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獣の国でお嫁さん  作者: つんどら
ある意味同棲生活
7/28

7 万能侍女クレイア

要塞にも思えるような天蓋付きベッドに、呻き声を上げる有馬がいた。

「う゛ーん……うー…………うぅー」

枕元に置かれていた杖がきらりと光り、靄のようなものが出てくる。

やがてそれは美しい、妖精のような少年の形を取って顕現した。

『うなされてるねえ。僕は夢魔じゃないから夢の中まで覗けないけど――《眠りの》、どうにかしてあげてよ』

有馬の頭上に、靄のようなものがふわふわと現れる。

雲にも見えるそれが、体に綿のような服を纏った、羊の角を持つ少年に変貌する。

彼は《眠りの精霊》。動物の巣や人の寝所から生まれる精霊だ。

『はい、はいはい。ぐっすり安眠をお届けしますよぉ~』

見た目こそ10歳ほどに見えるが、随分とミニマムサイズである。

およそ20cmほどの彼は、割り箸程の腕をくるくると回す。

『そーれ、眠れ~。《眠りの雪》で楽しい夢をプレゼント~』

柔らかく微笑んだ彼の腕から、薄桃色の雪が降り注ぐ。

それは有馬の顔に触れると、音も無く消えた。

次第に有馬の表情が柔らかくなり、小さく笑みを零して寝息を立てる。

安らかに眠り始めた彼女を見て、《眠りの精霊》は満足げに跳ねた金髪を揺らして消える。

『これで、安心かな』

彼も満足したように呟くと、杖の中に消えていく。

夜明け前のひんやりとした空気に、僅かなマナの余韻が残された。



それから数十分後、有馬がぱちりと目を覚ました。

寝ぼけ眼を擦りながら、暫くぼーっとする。

こちらでは1月4日。真冬のベッドの中で、有馬は幸福を噛み締めた。

(あぁ……布団から出たくない……)

ややあほらしい幸福だが、真冬の朝はある意味天国である。

布団を一歩出ると地獄だが。

(これでもうちょっと寒かったらなぁ)

この部屋は魔法で温度管理されているのか、とても過ごしやすい。

季節を感じさせないような適温は確かにいいが、物足りないと言えば物足りない。

――有馬としては、冬の朝は寒い方が好みだ。

凍えるほど寒いのは嫌だが、外が寒いからこそ布団の温もりが好ましい。

暫く目を開けたり閉じたり、寝返りを打ったりしながら布団を堪能する。

何時もなら起きたのを察知して入ってくるクレイアも、暫く放っておいてくれるようだ。

(ああ、こりゃ元の世界とかどうでもよくなるわ……)

