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第54話 目的 あれぐらいしか思いつかん

 ドアを開けるとそこには、ピンクさんと赤い衣装のお姉さんが2人で立っていた。

僕らも一緒に外に出ると、なんだか女性二人が変な怪しんでいるような微妙な表情をしている。

何かと思い尋ねると、


「何で封印術なんて使ってるの?」


僕の額の魔封紋を見て不思議に感じていたらしい、解いてもらうの忘れてた。

セルにお願いしてすぐに解いてもらう、すると今度はにやーっと笑いながらピンクさんに話しかけられる。


「男同士ってあたし知らないんだけど、どんなプレイするの? 封印術なんて使っちゃってさ」


・・・・どうも色々誤解があるようだけど、まあそういう風に仕向けたんだからしょうがないか。

セルがまあまあと言ってなんとかごまかしている、僕も身の潔白を訴えたいんだけど余計にこじれそうだしな。

赤いお姉さんは、また来るようなら指名してね、秘密にしておくからさと小声でささやいてくる、なんかいい匂いがしてドキドキするな。


 こうして僕の初めての娼館体験が終わりを告げた、これで良かったような何か惜しかったような。

外に出ると見慣れた3人の顔が目に入る、ずっと待ってたのか・・・・怖っ。

中でもシャルとアリーは汚いものを見るような、美人が台無しな凄い目つきで見てくる。

アーセは比較的普通な感じなんだが、これはこれで何考えてるのかわからなくて怖いんだよなー。


 朝ごはんが遅かったのもあって、お腹が減るにはまだな時間でどうしようかと考えるも、僕らの後ろを付いてくる3人が気になってそれどころじゃ無い。

かと言ってアリーには言えない話をしていたんだとは言いづらい、ダンジョンでは少なからず協力も出来ていただけに、雰囲気を悪くするのははばかられる。

しかし、このまま何も言わなければ、僕とセルは女性3人とパーティーを組んでいるにもかかわらず、午前中からそういう事をしてくるような奴らだという事にされてしまう。

・・・・ってアレ? それはそれで別に問題無いんじゃないか? 

別にパーティーを組んでいるだけで、誰とも付き合ってる訳じゃ無いんだし、僕とセルは成人している訳だし、そりゃあ昼間っからってのはちょっとなんだけど、法に触れてるわけでも無いんだしここは堂々としているべきだろうか。


 そんな風に自分を正当化していると、と言うか本当にやましい事は本当の本当に残念ながら何もしてないんだが、後ろからアーセが僕の隣まで小走りに駆けてきた。

ぎゅっと手を握り、僕とセルを交互に見ながら、


「にぃとセルにぃは何してたの?」


と、とても真っ直ぐ聞いてきたのには、ビックリし過ぎて思わず硬直してしまう。

反応できない僕に比べて、セルは驚きながらもさも普通の事のように、「大事な話をしてたんだよ」と答える。

同じ歳とはいえこの辺りは見習いたいところだなー、どうもこの手の話はあせっちゃうんだよなー、っていうか特にそっちの話じゃ無いんだけど。


 すると、シャルとアリーの二人も聞いていたようで、すかさず近づいてきてこちらに対して凄んでくる。


「話しするだけなら、わざわざあんな所に行く必要ないでしょー、何誤魔化してんのよー、あーいやらしいー」

「本当ですよ、さっアーセちゃん、そんなけだものの近くにいないで、こっちで私との明るい家族計画についてお話をしましょう」


 わかってはいたけど、二人はどうもこちらの話を聞く気は無いらしい。

セルとの話し合いでせっかく今後の予定が決まったのに、こんなんじゃ雰囲気悪くてダンジョン攻略なんて出来ない。

どうしようかなーと考えていたら、エイジに話しかけられた。


【ここはきちんと説明しておいた方がいい、馬車の中なら他の奴に聞かれる事も無いだろう、ちょっと確かめたい事もあるから、皆でゴナルコに飯でも食いに行くってのはどうだ?】

