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第146話 捕縛 久しぶりの感覚だな

 連れてこられたお城の一室で、人質であるナルちゃんに会う条件として武装解除

を求められ、仕方なく特製ベルトをはずした僕に向かい、老人が再び口を開いた。


「カプリ、他に武器が無いか確認じゃ」

「はっ」


 横に控えていた女性が僕に近づき、体を探って武器が無いかを確かめる為、ボデ

ィチェックをしてくる。


「何もありません」

「うむ、封印術を」

「はっ」


 命じられた女性が僕に封印術をかける、抵抗するわけにもいかないので、なすが

まま受け入れる事に。

封印術をかけられても、エイジならなんとかなるけど、それも武器が無いんじゃど

うにもならない。


「手足を縛れ」

「はっ」

「待て! その前に彼女の姿を見せろ!」

「大人しくしとれば会わせてやる、抵抗するならここまでじゃがどうする?」

「くっ」


 先程の女性に立ったまま手首と足首を縄で縛られる、これじゃ歩けないけど、ま

さかこのまま殺されるんじゃないだろうな?


「用意が出来たようじゃな、それじゃ行くとするか、付いてくるがよい」


 そう言って老人が立ち上がり、本棚がある壁に向かう。

女性が僕の傍から素早く移動し、本棚で何かの操作をしたと思ったら、棚が左右に

開いてその先に隠し部屋の様なモノが現れた!?


 中に入って行く老人、僕はというと女性が僕の傍に戻ってきて、「跳ねて進め」

と背中をどんと押してくる。

そりゃ足縛られてるから歩けないけど、だったら中に入ってから縛ればいいのに。


【アル、念の為確認だ】

【何?】

【ナルールの命を最優先、これでいいんだな?】

【勿論】

【その結果、アルの命が失われるとしてもか?】

【……うん、死にたくは無いけど、僕よりもナルちゃんをってのは変わらない】

【わかった、俺が力になれる場面があるかどうかわからんが、どちらかしか助けら

れないとしたら、ナルールを選ぶよ】

【うん、それでお願い、……ごめんねエイジ、付き合わせちゃって】

【水くせえ、今更だぜ】

【今までありがと】

【あほ、死ぬ気満々か! 縁起でも無い、マルールとアーセが泣くぞ! ってか二

人とも後を追いかねねーぞ、しっかりしろ!】


 なんかちょっと元気出た、こういう時一人じゃないってのはありがたいよ。

そうだ、絶望してる時じゃ無い、最後の最後まで生きる努力をしないと。

そう決意して、老人の後に続いて棚の奥の隠し部屋へと向かった。


 ぴょんぴょんと飛び跳ねながら中に入ると、薄暗い中に明かりが灯り、部屋の中

がはっきりと見えてくる。

居た! ナルちゃんだ、縄で縛られて気を失っているのか、目をつぶっていて床に

横たわっている。

その横に、項垂れているから顔が見えないが、男のヒトが座った体勢で居るのが見

えた。

…………あれっ? 違うよな……、えっでも、もしかしてガウマウさんか?


 後ろで開いていた入口が閉まり、外から閉ざされてしまった。


「おい、僕は言う通りにしたぞ、ナルちゃんを解放しろ!」

「約束通り会わせてやっただろう」

「ふざけるな! 今すぐナルちゃんの縄を解け!」

「静まれ! お主は動けずこちらは何でも出来るという事を忘れるなよ?」

「……何が目的だ?」

「こちらの言う事を聞いて大人しくしとれば、その娘には手出しせぬよ」

「本当だな?」

「ああ、約束してやろう」


【エイジ、僕を殺さないって事はさ、操ろうとしてるのかな?】

【可能性は高いな、もうこいつらがXで間違いないだろう】

【……頼みがあるんだけど、僕が操られてもしも誰かを殺しそうになったらさ、そ

の前にエイジが僕を殺して】

【……わかった、そうする】

【ごめんね、エイジも死ぬことになるのにさ】

【気にすんな、あくまでも最悪はそうするってだけだ、むざむざ操られたりしねー

ように気合い入れとけよ!】

【うん、わかったよ】


 よし、とにかく少しでも生きてここを脱出する確率を上げとかないと。

ナルちゃんは戦力にならないとして、ガウマウさんがなんとか目覚めてくれれば、

力強いんだけどな。

ガウマウさんは、足は縛られて無いけど後ろ手になってるから、手首は縛られてる

のかも。


「ナルちゃん! 起きて! ナルちゃん!

ガウマウさん! 僕です! アルベルトです! 聞こえますか!」


 目の前にナルちゃんとガウマウさんが居るのに、いくら呼びかけても目を閉じた

まま起きてくれない。


「無駄じゃ、妹御の方は強力な眠り薬をかがせてある、半日は目覚めはせんよ」


 ……まだナルちゃんの事を僕の妹だと思ってるのか、……待てよ? 妹の方は?


