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第125話 想定 普段から自分で考えないから

「どうするって言われても、・・うーんと、どうもしない・・かな」


 王都オューへ帰り着き、メイプル館のいつもの部屋でセルと向い合せに座ってい

る。

近衛隊副隊長のギリウスさんが尋ねてきた件、おそらくはイァイの国王が用事があ

るからお城へ出頭しろという、まあなかば命令みたいなものだ。

その通りにした場合の、さらに・・、その、もしも僕が王様の子供だったとしたら

どうするのかって質問だと思うんだけど。


「どうもしない? ・・具体的には? おそらく後を継ぐように要請されると思う

が、そん時なんて答える気なんだ?」

「えーっと、そんな気無いんで結構ですって」

「・・で?」

「? そんだけだけど」


 はぁーと大きなため息をつかれてしまった。


「なんの対策も立てて無いのか?」

「うん、えっ? ダメかな?」

「そらーな、「後を継いで欲しい」「嫌です」「じゃあいい」、そんな簡単に済む

と思うか?」

「やっぱりそうかな?」

「そらそーだろ」


 そうは言っても、どうすればいいんだろう?

僕の気持ちは辞退するで決まってはいるけど、確かにセルの言う通り簡単にいくと

も思えない。

じゃあどうすればいいかっていうと、何も思いつかないんだよな。


「相談したんだろ? なんて言ってたんだ?」


 セルが、こめかみと指でとんとんとしながら聞いてきた。

寝ているとはいえ、アーセが居るんで一応伏せているが、エイジにって事だろう。


「前に少し聞いたんだけど、なるようにしかならんだろうって」

「・・それだけか?」

「うん、それだけ」


 なんか話してたら段々不安になってきた、僕明日どうなるんだろうか。


「一応確認しとくけど、その気は無いんだよな?」

「うん、全然無いよ」

「そうするとやはり、断る理由にそれなら仕方ないってなにか示す必要があるな」

「そうだよね、・・頭悪いからとかならいけるかな?」

「無理だろ、酷いようだが頭の出来は関係無いんじゃないか?

必要とされてるのは血だからな、かえってそんな事言えば、大喜びで城に監禁され

て勉強漬けの毎日にされちまうぞ」

「うへえ」


 まいったなー、もうどっかに逃げちゃおうかなー。


「やっぱり一番効果的なのは、征龍の武器関連だろうな」

「集めて廻るからって言えば、あきらめてくれるかな?」

「わからん、最悪危険だから止めてくれって言われる可能性もある。

だが、他に使えそうなのは思いつかないな」

「そうだよね・・、わかった、明日はそれでいってみる。

それでダメなら、僕にも考えがあるよ」


 ・・正確には、僕にはじゃないけど。


「なんだ? その考えって」

「国王になる、なってからどうにかする」

「どうにかって?」

「わかんない」


 と、ここでセルの真似をして、僕もこめかみを人差し指でとんとんしてみた。


「前に言われたんだよね、どうするかは僕の人生だから僕が決めるようにって。

だから、こういうケースではどうしろってのは一切言ってくれないんだ。

でも、こうも言われたんだ、一旦決めたら出来る限りの協力はするって」

「・・決断力があるんだか他人任せなのかよくわからんな」

「まずは征龍の話をして、それで無理なら後は出たとこ勝負でいくよ」

「ふぅー、わかったよ、細かい事は明日色々判明してからだな」

「うん、一番いいのは違ってるって事なんだけどね」

「まったくだ、さて、付き合わせて悪かったなアル、そろそろ寝るか」

「そだね、ふぁーあ、もう限界だよ」


 それぞれのベッドに潜り込む、僕は疲れてたのもあり横になるとすぐに意識を手

放してしまった。


 翌朝、何か違和感を感じて目が覚めた。

んっと思いつつ目を開けると、何故か肩にアーセの顔が乗っかってる。

!? 思わずそちらの方向へ顔を向けると、鼻がくっつきそうな程近い所にアーセ

の顔があった。


「どっ、どうした? アーセ」

「おはよ、なんでもない」

「? いっいや、なんでこんなにくっついてるんだ?」

「んー、いつもやってる」

「いつも!? そんな・・、これまで一度も気づかないなんて」

「にぃは寝ると朝まで起きない」


 という事は、いつもは僕が寝た時にやってるのかな?

昨夜はアーセが先に眠ってたから、やらなかった分って事か。

それはいいとして、段々意識がはっきりしてくると自然とくっついてる腕にアーセ

の感触が・・起き上がろう。


 少し体を離して上体を起こした、なんかアーセが不機嫌そうだ。

頭をぽんぽんとして誤魔化してみる、・・いまいち効果無さそうだな。

気まずくなり、ベッドを降りてトイレへ。


【おはようアル、何してんだ?】


 そんなタイミングでエイジに声をかけられた。


【エイジー、おはよ】

【なんだって朝っぱらから、アーセはあんなにひっついてたんだ?】


 僕は、昨夜オューに着いてからの話を一通りエイジに説明する。


【ほー、ついにお呼びがかかったか】

【あのさ聴きたいんだけどさ、前に僕がもしも王族だったらって話した時】

【ああ】

【お城に入れられちゃうんじゃないか、自由が無くなるんじゃないかって言った時

に、しばらくはそんな事にはならんって言ってたじゃない】

【だろう、ってな、おそらくはって話だ】

【それ、どういう意味? 昨夜セルと話したんだけどさ、逆らえない気がして不安

になってきちゃったんだ】


 セルには出たとこ勝負って言ったけど、前もってわかってることあれば聞いてお

いた方が、対策も立てやすい。


【アルが仮に国王の息子だって判明した場合、向こうはアルを王族の一員として迎

え入れ、次期国王としての教育を施そうとするだろう】

【うん】

【但し、それはアルに適正が認められた時にはという条件が付く】

【適正? 王様になるのにそんなのいるの?】


 なんか条件とかがあるのかな?