【うん、いいね、早速言ってみるよ】

【ちょっと待った、あらかじめアーセに頼みたい事があるんだ。

他の奴らに聞かれない様にアーセにこう言ってくれ、・・・・してくれって】

【? 何の意味があるの?】

【そん時が来たら教えるよ、そうで無きゃいいとも思ってるけどな】

【なんだか良くわからないけど、わかったよ】


 まずはアリーに連れ去られたアーセを呼ぶと、てててと僕の元まで駆けてくる。

耳元で両手で周りに聴こえない様にして、さきほどのエイジからのお願いを伝える、最後に「頼む」と言うと、満面の笑みで了解のお返事をしてくれた。

アーセを取り戻しに来たアリーと、それに付いてきたシャルそして横にいるセルに向かって提案する。


「これから馬車を借りてくるから、皆でゴナルコへご飯食べに行こう、ちょっと話もあるし」

「・・・・アーちゃんどうする?」

「まさか、人目につかない馬車の中で、私たちに何かするつもりじゃ無いでしょうね?」

「あのね・・・・、セルに御者任せるから中は僕と女性陣三人なんだよ? 

どう考えても僕一人でどうにも出来ないでしょ、しかも一人妹だし」

「・・いいでしょう、アーセちゃんはこの私が命に代えても守り抜いて見せますよ!」

「だから違うって、はあー、まあいいや、とにかくそういう訳だから」


 同じ北側区画という事で、すぐに馬車屋に到着し今後の事も含めて、試しに二頭立ての馬車を借りてみる。

流石に少々お高かったが、走らせてみるとその速度も安定性も、一頭立てとは比べ物にならないほど良い、これはやっぱり長距離移動するならこれだなと確信できた。

皆に待っててもらっているところまで行き、御者をセルに代わってもらい全員乗り込んで出発した。


◇◇◇◇◇◇


 ゴナルコへ向けて街道をひた走る馬車、その中で僕は女性陣に向かって、今後の予定についての説明をしていく。


「えーっと、セルとも話し合ったんですが、今後は各国のダンジョンを攻略しようという事になりました」

「またダンジョン? もういいよー、きついしさー、その割には特にいい事無いしさー」

「・・何か考えがあるという事ですか?」

「にぃと一緒なら行く」


 まあある意味予想通りのリアクション、アリーのは含みがあってちょっと微妙だけど。


「理由は、あそこのダンジョンで見つけたこの剣です」


そう言って、『嵐』の代わりに下げている征龍剣を見せる。


「この他にも、ダンジョンに武器が眠っているのか、それぞれのダンジョンへ確認する為に行こうと思います」

「そんなの集めてどうするの? 何に使うの? 変な事ならあたし嫌だよ」

「・・つまりは、お義兄さんは他のダンジョンにも武器があると考えているわけですね?」

「うん、それで、そこにあるなら確認だけしてそっとしておこうと思う、へたに持ち出して悪用されたりしたら困るからね」


ここまで話すと、シャルもアリーも深刻な話だと理解したようで、軽口もたたかず落ち着いた顔つきで何事かを考えている。

先に口を開いたのはアリーだった。


「もしも、すでに持ち去られていたとしたら、どうするんですか?」

「その時に考えるしかないけど、もし持ち主が分かっているならそれとなく近づいて、その人の目的や人となりを調べるとかしておくってとこかな、持ち主がわからないようなら、なんとかして王家に注意を促すとかね」

「それってあたしらがやらなきゃいけない事なの? それこそ知ってる事話してそれぞれの国に任せればいいんじゃないの?」

「確かにやらなきゃいけないって事はないけど、何もしないでいて何かあってから後悔したくはないからね、それに国に話すったって逆になんでそんな事を知ってるんだって、へたすりゃ掴まりそうだしさ」


 再び考え込んでいる二人、確かに命の危険がある事だし強制は出来ない、だから念のために参加するかどうかの意思を確認しておかないと。


「あのさ、一度あそこまで潜ってわかってると思うけど、ダンジョン探索は何があるかわからない、それこそ命の保障は出来ない、だからもし三人が嫌だっていうなら残念だけど、抜けてもかまわないよ」