ここまでくると逆に清々しい。呆れるほどに未練が無かった。

元の世界で使っていたよれよれの羽毛布団と違って、この布団は軽く柔らかくそして手触りも良く、寝心地は最高である。

そうして10分ほど経つと、ようやくクレイアがノックして入ってくる。

「おはようございます、アリマ様」

「おあよぅ」

呂律の回らない舌で言い、布団から両腕を出して伸びをする。

そしてそのまま、くたり、と力が抜けた。

「……お目覚めくださいませ」

「あ」

そして目を閉じるなり、布団を引き剥がされる。

シンプルな白い寝巻の裾が捲れて、太腿まで露になっていた。

「まあ、申し訳ございません」

全く反省していない口振りだが、有馬は全く気にする様子も無い。

小さく呻いてから太腿を隠し、のろのろと体を起こした。

ほんのりと赤い頬は、寝ていたからなのか、それとも羞恥か。

「今日から私がお召し物を選びますわ」

「うん……」

諦め気味の有馬だが、なんとか4日目にして“自分で顔を洗う権利”をもぎ取っている。

クレイアは難色を示したが、“服装・髪型を好きにしていい権利”を提示すると了承した。

ちなみに今までは服は自分で選べたが、そっちは手放した事になる。

それではプラスマイナスゼロだ、とは思いたくない様子だ。

そんな訳で人間らしく文化的な生活を、と有馬はポジティブに考えていたのだが――

「ではこちらを」

――クレイアが持って来た服を見て、早くも後悔した。

全体は落ち着いた風の胡桃色だが、これまでと比べて格段にフリルやレースが多い。

膝丈のスカートの内側には何十も薄布の重なった、所謂パニエを着るらしい。

腰のあたりがきゅっと締まっていて、中央を紐で編み上げてある。

「……着るの? これ」

「着せますわ」

有無を言わせない口調。美人故にますます迫力があり、有馬は溜息を吐く。

「……はい」

最早、諦めるしか、無い。

自分の好みを大きく外れたワンピースを着せられながら、有馬はつくづくそう思う。

クレイアを前にすると、何事も諦めざるを得なくなる。しかもそれが自分にとっての不利益になり得ないから、性質が悪い。

「とてもお似合いですわ!」

服を着せられ、髪も結われ、鏡の前に押し出される。

似合う訳が無い、そう思いながらも顔を上げる。

――案外。そう、案外似合っていた。

有馬の顔立ちは平凡で、この世界の同年代と比べれば大分幼い。

背は低く、おまけにやや太めの体形。

けれどもそれらの特徴は、クレイアによって全てが生かされていた。

「……まぁ、うん」

コンプレックスだった太い脚や大きな腰は広がったスカートで隠れるし、腹だって締め付けられていて目立たない。

人並み以下だと思っていた自分が、初めて人並みの少女だと思えた。

有馬は仄かな感動を噛み締めつつ、でもこの程度の服で限界だ、と現実的な事を思った。



フォルテは居間に入ってきた有馬を見て、危うく手に持っていたカップを落としかけた。

「お、はよう……」

「おはよ」

すんでの所で持ち直し、ゆっくりと挨拶を交わす。

有馬はふわりと裾の広いスカートに四苦八苦しつつもソファに座る。

クレイアが微笑を浮かべながら紅茶をカップに注ぐ。有馬はふぅ、と溜息を吐いてちびちびと飲み始めた。

「……今日はやけに気合が入っているな。どうした?」

何を言うべきなのか迷った末に、フォルテはそう聞いた。

そして少しだけ後悔した。女性が珍しい格好をしていたらまず褒めるべきではないだろうか、と。

「クレイアさんが」

「……?」

「選んだから?」

強いて言うならば取引の結果だが、有馬はとりあえずそう言った。

フォルテは「そうか」と言う。

快適な室内温度に融けるように、会話が途絶えた。

気づけばクレイアは消えていて、2人はぼーっとして紅茶を飲む。

――獣人は本能的に合理的な事を好む種族だが、貴族は本能的に華美である事を好む。

そんな貴族の娘達に比べれば、今の有馬など地味でしかない。

「似合うな」

けれどそれは問題にならなかった。地味とはあくまで、派手の対義語でしかない。

「……あり、がとう」

クレイアの手は、確かだった。一流のメイドであると同じ位に、一流のファッションコーディネーターで、エステティシャンで、ヘアースタイリストで、メイクアップアーティストだ。

