プロローグ 虚構の始まり
皆様の素敵な作品を読んで自分もかいて見たくなって挑戦してみました。
処女作で至らぬ点も多いと思いますが、一生懸命頑張ってかきたいと思ってます。
本当はエイプリルフールに投稿する予定でしたが風邪で完成しなかったので時期を逃した感が強いです。
「どうしましょう、食べるものがもうないわ」
そんな切なげな呟きが食料庫の中にぽつんと響き渡り、重ねて「ハア」と切なげにもれるため息は、ただでさえ冷凍魔法のかかった場所を余計寒々としたものにかえた。
「やっぱり私一人で住むのは無理よ……お父さん、お母さん、村の皆……あの頃に帰りたいな。何でこんなことになっちゃったのかな。私はただ毎日を平和に過ごせればよかったのに」
涙を滲ませる少女を慰めようとしたのか、どこからともなく一羽の鳥が飛んできて少女の肩にとまる。
そして、涙にぬれるその頬をやさしくつつく。
「ありがとう千尋。そうね、私一人じゃなくてあなたもいるわよね。うん、あなただって私がしっかりしなくちゃ困るだろうし。気持ちを切り替えて久しぶりに一緒に買い物に行きましょう」
千尋と呼ばれた肩にとまる鳥を優しく一撫ですると少女は食料庫を後にする。
ここは遠い未来に鳥達の楽園と呼ばれる、多くの鳥と一人の少女が中心となって作り上げる小さな小さな王国。
しかし、その規模に反して多くの物語の舞台となり、この時代について書かれた歴史書には必ず一番多くのページをさかれることとなるその王国も今はまだその面影すら存在しない。
ただ、かつては人々が住んでいたであろう廃村とぼろぼろの廃墟。そして拙いながらも何とか修理されたのであろう一軒の小屋が存在するだけである。
これは一人の英雄をめぐる語られぬ二つの意思の対立の物語。
「こうやって落ち着いて町に行くのも村の皆が死んでから初めてか……今まで皆のお墓を作るので忙しかったしね。でも、これからどうやって生きていこう。村の財産はお墓を作るのと私の家の修理、それに村の食料庫の冷凍魔法の延長で後1500Gしか残ってないし。私と千尋だけなら節約すれば1年は過ごせると思うけど。収入もないしどうにかしないと……ってどうしたの千尋?」
私は突然騒ぎ出した千尋をなだめようと独り言を止め私の肩から飛び立った千尋のほうを向くとそこには私の村を滅ぼしたあのにっくきゴブリンの姿があった。
幸い一匹しかいないみたいだけど、お腹のすいた少女一人が逃げ切れるとも思えない。
ああ、お父さんお母さん皆。遅れてごめんね。
せっかく皆に助けてもらったけど私も今から皆の所に行くみたい。
ああ、千尋せめてあなただけでも飛んで逃げて。
私と違ってあなたにはその大空を翔ることの出来る二つの羽があるのだから。
だから、そうやって私のためにゴブリンを威嚇しなくていいの。
「千尋私のことはいいから逃げなさい!!」
それだけ叫ぶと私の意識は急速に霞がかって行った。
ただ、最後にこんな声を聞いた気がした。
「ミッション チュートリアルが開始されました」
この声が皆が死んで悲しみにくれる私を更なる悪夢へと誘う全ての始まりだったのかもしれない。
次に私が目が覚めたのは皆の待つ天国ではなく。
何度か来た事のある町の宿の中だった。
「え、どうして私生きて。ゴブリンはどうしたの? それに、ルナは! ルナは無事?」
あわてて周囲を見回すと私の真上をいつものように飛ぶ見慣れた青い翼が見えた。
私はその姿を見て安堵したのと共にわずかばかりの違和感を覚える。
しかし、今の混乱した私にはそれが何なのかわからない。
「ルナ、よかった無事だったのね。いつまでも飛んでいたら疲れるでしょう。さ、こっちにいらっしゃい」
そう呼びかけるとルナは私の肩に止まる。
いつも通りの行動。
しかし、何故か違和感はより大きなものとなった。
でも、どうしても私にはその違和感が何なのかわからない。
それと、違和感といえば私の服が変わっている。
一体何があったんだろう?
困惑していると私のポケットから何かカードのようなものが落ちた。
何であの状況から助かったのか?
何で服が変わっているのか?
何で雛の時から育てて何年も一緒に過ごしてきたルナのことを呼ぶときに違和感があるのか等気になることはいろいろとあったが、何故かそのカードを無くしてはならないという意識がわきそのカードを拾う。
そのカードは私のそろそろ見慣れてきた冒険者カードだった。
名前 鈴姫
職業 鳥使い
レベル 8
HP 34
MP 16
STR 1
VIT 1
AGI 1
DEX 1
INT 1
RES 1
CHR 17
備考 ルナ
レベル 8
ATK 16(+34)
そうだ、何もおかしくは無い。私の名前は鈴姫。私は冒険者になるために廃墟となった村を出て冒険者になりにルナと一緒に近くの町に来た。
ゴブリン退治のチュートリアルでレベルが2になって、その後何事も無く町に到着。1500Gで全部使って冒険者登録をして防具を調えて。お金がなくなってきたからそれまでの装備を下取りしてもらって。
宿に泊まる為にいくつか依頼をこなして魅力に極振りして鳥特化の育成をして疲れたから宿に泊まってセーブしてそのままログオフ。
ほら、今日の私の行動に何もおかしなことは無い。明日はリア友のみっちゃんと一緒に狩に行く約束だから早く寝ないと。
何だか知らないけど私から何もかも奪わないで!!」
「っ声が出る。私の体も動く。ね、千尋。こんなわけのわからないことから逃げましょ! 私と一緒にあの村に帰りましょ! そして、起きたらお父さんがいてお母さんがいて皆がいて。全部全部うそだったの。ね、そうでしょ? だって、こんなことあるわけ無いじゃないの!!」
しかし、私の呼びかけに千尋は何の反応もしない。
まるで別の名前を呼ばれたかのように。
雛の時から一緒に過ごし親代わりになって育てた私の事も一切興味が無いかのように全く反応しない。
「嘘、嘘よ千尋まで……これは全部悪い夢。そう、明日になれば私はいつものようにお母さんに優しく□□□□起きなさいって起こされて……」
私は眠ることで一時的にその嘘のような現実から目をそらした。
至らぬ点が多々あると思いますがご意見ご感想等がありましたら一言いただけると作者が喜びます。
それと、一番わかりにくそうなCHRは作中で魅力とかいておきましたが、わかりにくいようでしたら修正します。