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第115話 苦手 値踏みしてるって感じか

 軽い食事を終えた僕らは、メイプル館を出て依頼の報告に出発した。

すでに汗ばむほどの日差しに照らされながら、馬車に乗って一軒ずつ訪ねて行く。

納品する魔核鉱石の樽が重くて、メンバーを分けて向かうと荷卸しが大変なので、全員で一緒に向かう事にしたのだ。


 まずは、一番近いアーミトン商会へ、続いてスェスエル商会とまわり、最後に商人ギルドへ。

全員でというのは効率は悪いが、さきほど出来るだけまとまって行動すると決めたばかりなので、これはこれでよし。

各所へ品物を納め、依頼書に完了した確認のサインをもらい、後は傭兵ギルドへ報告へ行くだけ。


「あのさ、悪いんだけど一か所行きたいところあるんで、付き合ってもらっていいかな?」


とその前に、早めに済ませた方がいいかと思いホーエル商会へ行く事に。

何も全員で向かう事も無いという事で、女性陣三人には近くでお茶してもらい、僕とセルの二人でお店に向かった。

丁度商会のお店が立ち並ぶ通りに居るので、それほどかからずに到着。


 今はもう、頼まれていた荷物を降ろした後なので、荷物番もいらない。

道すがら、セルにはさきほどのエイジの話を伝え、なんでここに寄ったのかの説明は済ませておいた。

二人でお店に入ると、店員さんの元気のいい出迎えが。


「いらっしゃいませ! 本日はどのような品物がご入り用ですか?」


20代だと思われる背の高い男性が、店に一歩踏み入れた途端声を掛けてきた。


「あの、僕はアルベルトと申します。

ヨルグのビンチャーさんから、オューへ着いたらこちらに顔を出して欲しいと言われたんですが」

「はい、確認してまいりますので少々お待ちください」


 そう言うと、その店員さんは奥に引っ込んでしまった。

別の店員さんに勧められて、店内にある椅子に腰を下ろして待たせてもらう。

その間、送ってもらう手紙を書いていると、奥から先ほどの男性と一緒に女性がこちらに歩いてきた。


「あなたがアルベ・・、あらっ? セルじゃない?」

「やあ、久しぶりジェニー、君と再会できるなんて嬉しいよ」

「相変わらずね、あっとごめんなさい、あなたがアルベルトさんですね?」

「はい」

「初めまして、私はジェニファー=ヌイエス、ここで仕入れを担当しています」


 ジェニファーさんは、どうやらセルとは旧知の仲らしい。

という事は同じ歳くらいなのかな? 

そんな若さで大手の商会の仕入れ担当って、もの凄い事なんじゃないのかな?


「僕はアルベルト=ロンドと申します、ヨルグのビンチャーさんにはお世話になってます」

「ふふ、聞いていた通り礼儀正しいんですね」


何を聞いてるんだろう? というかなんか用件あるのかな?


「詳しい事は何も聞かされていないんですが、何か僕に用事でもあるんでしょうか?」

「ええ、あなたがいらしたら是非やっていただきたいと思っていた依頼がありまして」

「はあ」

「ふふ、そう警戒なさらずに、至って普通の依頼ですので」

「あの、それでしたら何も僕じゃ無くてもいいんじゃないですか?」

「あら? 普通の依頼じゃ物足りませんか?」


僕が答えに窮していると、セルから助け舟が出された。


「ジェニー、そういじめないでお手柔らかに頼むよ、アルはウチのリーダーなんだからさ」

「へー、自信家のあなたが誰かの下につくなんてね」

「アルと一緒に行動するようになって、最近自分は副官タイプが合ってる気がしているよ」

「益々興味が湧くわね」

「ジェニー、君にはもっと僕の事を知って欲しいけれど、それは今度食事でもしながらゆっくりと。

今日の所はこの辺にして、そろそろ仕事の話に入らない?」


ジェニファーさんは、肩をすくめる様な素振りの後、一枚の依頼書を取り出した。


「お願いしたいのは『タクセル』の部位収集、詳しい事はここに書いてあります。

場所はキオア山周辺、期限は特に無いですが出来るだけ早い方が望ましいですね」


 僕に向き直ると、極めて事務的に依頼書を差し出しながら発注してきた。

キオア山か・・、確か『ヌージー』の卵の採取で行ったな。

となると、ヒョウル村へ行く事になるから最低でも往復で二日はかかるって事か。


「あの、他のメンバーとも相談して決めたいんですが、10分ほどいただいてもいいですか?」

「そうですね・・、ええ、それくらいでしたら構いませんよ」

「じゃあ、また少ししたら参りますので、一旦失礼します」


 そう告げて、僕とセルは店を出て三人が居るお茶屋さんに向かった。

依頼を受けることになるとはなー、でもまあ商会に行くんだからこの事態は予想できたか。

そーなると全員で行くべきだったなー、そんな事を考えていると、隣を歩いているセルが何かを考え込んでいるように見えた。


「セル、どうしたの? 何か気になる事でもあった?」

「ああ、ちょっとな、彼女アルが10分欲しいって言った後、なんてーか少し言いよどんでた感じだったろ?」

「あー、うん、言われてみればそんな感じだったかな」

「なんかちょっと引っかかってな」

「何が?」

「彼女、依頼の期限は無いって言ってたろ? 

その割には、たかが10分くれって言ったのを、出来れば今ここで決めて欲しいって感じだったなってさ」


 ・・言われてみれば、でもなんでなんだろう?

大体、僕にやってもらいたい普通の依頼ってなんなんだ?

