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【書籍二巻発売記念SS】挨拶《イージス side》

 ────初めて、ベアトリスお嬢様を見掛けたのはバレンシュタイン公爵家直属のサンクチュエール騎士団に所属して間もない頃。

幼く小さい体を更に縮こまらせる少女を窓越しに発見し、目を輝かせた。

だって、あの銀髪は間違いなく公爵様と同じものだったから。

直ぐにベアトリスお嬢様だと気づいた。


「あの、ベアトリスお嬢様に挨拶してきてもいいですか!」


 前を歩く先輩騎士へ話し掛け、俺は窓の方を手で示す。

『ここからなら、大声を出せば気づく筈!』と考える俺に対し、先輩騎士はブンブンと首を横に振った。


「バカ……!俺達みたいなむさ苦しい男が声を掛けたら、ベアトリスお嬢様が驚くだろ!」


「あっ、確かに!でも、俺は先輩達と違ってまだ若いし、顔も怖くないので大丈夫だと思います!」


「それ、遠回しに俺達のこと貶してないか?」


 『年寄り且つ強面で悪かったな』と嘆きつつ、先輩騎士は大きく息を吐く。

と同時に、チラリと窓の方を見た。


「とにかく、ベアトリスお嬢様に近づくのはダメだ。公爵様に目をつけられるぞ」


「どうしてですか?」


「知るか。俺達も『必要以上に関わるな』としか、言われてないし。多分、異性を近づけたくないんじゃないか?」


 『お嬢様の周囲には、基本女しか居ないし』と述べ、先輩騎士は歩き出す。

『ほら、行くぞ』とでも言うように軽く俺の背中を叩き、訓練場へ向かっていった。


 公爵様直々に禁止されているなら引き下がるしかない、か。

残念だけど、挨拶はまた今度にしよう。


 ────と、判断した数年後。

家庭教師や使用人達によるベアトリスお嬢様へのイジメが、発覚した。

そのため、バレンシュタイン公爵家は上を下への大騒ぎ。

幸い、異性ということで関係を断絶していた騎士団は何のお咎めも受けなかったが、使用人達はかなりの痛手を受けた。

だって、一番軽い(・・)罰が強制解雇と公爵領の出入り禁止なのだから。


 まあ、ベアトリスお嬢様の受けてきた痛みを思えば当然の報いだけど。


 使用人達に対して同情心など一切湧かない俺は、『ちゃんと反省してくれるといいな』と願う。

と同時に、新調された騎士服へ袖を通した。

ベアトリスお嬢様の護衛騎士の証であるバッジを襟につけて。


 公爵様の宝同然のベアトリスお嬢様をお守りする任を授かるなんて、光栄だな。

ご期待に添えるよう、しっかり仕事をこなさなくては。

そのためにも、まずは────以前出来なかった挨拶から、始めよう。


 腰に剣を差して廊下へ出ると、俺は真っ直ぐベアトリスお嬢様の部屋へ向かった。

そして、銀髪の少女と向かい合う。

記憶に残る姿よりやや成長したベアトリスお嬢様を前に、俺は背筋を伸ばした。


「本日付けでベアトリスお嬢様の護衛騎士に任命されました、イージス・ブリッツ・モントです!よろしくお願いします!」


 ペリドットの瞳を真っ直ぐ見つめ、俺は明るく笑った。

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