第33話 山中 まあこうなるだろうな
夜のミーティングといっても、まるっきり色っぽい話では無い。
フォーメーションをどうするかで、ジンにお伺いを立てるも自分以外の力量はおろか、得物すら知らないのでその辺はアルがという事になった。
流石に、これから魔物を討伐する同じパーティーで、互いの得物も知らないでは連携が取れないので、簡単に各自のバトルスタイルを発表していく。
ジンは、『角』のような短めの剣二本を使う二刀流だった、操魔術は苦手でほとんど使わないらしい。
命のかかる案件であり、この中では一番年長且つ等級が上の自分がしっかりしなければ、そのジンの意気込みをよそにアルはエイジからの知識で、明日からの依頼対象である二種類の魔物に対する、レクチャーを行っていく。
現地で魔物に出会えるかは、純粋に運次第となるが数が少ない種類という訳では無いので、その点は問題無いと思われる。
問題はその強さ、『リハーブル』は外皮が固く、通常槍や剣で刺したり切ったりしても、滅多に傷つける事は叶わないほどだと言われている。
弱点は腹、四足歩行で重心が低いつまりは足が短いので、ひっくり返すのは容易では無く、罠にかけるか槌や棍などで横から突き倒してから腹を裂く。
これが一般的な倒し方とされてるらしい。
但し、体長は一メートル程だがとても重くまた、顔の中央辺りにある角を向けてかなりな速度で突進してくるので、これをかわしつつ仕留めるのは難しい。
一人が囮になり引きつけている内に、もう一人が横合いから突き倒す事になる、タイミングが非常にシビアな作業となる。
囮には自分がと、ジンが危険な役目を引き受けようと口を開くより前に、移動中にエイジと話し合っていた結果をアルが述べる。
「『リハーブル』の前には僕が立ちます、一匹試したいことがあるので」
「試したい事とはなんだ?」
ジンが不可解といった感情が、言葉にのっているかのような口調で尋ねた。
アルは、さも普通の事のように答える。
「『リハーブル』の外皮がどのくらい硬いのか、一度全力の操魔術で貫けないかを」
ジンは絶句した、こいつはアホだ、おそらくは『リハーブル』の外皮がどんなもんだか知らないからいってるんだろうが、あれはそんな簡単なもんじゃない。
ここまで考えて、はてと疑問が浮かんだ、こいつは『リハーブル』と戦闘した事は無いって言ってたが、その特徴や弱点そして実際の倒し方などとても詳しい、
依頼を引き受けて出かけるまでで、調べている時間なんて無かったはずだ、なのにこんなにちゃんとした知識があるやつが、そんな無謀な事を言うとは思えない。
だがこれまでそんな威力の操魔術など見たことも無い、ジンは少し混乱をきたした。
アルとエイジが移動中に話し合っていた内容はこうだ。
【アル、『リハーブル』には是非とも俺の操魔術の威力を試したいから、勝負させてくれないか?】
【勝負ってなにするの?】
【あいつの外皮を貫けないか、一度試してみたいんだ】
【ふーん、まああの武器屋の鎧貫通したんだから、いけるんじゃないの?】
【わからん、外側は同じくらいだとしても、中身が木の幹と体内じゃあかなり違う、筋肉や骨まで含めて貫通できるるどうか、今後の事も考えて一度やってみたいんだ】
【うん、わかったよ】
ディネリアとソニヤは、『リハーブル』自体見たことも聞いたこともないので、まるでピンときていない。
ただ、アルの操魔術の腕は知っている、ダンジョン第3階層で寸分たがわぬタイミングと威力で、飛んできた岩を粉砕した。
決闘においては目にもとまらぬ速さで三つを操り敵の攻撃を迎撃して見せた、その威力と精度には計り知れないものを感じていた、だから少しも変だと思っていなかった。
ちなみに、ダンジョンで岩を粉砕した時も、アルはというかエイジが三つを操っていた。
だが、二人の後方から飛んで来ていた為、岩が三個飛んできたことも、アルが三つの針を同時に使ったことも見ていないので、決闘の時に初めて目の当たりにして度肝をぬかれていたのだった。
そんな三人を気にも留めずに、次なる議題に移った。
難敵と言って差し支えない『リハーブル』だが、さらにやっかいなのが、もう一つの依頼対象の『マッドベア』である。
こちらは、『リハーブル』のような外皮の硬さは無いが、単純にでかい。
体長は3mを超すものもいるほどで、熊と同じで走る時は四足で戦闘時は二足な事が多い。
