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第124話 訪問 未だ休息中

 たどり着いた王都オューの東門、街の中に入る手続きがえらく細かい上に、いつ

もなら担当のヒトが二人なところ、何故か五人もいて色々と聞かれた。

こうなると、普通じゃ無いのがまるわかりだったので、こちらから何があったのか

と聞いてみると、返ってきた答えは想像だにしていないモノだった。


 はっ? イァイの王族が襲われた? ヒトが火の玉になって降ってきた?

驚きつつ、僕らが見てきたヒョウル村に住民が居なくなっていた事を告げる。

慌ただしく動き出した担当さん達、僕らはメイプル館に宿泊する事を伝えると、何

かあったら事情を聴くからと言われ、ひとまずは解放してもらえた。


「なにそれ? ヒトが降ってくるってどこから?」


 シャルが疑問を呈すが、僕らの中で正解を知る者はいない。

メイプル館への道すがら、街は夜遅い事もあり静かではあるものの、そこかしこに

兵士や警ら隊員の姿があり、どこかものものしさを感じる。


 それはそれとして、僕らは限界を迎えていた。

この王都で何が起きたのか、詳細を知りたい気持ちは勿論あるのだが、とにかく今

は僕達全員の気持ちは一つ、ご飯が食べたい、それだけだ。


 元々、今日の夕飯はヒョウル村に着いたら宿屋で食べようと、何も用意していか

なかったので、お昼に馬車の中で簡単にパンと干し肉を食べただけで、それ以降は

何も口にしていなかったのだ。


 東門から入って馬車で移動していく、少しでも早くお店に入って食事にありつき

たかったが、どこも一杯で中々入れるお店が見つからない。

どうやら通常のお客さんの他に、兵士や警ら隊員が交代で食事をしているらしいの

だ。


 そんな感じで、空腹を抱えながら中央通りまで来てしまった。

ここまで来るともう途中で寄らなくてもいいかと、左折してメイプル館を目指す。

ようやく着いて、馬車を停め中へと急ぐ。


「あらっ? アルベルトさん、皆さん、今日はお戻りにならない予定じゃなかった

ですか?」


 給仕のいつも僕らの対応をしてくれる女性、ベルフィラさんが手を止めこちらに

来てくれた。

前もって、依頼で二日は空けると話してあったので、不思議そうに尋ねてくる。


「いやー、急遽取りやめにして戻ってきたんですよー」


 二日不在にするとは言ってあったが、この時期に再び宿をとるのは難しいだろう

という事で、宿泊自体は料金を支払って継続させているので、泊まる事自体は問題

無い。

早速五人分の食事を注文する、良かった、今日はちゃんと残ってるみたいだ。


 話す事は色々とあったが、とりあえずお腹が落ち着くまではそれどころじゃ無い

とばかりに、食ベている間は皆無言で食欲を満たしていた。

ふぅー、やっぱりお腹が一杯になると、気持ちに余裕が出てくるな。


「・・あのさ、んーっと・・お父さんに知らせないでいいのかな?」


 最初に口を開いたのは、馬車の中でも「なんで?」とか「どうして・・」とつぶ

やいていたシャルだった。

どうやら、僕らが見てきたヒョウル村がもぬけの殻になっていた事態を、この国の

宰相であるお父さんに知らせた方がいいんじゃないかと思い、セルに尋ねているみ

たいだ。


「大丈夫だろ、これだけの事件だ、きっと今も真相を解明するのに忙しくしてる筈

だから、ちゃんと東門から話が伝わってるよ」

「でもさ、直接の方がいいんじゃないの?」

「今回はあんまり意味が無いだろう、詳しく話そうにも誰一人いなかった以外、俺

らにもわかってる事が無いんだから。それに、どうせ家には戻っていないだろうか

ら仕事場へ行かなきゃならない。当然、例え誰であろうと入口は厳しいチェックが

行われる。それだけ時間かかってりゃあ、東門から報告が伝わる方が早いよ」

「・・・・うん」


 お父さんのフェザードさんには、自分の事で反発はあってもそれとは別で、大変

そうだから手伝ってあげたいってところかな。

でもまあ、セルの言う通り僕らの方から追加で話す事無いしなー。


 エイジは、とりあえず荒事は無さそうだとの自身の見解から、休眠してしまって

るんで意見聞けないし。

ただ、引っかかってる事あるんだよなー、聞いてみよっかな。


「ちょっと思ったんだけどさ、チョサシャ村でもここでも、なんで敵は街に居る時

に襲撃してくるのかな? 街道を移動している時の方が、援軍も来なくて成功率高

そうな気がするんだけど」


 これが不思議だった、チョサシャ村はまだいいとしても、オューは王都だ。

普通なら未然に防がれるはず、そんな中襲撃出来たこと自体凄いと思うけど、だっ

たらなんでこんな守りが固い所でやるんだろう?


「目立つからじゃないのか? 敵についてはまだわからないことだらけだが、数が

多いのはチョサシャもここで起きた件も共通してる。街道沿いは、しばらく前から

イァイの王族が通るってんでどこも整備されてて、身をひそめる場所が無い。それ

で、仕方なくってとこじゃないかと思うが」

「そっかー」


 なるほど、見つかりやすいって訳か。


「お義兄さん、少し宜しいですか?」


 アリーが話しかけてくるなんて珍しいな、なんだろ?


