1777年。

世界はある日、突如勃発した[魔力欠乏症]という難病に覆われ、治す術はなく全世界の人々や動物たちは力を失い生きる術さえも…失いかけていた。




原因を調査するも目まぐるしい結果は出ず、魔法というモノを失ってから軌導歴5年。世界は再び立ち上がろうと完全なる魔法との未練を捨て科学へ視野を広げ発展させていく。

それから時はさらに過ぎ、軌導歴154年。そんな中、この世界に一人の少年が姿を現した。

その姿はまるで絵本に出てくるような姿だったという。








「はぁ〜、水が……ある場所は……」


何日歩いただろう…。深いため息とともにお腹をギュルギュルと鳴らし棒切れを杖代わりに、何もない荒野をただ一人ボロ雑巾のような姿で彷徨っていく。

一体何日食べてないのだろうか、力も既に底を尽きようとしている。

たまに過ぎ去る鉄の塊を横目に、ひたすら鼠色の地面が熱しられた蒸気を見つめ一体どこに行けばいいのか、一体どこへ帰ったらいいのか、それは誰一人彼自身もまた知る術はなかった。




「……お…、おー…い」




意識が朦朧とする中、遠くの方で微かに声がする。これぞまさしく幻影か。

この暑さでとうとう頭もやられたらしい、陽炎が遠くのほうで今の自分を嘲笑うかのように近づいてくる。黒くボヤけた影が足元に現れた瞬間、顔を上げるまでもなく意識が遠のいた。





この世界が魔法というモノを認識したのは【始まりの魔法使い】という人物が発端だったらしい。

らしい、というのはとても曖昧なのだが、いかんせん誰もがおとぎば話のような話だったので不明確ではあった。しかし魔法歴1456年、全世界を巻き込む世界大戦の中で【彼】が現れたという目撃情報がいくつも寄せられていた。 だが、それが本当の【彼】だったのかは誰もが知る由なかった。そんな中【彼】のおかげかどうかは分からないが世界大戦は終戦を迎えたという。






暗闇に一人、またここへと来たのか。と言わんばかりの顔で自分を見つめてくる。

いや。…………もういいのかもしれない。自分が存在する理由はもうこの世界にはないのだろう。


暗闇に飲み込まれるのも、またいいのかもしれない。 全てを投げ出して楽になってしまえばきっと……。






顔面を殴られたかのような衝撃で強制的に意識が戻される。どうやら水をかけられたらしい。

「気分はどう?」とツインテールの少女が桶を持ちながらこちらの様子を伺う。年は15辺りだろうか。

「あぁ、ありがとう……。」

意識がまだ朦朧とする。どこかの倉庫だろうか。周りを見渡すといろいろな鉄の塊があちこちに散乱している。この子の家だろうか。




「何も食べてないんでしょ、スープ作って置いたから適当に食べていいよ。」

そういうと部屋の隅でなにやら作業を開始する。寝ていた隣のテーブルには透き通るような黄金色のスープ、パン、水が入ったコップが置いてある。

「……ごめん、ありがとう!」

スープを飲みパンにかぶりつき水で流し込む。一体何日振りの食事だろうか。けして豪勢ではないが、空腹とは最高の調味料とはよく言ったモノだ。腹が満たされていく。



「あんなところでなにしてたの?私が通り過ぎてなかったら野垂れ死んでたよ。足もなしにあの荒野を闊歩するなんてとんだバカか、ただの自殺志願者だけ。」

よくみると彼女の顔は埃と煤で若干黒くなっている。

「助けてくれてありがとうな。でもどうやってオレをここまで運んだんだ?」

「どうやってって、このバイクでよ。」



彼女はいじっていたソレをバイクと呼び、なにやら整備している。

足と言うってことはあの早く走る鉄の塊と一緒なのだろうか。しかし、形は違う。

「バイクって、オレの横を走っていった鉄の塊とどう違うんだ?」

「鉄の塊って。」



クスッとした後に「それって車のこと?」と質問を返してくる。

答える間も無く、


「そういえば貴方見慣れない服装だけど、どこから来たの?車やバイクの事も知らないみたいだし。」

「それが名前以外なにも覚えてないんだ。今が何年なのか、どこに行けばいいのか、何をしたらいいのか……。」

「貴方面白そうね!そうね、今は軌導歴154年。ん〜……」


彼女はなにやら少し悩んだ後に、

「行くところないならさ、とりあえず記憶が戻るまで私の手伝いしてみない?ちょうど人手も欲しかったところだし。」

「……あぁ、そうする事にするよ。えっと……。」

「私の名前はシズク。シズク・グランベリー」

「オレはアキ。アキ・リュビアラスクだ。」


自己紹介をし握手を交わす。




しかしこれは、彼女と少年との壮大な物語の始まりに過ぎなかった。

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