間違い無く有馬は人生で一番輝いている。七五三で振袖を着た時よりも、ずっと。

「有馬は着飾るのが好きではないんだったな」

「そりゃ、そうだよ。面倒だし金かかるし」

有馬の中では、容姿や服装はさして重要な要素ではない。

彼女の頭を占めるのは物語や絵、あるいは歴史や音楽だ。

家で趣味に没頭するだけの休日に、洒落た服は必要無い。

けれど興味が無い訳では無い。見ている分には美人が良いし、自分がそうであったなら良いなとも思っているのだ。

ただ、そうなろうとする努力が全く伴っていないが。

「そうか。もう金は気にしなくて良いんだがな」

「あ、そうだね。王妃様に永久就職する内定を手に入れたんだった」

「……。まあ、そういう格好は似合っている。遠慮なくするといい」

「えー、ほんとに? あたしにはちょっとね」

胡桃色のスカートを摘み、唇を尖らせて言う。

普段下ろしている髪は後ろでハーフアップにされて、深みのある赤のリボンが垂れていた。

フォルテは紅茶のカップを置いて、僅かに首を傾げる。

「そうか? 可愛いと思うが」

「服が?」

「いや、お前が」

事も無げに言うと、有馬がぴたりと動きを止める。

「かわ、いい?」

そして胡乱な目つきでフォルテを見つつ、手を口元に当てる。

耳のあたりがほんのりと赤い。

「ああ」

言っているフォルテは平然としている。

実を言うと今だ戸惑いが抜けきらず、自分が何を言っているのか分かっていないのだが。

無意識というのは恐ろしいものだ。

「はー……まぁ、ありがとう」

流石王子ともなればお世辞が上手いな、と有馬は勝手に納得した。

しかし頬のあたりの熱は冷めない。

「貴族のご令嬢とかにも可愛い可愛いって言うの?」

誤魔化し半分にそう言う。しかしフォルテは、あっさりと右手を振った。

「可愛い、とは言わないな。貴族の娘というのは大抵プライドが高いし、子ども扱いは好まないだろう」

「あたしは子ども扱いか」

「……いや、そんな事は無い」

「どーせ小さくて背が低くてチビですよ」

三回も言わなくても分かる、とフォルテが笑う。

有馬は誤魔化しきれない熱を吐き出すように、大きく深呼吸した。



朝食を食べ終わると、何時も通りフォルテは仕事に出て行く。

最近執務が忙しくなったらしい。間違いなく有馬に付き合って午後を潰しているからだと思われるが。

「ロボー」

有馬は自室に戻ると、スカートに毛が付くのも厭わずにロボに抱きつく。

ソファの上で眠るように目を閉じていたロボは、ゆっくりと横を向いて瞬きした。

「む? 今日は可愛らしい服装じゃの」

「もっと褒めてー」

「有馬は可愛いのう」

「ロボも可愛いなぁ」

「そうか……?」

ひくひくと鼻先が動き、眉根が寄る。たまに見せる人間じみた仕草がまたいい、と有馬は思っていた。

『ねえねえー、僕は?』

テーブルに無造作に置かれた杖から、ベルが現れる。

「……ベルは……綺麗じゃないかな」

ずい、と近づいた顔を押しのける。絹のように滑らかな肌に触れると、有馬はあからさまに眉根を寄せた。

「って言うか何なの? 白すぎじゃない? さらさらすぎない?」

『普通だって~、エルフはみんなこんなもんだよ』

「ちくしょう! ……あと何? 何でこんなにまつげ長いの?」

有馬の手が伸びて、ベルの顔を弄繰り回す。

睫を引っ張ったり唇をめくってみたりとやりたい放題だが、ベルは特に抵抗しなかった。

「良く出来た人形みたいだよねー。ビスクドールって言うかさ」

『それ、よく言われたなぁ。有馬もぬいぐるみみたいだよねー、いたたたた』

真顔になった有馬が両頬を全力で引っ張った。

『いたいいたいいたい、痛ーいー』

「あはは」

『有馬、顔全然笑ってないよー』

「そうだね。ぬいぐるみは笑わないね」

『ごめんってばー、有馬』

「心が足りない」

『申し訳ございませんー、ブランカ(我が君)。どうかお情けをー』

「うむ、許す」

傲岸不遜にそう言って、両手を組みつつ笑う。

ベルはまだ出会って1日でしかないが、最初から人外であると分かっていたためか有馬はすぐに慣れたらしい。