すぐ近くだった事もあり、答えが出ない内にお茶屋さんに到着してしまった。


「にぃ!」


僕の姿を見たアーセが、いち早く声を掛けてくる。


「もう終わったんですか? 早かったですね」

「それで? 一体なんだったの?」

「それが、依頼の発注を受けてね、どうするか相談しに来たんだ。

決めたらまた向こうに戻るって事で、10分だけ時間もらってきたんだよ」


依頼書を見せながら、問いかけてきたアリーとシャルそれにアーセの三人に内容を説明する。


「場所は前に『ヌージー』の件で行ったキオア山、だから少なくとも往復で二日は拘束される。

それで、三人の意見を聞いてからと思ってね」

「アーセは大丈夫」

「それなら、私も当然問題ありません」

「キオア山って事は・・、でも皆で行動するって決めたし・・、はー、わかったわ」

「セルはどう?」

「俺も問題無い」


僕も特に断る理由は無い、というかこれから手紙頼みたいんで、出来れば受けておいた方が言い出しやすい。


「ちょっと考えるから待ってて」


そう皆に告げて、エイジに話しかけてみた。


【エイジ、そんな訳で受けようと思うんだけど、何か問題ある?】

【・・アルがそう決めたならそれでいいよ、ただ山って事は飛んで行くんだろ?

だったら、俺の覚醒時間は計算して指示してくれな】

【うん、わかったよ、あっそういえば『タクセル』ってどんなの?】

【それなんだがな、結構やっかいだぞ】

【えっ? どういう意味?】

【今はあんまり時間無いだろ? 後でゆっくりな】

【・・気になるけどしょうがないか】


「うん、僕もいいと思うんで受けよう。

そうなると、出発をいつにするかなんだけど。

今日これから出れば、遅い時間になるけど今日中に到着する。

それなら上手くいけば、明日には戻って来れる。

対して、明日出発するとなると、戻れるのは早くても明後日になる、さてどっちにする?」


 話し合った結果、昨夜戻ったばかりだし今日くらいはゆっくりしようという事で、出発は明日にする事になった。

三人に、「じゃあ返事してくる」と告げて、セルと二人で歩き出す。

あっと、手紙を出す件を三人に教えて無いな、んーまあいいか。


ホーエル商会のお店に戻ると、ジェニファーさんが店頭で待っててくれた。


「お待たせしました、話し合いの結果受注させていただくことにしました」

「そう、良かった、よろしくお願いしますね」


 にっこりほほ笑むジェニファーさん、なんだろう?

美人さんには違いないんだけど、なんか違和感がある。

短髪のアッシュブロンドに蒼い瞳、整った目鼻立ちでどこか冷たい印象を受ける。


【おー、こりゃすげえ、見事なまでに目が笑ってねーな】


突然エイジが話し出した、そっか、なんか変だと思ったら目か。

ってえっ? どういう事? 僕なんかした?


【エイジ、どうなってんの?】

【まあまあ、その辺は後でゆっくりって事で、とりあえず手紙の件頼んじゃえよ】


そうは言われてもなー、まったく好印象の無い感じで引き受けてもらえっかなー。


「あの、ジェニファーさん、ひとつお願いしたい事があるんですが」


 ヨルグに手紙を届けてもらう件は、何故か二つ返事で引き受けてもらえた。

とてもありがたいんだけど、さっきの態度を見るとなんか裏がありそうで怖い。

とにかく済ませてしまえと手紙を渡そうとしたが、笑われてしまった。


「いくらなんでも、普通のサイズの手紙は送れないですよ」


 なんでも、それ専用に飼いならした鳥型の魔物に運ばせるらしい。

これにと渡された用紙に改めて手紙を書いていく、・・なんかじっと見られてるような。

うー、なんか居心地悪いなー、エイジに色々聞きたいとこなんだけど。


「どうです? 書けましたか?」

「はい、これでお願いしたいんですが」

「ええ、じゃあ責任もって送りますね。

そうですね、今日中にはヨルグに着くと思いますので」

「!? そんなに速いんですか?」

「元々スピードに特化した『ヤッスル』の中でも、特に選別し調教した個体ですからね」


【エイジ、『ヤッスル』ってどんなの?】

【鳥型の魔物で、特徴は確かに飛行速度がめっぽう速いって事だな。

ただ、あまりに速すぎてよく木や山肌に追突して死んでたりする。

調教したって事は、その辺の事故を防ぐためにも、ある程度の高度を保って飛ぶように訓練したんだろうよ】


「調教っていうのは、やっぱり高度を保つようになんですか?」


エイジに聞いたばっかりだけど、ちょっと気になったんで聞いてみた。


「!? えっええ、そうですね・・」


・・かっ会話が続かない、とここでまたもセルが助けてくれた。


「ジェニー、僕らは明日出発する事にしたんで、早ければ明後日の夕方に寄るから。

今日は他にも行くところがあるんで、この辺で失礼させてもらうよ。

名残惜しいけど、また今度ゆっくり酒でも飲もうよ」

「ええ、それじゃ依頼の件よろしくお願いね」


 こうして僕とセルは、ホーエル商会を後にした。


【エイジ、色々聞きたいんだけど】

【しかし典型的な委員長タイプだったな、あのジェニファーってのは】

【いいんちょう? なにそれ?】

【なんてーかな、品行方正で真面目で学校の成績が優秀。

だがその反面、融通がきかなくて頭が固く柔軟な発想が苦手な感じかな】


 あーまあ確かにそんな感じだったかな、・・ってそうじゃなくて気になる事沢山あるんだけど。


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