大きいという事は、その皮も厚く筋肉も太く骨も固いので、こちらもやはりなまなかな事では、両断するなどは無理であった。
其の両手の爪は毒を持ち、鉄製の武器にも引けを取らない強度でまた、腕力もとてつもないので攻撃力はとても高い。
さらに、走る速度は速く、木に登れてしかも泳げるとあって、出会ってしまったら逃げきるのはまず無理で、倒す以外に助かる方法は無いと言われている。
中でも一番の難点は、弱点らしい弱点が無い事である。
これまでで最も多い倒し方としては、遠隔から多人数で操魔術を使い頭を狙う事らしい。
だが、あまりに離れては操作できないし、近いとその巨体の迫力で冷静に操れないので、適切な距離と操魔術の威力と数が倒す為に必要とされている。
これに対処するための戦法を考えようという時に、エイジが話しかけてきた。
【アル、今回の魔物との戦闘でジンの事はあてにするなよ】
【どういう意味? なんか企んでるとかなの?】
【そうじゃなくて、単純に戦力として数えるなって事、あいつの武器を見る限りでは対人戦闘に特化していて、魔物特に今回のような大型のものや、硬い鱗を持つものなどは苦手としているはずだ。
いってみればアルに近い、しかも操魔術が苦手だってことは囮くらいしかできない、でも囮もアルが立候補しちまった】
【悪い事したかな?】
【俺が望んだことだから、アルが申し訳なく思う事じゃないよ】
【出番無いって言って納得してくれるかな?】
【それは言いようだな、少し後ろから全体を見渡して危険だと判断したら、適宜介入する監督としていて欲しいとかなんとか言えば、あいつもいやとは言わんだろう】
これを踏まえてアルが提案した。
「『マッドベア』と遭遇したら、ティネリアは精霊魔術でけん制、できれば頭部に火をかけて注意を引いて欲しい。
ソニヤは操魔術でやっぱり頭部狙い、そのまま頭蓋骨狙っても固くて厳しいだろうから、眼球や耳の中などの内部までダメージ通せそうな箇所を狙って、それで狩れればよし、無理な様なら僕が操魔術で止めをさす」
「はい」「はーい」
「ジンさんは、僕らの後方から全体を見て、ジンさんの判断で介入したり指示を出したりといった、リーダーとしての役割をお願いします」
「・・戦闘に参加しないでいいのか?」
「その辺はおまかせします、とりあえずは僕達でやってみますんで」
「ああ、わかったよ」
無理なら僕がって、さっきといい今といいこいつ操魔術に相当自信持ってるらしいな、問題はそれが通じなかった時か。
俺の双剣では威力が低くて『マッドベア』を絶命させるような致命傷を与える事は難しい、そうなったら俺が前面に出て引きつけてる間に、あいつらに魔術で仕留めさせるしかないか。
ジンは、明日の自分の立ち振る舞いをこうして決めて、一人シュミレートしていた。
このように、ミーティングはジンを若干不安に、三人を安心させるような内容でつつがなく終了した。
翌日は曇り、雨が降り出しそうには無いが、日差しはお預けといったあいにくの天気。
早朝馬車で出発し、一気にサイライムス村に到着した、日没まであまり時間は無いが、明日に備えて偵察がてらコーリン山へ。
サイライムス村は、麓とはいっても小高い丘にあり、村の周囲は天然の空堀といった感じでさらに、村の外周に柵が張り巡らされているので、魔物が侵入してくることはほとんど無いそうだ。
村を出て少し下るとそこは平原で、ここが『リハーブル』の生息域となっている。
『リハーブル』は段差を登る事が出来ないので、村に侵入してくるようなことは無い、また山の中にいる『マッドベア』は食料が無いとはいえ、この『リハーブル』の群れの中を突っ切ってまで村に来るようなことは無い。
其の為、『マッドベア』は明日という事で、今日はまず『リハーブル』を狩れるか試しに来た。
群れ相手では厳しすぎるので、注意深く迂回しながら群れからはぐれているようなのを探す。
見つけた一匹をとりあえず時間も無いので、攻撃してみる事に。
目の前にアルが出て、それを見た『リハーブル』が突進してくる。
アルが「まあ見てて下さいよ」と言って出て行ったので、ティネリアとソニヤは何の心配もせずに見ている。
だが、ジンは気が気では無かった、なんで単独なんだ? 失敗した時の為にこの二人を横合いに潜ませたりしないのか? 何考えてんだ?
