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心の迷路 「冒頭」

雨の音が、古い精神科病棟の窓を叩く。新任精神科医の市原周いちはら あまねは、傘を手に病院の入り口に立ち尽くしていた。

「ここからが、本当の試練か…」彼自身、胸の奥に重い影を抱えたまま、足を踏み入れる。

病棟の廊下は静まり返っているが、時折どこからか微かな声が漏れる。声の主は誰か――患者なのか、それとも自分の想像か――周には判別できなかった。

最初の診察室に座ると、扉の向こうから奇妙な気配が漂う。患者の女性は、窓の外の雨をじっと見つめながら、こうつぶやいた。

「先生、私の夢の中に、もう一人の私がいるんです…」

周は息をのむ。診察を重ねるたびに、患者の心の奥へ、まるで迷路のように入り込んでいく。そして、気づけば彼自身の過去の記憶や後悔が、患者の語る幻想と奇妙に交錯し始めていた。

現実と幻想、過去と現在――その境界線は、雨音とともに、少しずつ消えていく。

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