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ここはどこ?

目が覚めると、

小さく固いベットの上に横たわっていた。


(ああ俺は助かったのか?)

と思い助けを呼ぼうとするも、全く声が出ない。


「あぁ〜ぁあ〜ぅ〜」


と情けない声しか出せない。

まあ流石にあの瓦礫に挟まれればただでは済まないだろう。生きていることにまずは感謝しないとな。


(にしても、病院って木造建築だっけ?)


(まあ災害で病院も満室だろうし、オンボロでも仕方ないか。)


そう思い天井の木目を眺めていると、ドアが開く音がした。


(ああ、誰か来たか、命を助けてもらったんだ。感謝しなきゃな)


俺の目の前に現れたのは、ヨーロッパ系のパツキンチャンネーだった。

胸が慎ましいが、なにかオーラのようなものを感じる。


(外国人の看護師さんか、災害派遣で来たのだろうか?)


「Ти си се пробудио!!」


と、金髪のエッチなお姉さんが叫びながら部屋を出ていくのとほぼ同時に、ドタドタと少し急ぎ気味な足音が聞こえた。


(ああ、だれか呼んだのか、医者だろうか?)


そう思いながら待っていると勢いよくドアが開けられ、入ってきた人、いや動物の姿を見て俺は絶句した。


「Ох!коначно си се пробудио!била сам тако забринута!」


何を言っているのかまたもやわからなかったが、俺はそれどころじゃなかった。


その医者と思われた人物は、頭に2つの耳がついていたのだ。まさにみんなが想像するあれだ。

俺もよく獣族のアニメを見ていたが、まさか現実で見るとは思っても見なかった。


なにか二人で会話をしているが、俺はパニックで頭に何も入っていない。

まず俺が考えたのは、2つだ。

・ここが夢の中である可能性

・医者がコスプレをしている可能性


後者は..ほぼないだろう。

めちゃめちゃ耳しっかり付いてるし。普通カチューシャだったらわかるだろ。あと、ピクピクしてるし。


前者の可能性が圧倒的に高いが、俺の夢は聞いたことのないような言語を再現できるのか?

そこまで俺の脳が優秀に作られているわけがない。

自分で言うのも何だが、俺のような怠惰な人間の脳は絶対に優秀じゃない。普通に馬鹿だったし。

ただ他に考えも浮かばなかったので夢ということにしようと思う。


「Ахх тако слатко Чак су ми се и уши трзале 」


そうこう考えていると、金髪のエッチなお姉さんが俺を持ち上げた。


(なんだ、赤ちゃんプレイか?俺はそんなのご所望じゃないぞ。俺の脳は性癖さえ理解してないのか?)


ちょっと待て、俺って持ち上げられるくらい軽いの?え、どゆこと?本当の赤ちゃんプレイかこれ?


そんなことを考えながらキョロキョロしていると、全身鏡が目に入った。

そして自分の姿を見ると同時に俺は言葉を失った。本日2回目である。


   頭に耳付いてるやんけ!!!!


---





何がどうなっているかわからず、1周間ほどが経過した。

一つわかったことがある。俺の名前はケインというらしい。なんとも外国風な名前である。

それくらいしか聞き取れず、なんと言っているか全くもってわからない。


夢の中の俺は赤ちゃんという設定らしい。言葉も上手く発音できないし、話すのは少し諦めかけている。

まああと少し経てば多少話せるようになるだろう。


ちなみに俺が医者と看護師だと思っていた二人は俺の両親らしい。


30代前半というところだろうか。獣族の寿命などはわからないが、おそらく俺の年齢と同じくらいだろう。俺はそのくらいの年でさえ童貞なのに。羨ましい。妬ましい。ずるい。



そしてこの夢の中の世界の舞台は日本ではないらしい。あまりに寒すぎるからだ。

外は一面雪景色。流石に季節という概念はあるだろうから永遠に雪ということはない、と思いたい。


ここで俺は一つアニメオタクチックな考えを思いついた。

それは俺が異世界に転生したという可能性。

なぜならこの世界は夢にしてはあまりに細かく出来すぎているということや、夢特有の場面が急に切り替わったりするということがないからだ。


極めつけは、俺の意識がこの一週間寝ているとき以外は、はっきりしているということだ。

寝るという感覚もある。普通夢の中なんだから無いだろ。

ご飯を食べるという感覚もある。もっとも、ご飯は母乳だが。

まあ金髪姉ちゃんの胸を吸えるのは感謝だ。まだ赤ちゃんだからか、全く興奮はしないが。


まあそういうふうに解釈したほうが面白くなりそうだし、そういうことにしておこう。


家の中は、まさに中世ヨーロッパという感じだ。

電子レンジはないし、冷蔵庫もない。掃除機ももちろんない。電気という概念がないのだろう。明かりにはろうそくのようなものを使用している。夜なんて真っ暗で本当に何も見えない。普通に不便だ。