【知識は後からいくらでも詰め込める、それよりも性質の方を重く見るだろう】

【性質って・・、性格じゃなくて?】

【それもある、だがそれよりも性質だろうな】

【・・よくわかんないんだけど、性質ってどんなの?】

【例えばそうだな、なにかに直面した時に前に出るか後ろに引くかとか、金に綺麗

か執着するかや、女癖とかだな】

【女癖って・・、お金はまあわかるけどさ】

【異性関係は王族としては大事だぞ、最悪男が好きだなんてのを選んじまったら途

絶えちまうからな】

【僕は普通に女のヒトが好きだよ!】

【知ってるよ、俺はな、でも向こうは知らないだろう?】


 ・・まあ、マルちゃんとの事はエイジとナルちゃんしか知らないだろうけど。


【で、僕の性質に何か問題あるって事なの?】

【いや、女性関係以外は特に問題点は無いと思われているはずだ】

【ちょっと待ってよ、女性関係って何にも問題起こして無いよ?】

【多分無さ過ぎなんだと思うぞ、アルに関する報告をしてるのはアリーだろう?

彼女が来て以降、アルの近くにいる女性って誰がいる? 

アルールについては寮に入ってるから、ほぼ面識が無いはずだ。

そうなると、パーティーメンバーであるシャルとアリー自身、ナルールにラムシェ

と『雪華』の三名の計七名が該当するはず。

ところが、これだけ綺麗所が揃ってるにもかかわらず、特に何にもないときてる】


 そんな事言われても・・。


【まあ、俺が多分って言った根拠はこれじゃ無いけどな】

【なんなんだよもう! からかわないでよ!】

【ごめんごめん、そう怒るなよ、性質には問題無いって判断が下されるだろう。

となると向こうは受け入れ体勢だと思われる。だから、こっちからの拒否できるだ

けの根拠が必要だ。それにはダンジョン探索が有効だろう】

【探索・・、征龍の武器を探すって事だよね?】

【そうだ、前に言ったろ? 征龍の武器は六つでダンジョンも六ヶ所、おまけに不

思議アイテムも六個ときてる。この数字の一致が、各ダンジョンの最下層にブツが

ある可能性を示しているって】

【うん、それは聞いたけど】

【ヨルグのダンジョンにはあった、ここのダンジョンにもあれば信憑性は高まる。

そして俺たちは、最下層へ到達する準備ができているんだ。王家としては、何より

も欲しい情報だろうよ。だったら、その確認がとれるまでは身柄を拘束されること

は無いんじゃないかってこった】


 なるほど・・。


【でもさ、それ他のヒトにやらせるって手もあるんじゃないの?】

【ああ、だが俺たちの方法は真似できないだろ? 他の方法を見つけなきゃならな

いんだ。そして、それがそう簡単に見つかるんだったら、あの依頼はとっくに達成

されてる筈だろ? 未だに到達の報告が無いって事は、俺たちだけが唯一の可能性

ってこった】

【少なくとも、それまでは大丈夫って事?】


 それまでっていっても、このイベントが終わったらダンジョン潜ってだから・・

もうあんまり時間無いんじゃ。


【それだけじゃ無い、もしそうなったら他の四つを調べるまでは、猶予がもらえる

かもしれん】

【えっ? 他も?】

【ああ、おそらくヨルグのダンジョンでの最下層への到達の道筋は、アリーが報告

しているだろう。あれは、大人数で対策を施せば方法は違ってもなんとかなる。

だが、あくまでも事前にすべてがわかっていてだ。わかっていれば、落とし穴を回

避する為に組み立て式の梯子を用意するとか、9層に備えて戦力を十二分に用意す

るとかの戦略を練れる。しかし、各地のダンジョンはそれぞれで構造が異なる。

初見での攻略はかなりの困難を要するだろう。そこへいくと俺たちは少々特殊だか

らな。色々応用が効く手札があるんで、対応が広くとれる】


 言われてみれば、僕らのパーティーってかなりバランスいいかも。

まあかなりな部分、エイジの操魔術に頼ってるけど。


【王家としても、征龍の武器の所在は把握しておきたいだろうし、出来れば手中に

したいとも思ってる筈。であれば、俺たちの有用性を認めさせてその任に就かせる

ってのはどうだ? そっちの方向へ誘導できれば、しばらくは拘束されないんじゃ

と思ったのさ】


 ・・という事は、僕がその辺をアピールしないとならないって訳か。

自信無いな・・、あーあ、違ってくれればいいんだけどなー。

でもこれで、一応そうだった時のもっと言えば、拘束されそうになった時の言い訳

というか、躱し方がわかったって事か。あーひとまず安心できた。


 残る問題は、国王様がどういうヒトかって事だよな。


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