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第148話 露見 こりゃやべえ

「どうやら、なんとなく理解できたみたいだな?」

「……エイジなの? 本当に?」

「ああ」

「……一体、どうして……、なんで……」


 どうしてガウマウさんがエイジに? どうやって僕の中から外に出たんだ?


「俺にもよく解らないんだが、あのじじいがアルの背中に手を当ててたろ?

あれが、どうやら魂を断ち切る術だったみたいだ。

それでアルの体から切り離された俺は、近くにあるガウマウの体に入ったみたいな

んだよな」


 あの手を当ててたのは、そんな事する為だったのか……。


「あれって操る術じゃ無いの? 

魂断ち切るって、そんなんしたら死んじゃうじゃん」

「ああ、普通はな、ただ殺すんだったらそんな面倒な事する訳が無い。

縛られて自由を奪われてたんだ、ナイフで刺せば終わりだからな。

って事は、あれはそう言う事じゃないはずだ」

「そういうんじゃないって?」

「あん時じじいが「どういう事だ」とか意外そうに叫んでたろ?」

「うん」

「あれは、何か予定してたのとは違う結果になったって事だろう。

だとすると一番可能性が高いのは、アルの体を乗っ取るつもりだったんじゃないか

と思う」


 ! 体を乗っ取る? つまり……、どういう事?


「体を乗っ取るって、……つまりはどうなるって事なの?」

「対象の魂と肉体との繋がりを断ち切り、元の体から追い出して……死体を操る?

嫌、違うな、代わりに自分の魂を入れる、ってとこじゃないかと思う」

「!? いっ入れ替わるって事?」

「どうなんだろうな? そこら辺はよくわからんよ。これも憶測でしかないしな」

「じじいが僕に成りすまして、一体なにするつもりだったんだろう?」

「……よくわからんな、ただ、チョサシャ村でイァイの王族を襲い、この王都オュ

ーに於いてもミガとイァイ両王族に襲撃を仕掛けている。

狙いが王族だとすれば、アルも一応その資格はある訳だしな。

そうなると、アルがイァイの王族だと知っている者がこいつらと繋がってたってこ

ったな」

「あの謁見の場に居た誰かって事?」

「だろうな」


 犯人の目的がよくわからないから、誰もかれも怪しく映っちゃうな。


「まっ、あの親馬鹿ぶりからしたら、レンドルトは違うだろうけどな」

「……これからどうすんの?」

「とりあえず、こいつら運んでここ出よう」

「うん」


 僕とガウマウさんに入ったエイジ? もう面倒だからエイジでいいか。

二人で隠し部屋を出て、元の部屋へと戻った。

僕がナルちゃんを抱いて、エイジがじじいとカプリって女を引きずるようにして。


 そこには、何事も無かったかのようにレイベルさんが直立不動で立っている。

これ、どうにかならないだろうか?

外まで運ぶのは流石にきついので、エイジが警備のヒトを連れてくることに。

僕が呼んでくるよって言ったんだけど、却下された。


「じじいとこの女はいいとして、ナルールが目を覚ましたりレイベルが正気に戻っ

た時に、ガウマウの姿の俺が居るよりアルの方が安心すんだろ?」


と言われてしまったのだ、まあそうだよね、レイベルさんはともかくナルちゃんは

いきなりガウマウさんが居ても、安心できないもんね。


「それより、じじいと女が気付いた時には気をつけろよ。

特に、この二人には何の処置も施して無いんだ。

精霊魔術使われたり、その辺の物を操魔術で飛ばされたら面倒だぞ。

おまけに、アルは今操魔術使えないんだからよ」


 そういやそうだった、鏡無いから見えないけど、僕まだ封印術受けたまんまなん

だよね。


「出来るだけ早く戻ってくるから、ちょっと待っててくれな」

「うん、頼んだ」

「ああ、任された」


◇◇◇◇◇◇


 しばらくして、ミガの兵士を伴ってエイジが戻ってきた。

僕がナルちゃんをエイジがレイベルさんを、そしてじじいとカプリって女を兵士二

人が抱えて捜査本部まで移動する。


 出迎えてくれたのはシャリファという女性で、責任者が出かけている現状ここを

実質預かっているのだと、他の捜査員のヒトに聞いた。

どういうことかと尋ねられて、闘技場からの流れを説明する。

僕が話すより、エイジが話したほうが理路整然としていてわかりやすいんだけど、

いかんせん見た目がガウマウさんなので、別々に連れてこられている手前僕が話さ

ないと不自然になってしまう。


 話が進むうちに、シャリファさんの穏やかな顔つきが段々と険しくなっていく。


「それでは、あの運んできた二人が一連の事件の犯人で、年配の方が事件の黒幕っ

て事ね?」

「詳しくはわかりませんが、じじ……老人はお館様って呼ばれてましたから」


 そんな、シャリファさんと僕との会話の最中に部屋の扉が開けられ、中に飛び込

んで来たのは、ミガ国のジャートル国王!?

なんでこんな所に? 不思議に思い国王を見ると、なぜか僕をじっと見ている。

……えらい見つめてるな、何なんだ? これ。


「あの二人は君が捕まえたのかね?」

「はい、僕と……ガウマウさんと二人でですけど」


 問いかけてきた国王に、エイジの事は言えないのでこう答えておいた。

というか、それよりも国王はここで何してたんだろう?