「・・正直、どちらかというと行きたくないんだけど、でもそれで皆に何かあったらって思うとさ・・・・、わかった、行く」

「私は、アーセちゃんが行くなら」

「アーセはずっとにぃに付いてく」

「ありがとう、皆で力を合わせて頑張ろうね」


 チームとしての方針がたったので、これまでまかせっきりだったセルと交代する。

セルは後ろでシャルに「なんでアルとあんなとこで話してたのよー」などと責められている、まあセルならなんとか躱すだろう。

アーセは僕がこちらに来たので、当然のように横に座っている、するとこちらも当然のように、アーセの真後ろでアリーが気を引こうとしきりに話しかけている。

そうこうしている内に、ゴナルコへと到着した。


 移動で結構な時間が経ったので、僕らもお腹が空いていた、なのですぐに目当てのサルギス軒へ。

店内に入ると、すでにランチの時間は大幅に過ぎているので空席が目立つ。

労せずして座れたのはいいが、給仕の女性がアーセの事を覚えていて、

一旦奥へ引っ込んだと思ったら、しばらくするとここのおかみさんである、

ネリィムさんが中から飛び出してきた。


 ネリィムさんは、すかさずアーセを抱きしめて満足そうに微笑んでいる。

嫌われない様にスキンシップを我慢している、約一名の歯ぎしりが聴こえてくる。

アーセ効果により、間違いなく通常よりも多い量をお安い価格で食べる事が出来るのはありがたい、ご相伴にあずかり大助かりだ。


 前回と同じくお店の前でのネリィムさんのアーセとのお別れ劇場が終わって、じゃあ戻ろうと馬車を走らせてもうすぐゴナルコの門をくぐるというところで、アリーが「ちょっと」という事で馬車から降りていく。

まあ女性がこういう場合は、大体の場合お花摘みなのはわかっているので、僕とセルは何も言わない、だがアーセが「一緒行く」と言って付いて行った。

その時エイジがつぶやく。


【やっぱりな】

【あの時アーセにアリーが僕らから離れて一人になる時は、必ず付いて行くようにってのはこれを予想してたの?】

【この間依頼でここ来た時も、あーして一人降りたろ? おそらくはここに連絡員がいるか報告を伝える術があるんだと思う】

【なんでここなの? 滅多に来ないここよりもヨルグで連絡取る方が自然じゃない? ここよりヨルグの方が大きいんだから連絡員とやらもいるだろうしさ】

【その辺はわからないが、セル達を警戒してるのかもな、前にここ来た時はアルとアーセと三人だったろ? だから連絡したんじゃないのか】

【セルを警戒って・・、それって『二本』だから?】

【じゃないかと思うぞ、相手の事を何か感じ取られるんじゃないかと思って、ヨルグではあえて連絡取らないようにしてるのかも】

【ここならって思ったけど今回はアーセが付いてった、そうなると、今回アリーはその相手と連絡取れないって事?】

【相手がいる場合はな、報告するだけなら書いた紙をどっかに置いておくって手段でも伝わるから、そこまでアーセに探れってのは無理がある】

【エイジの狙いはなんなの?】

【連絡取ってるってアーセが確証を得たんなら、それをネタに正体を明かせって脅すし、そうでないならその後の動きをみて狙いをあばく手掛かりにする】


難しくてよくわからない、手がかりってなんだろう。


【手がかり?】

【征龍剣がダンジョンにあったって事は、少なくともイァイ国の王家はこの事、つまりはダンジョンに征龍の武器があるって知らないって事だろう。

もしも知っていたなら王家の安泰を守るためにも、ダンジョン攻略を積極的に国の機関に命じて回収していたはずだ。

しかしそうはならず実際征龍剣はアルの手元にある、その事を報告によって知ったら脅威に感じるはずだ、龍を倒すことができる剣が誰かに握られてるのをな、そうなるとどうなると思う?】

