2話 序章 茜色の記憶
いつも思うんだけど、前書きって何を書いたらいいんだろう。
高評価ヨロシク!
.....とか?
鈍く響く頭痛に、僕は目をあける。
「助けが必要ですか?」
誰かの声が聞こえる。主語はないが、おそらく僕に話しかけているのだろう、という確信があった。
僕は目を開ける。
いつのまにか、僕は地面に寝ていて、狐の面を被った見知らぬ少女が僕を覗きこむようにして佇んでいた。
大丈夫、必要ない。そう言うと少女は
「そうですか。それはよかったです。」
と言った。どこまでも無感動な声だった。
僕の身体に外傷がないことを確認すると、少女は歩き出した。僕は立ち上がり、歩調を合わせる気が一切ない少女のペースについて行く。
「私はこの奈落の案内人を務めております。 ナラカ とお呼び下さい。」
歩きながら、少女は自己紹介を始めた。
ナラカ、と僕は脳内で反芻する。五十音の「あ」列のみで構成されたその3文字は、僕の記憶の然るべき場所に一切の抵抗なく落ちついた。
それはそうと、ここは奈落だったのか。地面の下にすごい空間があるなぁとは思ったが、奈落とはね。
「私が勝手にそう呼んでいるだけで、おそらく本物の奈落とは違います。ですが、外から迷いこんだ方に説明するときには、 奈落 というのが最も伝わりやすいのです。」
ということは、今まで僕以外にも迷いこんだ人達がいたってこと?
「そう記録されています。私ではなく、別の案内人が案内を行いました。」
君はいつからこの奈落にいるの?
「10分前からです。私はあなたを案内するための案内人として創られました。」
....君は、機械なの?君を創った人は一体どんな人だったんだろう。
「私は機械ではありません。ですが、限りなく機械に近くなるように設計されています。私を創った創造主が、そう望んだので。」
君が被ってる狐のお面には、何か意味があったりするのだろうか。
「これは、....。このお面は、単に創造主の趣味です。」
会話をしながら、僕たちは進んでゆく。案内人を自称する少女は、決して僕に歩調を合わせない。彼女が人であるとかないとか、そんなことは大して問題ではなかった。少女の無感動な声は、朱一色に染まる世界で最も心強いものだった。
「ここが、山の麓になります。」
突然、少女が立ち止まる。見上げると、地面が微かに傾斜しているのがわかった。恐らく今までも誰かが通ったのだろう、地面が踏み固められ、道ができていた。
「この世界は、あなたのいた世界とは違います。私が何もしなくとも、あなたはいずれ元の世界に戻ってゆくでしょう。私の役割は、あなたに物語を伝えることです。あなたには今から、ある物語を聞いていただきます。それはこの山の歴史であり、あなたに力を与えるものです。あなたがこの世界に来たことには、意味があるのです。あなたがそれに気付くまで、私は物語を語り続けます。」
そういって、少女は語り出した。
やっと序章が終わったので、次話から本編です。狐面の女の子って可愛いですよね(創造主の趣味)。