などなど、正気を疑いながらその場で見守っていた。
まずは小手調べとばかりに、エイジが『阿』をアルから見て右から左に、『リハーブル』の左の横っ腹にぶち当てる。
いかにも硬いものに当たった音と共に、『阿』が弾かれる、貫くことは出来なかった、ただ『リハーブル』の外皮も割れてその当った衝撃で横転してしまっている。
なるほどと思いながら、エイジはアルに『阿』を回収させまずは依頼を達成するのに、倒れている『リハーブル』の腹を『嵐』で突き刺して、絶命させるよう伝える。
重くて普通に運ぶのは厳しいので、エイジの操魔術で三人がいる方へ動かし、そこで角を回収する。
そして本命とばかりに、再び見つけた一匹の前に進み出て、今度は『雲海』を全力で先ほどと同じように横っ腹にぶち当てた。
今度は弾かれずに外皮を貫き体内にまで入ったが、残念ながら貫通までは出来なかった、仕方なく『雲海』を一度戻してから再び穴の開いた腹に当てて貫通させ、仕留める。
今度もまた同じようにして角を回収して、今日はもう日が落ちるのでと合図してサイライムス村へ引き上げた。
ジンは、何が何だか解らないがとにかく、皆無傷で依頼の一つを達成し本日が無事に済んだとだけは認識した、沢山の疑問と共に。
なんなんだ? あの若造は一体何者なんだ? 初めての魔物にあーも自信満々でしかも、その通りに危なげなく仕留めただと?
もしやあっちの二人もとんでもないのか? 俺がものを知らないだけなのか? わからんさっぱり意味がわからん。
外から見ている分には、アルに全幅の信頼をおいてすべてを任せて、泰然自若としているように見えていた、中身は別として。
宿屋では、夕食をとった後今日の感想を言い合っていた。
「さすがにアルさんの操魔術は凄いです、まったく出る幕なかったですよ」
「久しぶりにー見ましたけどー、やっーぱり凄かったですー」
「はは、ありがとう、今日のはまあ上手くいったけど、明日はいよいよ『マッドベア』だからね、期待してるよ」
といった三人の会話を聞きながら、ジンはいくら考えても答えが出ないので、食事が終わり部屋に戻った際に聞いてみる事にした。
「アル、お前の操魔術は一体どうなってんだ? あんな威力のは見たこと無いけど、なんか特殊なやり方とかあるのか?」
「そんなのありませんよ、普通ですよ、普通」
「普通じゃねえだろありゃあ、あれが普通じゃ他の奴のはなんなんだ?」
「そう言われても、ずっとあーだったんで他に説明のしようがないんですよ」
勿論、本当は自分では無く自分の中にいるエイジが、自称神様に授けられたしかも強力にしといたとまで言われた代物なのだ。
そんじょそこらのとは訳が違うが、当然そんな事は言えないというか、正確には言っても信じて貰えないのでこうしか答えられない。
ジンとしては、まるで納得いかなかったがじゃあ逆に、なんで自分の操魔術はあんなもんなんだか説明して見ろと言われても、ずっとあーでとしか言えないと気付いたので、それ以上はアルを問い詰めるようなことは無かった。
翌日も曇りながら、時折陽がさすまずまずの天気。
本日は、本格的に山に入りもう一つの依頼対象である、『マッドベア』を狩ることになる。
まずは、昨日と同じように村を出てから下に降り、『リハーブル』のいる平原をできるだけ見つからないようにつっきり、山中に入っていく。
ここからは、アルを先頭に少し離れて後方にディネリアとソニヤ、さらに後方しんがりにジンという布陣で進んでいく。
『マッドベア』の肝というのは、薬師ギルドが色々な薬を調合する時に使うもので、定期的に採取依頼が傭兵ギルドへ出されている。