「ガウマウさんに何をした?」

「ほう、この者を知っておるのか?

こやつは武名を轟かせておったでの、ワシの近衛に取り立ててやろうとしたんじゃ

が、……まったく馬鹿な男じゃ。

壊れてしもうたわ」


 壊れ……、えっ? 何言ってんだ?


「壊れたって、どういう意味なんだ!」

「貴様、お館様に向かってその口のきき方はなんだ!」

「よい、カプリ」

「しかし……」

「この者はな、傀儡術をかけたにもかかわらず何一つ命令を聞かなんだ。

どうやら、必死に抗っておったようじゃな。

それでじゃろう、魂が耐えかねて壊れてしまいよった。

まったく、ここまで手間をかけて連れてこさせたのに、とんだ無駄骨じゃったわ」


 ……魂がって、そん……な……、ガウマウさんが……。


「ガウマウさん! ガウマウさん!」

「無駄じゃと言うに、もう二度と目を覚ますことなどないわ」


 ……ガウマウさん、無念だったろうに、くそっ。

……でも、魂だけで術に対抗するなんて、流石というかなんというか。

よし、僕も続くぞ! こんな奴らのいいなりになんかなるもんか!


「……僕の事も操るつもりか? 僕だってお前らになんか従わないぞ!」

「お主は別じゃ、カプリよ」

「はっ」


! カプリって女性がぐったりしてるナルちゃんに近づき、首にナイフをあてた。


「やめろ! 彼女に手を出すな!」

「保険じゃ、お主が大人しくしとれば何もせん。

その代り少しでも動いたら、妹御の命は無いと思え」

「くそっ!」


 僕はその場で膝立ちの姿勢にされ、じじいは僕の背中側に周ったんで見えなくな

ってしまった。

何するつもりだ? 正面、視界に入るカプリって女のにやにやした顔がむかつく。


 さっき言ってた傀儡術ってやつか? ……でも、別って言ってたよな……。

僕の背中に手が当てられている、じじいかだろうか?

気をしっかり持てよ僕! ガウマウさんに出来たんだ、僕にだってできるはずだ。


 段々と気分がどんよりと落ち込んでくる、なんなんだ? この変な感覚は。

このまま奴らに好き放題やられる他無いのか? 

武器は全部さっきの部屋ではずされちゃったし、この部屋には武器として利用でき

そうな調度品とかが全然無い。


 ナルちゃんは起きる気配が無いし、ガウマウさんはもう……。

ダメだダメだ、簡単にあきらめちゃあ。

このままこうしていても、この後ナルちゃんが無事に解放されるかどうかもわから

ないんだから。


 にしても、一体何してるんだ後ろのじじいは。

…………なんだか吐き気がしてきた、これが傀儡術なのか?

!? なんだ? なんかおかしい、何が起きたんだ?


「どっどういうことじゃ!」

「? お館様? 一体いかが致しま!」


 じじいが騒ぎ出したと思ったら、突然ガコッという鈍い音がして、どさりと目の

前にいたカプリって女が、白目をむいてその場に倒れた!?


「カプリ! 貴様何をした!」


 激高するじじいに向かって、カプリが持ってたナイフが空を飛ぶ。

僕が振り向くと、じじいの眉間にナイフの柄が命中し、昏倒したらしく倒れて動か

なくなった!?


 再びナイフが飛んで、僕の手首を縛っている縄を切っていく!?

手が自由になった僕は、ナイフを掴み足首を縛っている縄も切って自由を取り戻し

た。


「すまんが後ろが見えないんでな、こっちも頼む」


 びっくりして顔を上げると、ガウマウさん!? が話しかけてきていた。


「ガウマウさん! 生きてたんですね」

「話は後だ、こっちの縄を切ったらこいつら縛っちまおう」

「はい」


 僕は、ガウマウさんの後ろに回ると、後ろ手に縛られている縄を切った。

ガウマウさんの手を見ると、指が一本無い!?

倒れているカプリの傍に、ひしゃげた何かが見える。


「あの、ガウマウさん、指は……」

「ああ、操魔術で飛ばしてあの女のこめかみにぶち当ててやったのさ」


 ……あれか! あの時エイジが作り物の指があるって言ってた、なるほどそれを

飛ばしたのか、流石はガウマウさんだ、もっと色々と聞きたかったけどやる事やっ

ておかないとな。

ひとまず、僕とガウマウさんが縛られていた縄を使って、じじいとカプリの二人の

手首と足首を僕がされた様に縛っていく。


 ナルちゃんの縄も切って、何度も呼びかけてみたけど返事が無い。

強力な睡眠薬って言ってたもんな、まだしばらくは無理か。

でも、はー、良かった無事で、これも全部ガウマウさんのおかげだな。


「ありがとうございました、ガウマウさん」

「危なかったな、アル」


 ……………………アル?


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