避難とかしてるんじゃないのかな? もしかすると、他の王族もここに居るんだろ

うか?


「もうよろしいのですか? 国王」

「……嫌、まだ目を覚まさないのでね。

後でもう一度行って事情を聴きたい、今は、……その、新たに二名運ばれてきたの

でね、中断してきたのだ」

「……構いませんが、拘束してあるとはいえ得体のしれない術を使う者が二人増え

たのですから、次はもう少し護衛の人数を増やしていただきますよ」

「心配性だなシャリファは、あの状態では何も出来はしないだろうに」


 シャリファさんが何か言いかけたところに、今度は捜査員らしきヒトがこの部屋

に駆け込んできた。

捜査本部って慌ただしいんだなー。

その捜査員が、シャリファさんに手紙を渡した。


 すぐさま読み始めるシャリファさん、僕らはどうしていいかわからず、ただ部屋

でぼーっと立ち尽くしている。

相変わらず国王は僕をじっと見てて居心地悪い、……あっ、もしかして、僕の額に

ある封印紋が気になってるのかな?

鏡見てないからわからないけど、そーいやあれから解除してもらってないもんな。


 すると、手紙を読み終わったのか、シャリファさんが僕に無言で読んでいた手紙

をスッと渡してきた。

いいのかなと思いつつ読み進める、エイジも僕の横から顔を覗かせている。

えっ? パルフィーナさんが? それをアーセが治した? そして……、ジャート

ル国王の行動が怪しい? 警護の責任者が国王の背中に手を当てていた!?


 さきほどシャリファさんに報告した際に、じじいが僕の背中に手を当てて何らか

の術をかけようとしていた事は知らせてある。

エイジの推測である、対象の魂と肉体とのつながりを断ち切り、代わりに術者の魂

を乗り移らせる術かも知れないとも。


 なるほど、だからシャリファさんは警戒してるのか。

この場にいるジャートル国王が、もしかしたら中身は入れ替わっているかもしれな

いと。


「国王、迎賓館へ参りましょう、及ばずながら我々もお供致しますので」


 突然にエイジがそんなことを言い出した、何? どうする気?

これまでなら、すかさずエイジに話しかけて真意を確認できるのに。

いざ離れてしまうと、何考えてるのか全然わからないよ。


 こうなったら自分で考えるしかないか、うー、エイジが散々自分で考えろって言

ってたのが身に染みるなー。


 まずは、ジャートル国王の中身が犯人側のヒトだと仮定する。

ここに来た目的は何だろう? 捜査の進捗具合の確認か? 

でも、わざわざそんな事するかなー、それとも誰かに会いに来たとか?

シャリファさん? うーん、意味わかんないよなー。

他に誰が……、っとそうか、捕まえたヒトが居る、ってかそれって中身国王か!


 ……もしかして、そのヒトの口を封じようとしたのか?

そこに、じじいとカプリが運ばれてきて、驚いてここに飛び込んできたのか?

なんか段々わかってきたぞ、僕をじっと見てたのは、中身がじじいかどうかがわか

らなくて観察してたんだな。


「そうだな、そうするとしよう、ではなシャリファ、また後でな」


 国王は少し驚きながらも、シャリファさんにそう告げて部屋を出ていく。


 シャリファさんは、視線で僕に何か訴えかけている、多分大丈夫かとかそんなん

だと思うけど、エイジが言い出したことなんで、どんな狙いでそう言ったのか僕も

いまいちよくわかってないんだよなー。


 考えろよ僕、うーんと、エイジが迎賓館へって言ったのは、おそらくは向こうに

いるミガの王族に、ここに居る国王が本物かどうかを調べてもらうためだろう。

じゃあ、なんで国王はそれを了承したんだろう? こっちの狙いが読めなかった?


 三人で捜査本部を後にして、徒歩で迎賓館へと向かう。

国王が、「この者らが居るから共は不要だ」との一言で、国王と僕とエイジの三人

だけだ。

……、なんか邪魔者を消すにはお誂え向きなシチュエーションな気が……。

すると国王が立ち止まり、僕らに話しかけてきた。


「最後に確認だ、……お館様では無いのだな?」

「じじいなら牢屋でまだ寝てるんじゃないんですかね、というか、そう問いただす

ということは、貴方はジャートル国王じゃありませんね?」


 僕がそう答えると、国王は、見た目が国王のこいつは、苦笑というか歪んだ笑い

を浮かべながら、つぶやくように語りだした。


「そうか、……、ならば仕方がない、私一人で成し遂げるとしよう。

なに、理由は何とでもなる。突然にお主らが乱心して私を襲った事にでもするか。

他にもそんな輩が大勢いるから、説得力があるだろう?

ああ、心配せずとも大人しくしていれば一瞬で終わる、それでは、さらばだ」


 すかさず距離をとった、国王の姿のこいつが何事をかをつぶやく。


「古の盟約に従い此処に顕現を命ず、出でよドラゴン、シルバーゴルドよ!」


 指輪から出た白い靄が、巨大な銀色の竜を形作り、こちらを見下ろしていた。


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