其の為、討伐隊が組まれて狩る事も少なくないが、比較的各地に生息していてその中では、『リハーブル』の平原を抜けなければたどり着けない、ここコーリン山はあまり狩場として人気がある方では無かった。
なので、人が山中に分け入る時の正式な順路も無ければ、特にこの場所のどこが狩場として優れているかも、判明してはいない。
この世界に詳細な地図などは無い、大きな街の中の施設を示すものや、主要な都市を結ぶ街道や村などを書いた簡略化されたものならともかく、このような人の滅多に入らない山の地図などは、地元のサイライムス村にも無かった。
そんな中、アルは道なき道を迷いもせずに進んでいく。
ディネリアとソニヤは、このような依頼も山の中に入っていくのも、どちらも初めてで不安もあったが、信頼を寄せているアルが先導している事で、なんとか平静を保っていられた。
ところが、ジンはそうはいかなかった、こんな奥まで入っていって大丈夫なのか? 大体あいつはどこへ向かっているのか見当ついてるのか?
もしかして引っ込みつかなくなって闇雲に進んでるんじゃないんだろうな? と相変わらず疑問と不安で一杯になりとても安心などしていられる心境じゃない。
そう思われているとも知らないアルは、エイジと魂話していた。
【本当にこっちでいいの?】
【たぶん、この時期の日の傾きと入った時の方角からいって、このまま進めばもうまもなく、川にあたるはずだ】
【川?】
【ああ、そこならおそらくは『マッドベア』も現れるだろうから、そこで狩る事になる】
【わかった】
ほどなくして、川が流れている少し開けた場所にでた。
「ここに、魚を捕りに来たり水を飲みに『マッドベア』が現れるだろうから、向こうの茂みに隠れて待ちましょう」
「はい」「はーい」
「おっ、おう」
こうして四人は、開けた場所を見渡せる茂みに隠れて、獲物が来るのを待つ事にした。
相変わらずジンの心の中は、疑問が渦巻いている、なんでこいつはここに水場があるって知ってるんだ? なんでこんなに落ち着いてるんだ?
経験が浅く若いやつ特有の気負いとか固さとか全然無いのはどういうわけなんだ? などなど。
ほどなく、潜んでいる場所とは川を挟んで反対側の木々の間から、『マッドベア』が姿を現した。
でかい、元々大型に分類される『マッドベア』の中でも、これは大きな部類に入る、おそらくは4mはあると思われる。
この大きさはいくらなんでも厳しいかなという事で、エイジはアルに指示をする。
【これをディネリアとソニヤに相手させるには、危険すぎる、二人にはもう少し小さいのが出てきたらって事にして、こいつは俺が仕留めるよ】
【わかった】
「あれはちょっと大きくて危ないから、僕が仕留めてくるんで待ってて」
「はい」「はーい」
そう言い残して潜んでいる場所から出て、『マッドベア』を対岸にとはいえ前にして、落ち着いて鉄球を二つ取り出した。
こちらを視認して臨戦態勢をとる『マッドベア』、威嚇の為に立ち上がって両手を広げ砲声を上げる。
「グガァルルル!」
そこに、『阿』を頭の近くへ飛ばして獲物の注意を引きつけ、その間に手元から『雲海』を全速で飛ばして眉間を打ちぬいた。
両目の間から後頭部へと抜けて、『阿』と『雲海』がアルの手元に戻ってくると同時に、『マッドベア』のその巨体が轟音と共に倒れ込んだ。
その死体を、エイジの操魔術で川のこちら側まで運んで、解体して肝を取り出す、ある意味これが一番大変な作業となった。
死んでいるとはいえ、体毛は固くごわごわしていて皮は厚く、エイジに聞いていたとはいえ実際にやってみると、いかにも断ちづらいのがわかる。