契約したからというのもあるが。

「ベルよ。あまりブランカをからかうな」

からかわれた有馬が冗談半分に怒り、それをにこにこしながら受け入れるベル、和やかに見守って時々釘を刺すロボ。そんな構図が既に完成しているようだ。

ロボが無言で尾を振り、ソファが横に伸びる。音も立てずに腰掛けて、ベルはテーブルの杖を手に取った。

『なんかこれ、つまんないよね』

「はぁ?」

『装飾少ないしー、色が気に入らないよね! よし、変えちゃおう』

「ちょっと、一応借り物だから――」

ベルが杖を指先でなぞる。マナが集まって、きらきらと輝いた。

精霊が使う魔法は、主に精霊魔法と自然魔法である。

下位の精霊を使役したり、作り出したりするのが精霊にとっての精霊魔法だ。

そして今使ったのは自然魔法。精霊はマナで出来ているが、本来器のようなものである。その器一杯まで取り込んだマナによって魔法を使うのだ。

ただし大抵の場合は使える種類は少なく、自分に合ったもの――例えば《眠りの精霊》は睡眠や癒しに関するもの、しか使えなかったりする。

また彼らの得意魔法には、自らの名の枕詞が付いている事が多い。ちなみに《眠りの精霊》の《眠りの雪》は、安眠を与える魔法である。

『こんなもんかな? 宝石の周りもちょっと』

「……どうやるの? それ」

『気になる? 後でね』

ベルの場合、元々の魔力量が多かったためマナ容量もかなり大きい。そのため精霊としては高位の存在だ。

更に属性も得意不得意があまり無いし、元が妖精族だったからか魔力の扱いも上手い。

“ルゥ”の称号は伊達ではないのだ。

「今更物理とか化学とか言わないけど、これは、ねえ。どうなってんのか」

マナに包まれた杖の材質が、木ではなくなっている。

とろりとした不思議な光沢と透明感のある白色。

蝋が垂れるように形を変えていき、緑の宝石に絡みつくように固まっていく。

有馬は興味津々にそれを見つめていた。

『こんなもんかな? はい』

全て固まると、ベルが杖を手渡す。どこまでも滑らかな、磨かれた大理石のような触り心地である。

「これ、何? 素材」

『木だけど』

「いやいやいや、ねーよ」

『うん、嘘だけどね。魔力伝導率がこの世で一番高い物質、エーテルの結晶だよ』

「えー……え? エーテル? ここで来たか」

エーテル。物語やゲームでもよく見る名称である。

その多くは魔力回復薬としての物が多いのだが、本来はアリストテレスの提唱した第五元素である。

この世界でのエーテルは、マナが変質して固体化・液体化した物だ。

ちなみに液体エーテルを摂取すると高い魔力回復が得られる。

ただし過剰摂取すると体が魔力に耐えられず、体に異常をきたしたり、酷い時は死に到る。

固体エーテルはよく魔力を通す上に、一度魔力を込めると消費してもマナを吸収してその分まで回復する、という性質があるため魔石によく使われた。

ただし双方、現代では物凄く希少な品だ。

『そう、エーテル。知ってるの?』

「うちの世界じゃ、物語とかで魔力回復薬の代名詞だね。いろいろあるけど」

『へぇー。こっちでのエーテルはマナが変質したもの。液体と固体があって、確かに液体のは飲めば魔力が回復するなぁ。

……ああ、でも飲みすぎると魔力が溢れて危ないからね。エーテルは今のところあんまり出回ってない筈だけど、気をつけて』

うん、と頷きつつも有馬は杖で空中を掻き回す。

魔力の流れを大分つかめるようになってきた有馬は、エーテル素材の優秀さに感嘆していた。

杖の先端まで染み渡った魔力は、意識を巡らせると自在に動く。くるくると回せば、前より沢山のマナが煌めいた。

「ほぁー……」

球形らしい宝石が透けて見える様は、とても美しい。

しかも媒体として最高の素材を使っているため、実用性も最高。

有馬は大いに杖を気に入ったらしく、空中に絵を描いて遊んだ。

煌めくマナは暫く消える事がなく、緩慢に空中を落ちていく。

『ほら、遊んでないで。精霊魔法使ってみたいんでしょ?』

「原始魔法もじゃろう? ほれ、始めるぞ」

「うーぃ。じゃ、精霊魔法から」