だが、目を見張るのは、ほうきが勝手に動いていたり、食器、洗濯物などが誰の手も使われずフラフラと片付けられているということだ。

まじでハ◯ーポ◯ターのロンの家みたいだ。


まあこれは魔法だろう。もう驚かないぜ。


なんせ獣族までいるし、魔法が使われるような世界でもおかしくないからだ。

まあ異世界と考えたとき、まず第一に魔法があったらいいなとか思っていたことは秘密だ。


俺の家は別に貧乏というわけではないらしい。だが、特段お金持ちというわけでもない。

まさに、the 普通だ。

まあここから成り上がるほうが楽しいだろう。


やり直すいい機会だ。この機会を無駄にしないようにしよう。童貞も卒業したいし。



---




あれから1年半くらいの月日が流れた。


一年も二人の会話を聞いていれば、ある程度の言葉は理解できるようになってきた。

この体は本当に物覚えがいいらしい。

高校の頃はバカだったのだが、

現地に住めばその国の言語がすぐに習得できるようになるというのは結構本当なのかもしれない。

この体の性能がいいというのも捨てきれないが、俺の体が優秀ということはないだろう。

ちなみに俺の両親の名前は父親がリアン、母親がアンというらしい。

本当にヨーロッパ人みたいな名前だ。



だんだんと俺も動けるようになってきた。

最近はこの家の中を動き回るというのが趣味になってきている。

異世界というのは本当に楽しい。


「ほんと目を離すとすぐにどこかに行っちゃうんだから」


「まあこのくらいの時期はいろんなことに興味が湧き出すんだ、元気でいいじゃあないか」


そりゃそうだ、なんてったって異世界だぜ?興味がわかないほうがおかしいでっせ兄貴

ともあれ、あまりに動き回って行動制限の魔法とかかけられても簡便だ。

両親の前にある程度いることにしよう。いろいろこの家についても分かってきたし。


まず、この家は屋根裏部屋を含めれば三階建てだ。部屋数はあまり多くはないが、この時代に三階建てなんて裕福に決まってる。

普通の家という最初の予想は外れてしまったが、裕福の家から優秀な子どもとして、貴族学校なんかに行って無双するのも悪くはないだろう。

うぅ〜!中二心をくすぐるぜ!


だが、立地はめっちゃ田舎だ。

雪が降りまくっていたので流石に都市の中心ではないなと思ってはいたが、外を見渡すと、一面畑だ。

家はまばらで、前方に2、3軒ある程度。かなりの田舎だ。

日本で例えると、新潟とかだろうか。決して新潟を田舎とバカにしているわけではない。決して。

そして案の定、日本にあるような電柱とかは見えない。

見えるのは畑を守っているように見える背の高い動物?植物?だけだ。


(ほんとのどかだな〜。なんも楽しいこととか起きない感じじゃん。異世界なんだしなんか起きてくれてもいいんだよ?)


そんなことを思っていたのは、昼の3時くらいまでだ。


珍しく両親が家を出たと思い、何事だ?と思ってテーブルによじ登って外を眺めると、

窓の外を見てギョッとした。


かなりの大きさのゴブリンが塀の外に見えたからだ。


(え、は、めっちゃデカくね?なんだあいつ?)


全然のどかじゃないじゃん、普通に3メーターくらいあるし。前言撤回。


(うわ、なんかふたりともちょっと押されてね?)


そう思って魔法を唱えている2人を少し心配していると、

でっかい火の玉が横から来てそのゴブリンをふっ飛ばした。


「リアン!アン!大丈夫か!?」


横から颯爽と現れたのは父親と同じ獣族の女性だった。


「ああ、すこし危なかったが。助かったメアリー」


どうやらあの女性はメアリーというらしい。そしてめっちゃ巨乳だ。そこにしか目がいかない。

赤ちゃんの性だ。仕方がない。決してやましい気持ちなどはない。


「なぜこんなところにゴブリンの変異種が出たんだか...これからも警戒をするとしよう」


あれは変異種らしい。まあ確かに俺が思い描いているゴブリンとはかけ離れているしな。


そのような会話をしながらゴブリンを倒し終わった両親とメアリーが家の中に入ってきた。


「おお!これがお前らのガキか!かわいいな!少し獣族感が失われているがこれはこれでいいな!」


「流石に獣族と人族の混血だからね、血は薄まっているわ」


俺はメアリーに抱っこされた。体に当たる柔らかい感触が最高だ。素晴らしい。うちの母親とは大違いだ。


「そんな胸が好きか〜?ん〜母乳は出ないぞ〜?」


そんなことを言っているとアンが俺をメアリーから取り上げた。


「もう!悪影響与えないで頂戴!」


「ううぇ!?そんなつもりはなかったのだが、すまんな...」


アンは貧乳だからこそ思うところがあるのだろう。

俺はどちらも素晴らしいと思うんだが。俺が日本人だからだろうか。


その後ご飯を食べてすぐに俺を寝室に連れて

アンは俺を寝かせたのち、隣の部屋で兄弟作成作業に取り組んでいた。

いつもは両親二人で作成には励んでいるのだが、今回はメアリーの声も聞こえる。

この世界は一夫多妻がOKらしい。素晴らしい世界だ。グヘヘ...。



(いや〜まさかあんなモンスターまでいるとはな...)


それから俺はこの世界のことなどを両親に聞き回った。

すると聞いたことのない単語が多いことに気がついた。

特に地名や国の名前は聞いたことの無いものばかりだった。


もう断定してもいいだろう。

まあ薄々気がついていたが...

これは日本、いや地球とは全く違う世界だ。


魔法の世界だ。




いや〜...素晴らしい。

アニメが大好きな俺にとってこれ以上にワクワクすることはない。

こんな理想的な世界に転生することができたんだ。



よし、決めた。前から一応決めてはいたが...


俺はこの世界で全力で生きていこう。

もう絶対に後悔はしない。

絶対に。

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