【どうなるって・・・・、もしかして僕狙われる?】

【おそらくはな、今後その手の輩が出てきたらそういう報告がされたって事だろう、そしてそいつを捕まえて背後関係を吐かせる】

【そんなうまくいく? それってそもそも襲撃してきたのを撃退する前提じゃないの?】

【当然だ、そんなのに後れをとってどうする!】

【いや、どうするって言われても、それで吐かせたらどうなるの?】

【王家に対して貸しをつくる、今後何か言ってきた時用にな、但し前提条件がひっくり返ればすべてが変わってくるけどな】

【前提条件って?】

【征龍剣を握っているのがどっかの誰かじゃ無く、王家に連なる者だった場合だな】

【? それはどういう意味?】

【おっと、アーセたちが戻って着たぞ】


 話はまだ途中だったが、アリーとアーセが戻って着たので再び馬車を走らせる。

この場でアーセに確認する事は出来ない、常にアリーが近くに居るので内緒話が出来ないのだ。

まあその辺はリンドス亭に戻ってから、角部屋で聞けばいいか。


 帰りの御者台はしばしの間アリーに任せ、僕は後ろで次に行く予定にしてたカーを取りやめて、ミガ国にして欲しいとセルから告げられていた。

セルは王家とのつながりについては特に話さなかったが、やっぱり母国がどうなっているのか気になるようで、先に確かめたいらしい。

僕としては異存が無いし、僕が良いという事は当然アーセも問題無いし、アーセが行くという事はアリーも来てしまうのも決定していることだろう。


 だが、シャルは気乗りしないようで、「えー」とか「なんでー?」とか「あーあ」などと行きたくない感満載だ。

話を聞くと、ミガ国のダンジョンがあるのは王都オューの近くで、王都には実家があるので戻ってきたと家にばれてしまう可能性が高い。

そうなると、結婚話が持ち上がってるので、家に連れ戻され結婚させられかねないという事らしい。

それが嫌だったからセルにくっついて家を出てきたのに、これじゃあ意味無いと拗ねている。

しかし、王都といっても広いだろうに、足を踏み入れただけで戻ってきたってばれるもんなのかな?


◇◇◇◇◇◇


 街道にたまに出没する魔物も、このダンジョンを踏破した面子にかかれば瞬殺の嵐で、仕留めるよりも死体の処理の方に時間がかかる。

出発したのが遅かったせいで、陽が落ちてかなり経ってからのヨルグへの帰還となった。

皆をリンドス亭で降ろして、僕が馬車を返しに行く、しかし実際降りたのはセルとシャルだけで、アーセが付いてくるので以下略。

セルとシャルには先に食事してくれと伝える、三人になれば何か動きがあるかと思いつつ馬車を走らせる。


 馬車を馬車屋に戻し、徒歩でリンドス亭へと帰る途中でアリーが「お話があります」という事で、ちょっと遠回りながら傭兵ギルドへ。

あまり人に聞かれたくない話だろうし、食事処以外で話ができる場所っていうのが、ここの打ち合わせスペース以外思いつかなかったのだ。

遅い時間という事で、キシンさんはいなかった、とりあえず一安心。


 話は予想通りのものだった、すなわち「出来るだけ早く、出来ればすぐにでもファタへ向かって貰えませんか? その剣を持って」という事だった。

でもだからといって、言う通りにするいわれは無い、予想していたという事はこちらも答えを用意している。

僕が断るとしばらく考え込んだ後で、こう言ってきた。


「・・・・、理由を聞いても?」

「馬車で話した通り、次に行くのはミガ国のダンジョンで決まったでしょ。

そもそも自らの身分は明かさないさらに目的は秘密ですって言われて、のこのこ付いて行くやつはいないよ、きちんと説明してその上でこちらが納得したら考えるけど?」

「・・・・・・・・、わかりました、無理を言って申し訳ありませんでした」

「話す気は無い?」

「・・・・申し訳ありません」

「そっか、繰り返しになるけど無理についてこないでもいいよ、もし何かあるんならここまでって事でもさ」

「・・・・少し考えさせてください」


 いつもぐいぐい来るアリーが項垂れていると、なんだかこっちが悪いことしているような気になってくる。

アリーが席を立たない、しばらく一人で考えるというので、僕とアーセは傭兵ギルドを出てリンドス亭へと歩いて行く。

ここでエイジに話しかけられた。


【おそらく連絡員と相談して上司に指示を仰ぐんだろう】

【どうする? つけて行って現場を押さえる?】

【いや、無理だろう、ここまできたら向こうも警戒してるだろうから、

尾行してもまかれておしまいだよ、出方を待とう】

【もうさ、先にファタへ行ってすっきりしてから、

他の国に行く方がいいんじゃ無いの?】

【わからん、最悪ファタで自由を奪われ拘束される可能性もある。

そうなったら身動きできなくなるからな、出来れば用件を事前に知った上で、

対策を施してからってのが望ましい】

【・・・・一体どんな用事なのかな?】

【まあ予想は出来るが、確証が無いんでな、現時点ではなんとも言えんな】

【ファタに来て欲しいってのが、指示だったんじゃないの?】

【連絡取ったのがゴナルコだとしたら、指示が届くのはまだのはずだ、

あれは本人の意思だろう、長い旅に出る前にケリつけておきたいっていうな】

【どういう指示がくると思う?】

【俺の予想じゃ強制連行は無いな、おそらくは泳がされると思うが、さてどう出てくるか】


 こんな魂話をしつつリンドス亭へ到着すると、そこには二度目(正確には三度目)ましてな人が目に映った。


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