プロローグ
なんのコスプレだ?
深夜自宅で、何の気無しにネットサーフィンをしている時に、ふとその画像が
目に留まった。
秋葉原あたりだろうか、路上で撮られたとおぼしきその画像に写っていたのは、
尻尾の生えたお姫さん?
元ネタってなんだ?
などと、とりとめのない事を考えていた。
まあでも、そのうち分かるだろう。
このご時世、積極的に調べなくても、こうやって日常的にネットの海を漂って
いれば、いつの間にか正解が飛び込んでくるってもんだ。
方法は色々だが、未知が既知に変わる瞬間ってのは、何とも言えない満足感が
ある。
知識欲が満たされるというか、こたえられない充足感がある。
それならば、家の中でなくアウトドア派にでもなれば、それこそ今まで知らな
かった色んな事に出会う機会も多いってもんだが、そこはそれ、向き不向きっ
てのがあるし、自分のやりたい事柄を出来る範囲でやれればそれでいい。
などと考えつつ、パソコンの電源を落して眠りについた。
サラリーマンの朝は早い。
もっとも、始業時間ギリで良ければ、まだ余裕はある。
だが、本格的に仕事を始める前に、済ませておきたい諸々を処理するには、
多少は早い時間に出社しないと実務がまわらない。
弊社は、ブラックという程では無いが、それほどヒマな会社ではないのである。
いつもの様に、朝のホームで電車を待つ。
あー、今日もまたギュウギュウ詰めの満員電車に揺られて、長い長い一日が
はじまるのかー。
などと、現実逃避一歩手前位の後ろ向きな思いを抱きながら、俺は反射的に
女性の腕をつかんでいた。
通勤客でごった返している駅のホームを、急ぎ足で歩いていた女性がヒールが
折れたのか、突然俺の目の前でバランスを崩して、線路の方へ倒れ込んだのだ。
俺は、咄嗟に腕をつかみ、ホームの方へ引き戻した。
しかし、いきなりだったので、こちらの体勢が不十分で、反動で俺が線路の方
へ落ちてしまった。
俺の意識は、そこでブラックアウトした。
◇◇◇◇◇◇
次の日の新聞に、小さな記事が載った。
早朝、某駅のホームでサラリーマンが女性を助け、線路へ落下し命を落したと。