5.謎の多い理央先輩
黒水先輩とすみれちゃんで一緒に帰る約束をしていた。
しかしすみれちゃんは部活の憧れの先輩に呼ばれたということで、私と黒水先輩の二人で待っていた。
私達の1-Aの教室で待っていたのだけれど、中々すみれちゃんは帰ってこない。
「すみれちゃん、遅いですね」
「そうだね」
会話終了。
話がなかなか続かなくて、とても気まずい空気になってしまった。
一度だけ黒水先輩に聞きたいと思っていたことがあった。
それはどうして私なんかを好きになってくれたのか……どうしても気になって仕方なかった。
だって私は飛び抜けて美人というわけでもなければ運動ができるわけでも何かに詳しいわけでもない。
こんな平凡な女の子を好きになるより、一緒にいるすみれちゃんを好きになるはずだ。
聞いてみよう。
そう思った。
「先輩」
「ん?どうした?」
「先輩は……」
「お待たせしました!」
丁度なタイミングで帰ってきたのは、ニコニコと嬉しそうにしながら分厚い本を両手に抱えているすみれちゃんだった。
私はさっきまで自分が何を聞こうとしてたのか、どうでも良くなっていた。
すみれちゃんが嬉しそうな顔をしているので、そっちの方が気になったのだ。
「とてもご機嫌だね」
「すみれちゃん、憧れの先輩って……あの理央先輩?」
「はい!おすすめの黒魔術と白魔術の本を貸してもらいました!」
「凄い趣味だな、おい……」
「面白いですよ。先輩も読みますか?」
「いや、結構です……」
すみれちゃんはどういった訳か黒魔術だの拷問だの、綺麗な顔をしながらそんな特殊な本を読むことが多い。
彼女が恋愛小説なんて読むことはないと思う。
というか、以前恋愛小説をおすすめしてみたときには「私、恋愛ものは大丈夫です」と断られてしまったくらい。
そして一番は彼女の入っている部活だ。オカルト部。
よくそんな部活があるなーと思い、どんな活動をしているのかを聞いてみれば秘密だと教えてもらえなかった。
オカルト部、おそるべし。
「理央様、やっぱり素敵です……!」
「理央って椎名理央だろ?俺とは別クラスだけど色々と噂が多いよな」
「噂?」
「どんなのですか?」
キラキラしている目で先輩を見るすみれちゃん。
私、理央先輩って見たことあるけれど女性か男性かも不明なんだよな……。
色々とミステリアスな先輩だってことはよくわかる。
「黒魔術が使える、白魔術が使える、悪魔を呼び出したことがある、今までに悪魔を呼び出して契約したからあんなに完全無欠なのかもしれないとか色々…」
「流石理央様!」
「すみれちゃんのツボがわからない」
「俺も」
「理央様はとても素敵な方ですよ?」
「一部の女子や男子から熱狂的な支持を集めているんだよな……」
私はイマイチ彼女の趣味が分からないけれど、それもすみれちゃんのいいところだと思うことにした。