肝の場所をエイジに確認しつつ、傷つけないように慎重に体を切り裂き探し当てる、でっかい! 体に見合うおおきさだ、これだとせいぜいもう一・二体くらいが限界かも。
そこに、もう一体今度は反対側では無く、こちら側の前方から近づく個体がいる。
体長は2mはありそうだが、さきほどのと比べると格段に小さい、これならと思いディネリアとソニヤに声をかける。
「これ打ち合わせ通りにやってみて! ちゃんと援護するから落ち着いてね」
「はい」「はーい」
こちらを見つけて一直線に走り込んでくる、走る為に四足になっているので頭部を狙っても爪での防御が遅くなり、攻撃しやすい状況になっている。
そう思えるのは、もし近づかれてもこちらがやられること無く、相手を倒せる絶対の自信がある場合だけである。
普通はさきほどよりも小さいとはいえ、2mを超す魔物が凄いスピードで自分に迫ってくれば、そうそう冷静に対処できるものでも無い。
案の定、二人も硬直して動けずにいる、アルがいとも簡単に倒したのでそれほど緊張してはいなかったが、実際にその迫力を直に感じてしまうと、見ているだけだった先ほどとは、勝手が違っていた。
【アル、ちょっと援護する二つ用意してくれ】
【うん】
そこでエイジは、今度は貫通させないように調整して、『阿』と『雲海』を両の前足にヒットさせつんのめらせた、顔から地面に突っ込む『マッドベア』。
とりあえずは、ある程度の距離が確保できたことで、二人が落ち着きを取り戻しディネリアが精霊魔術、ソニヤが操魔術で遅ればせながら攻撃を開始した。
ディネリアは精神を集中して、『マッドベア』の頭頂部に向けて火の精霊に働きかけ、体毛を燃やすというよりも焦がしていく。
ソニヤの方も、操魔術で飛ばした鎖分銅を、頭部に的を絞って当てている、ただどうしてもパワー不足はいなめない。
このまま続けても仕留めるのは難しい、そう判断したエイジはアルに断りを入れてから、『阿』を眉間に当てて昏倒させ倒れた所を、アルが『嵐』で喉を切り裂き止めを刺した。
「ごめんね、ちょっと無理そうだったから手出しちゃった、どうする? もう一体やってみる?」
「・・・・いえ、たぶん同じ結果になるだけだと思います、悔しいけど実力不足です、いい勉強になりました、ありがとうございます」
「私もー、頑張ったんですけどー、ダメでしたー、もっともっとー頑張りますー」
「うん、じゃあこれ解体したら引き上げようか? ジンさんどうですか?」
「・・あっああ、それでいい」
こちらも同じように肝を取り出して、さっきの死体と合わせて葉っぱや木々を集めて、燃やしておいた。
大きすぎて運べないし、そのままで他の魔物のエサにでもなると、繁殖の手助けになってしまうので、持ち帰らない場合はその場で燃やすのがいいとされている。
ジンは、もう何が何だかわからなかった。
最初の『マッドベア』が出てきた時は、すぐに撤退させようと思っていた、それを「ちょっと大きい」だと? どこがちょっとだ!
あんなの一人で狩るやつなぞ見たことも無い、次のはまだ小さいとはいえ、操魔術一発で意識を刈り取って止めを刺すなんて。
結局あっちの二人は全然必要ないじゃないか! どうなってるんだあいつは! と憤ってはいたものの、誰にもぶつけようも無いので一人もんもんとした、やり切れない気持ちに陥っていた。
このように、無理やりにやらされた依頼は、結局のところアル一人いれば楽勝だったというか、他はまるで役立たずだったと、当人たちだけが落ち込む結果となり終了した。