『なぜか心惹かれる』
最近、知り合った友達がいる。
一人は凛月千夏という、天真爛漫な元気っ子という印象の女子だ。
もう一人は黒和優咲という、少し暗めな男子といったところなのだが、実は二人、付き合っているらしい。
その事を、ホクは工藤塁という、ボクが中学から好いている男子から聞いた。
美鈴「意外だよなぁ、あんな活発な子の彼氏が、根暗?だなんてなぁ。」
海音「…そうだね」
ショッピングモールに共に来た笹野美鈴が、のんびりとした口調でそう言った。
ボクはそれに適当に相槌を返し、親友である加藤静の誕生日プレゼントを選んでいる千夏に目を向けた。
海音(…どうしてなんだろうなぁ…、気になるんだよねぇ。)
ボクはそんなことを思いながら、ぼんやりと選んでいた。
時間は過ぎ、静へのプレゼントが決まったボクらは、腹ごしらえのためにモックへやって来ていた。
注文を終えると、千夏が申し訳なさそうに席に荷物を置き、トイレをしに走って行った。
途中で合流した塁は、美鈴に絡まれて会話をしていた。
塁が絡まれているせいか、優咲はスマホを眺めて時間を過ごしていた。
海音「……」
ボクは彼から目が離せなかった。
不思議と、ボクの身体は彼の隣にまで接近していた。
海音「……」
優咲「…あの」
肩が触れそうになった時、彼が口を開いた。
ボクはハッとし、拳二個分ほどの距離を空けて一旦深呼吸をした。
彼は戸惑いながらも、スマホを閉じ、優しく微笑んでいた。
海音「…なに、見てたの?」
特に話す話題を考えていなかったボクは、先ほどまで少しだけ気になっていたことを聞いた。
彼は一瞬ムッとしたが、すぐに困ったような笑顔に戻った。
優咲「えっと…、写真、かな。」
海音「写真?」
頬を恥ずかしそうにかきながら、彼はスマホを開く。
優咲「これ、妹と母さんなんだけど…、今日は母さんの誕生日で…。それで、メールでやりとりしてたんだよ。」
最初に出会ったときとは違い、素の笑顔を見せた。
海音「…家族仲がいいんだね。」
気付けば、ボクはその言葉を言っていた。
彼は嬉しそうに笑い、「そうかも」と返事を返してくれた。
優咲「海音、さんは…、静さんや美鈴さんと仲がいいんだよね。」
海音「…っ…。」
少し、驚いた。
なぜなら、彼がわざと家族の話題を避けたように見たからだ。
ボクは不意を突かれたことで、一瞬言葉が止まってしまったが、彼の言葉に同意を示した。
なぜ家族の話題を避けたのか気になったが、聞く勇気が出なかった。しかし、彼はボクの雰囲気を感じ取ったのか、ボクの目をしっかりと見据え言ってきた。
優咲「余計なお世話かもしれないけどさ…。
無理に家族との仲良くならなくてもいいんだよ…。海音さんの人生は、海音さんだけのものなんだから。」
海音「…」
…本当に余計なお世話だ…。
心でそう思っても、普段とは違い、ボクの口からその言葉が出ることはなかった。むしろ、ボクは彼に、好意すら感じた。
優咲「あ…、そうだ。もしよかったら、これ、貰ってくれないかな。
…千夏の誕生日が近くて、それで買っておいたんだけど、どうも俺にはセンスがないみたいでね。」
彼は鞄からネックレスを取り出すと、ボクに見せてくれた。
海音「…お世辞にも、センスいいねとは言えないね。」
ボクは不覚にも笑い、彼のセンスを疑った。
それは、『紫色の蝶々』のついたネックレスだった。
海音「もしかして優咲、厨二病か?」
優咲「うぐ…、し、仕方ないだろ、俺にとって、初めての彼女なんだ…。どんな物を渡せばいいかなんて、分からないよ…。」
彼はボクに弱みを見せた。おそらく、それぐらいしか、彼には自身の気持ちを表せないのだろう。
それを理解したボクは、センスの良い静に頼むことを勧めた。
彼は悩んだ末に、ボクの提案を受け入れた。
優咲「ありがとう、海音。」
海音「…っ…、ううん…、いいんだよ。ボクにできることはこれぐらいだからね。」
彼は優しい。どこまでも優しい。
だからこそ、あの娘を重なってしまうんだ。
ボクに、初めて優しくしてくれたあの娘に…