「何?」

「アーセちゃんが限界みたいなんで、お話は明日にしませんか?」


 えっと思い隣の席を見ると、アーセの首ががくっと折れて項垂れる格好になって

いて、ちょっとゆらゆらしてる。

あー、夜遅いしご飯の後少しお酒飲んだからか、限界だったんだなー。


「うん、そうだね、今日の所はこれでおひらきとしようか」


 どうやら、今夜の内に話さなきゃならない話しってのは無さそうだ。

皆疲れてるし、じゃあ部屋に引き上げようとアーセを起こして階段へ向かっている

と、入口が開いた音が。

ベルフィラさんが、「今日はもう」と断っているのが聴こえる。


 ちらっと入口の方へ眼をやると、全身金属鎧のひげを蓄えた男性が・・あれっ?


「アルベルト殿!」


 ばっちり目があって、名前を呼ばれた。


「ギリウスさん、どうもこんばんは」


 近衛隊副隊長のギリウスさんだった、ドゥノーエルで再会してそんなに間が無い

内にまた会うとは。

とりあえず引き返して、入口へ歩いていきギリウスさんと相対する。


「良かった、実は遅い時間ですので翌日に伝えていただこうと、アルベルト殿に伝

言を頼もうと思っていたのですが、お目にかかれるとはありがたい」

「? 僕にですか? なんでしょう?」


 ・・このヒトが僕を名指しで尋ねてくるとなると、エイジの予想通りかな?


「急な話で申し訳ないのですが、明日お城へお越し願いたいのです。今ここでは明

かす事は出来ませんが、是非に会っていただきたい方がおりまして。アルベルト殿

にも予定がおありでしょうが、曲げてお願い致しまする」


 やっぱそうか、確か明後日から諸々のイベントが始まるから、空いてるのが明日

しか無いって訳だ。

こっちの都合はどうでも、連れて行くって感じだな、まっ逆らう気は無いけど。


「わかりました、伺います」

「おぉ! ありがとうございます、突然の申し出にも拘らず、色よい返事をいただ

き助かりました。では、明日11時に迎えの馬車を寄越しますので、それにてお越

しください」

「失礼、少々お待ちを、アル、ちょっと」


 話がまとまったところで、セルから物言いが入った。

イァイ側から呼び出しがあるだろうことは、エイジの話で予測してたからはなから

行くつもりだったんで問題無いんだけど、なんだろう?


「アル、単独行動厳禁だ、皆で決めたろ?」


 あーそっちか、そーいやそーだった。

近づいてきたセルと小声で会話する、・・そーなると、どうなるんだ?


「俺らも付いてくよ、なーに四人ばかし増えても手狭になるって事はないだろ?」


 軽い口調で言ってるけど心配してくれてるんだな、ありがたい。

僕は、再びギリウスさんに向き直り、お願いしてみた。


「あのギリウスさん、僕がパーティーを組んでる四名を同行させたいんですが、ど

うでしょうか?」

「・・確か妹さんとあちらの女性とは、ドゥノーエルにてお会いしましたな。

して、そちらの『二本』のお二方はどちら様でしょうか?」


 ギリウスさんの視線が少し鋭くなった、そんな中セルが一歩前に出て自己紹介を

はじめる。


「これは申し遅れました、私はミガ国宰相を務めますフェザード=ワイズナーの不

肖の息子でセルフェス=ワイズナーと申します。こちらは妹のシャルフェス=ワイ

ズナーです」

「・・なんと、フェザード殿のお子達でしたか、いやこれは失礼しました」


 おぉー、セルの優雅な所作での挨拶は警戒心を解くねー。

ギリウスさんも、宰相の息子と娘とわかって、厳しかった視線を和らげて恐縮して

いる。


「わかりました、身元も問題無いようですので私からその様に話をしておきます。

ただ、謁見の際にはアルベルト殿以外の方々は控えの間にてお待ちいただくことに

なると思われますので、それについてはご了承ください」

「はい、それでは明日よろしくお願いいたします」


 ・・・・謁見って言っちゃっちゃあ、誰に会わせるつもりなのかがバレバレなん

だけど、はは。


「夜分遅くにお騒がせしました、ではアルベルト殿皆様これにて失礼いたします」

「はい、お気を付けて」


 はぁー、なんかどっと疲れたな。

隠し事できない性質なんだな、向いて無いだろこの手の事は。

そもそも、ギリウスさん副隊長なのになんでこんな伝言役なんてやってんだろ。

僕と面識があるから? いやいや、王族のお呼びって知らせれば普通従うよね。


 っとアーセが本当に限界みたいだ、早いとこ部屋に行くか。

何か聞きたそうなシャルに「明日ね」と言ってそれぞれの部屋へ。

アリーの、「アーセちゃんはお疲れでしょうから、私が体を拭いてあげましょう」

という欲望丸出しの申し出を退けて、アーセは僕らの部屋に入ると服を着たまま器

用に手を入れて体を拭いていく。


 そうして、「にぃ、おやすみ」と言って早々にベッドに横になってしまった。

途端にすやすやと寝息をたてはじめる、よっぽど眠かったんだな。

じゃあ僕も寝ようかなと思ったら、セルに話しかけられた。


「遂に来たってとこだな、さてアル、聞かせてくれないか?」

「えっと、何を?」


セルには、ドゥノーエルで話してあったんでこの展開は予想してたと思うけど。


「もしもそうだった場合、今後どうするのかをさ」


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