娯楽の少ない世界で、有馬は魔法という格好の新知識に目を向けていた。

元々興味がありさえすればやる気の湧いてくるタイプなのだから、止まらない。

シヴァから論理・言語魔法と魔術、ベルに精霊魔法(及び他の魔導も)と自然魔法、ロボに原始魔法を教えてもらう事にしている。

何が得意なのかまだ分からないため、一通りやってみる事にしている。

『精霊と対話する事から始めようか。ま、僕と話せてるから問題無いけど。この部屋には精霊がいないから――とりあえず僕が作ってあげる』

ベルがきょろきょろと周りを見て、ある一角に目を向ける。

ふわりとソファを降りてその場所にしゃがみ込み、白い両手で何かを掬うような動きをした。

『この子が《埃の精霊》。部屋が綺麗だからあんまり集まらなかったけど、埃は人間の生活の痕跡だからね。意思疎通は簡単な筈だよ』

ベルの手の中から、くるくるとカールした灰髪の、小指サイズの少女が浮かび上がった。

向こう側が透けて見えるのは、力の弱い精霊の特徴だ。存在が希薄なのである。

「おおー。可愛い」

服装は襤褸切れのようなものだが、伸びた手足は白く滑らか。顔立ちも可愛らしく、浮かびながらあたりをきょろきょろと見ている。

『精霊っていうのは、人間の理想的な形を模してるものだからねぇ。僕は元々だけど』

「人間じゃない形のはいないの?」

『いない訳じゃないけど。みんな基本的には人型で、たまに他の姿になったりしてるかな。火関係の精霊の一部とかは好んで別の姿してるけど』

「……トカゲ?」

『うん。爬虫類型が好きみたいで――何で知ってるの?』

「パラケルスス先生が」

『誰?』

――パラケルスス。

本名をテオフラストゥス・フィリップス・アウレオールス・ボンバストゥス・フォン・ホーエンハイムという。長い。

医師であり錬金術師でもあり、ホムンクルスを作ったとか賢者の石を持っていたとかで有名だ。

サラマンダー・ウンディーネ・シルフ・ノームの四精霊を提唱した人物でもある。

ファンタジー好きなら聞き覚えのある名前かもしれない。

「火の精霊がサラマンダー、水がウンディーネ、風がシルフ、土がノーム。それをうちの世界で考えた人」

『ふぅん……こっちの精霊は、そういう名前は持たないけど』

この世界の精霊に、固体としての名前は無い。

精霊王と伴侶、精霊化された者などは名を持つが、他の精霊は《眠りの精霊》や《埃の精霊》という呼び名があるのみだ。

普通は《眠りの》、《埃の》、と縮めて呼ばれる。

「おいでおいで」

『《埃の》、って呼んであげてね』

「うぃ。《埃の》、元気?」

指先を伸ばすと、ふわふわと《埃の精霊》が寄ってくる。

『……~? んん! 元気だ。お前誰だ?』

「あたしは有馬」

『有馬! お前、精霊語が喋れるか! 精霊魔導士か!?』

「……精霊語?」

可愛らしい声に似合わない乱雑な口調に和んでいた有馬が、首を傾げる。

『ああ、この前古代語と一緒に教えたからね。自動で切り替わるのかな?』

「いや、普通に喋ってるつもりでいるんだけど」

『じゃあ、翻訳魔法が働いてるんだろうね。っていうか、翻訳かぁ……』

口の中でぶつぶつと呟き始めたベルを無視して、有馬は《埃の精霊》と戯れる。

小指の先に抱きついてきたり、有馬がつついたり、顔に張り付いたり、髪の毛に絡まったり。

有馬は大型の動物が好きだが、勿論小動物も好きである。

ハムスターやハツカネズミ、文鳥にセキセイインコ、エトセトラエトセトラ。

ピグミーマーモセットが欲しいと思っていた事もある。

「可愛い、超かわいい」

どちらかといえば可愛いよりかっこいい方が好きだが、可愛さに絆されないほど冷たくはない。

精霊というより妖精のような《埃の》に、有馬は思い切りデレていた。

余談ではあるが、その時ロボが後ろで拗ねていた――のをベルが目撃したという。

そういえば、ブランカは意味としてはマジェスティ。

本来は陛下とか殿とかそういう感じでの敬称です。

ロボは名前として契約に使っていますが。

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