…ゾクリ体験…~アニマル~
整った目鼻立ちと、綺麗な栗色の髪の毛。
「知ってる?うさぎって寂しいと死んじゃうんだって。
だから俺はうさぎなんだよ」
貴方はいつもそんな事を言っていた。
「何言ってんの。それ迷信らしいよ」
呆れたようにあしらう私に向かって
「えー、そんな事ないよー。だって俺、 香織がいないと寂しくて死んじゃうもん。」
と、いじけたように口を尖らせる貴方が愛おしかった。
だらしなくて、気分屋で、口だけは上手で。
どうしようもない人だけど、好きだったのだ。
…ねえ、知ってる?
うさぎってさ、 とてつもなく性欲が強い動物なんだって。
そんな所も貴方にぴったり当てはまっちゃうね。
惨劇を目の当たりにして呑気にそんな事を考えていた。
…いつかはこんな日が来ることを分かっていたのかもしれない。
いくら貴方が寂しがり屋の性欲が強いうさぎだったとしても、決して他のメスに手を出してはいけなかった
。
だって、貴方がか弱い小動物だと思って油断していた相手は、鋭い牙を隠し持った猛獣だったのだから。
あなたの綺麗な栗色の髪の毛が赤い色に染まる度に、
獰猛な肉食獣の前では、草食獣など雄とは言えど、ひとたまりも無いのだな、 と思った。
ふと、段々と動かなくなる貴方の瞳が私を捉えた。
謝罪とも、助けを求めるとも取れるその瞳の光が消えかかっている。
「死ぬのも1人じゃ寂しいの?仕方ないからお仲間も連れてってあげようか?」
そう言って猛獣が狩りを仕掛けにこちらへ向かってくる。
目の前の猛獣がメスライオンだとすれば、さしずめ私は女狐か泥棒猫ってとこか。